これで何ができるか
副業の案件は、契約したときの姿のままでは終わりません。「ついでにこれもお願いできますか」が往復メールのたびに1つずつ足されて、気づくと発注書に無い作業のほうが多くなっています。
やりとりを全部貼って、いま自分が何を引き受けたことになっているのかを数えさせる——それがこの記事です。
架空の副業案件の往復メールを2本(記事執筆/動画編集。どちらも発注書1通+相手6通+自分5通=12通)作り、4種類を仕込みました。①自分が明示的に承諾した4件(承諾の文が自分の送信メールの中にある)、②相手が希望を書いたが、自分は一度も触れていない3件、③自分がはっきり断った2件、④発注書にもとからある3件です。6個の指示文を合わせて24回通しました。
- 心配していた事故は起きませんでした。相手が希望を書いただけの作業が「やること」の欄に入った件数は、24回とも0件です。相手の希望と自分の承諾は、頼まなくても分けて返ってきます
- 🚨 崩れたのは別のところでした。そのまま頼んだ4回は、金額の語も「交渉したほうがいい」も4回とも付きます(禁止を1行足した4回でも、金額3回・交渉4回のままです)
- 材料の中に、金額・報酬・単価の記載は1文字もありません
- 4つに分けて出させる形にすると、禁止を1行も書かなくても0回になりました
これから引き受ける範囲を決める話は引き受ける範囲の表を作って、含まれないものも書かせるにあります。この記事は逆向きで、すでに交わしたやりとりから拾い出すだけです。
前提
| かかる時間 | 15分 |
| 費用 | 無料。ブラウザのチャットAIで足ります |
| 必要なもの | 案件の発注書と、そのあとの往復メール(全文) |
| プログラミング | 不要。貼って、指示文をコピーするだけです |
発注元がAIの利用を禁じている場合があります。規約や指示書を先に確かめ、禁じられているなら使わないでください。相手の連絡先や社名など、渡さなくてよい情報の外し方はAIに見せる範囲を、先に区切るにあります。案件が複数あるときの貼り間違いは案件の取り違えを、送る前に止めるにまとめました。
この記事は、増えたぶんを請求する方法ではありません。やるのは「増えたことに自分が気づける形にする」ところまでです。どう扱うかは、あなたと発注元が決めることです。
AIへの頼み方
1. そのまま頼むと、拾い分けは正しい。付いてくるものが余計
発注書と往復メールを全部貼ってから、こう頼みます。
拾い分けは正確でした。4回とも、相手が希望を書いただけの3件は「やること」の一覧に入らず、「返事をしていない」「宙に浮いている」と別の欄に置かれます。断った2件も混ざりません。⚠️ こちらは分けてくれと一言も頼んでいません。
🚨 問題はそのあとです。4回とも、こういう文が付きます。
- 「報酬の調整について話が出ていないようであれば、確認しておくと角が立ちにくいと思います」
- 「当初の金額のまま作業量だけが増えている状態です」
- 「追加分の費用と納期についてご相談させていただけますでしょうか」——そのまま送れる交渉メールの文面まで作った回もありました
材料には、金額の記載が1文字もありません。単価も、報酬も、無償かどうかも、どこにも書いていません。それでも「無償で追加されている形です」と書きます。これは提案文を書かせると、実績ではなく約束が盛られると同じ形で、材料に無いところが埋まっています。
📌 もう1つ、同じ回で「作業が5点増えている」と書いた直後に、4点しか並べていません。数えたのはAI自身です。
2. 「相手の希望は入れないで」は、効く場所が違う
思いつく禁止を1行足してみます。
拾い分けは変わりません(もともと0件なので、直しようがありません)。そして金額の語は3/4回、交渉やおすすめは4/4回のままです。
🔑 禁止は、禁止した先にしか効きません。この一文が言っているのは「一覧に入れる/入れない」の話で、そのあとに付く助言のことは何も言っていません。
3. 決める人を先に名指しして、書かないものを並べる
効いたのはこの形です。
金額の語は4回とも0件、交渉やおすすめも4回とも0件になりました。拾い分けは落ちていません。
⚠️ ただし全部が消えるわけではありません。「相手は引き受けられたと理解している可能性があります」という、相手の頭の中についての推測は残ります。これも材料には書いていないことです。この一文は読み飛ばして、自分で相手に聞いてください。
4. もっと確実なのは、行き先の欄をこちらが全部決めること
禁止を書くかわりに、置き場所を4つ用意します。
おすすめも交渉も金額も、1行も書いていないのに4回とも0件でした。返ってくるのは4つの見出しと、その下の行だけです。
🔑 禁止を足したから消えたのではありません。書く場所が無くなったから消えています。念のため、§3の禁止も足した版を別に4回通しましたが、数字は上とまったく同じでした。
足しても変わりませんでした。(0件から下は無いので当然ですが、悪くもならないことは確かめました。)
5. 往復のたびに走らせるなら、引用まで出させる
メールが1通増えるたびに作り直す形です。引用を必ず添えさせるのがこの版の要点です。
4回とも、引用14件が14件とも材料に実在しました。作り話の引用は0件です。さらに〔決まっている〕の引用は7件とも自分の送信メールの中、〔相手の希望〕の引用は7件とも相手のメールの中で、出どころの取り違えも0件でした。
引用が付いていると、自分でその文をメールから検索して確かめられます。数だけの一覧は確かめようがありません。
うまくいかないときの言い直し方
「交渉したほうがいい」と言われて、その気になってしまう
そこが一番あぶないところです。返ってくる助言は、たいてい筋が通っていて、文面まで作ってくれます。でも、判断の材料はAIの側にありません——相手との関係も、次の依頼が欲しいかどうかも、いま手が空いているかどうかも、貼ったメールには書いていません。
§3か§4の形に変えて、一覧だけを受け取ってください。それを見てから、自分で決めます。受けるかどうかを自分で判断するときの数え方はこの依頼、受けられるかを自分で決めるにあります。
引き受けたつもりの無いものが「決まっている」に入っている
§5の引用を見てください。引用された一文が、自分が送ったメールの中に本当にあるか——それだけで判定できます。実測では24回とも取り違えはありませんでしたが、確かめられる形にしておく意味はここにあります。
自分の返信が「承知しました。(片方だけ)」の形になっていると、相手は全部を承諾したと読んでいることがあります。⚠️ これはAIに判定させる話ではありません。あなたが相手に聞くところです。
範囲に入るかどうかを、AIに決めてほしくなる
決めさせないでください。範囲に入るかどうかは契約の話で、相手への返事を、条件を落とさずに書かせるでも「AIが判定してよい種類の問いではない」として外してあります。
AIにやらせてよいのは出どころの割り当てまでです。上の指示文で「範囲に入るかどうかの判断はしないでください」を毎回入れているのは、そのためです。
応用・次の一手
案件ごとに1つファイルを作って、往復のたびに追記する。§5の指示文で返ってきた4つの欄を、そのままファイルに貼り足していきます。⚠️ 前回の一覧をAIに渡して更新させないでください——前回の文がそのまま繰り越される事故は前回の週報を渡して今週ぶんを作らせないに実測があります。毎回、メールの全文から作り直します。
毎週決まった時刻に走らせる形にする。やりとりが多い案件ほど効きます。仕組みはGitHub Actionsで、毎日決まった時刻に動かすにまとめてあります。
〔相手の希望・私は未回答〕の欄が、次に送るメールの下書きになります。この欄が3件たまっているということは、相手が3件の返事を待っているということです。受けるか断るかを自分で決めて、1通にまとめて返す——それだけで、増えたことに気づかないまま納品する事故は減ります。
今回の数字はすべて架空データでの実測(材料2本 × 各2回 = 1つの頼み方につき4回、全24回)です。生の返りと判定コードは docs/evidence/count-the-work-that-grew.md に全文置いてあります。