これで何ができるか
毎週の報告書を、金曜の朝までに下書きだけ用意しておく——という形の作り方です。手で1回やる頼み方は毎週の報告書を、前回のぶんを型にして書かせるにあります。この記事はそれを毎週ひとりでに回したときに何が起きるかを実測したものです。
自動にすると、手のときには無かった工程がひとつ増えます。前回の出来上がりが、次回の入力になることです。先週の週報を型として渡す形は、手なら「先週のやつを貼る」だけですが、毎週の仕掛けにすると先週の出力が自動で今週の入力に回ります。
そこで、架空の走り書きメモを3週ぶん(9行・8行・8行)用意し、前の週の出来上がりを次の週に渡す形で連鎖させました。各週を2回ずつ走らせています。判定はすべて Python で、証拠は docs/evidence/weekly-report-loop-without-drift.md に全部残してあります。
まず、意外だったほうから。メモに書いた事実は、ほとんど落ちませんでした。語で照合して 8/9・8/9 / 8/8・7/8 / 8/8・8/8 です(週ごとに1回目・2回目)。落ちたのは第2週の「情シス」と、第3週2回目の「音沙汰」だけでした。手動版では9件中2件しか残らなかったので、そこは再現しませんでした。
かわりに、これが起きました。
| 第2週 | 第3週 | 第4週 | |
|---|---|---|---|
| メモの行数 | 9行 | 8行 | 8行 |
| 報告書の箇条書き(1〜4の合計) | 16件 / 16件 | 18件 / 19件 | 23件 / 21件 |
| うち「4. 相談したいこと」 | 3件 / 3件 | 3件 / 3件 | 5件 / 4件 |
メモの行数は減っているのに、報告書だけが毎週太ります。第1週(人が書いたもの)の「相談したいこと」は1件でした。それが3件、3件、5件になります。メモに「相談したい」と書いた行は、3週を通して1行もありません。
増えたぶんが何かを機械で探すために、3週ぶんのメモにも第1週の週報にも1度も出てこない語を4つ決めて、返りの中を探しました。
「窓口」という語は、第2週の1回目で生まれ、第3週の2回とも、第4週にも出ています。元のメモは「情シスの担当が誰か確定してない」だけです。「窓口が定まっていません」とはどこにも書いていません。
そして重要なのはここです。第2週の2回目では、4語とも0件でした。つまり生まれるかどうかは回によります。生まれた回を次の週に渡すかどうかは、こちらが決めています。渡した週は、次の週も、その次の週も、その文を持っています。
この記事は、連鎖を切る指示文と、混ざってしまったものを見つける指示文をまとめたものです。
前提
| かかる時間 | 30分(指示文を決めて、2週ぶん試すまで) |
| 費用 | 無料 |
| 必要なもの | 走り書きのメモを1か所に書き溜めていること |
| プログラミング | 不要。決めるのは指示文と、渡すものです |
決まった時刻に走らせる仕掛けは毎日決まった時刻にAIを動かすにあります。この記事はそこには立ち入らず、そこに何を渡すかだけを扱います。今回の実測でいちばん効いたのが、指示文の中身ではなく渡すものを1つ減らしたことだったからです。
メモの書き方はふだんのままで構いません。今回使ったのは「・A社 返事なし 先方の担当が出張らしい」のような、そのままでは人に見せない粗さの行です。整えてから渡す必要はありません。整えるのは、この先の工程です。
AIへの頼み方
1. 先週の出来上がりを、今週の型にして回してみる
外れから出します。手でやるときの形を、そのまま毎週に載せたものです。
このあとに「先週の週報」と「今週のメモ」を貼ります。返ってくる週報は、読んで文句のつけようがありません。事実は落ちていませんし、「進んでいないこと」も正しく進んでいないままです。
問題は、3週つづけたときの形です。第4週の「相談したいこと」は、こうなりました。
| 週報に出た相談事項 | メモにある行 |
|---|---|
| 来月の予算が締切に間に合っていません。提出時期と、遅れの連絡先についてご相談させてください | 「来月の予算 締切が今週だったが出せていない」 |
| B社の与信の件について、経理への確認の進め方と、その後の値引き対応の方針をご相談させてください | 「B社 値引きの保留 理由は与信だと分かった 経理に確認が要る」 |
| 研修講師の候補、または依頼先の当てがあればご教示いただけないでしょうか | 「研修 会場は押さえた 3回で確定 講師が未定」 |
| 情報システム部からの返事が来ない場合の、入替日程の決め方についてご相談させてください | 「入替の日程 11月18日の週で再提出 情シスの返事待ち」 |
| 先月より残業が増えています。業務量の配分についてご相談させてください | 「自分の残業 先月より増えている」 |
太字は、メモのどこにも書いていない部分です。最後の行がいちばん重いところです。「自分の残業 先月より増えている」という自分用のメモが、上司への相談事項として報告書に載りました。2回とも載りました。出すかどうかは、書いた本人が決めることです。
もうひとつ。メモが0行の週も試しました。自動で回すなら必ず来る週です。
結果は、メモが0行の週は2回とも、週報を作らずに断りました。「今週の週報は作成できません」「書けば全て推測になります」と、理由まで書いてあります。判断としては正しいです。ただ、返ってきたのは600字ほどの散文で、週報の形をしていません。フォルダに置くだけの形なら、週報.md の中身がこの断り文になります。
2. 前回の出来上がりを、次回に渡さない
連鎖を切ります。渡すのは中身を消した見出しだけです。実測で使ったのは、この4つです。 指示文のあとに、この4行をそのまま貼ります(「5. 使わなかったメモの行」は、指示文のほうでAIに作らせます)。
## 1. 今週やったこと
## 2. 進んでいないこと
## 3. 来週やること
## 4. 相談したいこと
6回(3週×2回)走らせて、4語とも0件でした。メモの事実は 9/9・9/9 / 8/8・8/8 / 8/8・8/8 で落ちていません。箇条書きの合計は9行に対し9件と10件、8行に対し7件と8件、8行に対し12件と11件で、メモの行数の近くに留まります。「相談したいこと」は2件→1件→0件で、増えません。
2回転のブレも見ました。違ったのは「どの見出しに入れるか」だけです。棚卸しの行が「4. 相談したいこと」に入る回と「2. 進んでいないこと」に入る回、B社の行が「2」か「3」か。入る見出しは割れても、行の文字列そのものは同じなので、突き合わせれば毎週1〜2行に絞れます。
そして「5. 使わなかったメモの行」に、第3週は「木曜 体調不良で半日休んだ」、第4週は「自分の残業 先月より増えている」が出ました。自分が見る場所が、毎週ちゃんと残ります。
3. 上司に出すかどうかは、自分が決める行にする
上の指示文の「使わなかったメモの行」を、名前ごと変えたものです。
2回とも「自分の残業 先月より増えている」が「5. 私が決める行」に入り、1〜4の中に「残業」の語は1度も入りませんでした。同じメモで、指示文1は2回とも報告書の中に入れています。
効いているのは禁止だけではありません。「出すかどうかは私が決めます」と、行き先の「5. 私が決める行」の対です。⚠️ 禁止だけを渡した形は、今回は試していません(比べたのは指示文1と指示文3です)。ここで言えるのは、行き先を作った側では、その行が残ったということまでです。
メモが0行の週も試しました。2回とも1〜5の見出しがそのまま出て、中身は全部「なし」でした。指示文1の断り文と違い、形が壊れません。
4. メモから作れない文を、別の会話に挙げさせる
すでに何週か回してしまった場合の検査です。これは、週報を作ったのとは別の会話に渡してください。作った会話に「メモに無いことを書いた?」と聞くと、自己申告になります。
第4週の週報で試したところ、11件を挙げました。こちらが機械で用意していた語(窓口・未回答・業務量の配分)は3件とも入っています。
残りの8件は、こちらの語の一覧に無かったものです。「遅れの連絡先」「確認の進め方」「候補、または依頼先」「返事が来ない場合の」——どれもメモに無い文です。こちらの一覧は4語しか用意していないので、一覧の外は数えられていませんでした。
だからといって、AIの検査を機械照合の代わりにはしないでください。ここで分かったのは「AIのほうが賢い」ではなく、「こちらの物差しが4語ぶんしか無かった」ということです。両方あって初めて、片方の穴が見えます。
5. 何週つづけて出ているかを、数えさせる
膨らみは1週では分かりません。溜まってから初めて形になります。
4週ぶんを渡したところ、8項目が「2週以上つづけて出ている」として並びました。そのうちの1つが、「情報システム部の担当者が未確定で窓口が定まっていない」=初出は第2週、最後は第3週です。
メモに1度も無い項目が、初出の週つきで一覧に出てきます。居座っていることは、並べれば見えます。
⚠️ この指示文が答えるのは「何週つづいたか」だけです。メモに無いかどうかは判定していません(それは指示文4の仕事です)。混ぜないでください。
6. メモが0行の週に、何を出すかを先に決めておく
自動で回すなら、メモを書き忘れた週は必ず来ます。指示文2に2行足したものです。
メモを空にして2回走らせたところ、2つの返りは1文字も違いませんでした。見出しが4つ出て、中身は全部「なし」、最後に「今週のメモは0行でした」の1行。
この1行があると、「何も無かった週」と「そもそも走らなかった週」が見分けられます。走らなければ、この1行を含むファイル自体が出来ないからです。
⚠️ 仕掛けそのものが止まっていないかを見張るのは別の話で、自動化が静かに壊れたのを、AIに見つけさせるにまとめてあります。
うまくいかないときの言い直し方
何週か回してから、この記事を読んだ
すでに混ざったものは、そのままでは分かりません。手順は2つです。
まず指示文4を、直近の1週ぶんに当ててください。メモと週報を並べて「メモのどの行からも作れない文」を挙げさせます。次に指示文5を、溜まっている週報全部に当てて、居座っている項目を出させます。その2つに両方出てくる項目が、いちばん古くから混ざっているものです。
そのうえで、来週から指示文2の形に切り替えてください。過去のぶんを直す必要はありません。連鎖を切れば、来週の週報には入ってきません。
「相談したいこと」が毎週空になった
指示文2の形にすると、実測では2件→1件→0件になりました。これはメモに相談事項を書いていないからで、報告書の側の問題ではありません。
やることは、報告書の指示文をいじることではなく、メモに1行足すことです。「・相談したい:B社の値引きをどこまで受けるか」と書けば、その行がそのまま入ります。⚠️ 材料が無い欄を埋めさせるのは、指示文1で起きたことの入り口です。
週報が、メモの言葉のままで読みにくい
指示文2の返りは「・A社 引き継ぎ先を確認中」のように、メモの言葉がそのまま並びます。読める形に整えたいなら、整えるのは自分が中身を確かめたあとにしてください。
順番が逆だと、整った文が先に出来て、それを読んで確かめることになります。それは指示文1で起きたことそのものです。先に「何が入っているか」、あとから「どう読ませるか」。
毎週おなじことばかり書いてある気がする
指示文5で数えてみてください。実測では8項目が2週以上つづいていました。ただしつづくこと自体は悪くありません——2週かかる仕事は2週出ます。
見るのは、メモの側で何週も同じ行が出ているかです。同じ行が3週つづいたなら、それは報告書の問題ではなく、その仕事が止まっているという情報です。
応用・次の一手
手で1回やってから、置く。この記事は「手でうまくいった形をそのまま毎週に載せると、連鎖のぶんだけ別のことが起きる」という話でした。まず手動版で1週ぶん作って、返ってきたものを読んでから、この記事の指示文2の形に固定してください。
症状は入れ替わります。手動版の実測ではメモの事実が9件中2件しか残りませんでした。今回の連鎖ではほとんど落ちず、かわりに膨らみました。⚠️ 「型を渡すと消える」とだけ覚えておくと、増えるほうを見逃します。どちらも「メモと突き合わせる」でしか分かりません。
同じ晩に書いた、別の自動化の記事があります。文字起こしを置くだけで、整形と検査を毎回同じ形で走らせるでは、形はそろうのに中身の方針が回ごとに割れることを実測しました。あちらは1回ごとに独立した処理、この記事は前回が次回に効いてくる処理です。⚠️ ループを作るときは、前回の出力が次回に回っていないかを最初に確かめてください。回っているなら、この記事の話になります。
メモを書くこと自体が続かない場合。報告書の自動化より先に、メモが溜まる場所を1つに決めるほうが効きます。1行足すだけの形は調べたいことを1行足すだけにして、あとは待つと同じ考え方です。書くのは走り書きのままでよく、整えるのはこちらの工程です。