これで何ができるか
手でうまくいった頼み方を決まった時刻に動かす仕掛けに載せると、次の週から出来上がりだけが届きます。そこで起きるのが、このサイトが何度も踏んできた壊れ方です——エラーは出ない。行はきれいに並んでいる。欄が1つ、静かに消えている。
この記事は、その手前でやるたった1回の準備を扱います。置く前に同じ指示文を2回走らせ、2回ぶんの出力を並べてAIに見比べさせる。何をコピーして、どこに貼って、何が一致していれば置いてよいのか。ここまでを実測で決めます。
架空の「自動処理の出力2回ぶん」を2組(表形式の伝票チェックと、箇条書きの未処理案件まとめ)作り、毎回そろっていないと困る違いを5件ずつ仕込んで、8個の指示文を全32回通しました。判定はすべて Python の文字列照合です。
分かったことは3つです。
① 見落としませんでした。仕込んだ5件は、素朴に「違うところを教えてください」と頼んだ4回とも、全部挙がりました。「AIは形の崩れに気づかない」という記事ではありません。
② 埋まりました。「違うところだけを1行に1つずつ」と頼んだ4回は、17件・18件・14件・14件が返ります。そのうち仕込みは5件で、残りの9〜13件は日付・件数・一覧の中身といった、毎回変わって当然の差です。毎週これを読み分けるのは続きません。
③ 効いたのは、こちらが先に「変わってよいもの」を宣言することでした。「毎回変わってよいのは、日付・件数・一覧に並ぶ中身の3つだけです」を先に書いた4回は、5件・6件・7件・5件。読む量が3分の1になって、仕込みの5件は4回とも全部残っています。
前提
| かかる時間 | 30分。自動化を置く前に1回だけやります |
| 費用 | 無料。無料のチャットAIで足ります |
| 必要なもの | ブラウザで使えるAI(ChatGPT・Claude・Geminiなど)と、これから自動で回すつもりの指示文 |
| プログラミング | 不要。差分ツールも要りません。使うのは「もう1つの会話」だけです |
⚠️ この記事が実測したのは、見比べさせる側の指示文だけです。決まった時刻に走らせる仕掛けそのものは毎日決まった時刻にAIを動かす仕掛けを作らせるにあります。
⚠️ これは「形がそろっているか」の検査です。中身が正しいかは別で、毎朝のAIは材料が1日古い日も同じ顔で結果を返すが入り口の材料を、やったことを報告させる前に、AIに確かめさせるが1回ぶんの完了報告を見ます。
📌 見比べさせる会話は、走らせた会話とは別に開いてください。同じ会話で聞くと、自分の書いたものを自分で採点する形になります(この型は文字起こしを整えさせる記事でも効きました)。
AIへの頼み方
1. まず、2回ぶんを並べて貼る
やることは3つです。①これから自動で回すつもりの指示文を、同じ材料に2回通す。②2回ぶんの出来上がりをコピーする。③新しい会話を開いて、下の指示文と一緒に貼る。
貼るときは、2つの区切りが分かるようにします。この記事の実測では、指示文の下に 【1つ目】 と書いて1回目の出力を、続けて 【2つ目】 と書いて2回目の出力を貼りました。
これで返ってきたものは、材料2本×各2回の4回とも、仕込んだ5件を全部含んでいました。素朴な頼み方でも見落としません。
なぜこの言い方から始めるか=この記事のいちばん大事な前提が「AIは形の崩れを見落とすわけではない」だからです。ここを飛ばして最初から凝った指示文を渡すと、効いているのが指示文なのか、もともと出るものなのかが分からなくなります。1回だけ素朴に頼んで、出ることを見てから絞ってください。
⚠️ ただし、この形の返りは散文です。「まず注意したいこと」「中身の違い」「まとめ」と節が立ち、直したほうがよい理由まで書かれます。1回読むぶんには親切ですが、毎週これを読む形にはなりません。
2.「違うところだけ」と言っても、量は減らない
そこで、まとめや理由を書かせずに一覧にしてもらいます。
結果は逆でした。返ってきた項目は 17件・18件・14件・14件。素朴に頼んだ4回(8・8・9・10件)より増えています。
理由は単純で、「違うところ」は本当に違うからです。実際に並んだのはこういう行でした。
- 実行日時が 2026-08-14 07:05 → 2026-08-15 07:05
- 読み込んだ行数が 42 → 38
- 最新の日付が 2026-08-13 → 2026-08-14
- 完全に同じ行の組数が 2 → 0
- 「崩れた行: 0」の行が2つ目には無い ← これが仕込み
- 「点検」の箇条書き記号が `-` → `・` ← これが仕込み
- 差し戻し候補の件数が3件 → 2件
- 差し戻し候補の伝票番号が D-20814 / … → D-20834 / …
上から5行のうち4行は、毎回変わって当然の差です。日付が進むのも件数が動くのも、自動処理がちゃんと動いている証拠です。それを「違い」として同じ一覧に並べているので、形の崩れが混ざって沈みます。
🚨 AI自身のまとめは、一覧より少なくなりました。材料Aの1回目は、17件を並べたあとの補足で「揃っているべきなのに揃っていないものが4つあります(節名、節の順番、箇条書き記号、差し戻し表の列数)」と書いています。一覧には5件出ているのに、まとめは4件で、「崩れた行」の欠落が落ちました。材料Bの2回目も同じ形で、14件の一覧に対しまとめは3件です。読む側はまとめから読みます。
3.「毎回変わってよいもの」を、こちらが先に宣言する
効いたのはここでした。除きたいものを「違い」の側で数えるのではなく、変わってよい側を先に名指しします。
返ってきた項目は 5件・6件・7件・5件。そして仕込みの5件は、4回とも全部残っています。1回目の返りはこうでした。
- 「点検」の箇条書きの記号が、1つ目は `-`、2つ目は `・`
- 「点検」の項目が、1つ目は4項目(崩れた行を含む)、2つ目は3項目で「崩れた行」の行が無い
- 節の並び順が、1つ目は「差し戻し候補 → 要確認」、2つ目は「確認が必要な項目 → 差し戻し候補」と逆
- 節の見出し名が、1つ目は「要確認」、2つ目は「確認が必要な項目」
- 「差し戻し候補」の表の列が、1つ目は4列(理由あり)、2つ目は3列で「理由」列が無い
これら以外の違い(実行日時、各件数、表に並ぶ伝票の中身)は、毎回変わってよいものとして挙げていません。
なぜこの言い方が効くか=「違うところだけ」は否定形の絞り込みで、何を残すかがAI側の解釈に開いています。「日付・件数・中身」は数えられる名前です。このサイトが何度も踏んできた「範囲は名前ではなく、数えられる形で渡す」の、除く側での使い方にあたります。
⚠️ 3つの中身は、自分の出力に合わせて書き換えてください。上は「日付・件数・一覧に並ぶ中身」ですが、金額が毎回変わるなら金額を、担当者が変わるなら担当者を足します。ここを埋めるのが、この手順でいちばん頭を使うところです(埋め方は §8 にあります)。
4. 毎週貼る用に短くしても、落ちませんでした
置いたあとは、毎週この検査を自分で回します。長い指示文を毎回コピーするのは続かないので、短くしました。
結果は 5件・5件・6件・7件で、4回とも仕込みの5件が全部出ています。短くしても落ちませんでした。
これは、このサイトの過去の実測と逆向きの結果です。毎朝の下調べを自動で走らせる記事では、自動実行の形に短くする工程で「まとめた言い方に置き換えないでください」の一文が落ち、貼った32件のうち一覧に出たのが22件と19件になりました。今回落ちなかったのは、残した一文がこの頼み方の本体そのものだからだと考えています。あちらで落ちたのは、出力の見た目に効かない一文でした。
🚨 かわりに、別のものが消えました。材料Bの1回目は、こういう行を留保なしで並べています。
- 1つ目は「今週入ったもの」を停滞側に重複させないが、2つ目は西野工業(1つ目では今週分)を停滞側に入れている
これは時間が経てば起きる正常な移動です。長いほうの指示文(§3)の2回目は、同じことに気づいたうえで「1つ目は3件しかなく偶然そう見えている可能性もあるため、並べ替えの規則が変わったと言い切れるだけの材料はありません」と書いていました。短くすると、当たり外れではなく「言い切りの度合い」のほうが変わります。
5.「置いてよい/直す/判断できない」を1つずつ付けさせる
出てきた違いを、自分で仕分ける手間も渡せます。
仕込みは4回とも 5/5 でした。ただし、この頼み方の値打ちは検出数ではなく3つ目の欄にあります。
🔑 こちらが「変わってよい」と宣言した3つに入るはずのものが、4回とも「判断できない」に戻ってきました。材料Aは2回とも「完全に同じ行の組数が 2 → 0」——件数なので、宣言では変わってよい側です。返りはこう書きました。
「完全に同じ行の組数」が 2 → 0。件数の変化とも読めるが、2つ目では「崩れた行」項目自体が
消えているため、0が本当に0件なのか点検を実行していないのか、この出力からは区別できない。
件数の変動として片付けない。
宣言の穴が、空振りとして返ってきます。「件数は変わってよい」と書いたときに自分が想定していたのは一覧の件数で、点検欄の数字までそこに入れるつもりは無かった——それがこの1行で分かります。
⚠️ 「置いてよい」の欄は、毎週の判断に使わないでください。材料Bでは、1回目が1件、2回目は「置いてよいに入るものはありませんでした」で0件でした。同じ材料・同じ指示文で割れています。
6. 見る場所を絞ると、絞った外は回まかせになる
量を減らす別のやり方として、見る場所そのものを絞る形も試しました。これは落としました。
表形式の材料では 3/5 と 5/5 に割れました。増えた2件は、頼んでいないのにAIが付けた「ひとこと補足」に出たものです。しかも1回目の補足はこう書いています。
- 「点検」の項目数が4行(1つ目)と3行(2つ目)で違う。
- 「差し戻し候補」の表の列数が4列(1つ目)と3列(2つ目)で違う。
数は合っています。でも消えたのが「崩れた行」と「理由」であることは、どこにも書かれていません。2回目の補足は同じ2件を名前で書きました。同じ指示文で、書き方が割れています。
箇条書きの材料では2回とも 2/5 でした。行の書き方も、末尾の注記も、増えた合計行も出てきません——見出しではないからです。絞った枠の外にあるものは、その回に補足が付いたかどうかで決まります。
7. 判定させず、数えて並べさせる
絞るなら、AIに違いを判定させず、こちらが数え直せる形で出させるほうが安定しました。
表形式の材料では2回とも 4/5 で、写った4件は2回とも指定した欄の中に出ました(§6 のように補足頼みになりません)。返りは1つ目と2つ目の一覧が上下に並ぶだけなので、目で追えます。
⚠️ 天井があります。欠けた1件は2回とも同じで、「点検の項目から 崩れた行 が消えたこと」でした。上の4つに「点検の項目名」を入れていないので、そこは構造として写りません。絞った形は、絞った枠のぶんしか見えない——ここは頼み方の問題ではなく、こちらの設計の問題です。
📌 欄を作っても、その欄の答えが安定するとは限りません。(4) の答えは、1回目が「なし」、2回目が「伝票チェック 自動レポート」でした。同じ材料・同じ指示文の2回です。
8. 2回目を待たず、1回目だけで「困るところ」の一覧を作る
ここまでは2回ぶんが揃っている前提でした。1回目しか無い段階でも、やれることがあります。
この一覧は、2回目を取る前に、崩れる場所を先に当てました。表形式の材料は2回とも 5/5、箇条書きの材料は2回とも 4/5 が「困るところ」の欄に入っています。返りはこう書きました。
- `## 動いていない案件` / `## 期限切れ` / `## 今週入ったもの` — 3つとも、この文言で、この順に。中身が0件でも節ごと消さない
- `- ` — 行頭のハイフン+半角スペース
- `佐々木:山手フーズ 見積り改訂(12日)` の並び= `担当:取引先␣用件(N日)`
- `該当なし` — 空の節の埋め方。ここが毎回この4文字でないと困ります
- `※ この一覧は自動で作りました。日数はもとの記録から数え直してください。` — 最終行に固定
この5つのうち4つが、実際に2回目で崩れた場所そのものでした。
🚨 4回とも当てられなかったのは同じ1件で、それは「増えるほう」でした。2回目にだけ 合計 6件 という行が生えたことは、4回とも予告されていません。消える・名前が変わる・順番が入れ替わるは、1回目の紙の上に根拠があります。頼んでいない行が増えることには、手がかりがありません。
📌 返りのほうから「1回ぶんしかないので、これは観測ではなくあなたが仕様として決める側です」と断られた回が2回ありました。そのとおりで、この欄は観測ではなく宣言として使ってください。§3 の「毎回変わってよい3つ」は、ここで作った一覧の裏返しになります。
うまくいかないときの言い直し方
一覧が長すぎて、毎週読む気にならない
「違うところだけ」で絞ろうとしている可能性が高いです(§2 で 14〜18件になりました)。除く側ではなく、変わってよい側を名指ししてください(§3)。それでも長いなら、変わってよいものの一覧が足りていません。返りに残った「変わって当然の差」を、そのまま3つの一覧に足します。
「判断できない」ばかりで、置いてよいのか決まらない
それが正しい状態のこともあります。§5 では4回とも、こちらが「変わってよい」と宣言した枠に入るはずのものが「判断できない」に戻ってきました。判断できないものが1件でも残っているうちは置かない、という線引きにしてください。減らしたいなら、宣言の3つを具体的に書き直します(「件数」ではなく「一覧に並ぶ件数。点検欄の数字は含みません」)。
2回目を取り忘れた・材料が同じものしか無い
1回ぶんでも §8 が使えます。ただし、そこで作った「困るところ」の一覧は観測ではなく宣言です。⚠️ 材料を変えて2本、それぞれ2回まで回してください。このサイトの過去の実測では、いちばん大きい事故(行の形が丸ごと消える)が材料を変えたほうでしか出ませんでした(文字起こしを毎回同じ形で出す記事)。今回も、絞り込み型は表形式で 4/5、箇条書きで 2/5 と割れています。
見比べさせたら、そもそも違いが無いと言われた
2回とも同じ形で出たなら、それが確かめたかったことです。⚠️ ただし形がそろっていることは、中身が合っていることを保証しません。件数が2回とも表と一致していたのに、2回の件数そのものが違っていた実測があります(週報を自動で回す記事)。形の検査はここまでで、中身は別に見ます。
貼る出力に、社外に出せない情報が入っている
見比べさせる会話にも、出力の全文を貼ることになります。何を渡してよいかは先に決めてください(AIに触らせる範囲を先に決める)。数字や名前を伏せて貼っても、形の検査は成立します——見ているのは見出し・列・記号・行の形なので、中身は伏せ字でかまいません。
応用・次の一手
置いてよい条件を、先に文にしておく。この記事の実測から言えるのは「§8 の一覧に挙げた項目が、2回とも1つも欠けていないこと」までです。返りのひとつも同じことを書いていました——「2つ目の欄が1つでも欠けていたら、中身が正しくても失敗として扱う」。
毎週の1回に組み込む。§4 の短い版を、前の週の出力と一緒に貼るだけです。前の週ぶんを保存しておく必要があるので、出力は上書きせずに日付付きで残してください。
形がそろったら、次は中身の見張りへ。入り口の材料が壊れた日を見るのが毎朝のAIは材料が1日古い日も同じ顔で結果を返す、前の週の出来上がりを次の週に渡す形で起きる膨らみを見るのが週報を自動で回す記事です。
⚠️ この記事の数字は、架空データでの32回の実測です。指示文ごとの生の返りと照合コードの出力は docs/evidence/compare-two-runs-yourself.md にそのまま置いてあります。判定に使った check.py は3種類の誤りを出したので、その直しも同じファイルに書いてあります。