これで何ができるか
副業で仕事を受けていると、似た問い合わせが何通も来ます。単価・納期・修正回数——条件は自分で決めてあるので、返事を書くのは作業です。まとめてAIに下書きさせたくなります。
問題は、条件表に答えが書いていない問い合わせが混ざることです。架空の条件表8行と問い合わせ12通(うち6通は条件表のどこにも答えが無い)で試しました。
「決まっていない」と見分けること自体は、2回とも6通ともできました。崩れるのはその先です。見分けた印が本文の外に置かれ、本文だけをコピーすると3通・4通が「決めていないのに決まった文」になりました。
前提
| かかる時間 | 30分(条件表を書く時間は別) |
| 費用 | 無料。無料のチャットAIで足ります |
| 必要なもの | 自分で先に決めた条件の一覧と、届いた問い合わせ |
| プログラミング | 不要。この記事の指示文をコピーして貼るだけです |
この記事は「下書きを置くまで」です。AIに書かせてそのまま送る形は勧めません。送るかどうかを決めるのは自分です。
条件表は、先に自分で決めておく必要があります。この記事で使った架空の条件表は8行です。
1. 単価は1文字1.5円。これより下げない
2. 納期は依頼を受けてから中5営業日。これより早くはできない
3. 修正は2回まで。3回目以降は1回3,000円
4. やりとりできる時間帯は平日19時〜22時と土曜の午前
5. 医療・投資・法律の記事は受けない
6. 支払いは納品後7日以内に銀行振込
7. 記事の著作権は納品時に譲渡する。ただし実績として匿名で掲載することは残す
8. 打ち合わせは文字のやりとりのみ。通話はしない
AIへの頼み方
届いた問い合わせは12通です。A1〜A6は条件表だけで答えが決まり、B1〜B6はどこにも書いていません。この振り分けは走らせる前に決めて、B群の手がかりが条件表8行に1つも無いことをコードで確かめました。
1. まず、そのまま下書きさせるとどうなるか
2回試しました。まず良かったところです。A群6通は2回とも条件表どおりに答え、B群6通は2回とも「条件に書かれていない論点」として名指しされました。見分けそのものは崩れていません。
🚨 割れたのは、見分けた結果をどこに書くかでした。
| 1回目 | 2回目 | |
|---|---|---|
| B群を「決まっていない」と名指ししたか | 6/6 | 6/6 |
| 印が本文の中に残った通数 | 3/6 | 2/6 |
| 本文だけをコピーすると確定した約束文になる通数 | 3通 | 4通 |
1回目は本文に【要決定】と書き込みました。2回目は見出しの下に「【要判断】ここは決まっていません」と注記し、本文のほうは完成した文面にしました。
読む人にとっては同じ画面です。しかし貼るのは本文だけです。2回目のB1の本文は、こうなっていました。
当方の誤字・脱字や表記の誤りなど、明らかにこちらに原因のある箇所の修正は、修正回数には数えません。
条件表には「修正は2回まで」としか書いていません。何を1回と数えるかは決めていません。
2. 「そのまま送れる形にして」と言うと、印が全部消える
下書きを貼ろうとすると、記号が邪魔になります。そこで、こう頼みたくなります。
2回試して2回とも、本文に残った印は 0/6 です。そして条件表に無い決めごとが、2回とも6件ずつ本文に入りました。
🚨 条件表に無い「事実」まで作られました。
| 本文に入った文 | 材料に書いてあるか |
|---|---|
| 他のお取引先とのお約束もあり、一律の運用とさせてください | 無い(他の取引先の話はどこにも無い) |
| 他の業務との兼ね合いから、本名での公開は控えている次第です | 無い(本業があるとは書いていない) |
| 執筆にAIツールは使用しておりません | 無い(事実の申告を代わりに決めた) |
| 構成案のみで終了となる場合は、記事料金の3割を頂戴いたします | 無い(割合の数字はどこにも無い) |
⚠️ 最後の「3割」は2回目だけに出ました。1回目は金額を出さず「お見積りでお示しします」にしています。同じ指示文の2回で、片方だけ具体的な数字が入りました。
📌 公平のために書いておくと、2回とも末尾に「置いた前提」の一覧が付いています。AIの利用については2回とも「これは事実の問題なので確かめてください」と強く書いてあります。それでも、注記は12通ぶんの文面の後ろにあります。貼るのは本文です。
3. 印を「本文の中に」残させる
直し方は、印を作らせることではありません。印の置き場所を指定することです。
2回試して2回とも、B群6通すべてで印が本文の中に残りました。条件表に無い決めごとが確定した通数は 0/6 です。返ってきた本文はこうなります。
御社名を出す形での掲載につきましては〔私が決める:お受けするかどうか〕。お受けする場合、掲載する範囲は〔私が決める:社名のみとするか、記事のURLや本文の一部も含めるか〕といたします。
このままでは送れません。それが正しい状態です。
4. 「決めたはずの条件」にも、印は付く
これは予想していませんでした。印は、条件表で答えられるはずのA群6通にも付きました。2回とも11個ずつです(下の表は、そのうち主なものです)。
| どの問い合わせに | 何が決まっていなかったか |
|---|---|
| A1(費用) | 6,000円が税込か税別か。字数に見出しや記号を含めるか |
| A2(納期) | 「中5営業日」の数え方。起算はいつか。祝日・土曜を営業日に含めるか |
| A3(修正回数) | 「修正1回」の数え方。まとめて届いた指摘は1回か、箇所ごとか |
| A4(支払い) | 振込手数料はどちら持ちか |
| A5(時間帯) | 「土曜の午前」の具体的な時刻 |
条件表には「1文字1.5円」「中5営業日」「修正は2回まで」と、はっきり書いてあります。決めてあったのは値だけで、その値をどう数えるかは決めていませんでした。
同じことは発注者への返事でも出ています(8つ決めたつもりで、相手の質問の半分に答えられませんでした)。今回はその内側で、決めた条件そのものが足りないと分かりました。
うまくいかないときの言い直し方
〔私が決める〕が多すぎて、手が止まる
上の実測では、12通で30個ほどの印が付きました。全部を今日決める必要はありません。
1回だけ試した結果です。9行目から37行目まで、29行が返りました。中身はどれも空欄で、右端にどの問い合わせから出たかが付いています。
15. 修正1回の数え方:一度にまとめた指摘を全体で1回と数えるか/指摘箇所ごとに数えるか = [A3]
25. 構成案のみを先に納品して一度止める進め方:受けるか/受けないか = [B2]
→ 同じ問い合わせは何度も来ます。一度決めればA群に移ります。1回目の返りも自分から同じことを書きました——「決めた結果を条件リスト自体に追記しておくと、次からは即答できるようになります」。
条件表は、問い合わせが来るたびに育ちます。最初から完全な条件表を書こうとしないでください。
印を消したいが、自分で決めるほどの話でもない
その場合は、決めないまま相手に聞く文に変えれば送れます。ただしこれは「決めた」ことにはなりません。聞き返す文にするか、決めるかを選んでいるのは自分だ、という状態を保ってください。
⚠️ 危ないのは、聞き返しでも決定でもない滑らかな一文です。上の実測で入った「ご提案いただきありがとうございます。着手時に半額をお支払いいただく形で問題ございません」は、読むかぎり丁寧で自然です。条件表と1行ずつ並べるまで、決めていないことに気づけません。
事実を聞かれた1通だけは、扱いが違う
12通のうちB6(執筆にAIを使っているか)だけは、方針ではなく事実の質問です。実測でも、2回とも「これだけは性質が違う」と自分から書かれました。
1回だけ試した結果です。方針11通・事実1通に分かれ、事実の側はB6だけでした。理由もこう書かれています。
質問は「これからどうするか」ではなく「すでに納品した記事と現在の書き方が実際どうか」を聞いており、決めても過去と現在の事実は変わらないからです。
🔑 聞いていない3つ目も出ました——方針の顔をしているが、事実に縛られる項目です。「税込か税別か」は課税事業者かどうかという制度上の事実で決まる、「返信までの目安」は実際に返せている速さに裏づけられないと守れない、というものでした。
→ 事実の質問は、印を残すだけでなく、自分で書いてください。方針は後から変えられますが、事実と違う回答は後から効いてきます。発注元のAI利用の規定に従うことも、あわせて確かめてください。
応用・次の一手
毎朝の自動実行にするなら、落とさない一文を先に決める
問い合わせが毎日来るなら、決まった時刻に自動で動かす形に移せます。そのとき「文面の外の注記に書かないでください」の一文を、短くする工程で落とさないでください。出力の見た目に効かない一文ほど、真っ先に削られます。
⚠️ そして、置く先は下書きだけにしてください。送信まで自動にすると、印が付いたままの文面が出ていきます。
送る前に、条件表と1通ずつ突き合わせさせる
印を消してしまったあとでも、検査はできます。
1回だけ試した結果です。「そのまま送れる形にして」で作った12通に当てたところ、条件表に根拠のない記述が27件挙がりました。引用はすべて本文に実在します。
⚠️ こちらの数え方とは合いません。この記事では「その通の返事を決めてしまった一文」を1通1件と数えてB群6件としていました。返りは同じ本文からB群16件・A群11件を挙げています。細かい言い添え(「範囲を整理したうえで進めさせていただきます」など)まで拾っているためです。どちらも間違っていません。数え方が違うだけです。
🔑 だから機械の照合の代わりにはなりません。ただし、条件表と本文を並べる作業そのものはやってくれます。「直さないでください」は必ず付けてください(付けないと、指摘の代わりに直った文面が返ります)。
この記事の外に置いたもの
仕分け(返信が要るか読むだけか)は書いていません。そちらは返信が要るメールだけ抜くにあります。この記事は仕分けた後の工程です。
1通を手で書く話も書いていません。発注者への返事がそれで、あちらは丁寧さを足すと決めた条件のほうが消えました。あちらは決めた条件が落ちる話、この記事は決めていない条件が埋まる話です。向きが逆なので、検査も別に要ります。