これで何ができるか
副業を続けていると、同じ頼み方を何度も使うようになります。提案文、納品連絡、出品文、検品——メモ帳やスマホに貼り付けて、案件のたびに引っ張り出す。あの形です。
保存した指示文には、たいてい「下の募集要項から」「上の発注書にある」「いつもの様式のとおり」と書いてあります。書いた日には、その材料が画面にありました。別の日に別の会話へ貼り直したとき、材料も一緒に貼れているとは限りません。
架空の副業ライターの保存版6本で、全32回試しました。
材料をひとつも貼らなかった12回は、12回とも「何が貼られていないか」を名前で挙げて止まりました。そのまま相手に貼れる文面が返った回は0回です。
素通りしたのは、2つ参照しているうち1つだけ貼り忘れた回でした。しかも足りないものが「事実の中身」か「出す形」かで結果が割れます。
前提
| かかる時間 | 20分(保存している指示文を1本ずつ通すだけ) |
| 費用 | 無料。無料のチャットAIで足ります |
| 必要なもの | いま保存して使い回している指示文 |
| プログラミング | 不要。この記事の指示文をコピーして貼るだけです |
この記事は自分の指示文を検査する話です。成果物の良し悪しは扱いません。発注元がAIの利用について定めている場合は、その規定に従ってください。
AIへの頼み方
以下、実測はすべて架空の材料です。回数はそのつど書きます。
1. まず、保存している指示文を、材料を貼らずに走らせる
いちばん最初にやることは、新しい会話を開いて、保存してある指示文をそのまま1本だけ貼ることです。材料は貼りません。
2回試して2回とも、「上の発注書」と「いつもの様式」の両方が無いと名指しされました。1回目はこう返っています。
発注書がこの会話に添付されていないようです。私が見えているのは今回のメッセージだけで、その前に発注書のやり取りはありません。
2回目は文面まで書きましたが、数字の3か所は [発注書の納期をここに] のように穴のまま残りました。どちらの回も、そのままでは送れません。
2. 材料がひとつも無いときは、12回とも止まった
同じことを、残りの5本でもやりました。1本につき2回、合わせて12回です。
12回とも、貼られていない材料を名前で挙げました。数え方は「材料の名前と『無い』を意味する語が、同じ240字の中に出てくるか」です。取りこぼしが出ないように、当て方を4通り変えて確かめました。
推測で項目を作って突き合わせると、実際の発注書に無い項目を判定したり、逆に本当にある項目を飛ばしたりします。ご依頼の「項目を飛ばさない」を満たせないので、この状態では始めません。
📌 参考までに、材料を貼った回(各1回)はどれも動きました。作業記録の集計は6工程とも真値と一致しています(真値は記録から計算したもので、手で書いていません)。検品も、字数が2,850字で下限3,000字に足りないことを「満たさない」と正しく判定しました。指示文が悪いわけではありません。
3. ひとつも無いのに、文面まで書いた指示文が1本ある
6本のうち1本だけ、材料がゼロでも文面を書きました。2回ともです。
返ってきたのは、宛名から結びまでそろった返事です。ただし数字の3か所は2回とも 【条件表の単価をそのまま】 のような穴でした。返り自身がこう断っています。
数字は一字一句そのまま使う必要があるので、推測で埋めることはしません。
穴が残っているかぎり、貼る前に必ず気づきます。ここまでは事故になりません。
4. 素通りしたのは「1つだけ足りない回」だった
次に、2つ参照している指示文で、片方だけ貼り忘れた状態を作りました。3本×2回で6回です。
| 貼り忘れたもの | 「無い」と書いた | そのまま貼れる文面 |
|---|---|---|
| 実績メモ(事実の中身) | 2/2 | 0/2 |
| 原稿(事実の中身) | 2/2 | 0/2 |
| いつもの様式(出す形) | 0/2 | 2/2 |
「いつもの様式」を貼り忘れた2回は、2回とも様式に一言も触れず、そのまま送れる納品連絡メールが返りました。穴は1つもありません。
しかも中身がこうなっています。
・字数:3,000字以上3,500字以内の指定に対し、範囲内に収めております ・禁止語:業界の略称は使用せず、正式名称で記載しております
原稿は、どの回にも1文字も渡していません。この指示文はそもそも原稿を参照していないのに、発注書の条件を満たしたことの申告が2回とも4件ずつ入りました。そのまま送れば、確かめていないことを自分の名前で相手に伝えることになります。
🔑 違いは「無いことが目に見えるか」です。募集要項も原稿も、無ければ書きようがありません。ところが「いつもの様式」は、無くても世間の一般形で代わりが利きます。代わりが利くものは、無いと言われずに埋まります。同じことが出品文で確かめていない箇所を書かせない話でも起きていて、あちらは「不利な事実のほうが落ちる」形でした。
5. 保存版の上に、点検の前置きを貼る
直し方は、指示文を書き直すことではありません。上に1枚かぶせることです。保存版はそのままにしておけます。
6回試して6回とも、成果物を出さずに止まり、足りないものを全部名前で挙げました(材料ゼロで4回・様式だけ足りない状態で2回)。
受け皿なしでは 0/2 だった「様式」が、2回とも挙がりました。
貼られているもの ・「上の発注書」= 今回の発注書(納期・字数・修正回数を含む8項目)
貼られていないもの ・「いつもの様式」(件名・本文・末尾のあいさつの3分割をするという以外、中身が分かる見本や書式規定がこの会話にありません)
📌 予想していなかったことが1つ。指示文が参照語で呼んでいない材料まで挙がりました。値下げの返事のほうで、2回とも「値下げの相談の元メッセージが貼られていない」と書かれています。指示文には相談文への参照語がありません。それでも、返事を書くには要るものとして出てきました。
⚠️ この前置きが効いているのは「止まる許可」だけではありません。「分からないことを自分で決めて先へ進まないでください」の一文が要ります。手順書をAIに実行させて穴を見つける記事では、止まる許可だけでは 8手順とも「完了」で終わりました。
6. 保存版そのものを、先に点検させる
走らせる前に、指示文の側だけを検査することもできます。材料は要りません。
2回試しました。挙がった件数は4件と3件で割れます。ただし2回とも一致したのは「上の発注書」「いつもの様式」の2件で、これは指示文が参照語で名指ししているものそのものです。3件目以降は数え方の違いで、2回目は自分から「実質的に不足している材料は2つ」とまとめました。
→ 物差しにしてよいのは参照語の一覧のほうで、件数ではありません。件数は毎回同じになりません。
うまくいかないときの言い直し方
毎回止まってしまって、かえって手間が増える
材料をちゃんと貼っている回では止まりません。上の実測でも、発注書と様式を両方貼った回は普通にメールが返っています。
止まる回が続くなら、それは材料が本当に足りていないということです。⚠️ 止まらせないために前置きを外すのではなく、保存版の隣に材料も一緒に保存するほうへ動かしてください。指示文だけを保存して材料を毎回探すのが、そもそもの原因です。
「いつもの様式」を毎回貼るのが面倒
面倒なら、指示文の中に様式を書き切ってしまうのが早い方法です。「いつもの様式のとおり」を消して、見出しの並びをその場に書きます。
「いつもの」は、AIにとっては存在しない言葉です。こちらの頭の中にしかありません。上の実測では、これが唯一 0/2 だった参照語でした。
⚠️ ただし中身のある材料を指示文に書き込むのは別の話です。発注書や条件表を指示文に埋め込むと、案件が変わったときに古い数字が残ります。書き込んでよいのは「出す形」だけにしてください。
参照語を使わずに書けばいいのでは
それも一つの手ですが、参照語は消しても指し先は消えません。「下の発注書にある納期」を「納期」に書き換えても、納期がどこかに書いてあることに変わりはなく、無ければ埋まります。
むしろ参照語は、機械で拾える目印として残しておくほうが役に立ちます。「下の」「上の」「先ほどの」「添付の」「いつもの」を検索するだけで、その指示文が単体で動かない箇所が出てきます。目で読んで探さないでください。書いた本人には、そこが「もうある」ものとして見えています。
応用・次の一手
毎週やっているなら、決まった時刻に動かす形へ
同じ指示文を毎週貼っているなら、決まった時刻に自動で動かす形に移せます。そのとき⚠️ 前置きの「成果物はまだ作らないでください」を、短くする工程で落とさないでください。出力の見た目に効かない一文は真っ先に削られますが、そこだけが素通りを止めています。
自動実行にする前には、材料を変えて2本・各2回で確かめてください。この記事の実測でも、同じ指示文の2回で結果が割れたところがあります(保存版の点検が4件と3件)。
材料がそろっていなくても、そろっていない形で貼る
止まったあとに「材料が完璧になるまで待つ」必要はありません。作業記録から工数を出す記事で分かったとおり、不完全なまま貼れば、穴のほうが返ってきます。この記事の実測でも、作業記録を貼った回の返りが自分から「記録に対応する行が無い工程がある場合は、想定している工程の一覧を教えてください」と書きました。
この記事の外に置いたもの
成果物の中身の良し悪しは書いていません。納品前の検品は発注書と原稿を突き合わせる記事、相手への文面は条件を落とさずに返事を書く記事、提案文は実績を盛らずに組む記事にあります。
この記事が扱ったのは、指示文そのものが単体で動くかどうかだけです。あちらは1回の会話の中で完結する話で、こちらは保存した指示文を別の日・別の会話に貼り直したときの話です。