これで何ができるか

溜まったメールから「自分が動くもの」だけ抜き出させる頼み方で、受信箱を3つに仕分ける形を作りました。手で1回やってうまくいったので、毎朝これを走らせたい——ここまでは自然な流れです。

ところが自動にすると、手のときには無かった問題が出ます。受信箱は毎朝ぜんぶ入れ替わるわけではありません。返信していないメールは、明日も明後日も同じ顔で一覧に出てきます

架空の受信箱を3日ぶん作って、同じ指示文を各日2回ずつ、合計6回走らせました。

架空の受信箱3日ぶんを毎朝仕分けさせて、返ってきた一覧のうち昨日も同じ欄にいた件数と、今日はじめて入った件数を並べた積み上げ横棒グラフ。2日目のA欄は4件のうち3件が昨日と同じで、新しいのは1件。2日目のB欄は5件のうち2件が昨日と同じで、新しいのは3件。3日目のA欄は5件のうち3件が昨日と同じで、新しいのは2件。3日目のB欄は5件のうち2件が昨日と同じで、新しいのは3件。同じ指示文を各日2回ずつ走らせたが、この数字は2回とも同じだった。仕分けそのものは崩れておらず、未処理のまま残した5通は3日かける2回の6回とも同じ欄に入り、件名も6回とも一字一句そのままだった。問題は仕分けの精度ではなく、返ってきた一覧のどこにもこれは昨日もあったと書かれていないことである。
仕分けの中身は6回とも同じでした。それでも、毎朝の一覧の半分以上は昨日も見たものです。

仕分けそのものは、まったく崩れませんでした。未処理のまま残した5通は6回とも同じ欄に入り、件名も6回とも受信箱の文字列と一字一句一致し、取りこぼしは0件でした。この記事は「AIの仕分けは当てにならない」という話ではありません。

崩れたのは読むほうです。2日目のA欄は4件のうち3件、3日目のA欄は5件のうち3件が、昨日も同じ欄にいたものでした。そして返ってきた一覧のどこにも、そうは書いてありません。毎朝ひらくと、5行だか6行だかの同じような一覧が出てくる。どれが今朝はじめて来たものなのかは、自分で覚えているしかない。

この記事は、その区別を付けるところまでの頼み方を載せます。⚠️ 区別をAIに付けさせようとすると失敗します。そこがこの記事の中心です。

前提

かかる時間 40分(うち30分は最初の1回だけ)
費用 無料。無料のチャットAIで足ります
必要なもの ブラウザで使えるAI(ChatGPT・Claude・Geminiなど)と、テキストファイルを置ける場所
プログラミング 不要。ただし「昨日の一覧を保存しておく」だけは自分でやります

メールソフトとAIをつなぐ必要はありません。この記事が実測したのは指示文だけです。決まった時刻に走らせる仕掛けそのものは毎日決まった時刻にAIを動かす仕掛けを作らせるに、動いたかどうかの見張りはサイトの異常を毎日AIに見張らせるに書いてあります。

⚠️ 受信箱の本文を毎朝どこかへ渡す形になります。何を渡してよいかは先に決めてくださいAIに触らせる範囲を先に決める)。手でやるときは1回きりの判断でしたが、自動にすると毎朝ずっと渡し続けることになります。

AIへの頼み方

1. まず、いまの3分類のまま毎朝走らせてみる

手でうまくいった形を、そのまま毎朝の形にします。前置きを禁じて、出す順番を決めるだけです。

毎朝の受信箱の仕分けです。下の未読を、次の3つに分けてください。 A: 返信しないと相手が止まるもの B: 返信は要らないが、自分の作業があるもの C: 読むだけでよいもの A・B・Cの順に、件名だけを箇条書きにしてください。前置き・感想・提案は書かないでください。

この下に、その朝の未読を「件名」と「本文」で貼ります。

3日×2回=6回とも、仕分けは同じでした。未処理のまま残した5通は6回とも同じ欄。件名の丸め(短くする・記号を落とす)は6回とも0件。一覧に出てこなかったメールも0件です。

🚨 それでも、同じ入力・同じ指示文の2回で1件だけ割れました。1日目の「サーバ定期メンテナンスのお知らせ(9/13 深夜)」が、1回目はB・2回目はCです。本文には「作業中のデータは事前に保存してください」と「返信は不要です」の両方が書いてあります。1回しか走らせていなければ、割れる余地があること自体に気づけません

🚨 もうひとつ、3日目の2回で見出しの形が変わりました。1回目は A:、2回目は A(コロンなし)です。中身は同じです。読む人には何の違いもありませんが、一覧を機械で読ませているなら、この日だけ空になります。

2. 「前から残っている」かどうかは、AIに聞いても出てこない

いちばん自然な次の一手は、AIに分けさせることです。やってみました。

毎朝の受信箱の仕分けです。下の未読を、A(返信しないと相手が止まる)・ B(返信は要らないが自分の作業がある)・C(読むだけでよい)の3つに分けてください。 分けたうえで、A・Bに入ったものだけ、次の2つの欄に置き直してください。 【今日はじめて来たもの】 【前から残っているもの】 どちらか分からないものは【どちらか分からない】に置いてください。推測で振り分けないで ください。件名は一字一句そのままコピーしてください。前置き・感想・提案は書かないでください。
毎朝の仕分けのあとに、今日はじめて来たものと前から残っているものへAIに振り分けさせた結果の積み上げ横棒グラフ。2日目は1回目も2回目も、当たり3件、はずれ1件、どちらか分からないに置いたものが5件。3日目の1回目は10件すべてを振り分けて当たり6件、はずれ4件、分からない0件。3日目の2回目は当たり4件、はずれ2件、分からない4件で、同じ指示文なのに1回目とまったく違う。4回で振り分けた24件のうち、はずれは8件だった。AIが見ているのは今日の受信箱だけなので、昨日あったかどうかは原理的に分からない。はずれ方には癖があり、件名にRe:が付いているものや、差出人が前日にも出ていたものを前から残っているに入れる。
2日目と3日目を各2回。振り分けた24件のうち、8件が逆でした。

当たり前のことですが、AIが見ているのは今日の受信箱だけです。昨日そこに何があったかは、渡していないので分かりません。それでも振り分けが返ってきます。

  • 4回で振り分けた24件のうち、はずれは8件(3件に1件)
  • 🚨 「推測で振り分けないでください」と書いてあります。それでも3日目の1回目は「分からない」を0件にして、10件すべてを振り分けました
  • 🚨 同じ指示文の2回で、やり方そのものが変わりました。3日目の1回目は「今日はじめて」5件・「分からない」0件。2回目は「今日はじめて」0件・「分からない」4件です

はずれ方には癖があります。件名に Re: が付いた「Re: 来期の予算ヒアリング日程(部門別)」と、差出人が前日にも出ていた「山下商事 川辺です(別件でご相談)」を、どちらの回も「前から残っている」に入れました。どちらもその朝はじめて来たメールです。件名と差出人の見た目で決めています

📌 さらに、3日目の1回目は仕分けの一覧を件名ではなく番号3, 5, 7, 11, 12)で返しました。同じ指示文に「件名は一字一句そのままコピーしてください」と書いてあります。自動で保存していたら、その日のファイルだけ件名の無い一覧になります。

この指示文は落としました。代わりに、比べるための材料をこちら側に持ちます。

3. 件名を突き合わせられる形にして、通数の1行を付ける

昨日と今日を比べるなら、比べられる形で出させておく必要があります。

毎朝の受信箱の仕分けです。下の未読を、次の3つに分けてください。 A: 返信しないと相手が止まるもの B: 返信は要らないが、自分の作業があるもの C: 読むだけでよいもの 件名は、下に書いてあるものを一字一句そのままコピーしてください。短くしたり、 記号や敬称を省いたり、読みやすく直したりしないでください。 A・B・Cの順に、件名だけを箇条書きにしてください。前置き・感想・提案は書かないでください。 最後に「合計: ◯件(A◯/B◯/C◯)」の1行を付けてください。

2回走らせて、返りが1文字も違いませんでした(352字・352字)。A: の形も合計行もそろい、申告された合計(13件・A5/B5/C3)は一覧を数えた結果と一致しました。

⚠️ ただしこの一文で丸めが止まった、とは書けません。指示文1でも丸めは0件でした。この指示文の値打ちは別のところにあります。「あとで機械が突き合わせる」という前提を、指示文の側に書き残しておくことです。半年後に短くしたくなったとき、なぜこの一文があるのかが読めば分かります。

🚨 短くするときに、この一文を落とさないでください。出力の見た目には効かないので真っ先に削られますが、削ると突き合わせの土台が消えます(下調べを毎朝ひとりでに走らせるで同じことが起きました)。

4. 昨日の一覧を渡して、変わったものだけ言わせる

保存してある昨日の一覧を、今朝の未読と一緒に渡します。

毎朝の受信箱の仕分けです。下の未読を、A(返信しないと相手が止まる)・ B(返信は要らないが自分の作業がある)・C(読むだけでよい)の3つに分けてください。 その下に「昨日の一覧」を付けます。昨日と今日で分類が変わった件名があれば、 「変わったもの: 件名/昨日◯→今日◯」の形で挙げてください。無ければ「変わったもの: なし」 と書いてください。 件名は一字一句そのままコピーしてください。A・B・Cの順に件名だけを箇条書きにし、 前置き・感想・提案は書かないでください。

未読の下に --- 昨日の一覧 --- と書いて、前日に保存した返りをそのまま貼ります。

心配していた副作用は出ませんでした。書き溜めたメモから、毎週の報告書を自動で作らせるでは、前回の出来上がりを次回に渡すとAIが足した文が世代を越えて残りました。今回は昨日の一覧を渡しても、今日の仕分けは13件とも動きませんでした(渡さない版と欄の割り当てが完全一致)。渡しているのが判定の結果だけで、文章ではないためだと思われます。2回とも同じ返りでした。

🚨 ただし、この1行だけでは足りません。返ってきた「変わったもの: なし」は正しい答えです。共通する5件は、昨日と同じ欄にいました。問題は「比べた結果そろっていた朝」と「比べる相手が1件も無かった朝」が、同じ1行になることです。昨日の一覧を貼り忘れても「なし」と出ます。

5. 昨日と今日の一覧は、別の会話に並べて渡す

仕分けをした会話とは別に、突き合わせだけをする会話を1つ用意します。

下に、同じ受信箱を2日つづけて仕分けした一覧を貼ります。昨日のぶんと今日のぶんです。 両方に出てくる件名を挙げて、昨日と今日で分類(A/B/C)が同じか違うかだけを書いてください。 形は「件名/昨日◯→今日◯/同じ(または変わった)」にしてください。 仕分けそのものをやり直さないでください。どちらが正しいかも書かないでください。 片方にしか出てこない件名は、最後に「片方だけ: 件名(昨日のみ/今日のみ)」で挙げてください。

この下に --- 昨日の一覧 ------ 今日の一覧 --- を並べて貼ります。2回走らせて、中身は2回とも同じでした(行の順番だけ1か所違います)。仕分けのやり直しも、良し悪しの判定もしませんでした。

🔑 ここで、こちらの数え上げと食い違いました。

共通 昨日のみ 今日のみ
こちらの機械照合(件名の完全一致) 5件 7件 8件 20件
AIの返り(2回とも) 6件 6件 7件 19件

AIは「来期の予算ヒアリング日程(部門別)」と「Re: 来期の予算ヒアリング日程(部門別)」を同じ1件として扱い、「今日は『Re:』付き」と書き添えました。のべ20件から併合ぶんの1件を引くと19件で、AIの計とちょうど合います。

どちらが正しいという話ではありません。機械は「同じ件名」で、AIは「同じ話題」で数えています。⚠️ 片方しか持っていなければ、この食い違いは起きません。起きないので、自分がどちらで数えているかを知らないまま毎朝の一覧を読むことになります。

6. 何日も残っているメールに、足りない情報だけ挙げさせる

居座りが見えるようになったら、次は「なぜ動いていないか」です。

下に、3日つづけて「返信しないと相手が止まる」の欄に残っているメールの本文を貼ります。 このメールに返信するために足りていない情報を挙げてください。返信文はまだ書かないでください。 足りない情報を、次の2つに分けてください。 【相手に聞けば分かること】 【自分で決めるしかないこと】 本文に書いてあることから答えが出るものは、挙げないでください。 どちらに入るか決められないものは【決められない】に置いてください。

3日つづけてA欄にいた見積の問い合わせで試しました。2回とも返信文は書かれませんでした(「まだ書かないでください」が効いています)。

🔑 そして2回とも、同じ項目が【自分で決めるしかないこと】に入りました。「そもそもB案の単価がA案より高い理由は何か」——これがこのメールが3日動かなかった理由そのものです。相手に返信を書けば済む話ではなく、社内で確かめるまで動きません。「返信が要る」の欄に置いてあるかぎり、そうは見えません。

⚠️ 件数の内訳は2回で割れました(9/6/2 と 8/7/2。合計はどちらも17件)。内訳の数字を毎朝の指標にはできません。

うまくいかないときの言い直し方

未読0件の朝と、1通も取れなかった朝が見分けられない

自動化でいちばん怖い形です。何も届かないのは、うまくいったときも壊れたときも同じ見え方をします。受け皿を先に書いておきます。

毎朝の受信箱の仕分けです。下の未読を、A(返信しないと相手が止まる)・ B(返信は要らないが自分の作業がある)・C(読むだけでよい)の3つに分けてください。 未読が0件のときも、A・B・Cの見出しはそのまま出して、中身は「なし」と書いてください。 先頭に「今朝の未読は◯件でした」の1行を付けてください。仕分けができないという説明文や お詫びは書かないでください。 件名は一字一句そのままコピーしてください。前置き・感想・提案は書かないでください。

未読を1通も貼らずに2回走らせて、2回とも1文字も違わない83字が返りました。断り文も詫び文も0件です。「今朝の未読は0件でした」という行が残るので、そもそも走らなかった朝とは見分けが付きます。

一覧を保存したら、その日だけ件名が無かった

実測で起きました。仕分けの結果を番号(3, 5, 7, 11, 12)だけで返した回があります。「件名は一字一句そのままコピーしてください」と書いてあってもです。

指示文を足すより、保存する前に数えるほうが確実です。保存した一覧の行数と、その朝に渡した未読の通数が合っているか。指示文3の合計行(合計: 13件(A5/B5/C3))は、このために付けています。

「変わったもの: なし」が毎朝出るので、効いているのか分からない

指示文4の弱点です。「なし」には2つの意味があります——比べた結果そろっていた朝と、比べる相手が無かった朝です。

指示文5(別の会話で突き合わせる)を使うと、「片方だけ」の一覧が必ず出るので、比べる相手があったこと自体が返りの中に残ります。昨日の一覧を貼り忘れれば、13件とも「今日のみ」に並びます。

受信箱の中身を毎朝AIに渡すのが不安

手でやるときは「今日の分だけ」でしたが、自動にすると毎朝ずっと渡し続けます。判断の重さが変わっています。

この記事の指示文は、どれも件名だけを返させる形にしてあります。突き合わせに使うのも件名だけです。本文を渡さずに件名と差出人だけで仕分けさせる形に落としても、指示文3〜5はそのまま動きます(仕分けの精度は落ちます)。渡してよい範囲の決め方はAIに触らせる範囲を先に決めるにまとめてあります。

応用・次の一手

この記事が扱ったのは、入力が前日と重なるループです。同じ自動化でも、形が3つあります。

何が起きるか 記事
1回ごとに独立 形はそろうのに、中身の方針が回ごとに割れる 文字起こしを置くだけで、整形と検査を毎回同じ形で走らせる
前回の出力が次回の入力 AIが1度足した文が、世代を越えて残る 書き溜めたメモから、毎週の報告書を自動で作らせる
前回の入力が今回にも残る 一覧の中身が毎回ほとんど同じ。新しいぶんが埋もれる この記事

⚠️ 作る前に、どれなのかを確かめてください。受信箱・未処理の申請・未解決の問い合わせ・在庫の欠品リストは、どれも3つ目です。材料が毎回ぜんぶ入れ替わるつもりで作ると、毎朝ほとんど同じ一覧を読むことになります。

次の一手としては、指示文6で出た【自分で決めるしかないこと】を、そのまま書き始める前に、足りない情報をAIに挙げさせるへ渡す形が使えます。動いていないメールは、たいてい返信文が書けないのではなく、決めていないことがあるだけです。