これで何ができるか

週報、月報、日報。形が毎回同じ書類は、前回のぶんを渡して「この形で今週ぶんを」と頼めば速く書けます。走り書きのメモから、そのまま提出できる形になります。

実際にやってみると、たしかに体裁の整った週報が返ってきます。問題は中身のほうです。

架空の週報(先週ぶん)と、今週の走り書きメモを渡して測りました。メモには報告すべき事実が9件入れてあります。

週報を作らせたときに、今週のメモにあった事実がいくつ残ったかを比べた図。走り書きのメモにあった報告すべき事実9件のうち、「先週のこの形式で書いて」と頼んだ場合は2件しか残らなかった。型だけ使わせてメモとの対応表を出させると9件すべてが残った。消えた7件は、返事がまだ来ていない、止まっている理由が担当の出張であること、△△工業は今週動きなし、研修が延期になった、延期は先方都合、事務作業で2日つぶれた、値引きの可否を相談したい、の7つ。どれも進んでいないことを伝える情報で、報告書としてはいちばん伝えなければいけないところ。
9件のうち残ったのは2件。消えた7件を見てください。

消えた7件は、どれも「進んでいない」ことを伝える情報でした。返事が来ていない、動きがない、延期になった、相談したいことがある——報告書としては、いちばん伝えなければいけないところです。

さらに悪いことに、消えた場所は空欄になりません。先週の言葉で埋まります。

週報で、型の言葉が今週の事実を上書きした対応を並べた図。メモに「返事なし・担当が出張」とあったものが週報では「検討が進んでいます」に、「今週は動きなし」が「順調に進行中」に、「研修が延期・日程未定」が「日程を調整中」に、「値引きの可否を相談したい」が「特になし」になった。さらにメモに進捗の数字が無いのに「進捗85%」と書かれた。右の文はどれも週報として自然に読めるので、メモと並べるまで書き換わっていることが分からない。
「値引きの可否を相談したい」が「特になし」になっています。先週の相談事項がそのまま残った形です。

メモに進捗の数字は1つも無いのに「進捗85%」と書かれました。先週が70%だったので、そこから動かしたものです。この数字は、どこにも根拠がありません。

前提

プログラミングは要りません。必要なのは2つだけです。

  • 前回の報告書(コピーして貼れる状態)
  • 今週の走り書きメモ(箇条書き。整える必要なし)

⚠️ 社外秘の数字や取引先名が入る書類は、そのAIに貼ってよいかを先に確かめてください。線引きはAIに触らせる範囲を先に決めておくにまとめてあります。

AIへの頼み方

1. 前回のぶんは「型」として渡す。中身は消す

いちばん効く一手です。前回の報告書をそのまま渡すと、中身まで参考にされます。

前回の報告書を渡します。これは「見出しの構成」だけを真似るために渡しています。 本文の言い回しや数字は、1文字も流用しないでください。 今週の内容は、このあと渡すメモだけから書いてください。

「1文字も流用しないで」まで言う必要があります。「参考にして」だと、前回の文がそのまま出てきます。

もっと確実なのは、前回から中身を消して渡すことです。

■ 今週の活動 ■ 数字 ■ 来週の予定 ■ 相談事項 この見出しだけの形に、下のメモを割り振ってください。

見出しだけ渡せば、流用のしようがありません。毎週使うなら、この「空の型」を1回作っておくと以降ずっと使えます。

2. メモの各行が、どこに入ったかを書かせる

これが検算になります。

最後に「メモのどの行を、報告書のどこに入れたか」の対応表を付けてください。 メモの行番号と、入れた場所を書いてください。 使わなかった行があれば、それも挙げてください。

対応表を出させると、落ちた行がその場で分かります。実測では、この一手で9件中2件だったものが9件全部残りました。

⚠️ 「使わなかった行も挙げて」を必ず付けてください。付けないと、使った行の一覧だけが返ってきて、落ちた行は見えないままです。

3. 材料が無い欄は、埋めさせない

メモに書いていない欄をAIは埋めます。それらしい言葉で。

メモに材料が無い項目は、埋めないでください。 「メモに記載なし」と書いてください。 自分で推測して補わないでください。

実測では、これで「来週の予定:メモに来週の予定の記載がありません。ご自身で追記してください」と返るようになりました。空欄のほうが、埋まっているより役に立ちます——自分が書き足すべき場所が分かるからです。

この考え方は議事録で埋められない項目を勝手に埋めさせないと同じです。

4. 数字は、メモにあるものだけ

数字は、メモに書いてあるものだけを使ってください。 メモに無い数字(進捗率・達成率など)は書かないでください。 前回の報告書の数字を、今週ぶんに使い回さないでください。

進捗70%が85%になったのは、前回の数字を持ってきて「たぶん進んだだろう」と動かしたためです。⚠️ 前回の数字は、今週の根拠になりません

数字の扱い全般は出典にない数字を見つけるにまとめてあります。

5. 「進んでいないこと」を名指しで拾わせる

報告書は、放っておくと進んだことばかりの文章になります。

今週のメモから、次の3つを必ず拾って書いてください。 ・進まなかったこと、止まっていること ・その理由(分かっていれば) ・こちらから動く必要があること

⚠️ 「悪いことも書いて」では効きません。何が「悪いこと」かの判断がAIに委ねられるためです。種類を名指しで並べると拾われます。

6. 相談事項は、別に確認する

実測でいちばん怖かったのがここです。メモには「□□製作所の見積、標準価格から下げてよいか課長に確認したい」と書いてあったのに、報告書は先週のまま「特になし」でした。

メモの中で「〜したい」「〜してよいか」「〜を確認」と書いてある行を全部挙げてください。 それが相談事項です。1つも無ければ「なし」と答えてください。

「特になし」は、先週からいちばんコピーされやすい言葉です。相談事項だけは、報告書を作らせる前に別で抜き出させてください。

7. 断定の言葉を禁止する

「順調」「引き続き」「検討が進んでいます」のような、 状況を評価する言葉は使わないでください。 メモに書いてある事実だけを、そのまま書いてください。

「順調」と書かれた案件は、メモでは「今週は動きなし」でした。評価の言葉は、事実が無いところを埋めるのに使われます

うまくいかないときの言い直し方

提出したら「先週と同じこと書いてない?」と言われた

前回の流用が残っています。次からは前回を渡さず、空の型だけを使ってください(§1の後半)。今回ぶんを直すなら:

この報告書と前回の報告書を並べて、同じ表現が使われている箇所を全部挙げてください。 それぞれ、今週のメモに根拠があるかどうかも書いてください。

メモが短い週は、報告書もスカスカになる

それが正しい状態です。動きが少ない週は、報告することも少ない。無理に埋めさせると、埋め草が入ります(行数を決めると埋め草が出る)。

今週は動きが少ない週です。短くて構いません。 埋めるために言葉を足さないでください。

上司から「で、どうするの」と聞かれる

事実だけを並べると、次の行動が書かれません。メモに無いなら、書けないのが正しいので、自分で足します。

この報告書を読んだ上司が出しそうな質問を5つ挙げてください。 そのうち、いまの報告書では答えられないものに印を付けてください。

印が付いたものが、自分で考えて足すところです。

毎週同じ指示を打つのが面倒

ここまでの条件を、次回そのまま貼れる1つの指示文にまとめてください。 空の型(見出しだけ)も一緒に含めてください。

⚠️ この指示文は保存して、毎週それを貼るだけにしてください。毎回考え直すと、条件が1つずつ抜けます。

数字が合っているか不安

この報告書に出てくる数字を全部並べて、 それぞれメモの何行目から来たかを書いてください。 メモに無い数字があれば、そう書いてください。

応用・次の一手

月報は、週報を材料にできます。

4週分の週報を渡します。月報にまとめてください。 4週を通して「進まなかったこと」を先に挙げてください。 週報に書いていないことは足さないでください。

⚠️ 週報の時点で事実が落ちていると、月報ではその欠落が固定されます。週報の段階で対応表を確認しておくのが、結局いちばん速い道です。

同じ形の書類が他にもあるなら、まとめて頼めます。日報・週報・月報のように対象が複数ある場合の頼み方は繰り返しを1回でまとめて頼むにあります。

📌 この記事の要点を1つだけ挙げるなら、相談事項の件です。「特になし」は前回から最もコピーされやすい言葉で、しかも報告書の中でいちばん行動につながる欄です。ここが先週のままでも、報告書としては何もおかしく見えません。型を使うということは、前回の答えを引き継ぐ危険と引き換えです。