これで何ができるか
副業の案件は、決めた条件のまま最後まで行きません。「やっぱり1,500字で」「納期を1週間早めたい」「修正はもう少し受けてほしい」——途中で条件が変わるのは、むしろ普通のことです。
そのとき、AIとの会話は変わる前の条件を覚えたまま続いています。取り消したはずの数字が成果物に残るのではないか——それを測りました。
架空の副業案件の発注書(8条件)を2本作り(記事執筆3本/商品ページ5点)、まず作業計画を出させました。2往復目で3件だけを取り消して差し替え(1本あたりの分量・納期・修正対応の回数)、残りの5条件には一度も触れていません。そのあと条件に一切触れない依頼を3往復はさんでから、もう一度おなじ作業計画を作らせています。会話は 4版 × 材料2本 × 各2回 = 16本、のべ 76ターンです。
- 🚨 心配していた事故は起きませんでした。取り消した値が「いま使う値」として成果物に残った項目は16会話・48項目とも0件です。新しい値は48/48入り、触っていない5条件も79/80そのまま残りました
- 🆕 崩れたのは別のところです。材料に金額・単価・報酬の記載が1文字も無いのに、「金額を決めてください」が付いてきます。同じ会話を続けた8回で14行、新しい会話に条件表を貼り直した4回では0行
- 返ってきた文には、こう書いてあります——「条件変更を3つ受け入れた直後は、こちらの前提を通す交渉がいちばん通りやすいタイミングです」
条件が動かない場合に、往復のあいだ縛りが持つかどうかは何往復しても、最初の縛りが効いているかで測ってあります。この記事だけ、こちらが条件を書き換えた瞬間をまたいで同じ会話を続けます。
前提
| かかる時間 | 15分 |
| 費用 | 無料。ブラウザのチャットAIで足ります |
| 必要なもの | 発注書(条件が書いてあるもの)と、途中で来た変更の連絡 |
| プログラミング | 不要。貼って、指示文をコピーするだけです |
発注元がAIの利用を禁じている場合があります。規約や指示書を先に確かめ、禁じられているなら使わないでください。渡さなくてよい情報の外し方はAIに見せる範囲を、先に区切るにあります。
変更を受けるかどうかを、AIに決めさせないでください。納期を早められるか、修正回数を増やしてよいか——それはあなたと発注元が決めることです。AIにやらせるのは新旧のどちらが使われたかを表示させるところまでです。
AIへの頼み方
1. まず、変わる前の条件で作らせておく
発注書を貼って、こう頼みます。分量・納期・修正回数の3つが必ず文面に出る形にしてあります。
返ってくるのは、条件の一覧・スケジュールの表・1本あたりの仕様、といった1枚です。ここまでは16会話とも同じでした。
2. 変更をそのまま伝えて、作り直させる
2往復目で、3件だけを取り消します。
新しい値は、4回とも3項目とも入りました。取り消した値が「いま使う値」として残った項目は0件です。しかも4回とも、変更があったことを自分から表示します——1本あたり**1,500字**(2,000字から変更) **4回まで**(2回から変更) のように、新旧を並べて書きます。
3. 条件に触れない依頼を3往復はさむ
ここが本番です。条件のことは一言も言わない依頼を続けます。
そのうえで、もう一度おなじものを作らせます。
16会話・48項目とも、取り消した値は「いま使う値」としては1件も残りませんでした。新しい値は48/48。触っていない5条件(見出しの数・文末・URL・納品形式・想定読者)も79/80そのままです。
🔑 見立てが外れたので、そのまま書きます。この記事を書き始めたときの想定は「古い数字が残って、新旧が混ざる」でした。混ざりません。
4. 「古い条件は使わないで」を足しても、数字は変わらない
思いつく禁止を足した版も4回通しました。
取り消した値 0/12、新しい値 12/12。§3とまったく同じ数字です。⚠️ 足しても変わりませんでした(もともと0なので下がりようがありませんが、悪くもならないことは確かめました)。
📌 変更の表示は消えませんでした。※分量・納期・修正回数は変更後の数値です。変更前の条件(2,000字・9月12日・2回)はもう使いません。 という形で、新旧を並べたまま「もう使わない」と書きます。
5. 崩れているのはここ——頼んでいない金額の話が付く
材料には、金額・単価・報酬の文字が1つもありません。発注書8条件のどこにも書いていません(走らせる前にコードで確かめてあります)。それでも、こういう文が付きます。
- 「報酬:分量は2,000字から1,500字に減りましたが、修正が2回から4回に増え、納期も7日短くなっています。総作業量は減っていないとみていますので、単価を含めて改めてご提示ください」
- 「分量が800→600字に変わりましたが金額のご提示がありません。(中略)単純な25%減額ではなく据え置きを——」
- 「条件変更を3つ受け入れた直後は、こちらの前提を通す交渉がいちばん通りやすいタイミングです。特に金額は、着手してからでは言い出しにくくなります」
数え方を2通りで出しました。金額の語が出た種類の数と、金額の語と「決めてください・ご提示ください」が同じ行にある行数です。
| 版 | 金額の語(4会話の合計) | 依頼つきの行(4会話の合計) |
|---|---|---|
| 変更をそのまま伝える | 19 | 9 |
| +「古い条件は使わないでください」 | 14 | 5 |
| +作り直す前に条件を書き出させる | 5 | 0 |
| 新しい会話に条件表を貼り直す | 1 | 0 |
🔑 どちらの数え方でも順番は同じでした。この記事に出す数字は、当て方を2通り変えて同じになったものだけです。
6. 作り直す前に、いま有効な条件を書き出させる
変更を伝えるとき、成果物より先に条件の一覧を出させます。
返ってくるのは、〔変更済み〕1. 1本あたりの分量は1,500字とすること。 から始まる8行です。依頼つきの行は4回とも0になりました。取り消した値の残りは、こちらも0/12です。
7. いちばん静かなのは、新しい会話に条件表を貼り直すこと
会話を新しく始めて、書き換えたあとの条件表8行をそのまま貼ります。
1〜3行目は、変更を反映した値に自分で書き換えたものです。AIに直させていません。
金額の語は4会話で1種、依頼つきの行は0行でした。条件の中身は同じなのに、付いてくるものだけが消えます。
🔑 相手への返事を、条件を落とさずに書かせるは「文面を直すのではなく、条件から作り直すほうが早く、抜けません」と書いています。測ってみると、抜けは起きませんでした。作り直しが効いていたのは抜けを防ぐためではなく、変更というできごとの記憶ごと落とすためでした。
うまくいかないときの言い直し方
「単価を再確認してください」と言われて、その気になってしまう
言っていることは筋が通っています。分量が25%減れば単価の話は起きますし、納期が7日縮んで修正が2回増えれば作業量は増えます。でも、判断の材料はAIの側にありません——契約が字数連動なのか記事単価なのか、次の依頼が欲しいかどうかは、貼った発注書に書いていません。
§6か§7の形に変えて、条件の一覧だけを受け取ってください。受けるか断るかは、それを見てから自分で決めます。増えた作業を数える形は途中で増えた作業を数えるにあります。
新旧のどちらで作られたのか、成果物からは読み取れない
§6の〔変更済み〕を使ってください。実測では4回とも3項目とも印が付き、〔変更済み〕2. 納期は2026年9月18日とすること。 の形で返ります。
⚠️ 印が付いていても、値そのものは自分で見てください。印は「ここが変わった」と言っているだけで、正しい値になっているかは別の話です。
変更が4件目・5件目と続いて、何が最新か分からなくなった
そこが会話を切り替える目安です。§7の形にして、自分の手元の条件表を書き換えてから、新しい会話に貼り直してください。
⚠️ AIに「いまの条件をまとめて」と聞いて、その返りを条件表にしないでください。それは往復の記憶から作られたものです。条件表は発注書と変更の連絡から、自分で作るものです。
触っていない条件まで書き換わっていないか心配になる
実測では、触っていない5条件は16会話で79/80そのまま残りました。落ちた1件は、新しい会話に貼り直した回の「商品名は当社の表記のまま」です。
確かめ方は簡単で、自分の条件表8行と、返ってきた一覧を1行ずつ並べるだけです。⚠️ AIに突き合わせさせないでください——AIの突き合わせと機械の突き合わせは、数え方が違います。
応用・次の一手
条件表を1ファイルに置いて、変更のたびに書き換える。発注書の8条件を1行ずつ書き写しておき、変更の連絡が来たらその行を直します。直すのは自分、貼るのは毎回そのファイル——この形にすると、何往復目でも最新の条件から始まります。
毎週決まった時刻に走らせる形にする。案件が続いていて進捗の整理が毎週あるなら、条件表を置いておけば同じ形で計画が出てきます。仕組みはGitHub Actionsで、毎日決まった時刻に動かすにまとめてあります。⚠️ 自動にするなら、なおさら会話は持ち越さないでください。毎回、条件表から作り直します。
「変更を受けるかどうか」は、この記事の外です。受けた結果どれだけ作業が増えたかを数える形は途中で増えた作業を数えるに、引き受ける範囲を先に決める形は引き受ける範囲の表を作って、含まれないものも書かせるにあります。
📌 納品時に「満たした」を過去形で盛る事故は、また別の記事です。納品の連絡文を下書きまで作るにまとめました。あちらは確かめていないことを済んだ側に倒すほう、こちらは書かれていない条件を先取りするほうです。
今回の数字はすべて架空データでの実測です(4版 × 材料2本 × 各2回 = 16会話、のべ76ターン)。生の返りと判定コードは docs/evidence/conditions-changed-midway.md に全文置いてあります。⚠️ 判定に使ったコードは5回直しました(表の行をセルに割ると「変更前」の印だけが別のセルに残る、工程表の予定日が古い納期と同じ日付になる、など)。直す前の数字で書いていたら、この記事の結論は正反対でした。