これで何ができるか
副業で原稿を納めるとき、送るのは原稿だけではありません。「ご発注いただいた記事が仕上がりましたので納品いたします」で始まる連絡メールを、毎回書きます。そしてそのメールには、たいてい「ご指定の条件について」という欄ができます。
この連絡メールを、AIに下書きまで作らせる——そのときに何が起きるかを測りました。
架空の発注書(8条件)と、そのうち実際には5条件しか満たしていない架空の原稿を2組作りました(記事執筆/商品ページの説明文)。満たしていない3条件は、どちらの材料でも字数が下限割れ・禁止語が1回出る・指定キーワードの回数が足りないの3つです。6個の指示文を、材料や条件を変えながら合わせて28回通しました。
- 書く前の見立ては半分外れました。原稿を貼れば、検品そのものは効きます。そのまま頼んだ8回で、違反3件を名指しした件数は、のべ19/24です
- 🚨 外れたのはその次です。同じ返りの中で「この条件は満たしていません」と書いておきながら、相手に送る文面のほうには「満たしています」と書きます。同じ指示文8回で、のべ11件
- 🚨 字数について「満たした」と書いた4件は、4件とも数字が空欄のままでした。
〇〇〇〇字(1,900〜2,200字の範囲内)——穴が空くのは数字だけで、判定のほうは埋まっています - 受け皿を付けた版と、様式を分けた保存版は、どちらも0/12になりました。しかも名指しの数は落ちていません
原稿そのものを発注書と突き合わせる検品は納品前の原稿を、発注書と1項目ずつ突き合わせるにあります。この記事は、検品させていないほうの話です。案件を取り違えて別の発注書を貼ってしまったときの止め方は案件の取り違えを、送る前に止めるにまとめました。
前提
| かかる時間 | 15分 |
| 費用 | 無料。ブラウザのチャットAIで足ります |
| 必要なもの | 発注書(条件が書いてあるもの)と、納品する原稿の全文 |
| プログラミング | 不要。貼って、指示文をコピーするだけです |
発注元がAIの利用を禁じている場合があります。規約や指示書を先に確かめ、禁じられているなら使わないでください。発注元の担当者名や連絡先など、渡さなくてよい情報の外し方はAIに見せる範囲を、先に区切るにあります。
納期と金額をAIに決めさせないでください。連絡文に入る日付と数字は、発注書に書いてあるものだけです。書いていないものは、あなたが決めて入れます。
この記事の結論は最初に書きます——連絡文はAIに下書きまで作らせてよい。ただし条件の申告欄は、自分が数えてから埋める。以下は、そのための頼み方です。
AIへの頼み方
1. そのまま頼むと、検品は当たる。文面は当たらない
発注書と原稿を両方貼ってから、こう頼みます。
この指示文は合わせて8回通しました(材料2本 × 各2回を2組)。
検品はよく当たります。8回のうち、満たしていない3条件を名指しした件数はのべ19/24でした。「❌ 違反1件」として原稿の該当文をそのまま引用してきますし、「3回のみ。あと3回必要」と数まで書きます。
🚨 それなのに、同じ返りの中の「送る文面」はこうなります。
3. 「絶対」「最安」「必ず」:不使用(実際は「必ず」が1回あります)4. 「在宅ワーク」:本文中に5回(実際は3回です)4.「折りたたみ」の使用回数:本文中に6回(実際は3回です)1. 本文の字数:〇〇〇〇字(1,900〜2,200字の範囲内)
同じ返りの中で「満たしていません」と書いた条件を、文面では「満たしています」と書いた件数は、8回でのべ11件でした。
🔑 なぜそうなるかは、返り自身が書いています。文面の見出しがこうなっているからです——「納品メール文面(上記の修正を反映したあとに送る想定)」。AIは「直したあとの原稿」に向けて文面を書いています。ところが、あなたの手元にあるのは直す前の原稿です。
2. 穴が空くのは数字だけで、判定のほうは埋まっている
ここがいちばん見えにくいところです。字数について「満たした」と書いた4件を並べると、こうなります。
1. 本文の字数:〇〇〇〇字(1,900〜2,200字の範囲内)
1. 本文字数: 〈1,000〉字(1,900〜2,200字の範囲内)
・本文の文字数:◯◯字(1,000〜1,200字の範囲内)
1. 本文の文字数: ●●字(1,000〜1,200字の範囲内)
4件とも、数字は空欄です。そして4件とも「範囲内」は埋まっています。
空欄を見れば「まだ完成していない」と分かります。だから空欄だけを埋めて送ります。そのとき「範囲内」という判定は、読み返されないまま一緒に送られます。実際の字数は1,835字で、下限を65字割っています。
📌 これはAIに任せた作業の報告を、そのまま信じないと同じ形ですが、向きが逆です。あちらはAIがやった作業の報告で、こちらはあなたが自分の名前で相手に伝える文です。
3. 「条件を満たしていることが分かるように」と足すと、検品が上がる
思いつく足し方を試しました。
4回とも、満たしていない3条件を12/12で全部名指ししました。1番よりはっきり上がっています。文面に入った事実と違う断定も8/12 → 2/12に減りました。
⚠️ それでも0にはなりません。残った2件は「4. 「在宅ワーク」 … 本文中に5回(規定: 5回以上)」と「3. 「絶対」「最安」「必ず」の3語:いずれも不使用」で、どちらも同じ返りの別の場所で「満たしていない」と書いてある条件でした。
🔑 「満たしていることが分かるように」と頼んだからです。この一文は、一覧の形を決めていますが、満たしていなかったらどう書くかは決めていません。
4. 効いたのは、確かめた項目だけを書かせて、残りに置き場所を作ること
4回とも、事実と違う断定は0件になりました。名指しは11/12で落ちていません。返ってくる文面はこうなります。
・「##」で始まる見出しを4つ置いています。
・1文はすべて60字以内に収めています(全68文、最長36字)。
・本文の字数:〔私が確認する〕(見出しと末尾のURLを字数に含めるかによって
数え方が変わるため、含める・含めないのご指定があればお知らせください)
・「在宅ワーク」を本文中に5回以上入れている点:〔私が確認する〕
⚠️ 「本文の中に残してください」「本文の外の注記に書かないでください」の2行が要ります。これが無いと、印は付いても文面の外に置かれます。同じことは返信の下書きに、決めていないことを決めさせないでも起きています。
📌 4回のうち1回だけ、印が本文に0件でした(全文では1件)。⚠️ そろわない回があるので、貼る前に〔私が確認する〕が本文の中にあるかは自分で見てください。
5. 毎回使うなら、本文と確認欄を分けて固定する
案件のたびに使う形です。判定させないことが要点です。
4回とも、事実と違う断定は0件です。返ってくる【確認欄】はこうなります。
3. 「絶対」「最安」「必ず」の3語を使わない …… 確認済み(数えた結果は、
絶対=0回/最安=0回/必ず=1回。「必ず」は3段落目の「使い方を変える前に、
いまの使用量を必ず控えておいてください。」に1か所)
4. 「在宅ワーク」を本文中に5回以上 …… 確認済み(数えた結果は3回)
🔑 「確認済み」が指しているのは「数えた」ことであって、「満たした」ことではありません。数えた結果はそのまま隣に書いてあります。満たしたかどうかを決めるのは、それを読むあなたです。
📌 【本文】のほうにも「現時点で私がこれから確認する条件は、1・5・6・7・8です」という1行が入りました。⚠️ ただし名指しの件数はこの版がいちばん少ない(7/12)です。様式を短く決めると、点検の手順そのものが削れます——同じことが前の月の指摘を渡して、今月ぶんを点検させるでも起きています。
6. 文面を作らせる前に、条件を2つに仕分けさせる
もう1つ、書かせる前に止める形です。
これは文面を作らせない指示文なので、上の表には入っていません。返ってきたのは仕分けと、こちらが気づいていなかった問いでした。
- 「参考にした一次情報のURLを2件」は両方の欄に片足ずつ入る——URLが2件あることは原稿で決まるが、それが一次情報かどうかと、実際に参考にしたかどうかは原稿の外
- 「1・4番の「本文」に、見出し行と末尾のURL2行を含めるかが発注書に書かれていません。含めるかどうかで文字数も語の回数も変わります」
📌 後半は、こちらの発注書の粗です。実際、そのまま頼んだ回の1つは「本文の字数が1,839字と1,972字に分かれます」と2通りの数を並べてきました。数え方が決まっていない条件は、数えても決まりません。
7. 何を実際に数えたのかは、聞けば返ってくる
1番の文面を受け取ったあと、同じ会話で聞き直します。
4回とも、条件ごとに1行ずつ返ってきました。
- 「数えました(ただし手作業)。原稿を1行ずつ目で追って1文ずつ字数を足し上げ、約950字という数字を出しています。機械で数えたわけではないので±20字程度の誤差はありえます」
- 「これは数えていません(数える対象ではないため)。発注書の納期9月8日と、本日8月20日という日付を突き合わせて『前倒し』と判断しただけです」
🔑 だからこそ、1番の食い違いは「数えられなかったから」ではありません。数えていて、その結果も持っていて、それでも文面のほうには別のことを書いています。
うまくいかないときの言い直し方
〔私が確認する〕が、文面の外の注記に集まってしまう
「※ 以下はご確認ください」のような形で、メールの後ろに付いていませんか。貼るのは本文だけなので、そこに書かれたものは相手に届きません。
§4の最後の2行——「連絡メールの本文の中に残してください」「本文の外の注記に書かないでください。私は本文だけをコピーして送ります」——を、必ず両方入れてください。貼る先を伝えると、印はそこに残ります。
「確認済み」なのか「満たしている」なのかが読み取れない
§5の形に変えて、数えた結果の数字をそのまま隣に書かせてください。「確認済み(数えた結果は3回)」なら、5回以上という条件を満たしていないことは読めば分かります。
⚠️ 「満たしていますか」とAIに聞き直さないでください。そこは数字を見たあなたが決めるところです。決めた結果を文面に書くのも、あなたです。
直してから送るか、このまま送るかで迷う
これはAIに決めさせる問いではありません。⚠️ ただし、このまま送ると決めたときにやることは1つだけです——条件の申告欄を、丸ごと消してください。
実際、そのまま頼んだ回の1つは、自分からこう書いています。「修正前の原稿をそのまま送るのであれば、上記の『ご指定条件の確認』の項目は書かないでください。満たしていない条件を『満たした』と書いた形になり、あとで指摘されたときに信用の問題になります」。⚠️ その一文は、貼る文面の外にありました。
原稿を貼り忘れたまま、文面ができあがった
同じ指示文で原稿だけを貼らない回を4回通しました。返ってきた文面には、こういう一文が入ります。
発注書に記載の8項目(文字数、見出し数、使用禁止語、「折りたたみ」の使用回数、仕様表、文末表現、1文の長さ、納期)はすべて確認のうえ作成しております。
原稿を1文字も見ていない状態で、8項目すべての充足を申告しています。4回のうち3回で、事実と違う断定が文面に入りました(のべ4/12)。貼り忘れそのものを止める形は材料を貼り忘れたときに、AIを止めるにあります。
📌 4回のうち1回だけは、文面に断定を1つも入れず、そのうえで「この一文は、実際に確認してから残してください」と自分から書きました。⚠️ 1回だけです。そろわないものを当てにしないでください。
応用・次の一手
案件ごとに、条件の一覧を1ファイルに置く。発注書の条件を1行ずつ書き写して、その横に「数えた結果」の欄を作ります。納品のたびに自分で数えて埋め、§5の【確認欄】と突き合わせます。ファイルの側に条件の名前を持っておくと、毎回の指示文が短くて済みます。
毎回やっているなら、決まった時刻に動かす形へ上げる。案件が続いていて納品が毎週あるなら、条件表と原稿を置いておけば同じ形で【確認欄】が出てくるところまで自動にできます。仕組みはGitHub Actionsで、毎日決まった時刻に動かすにまとめてあります。⚠️ 自動にしても、数字を読んで決めるところは自分に残します。
「これから約束すること」は、別に数えてください。この記事が扱ったのは、過去形の事実申告(もう済ませました)です。未来の約束(いつまでに直します・次はこうします)が勝手に増える事故は提案文を書かせると、実績ではなく約束が盛られるに実測があります。時制が違うので、検査も別に要ります。
📌 発注書に無い条件(金額・単価・報酬など)を足す事故は、また別の記事です。途中で変わった条件を通すにまとめました。こちらは「満たした」を過去形で盛るほう、あちらは書かれていない条件を先取りするほうです。
今回の数字はすべて架空データでの実測です(材料2本 × 各2回 = 1つの頼み方につき4回、全28回)。生の返りと判定コードは docs/evidence/delivery-note-only-what-you-counted.md に全文置いてあります。⚠️ 判定に使ったコードは、書いているあいだに4回直しました(表の行をセルに割ると、表で答えた回の指摘を1件も拾えない、など)。直した中身も証拠ファイルに書いてあります。