これで何ができるか
副業の作業では、AIと1往復で終わることはあまりありません。一覧を作らせて、並べ替えて、件数を足して、見出しを付けて、表にする——だんだん形が変わっていきます。
こわいのは、最初に渡した縛りが、そのあいだに消えていないかです。「全部の行を1行ずつ」「数字はメモのまま」と最初に言ったきり、そのあとは触れていません。
架空の材料2本(ハンドメイドの在庫メモ12行と、動画編集の案件記録11行)で、機械で判定できる縛りを5つ渡し、そのあと縛りに一切触れない追加依頼だけを4往復送りました。6本の会話・30回の返りです。
縛りは、ほとんど戻りませんでした。1往復目と5往復目を照合すると、5つのうち4つは6本とも守られたままです。
かわりに、頼んでもいない「在庫の合計」が1往復目から間違っていました。記録した4回とも「54点」です。メモの行を足すと56点でした。
前提
| かかる時間 | 25分(材料を用意する時間は別) |
| 費用 | 無料。無料のチャットAIで足ります |
| 必要なもの | 一覧のもとになる自分のメモ(何行でもかまいません) |
| プログラミング | 不要。この記事の指示文をコピーして貼るだけです |
この記事は自分の記録から一覧を作る話です。発注元にそのまま出す成果物を作る話ではありません。発注元がAIの利用について定めている場合は、その規定に従ってください。
AIへの頼み方
1. 縛りは「機械で判定できる形」で5つだけ渡す
最初の1往復目で渡すのは、あとから自分で数え直せるものだけにします。
この下に、在庫メモ12行を貼りました。3行には「※金具の材質は確かめていない」のような但し書きを入れてあります。
同じことを、別の材料でもやりました。
渡した5つの縛りは、どれも自分で数え直せます。「読みやすく」「きれいに」だと数えられません。
2. そのあとは、縛りに触れない依頼だけを送る
2往復目からは、縛りのことを一言も書きません。実際に送ったのはこれだけです。
📌 動画編集のほうには、同じ位置で「報酬の高い順に」「発注元ごとにまとめて」「表を使わずに箇条書きの形に」を送りました(あちらは1往復目から表で返ってきたためです)。
結果は、拍子抜けするほど何も起きませんでした。5往復目の返りを機械で照合すると、こうです。
| 縛り | 1往復目 | 5往復目 |
|---|---|---|
| ① 全部の行を1行ずつ | 6/6 | 6/6 |
| ② 数字はメモのまま | 6/6 | 5/6 |
| ③ メモに無い品質を書かない | 6/6 | 6/6 |
| ④ 言い回しを整えない | 6/6 | 6/6 |
| ⑤ 〔要確認〕を残す | 6/6 | 6/6 |
12行も11行も、5往復たっても1行も消えていません。「ほか◯点」のようなまとめ方も一度も出ませんでした。先に決めておいた「盛り語」20語(人気・上質・こだわり など)は、30回の返りで0件です。
3. 破れたのは1件だけ。しかも自己申告のほうが間違っていた
5往復目に、1件だけ数字が変わりました。在庫1の品目が3になっています。
返り自身がその場で気づきました。
⚠️ 表にしたことで1か所だけ数字が違っていました。No.1「帆布のトートバッグ 大」の在庫は、メモでは 1 です。直前の一覧で私が誤って 3 と書いていました(上の表も 3 のままです)。
ところが、AIの自己申告の中身が事実と違います。直前(4往復目)の一覧を見ると 帆布のトートバッグ 大 縦38cm 原価2,400円 在庫1 で、正しく書けていました。間違えたのは、この5往復目そのものです。
同じ返りが続けて「正しくは1で、その場合の在庫合計は52点になります」と書いていますが、これも違います(本当は56点です)。
🔑 自己申告は「どこを見ればいいか」の手がかりにはなります。中身は別に確かめてください。似たことはAIが直した箇所の申告でも起きていて、あちらは申告7件に対し実際の差分が13件でした。
4. 崩れていたのは、頼んでいない合計のほう
1往復目の返りの最後に、こう書いてありました。
全12行、合計在庫54点。
合計は頼んでいません。そして間違っています。メモの在庫欄を上から足すと 3+2+1+4+6+5+2+9+7+3+2+12 = 56 です。
記録した4回とも54点でした。1往復目から間違っていて、5往復ずっと直りません。
🚨 いちばん効かなかったのが、対照として用意した毎回縛りを貼り直すやり方です。
これを毎往復の末尾に貼った会話でも、合計は同じ54点でした。縛りのほうはもともと守られているので、貼り直しても変わりません。貼り直しは、縛っていないところには届きません。
📌 公平のために書いておくと、もう1本の材料では合計が合っています。動画編集の案件記録では、報酬の合計104,000円も、発注元ごとの小計6件も、すべて真値どおりでした。「AIは足し算ができない」ではありません。合う題材と合わない題材があります。
5. 最後に、最初のメモと突き合わせさせる
ここが、この記事でいちばん使える指示文です。
4本の会話で試して、4本とも当たりました。誤検出は0件です。
- 在庫の合計の誤り(54→56)を、材料Aの3本とも自分で見つけた
- 数字が書き換わっていた1本は、その1件も見つけた
- 材料Bの本は「誤りなし」と判定した(実際に誤りはありません)
🚨 これまでお伝えしていた合計はすべて誤りでした。1〜4回目の「54点」も、直前に申し上げた訂正案「52点」も、メモから数え直した値と合いません。正しい合計は 56点 です。
🔑 効いているのは「数の合計は、メモの行から数え直してください」の一文です。これを入れた回だけ、自分の足し算を検算しました。
⚠️ 「一覧は書き直さないでください」も必ず付けてください。付けないと、指摘の代わりに直った一覧が返ってきて、何が違っていたかが消えます(これは要約から落ちたものを検査させる記事で実測したもので、この記事では外した版を試していません)。
うまくいかないときの言い直し方
突き合わせても「問題ありません」しか返ってこない
数え直す対象を、こちらが名指ししていない可能性があります。上の指示文が名指ししているのは「メモと違うところ」「消えたもの」「数の合計」の3つだけです。
合計以外の計算をさせているなら、その名前を足してください。「1件あたりの平均も、メモの行から出し直してください」のように、数え直す対象ごとに1つずつ書きます。
往復が10回を超えて、最初のメモが画面から消えた
その状態で突き合わせを頼むと、AI側も最初のメモを追いにくくなります。⚠️ 面倒でも、突き合わせのときにメモをもう一度貼ってください。
保存した指示文が材料を「上のメモ」と呼んでいる場合は、貼り忘れても止まる形にしておくと、貼り忘れた回に気づけます。
縛りが本当に守られていたのか、自分で確かめたい
いちばん確実なのは、AIに聞かないことです。一覧をコピーして、元のメモの行をひとつずつ検索してください。行数と、数字と、〔要確認〕の件数——この3つだけなら数分で終わります。
📌 上の実測でも、判定はすべて機械の文字列照合でやりました。読んで判断していません。返ってきた一覧はどの回もきれいで、54点が間違っていることは読んでも分かりません。
応用・次の一手
毎週やっているなら、決まった時刻に動かす形へ
同じ一覧を毎週作っているなら、決まった時刻に自動で動かす形に移せます。そのとき⚠️ 合計の行を自動で保存しないでください。この実測のとおり、合計は1往復目から間違ったまま毎週出続けます。
自動化する前には、材料を変えて2本・各2回で確かめてください。この記事でも、合計が合った材料と合わなかった材料が1本ずつでした。1本だけで確かめていたら、どちらの結論も間違えていたことになります。
数え直せる形で出させると、そもそも足し算をさせずに済む
合計が要るなら、集計はさせずに行番号だけ割り当てさせるほうが安全です。あちらの実測では、案件ごとの時給は1円まで真値と一致した一方で、何を含めるかの線引きで全体が1.8倍動きました。
合っているかどうかより、あとから自分で数え直せるかどうかで選んでください。
この記事の外に置いたもの
成果物の中身が良いかどうかは書いていません。一覧を発注元に出す前の検品は発注書と突き合わせる記事、盛られていないかの検査は事実だけで出品文を書く記事にあります。
縛りが1回の返りで守られたかも、この記事の外です。そこは既存の記事がそれぞれ扱っています。この記事の縦軸は往復の回数だけで、測ったのは「時間がたっても残っているか」です。
⚠️ 最後に一つ。この実測で「縛りは戻らなかった」のは、この材料とこの5往復での話です。「もう確かめなくてよい」という意味ではありません。確かめる手間は、上の突き合わせ1回ぶんです。