これで何ができるか
見張りの仕組みには、ほかの自動化には無い性質があります。鳴らないことが正常なので、壊れていても動いているように見えます。だから作った直後にわざと壊して、ちゃんと鳴ることを確かめておく——このサイトは静かに壊れたのを見つけさせるとやったことを報告させる前に確かめさせるの2本で、これを「唯一の確認方法」と書いてきました。
その確認方法が効くのかは、一度も測っていませんでした。この記事はそこを測ります。
架空の「毎朝の点検・5条」を文章で書き、それを当てる材料を種類の違う2本(表形式の受付ログと、手帳の走り書き)作りました。5条のうち2条には、こちらが意図的に抜け道を残してあります。抜けられることは、材料を渡す前に Python の assert で確かめました。そのうえで6個の指示文を材料2本 × 各2回=全24回通しています。
分かったことは3つです。
① 「AIは自分が拾える壊し方しか作らない」は、この材料では起きませんでした。書き始める前の私の見立てはこれでしたが、外れました。そのまま「わざと壊して確かめて」と頼んだ4回で、作られた27例のうち21例が実際に鳴っています。「6件作って、それぞれ5条のどれに当たるか書いて」と足した4回では24例中22例が鳴り、AIが書いた「この例は第◯条に当たります」は8件すべてが実際と一致しました。
② すり抜ける例は「作れない」のではなく「頼まないと作らない」。頼まなかった8回で1条も鳴らない例は6件と2件でしたが、「この点検をすり抜ける壊れ方も3件」と足した4回では、ちょうど12件(4回×3件)が1条も鳴りませんでした。
③ 抜け道がいちばん出たのは、記録を1つも壊させなかったときでした。手順書のほうを読ませて「この条文だと見逃すものを挙げて」と頼みました。記録を壊させず条文だけを読ませた4回は、こちらが仕込んだ2つの抜け道を4/4回と3/4回で指しました。壊れ例を作らせた回より、1回あたりの指摘の量が3倍前後あります。
前提
| かかる時間 | 40分。見張りを作った直後に1回だけやります |
| 費用 | 無料。無料のチャットAIで足ります |
| 必要なもの | ブラウザで使えるAI(ChatGPT・Claude・Geminiなど)と、文章で書いた点検の条文 |
| プログラミング | 不要。条文は日本語の箇条書きで構いません |
⚠️ この記事は、見張りの作り方そのものは扱いません。何を正常とみなすか・どう通知するかは静かに壊れたのを見つけさせるに、決まった時刻に走らせる仕掛けは毎日決まった時刻にAIを動かす仕掛けを作らせるにあります。ここで扱うのは、作ったあとの1回だけです。
📌 実測に使った条文は、こういう5行です。読者の見張りが何を見ているにせよ、番号を振った箇条書きにしてから始めてください。番号が無いと、この記事の指示文は全部効きません。
1. 記録が20行以上あること
2. いちばん新しい日付が、今日(2026-08-19)であること
3. 中身が完全に同じ行が、2組以上ないこと
4. 行の途中で切れていないこと(4つの項目がすべて埋まっていること)
5. 「請求」「納期」「仕様」「返品」「その他」の5種類が、それぞれ1件以上あること
AIへの頼み方
1. まず、そのまま「わざと壊して」と頼む
条文と、正常な日の記録を貼ります。4回通しました。
なぜ「壊した記録の全文」まで書かせるか=ここが実測の分かれ目です。「◯行目を消しました」だけだと、本当にその条が鳴るかを自分の手で確かめられません。全文が返ってくれば、そのまま自分の点検に流し込めます。この一文が無いと、この記事の手順は最初の一歩で止まります。
返ってくるのは、条ごとに1〜2件ずつの壊れ例と、それぞれの記録の全文でした。27例のうち21例が実際に鳴っています。
2. 鳴らなかった例のほうを、先に見る
素朴に頼んだ4回で、1条も鳴らなかった例が6件ありました。これを不良品として捨てないでください。中身を読むと、AIが意図してやっていることがあります。
実測でいちばん多かったのは、条文の境界を見せにきている例でした。条3は「完全に同じ行が2組以上ないこと」なので、1組だけ作っても鳴りません。返ってきたのは「3条目を壊す(その1・完全に同じ重複を1組だけ作る)」と「(その2・重複を2組にする)」の2件セットで、前者は鳴らないことを見せるために作られていました。
📌 「鳴らなかった」の中には、条文の書き方を教えてくれているものが混ざります。ここで「1組でも鳴らせたいのか、2組からでいいのか」を決めるのが、この工程の本当の値打ちです。
3. 件数を指定すると、条の割り当てが回まかせになる
素朴な頼み方だと件数がばらつくので、次にこう足します。4回通しました。
24例中22例が鳴りました。そしてAIが書いた「この例は第◯条に当たります」は、8件すべてが実際に鳴った条と一致しています。自己申告は当てになりました。
⚠️ ただし、どの条を何件作るかは回まかせです。実測では、条4に3件が集まって条2が0件の回がありました。6件という数は満たされているのに、5条のうち1条が一度も試されていません。画面上は6件そろっているので、これは数えないと気づけません。
4. 件数ではなく「条ごとに1件ずつ」で頼む
前の節の穴は、頼み方を変えるだけで閉じました。4回通しました。
20例すべてが鳴りました(20/20)。条の申告も10件すべて一致。4回とも、条1から条5に1件ずつきれいに散っています。
なぜ効くか=「6件」は量の指定ですが、「条ごとに1件ずつ」は割り当ての指定だからです。量で頼むと、AIは作りやすい条に寄せます。「1件が2つ以上の条に当たらないように」を足しているのも同じ理由で、これが無いと1件で3条まとめて鳴らす例が返り、その条を単独で試したことにはなりません。
これは月をまたぐ集計を毎月回すや毎朝のAIは材料が1日古い日も同じ顔で結果を返すで効いたのと同じ型で、出す欄を先に決めると中身がそろいます。
5. 「すり抜ける例も作って」を必ず足す
ここまでの4節は、全部「鳴ることの確認」です。見張りにとって本当に怖いのは逆側で、鳴らないのに壊れている状態です。4回通しました。
ちょうど12件(4回 × 3件)が、実際に1条も鳴りませんでした。頼んだ数と完全に一致します。つまりすり抜ける例を作る能力が無いのではなく、頼まないから作らないだけでした。
返ってきたものは、こちらが仕込んだ抜け道と同じところを突いています。「古い日付の行がいくら積み上がっても、いちばん新しい日付が今日なら条2は鳴らない」「毎日10件ある種類が今日1件でも、条5は1件以上あれば通る」。
6. 記録を壊させず、条文のほうを読ませる
いちばん効いたのはこれでした。記録は一切壊させません。4回通しました。
こちらが仕込んだ2つの抜け道を、穴Aは4/4回、穴Bは3/4回で指しました。しかも量が違います。壊れ例を作らせた回は該当する文が1回あたり0〜4文でしたが、この頼み方では4〜11文返ってきます。
なぜ差が出るか=壊れ例を作る仕事は「条文に当たるものを1つ作る」で終わりますが、条文を読む仕事には終わりがありません。実測では、こちらが仕込んでいない穴まで挙がりました——「末尾に空白が1つ増えただけの行は『完全に同じ』にならないので、条3をすり抜ける」「条4は埋まっているかを見ているだけで、中身が正しいかは見ていない」。
⚠️ この節だけをやって満足しないでください。穴の一覧は読み物としては良いのですが、直したあとに本当に鳴るようになったかは、4番の頼み方で例を作らせないと確かめられません。読ませて穴を見つけ、作らせて閉じたことを確かめる。順番が逆だと空回りします。
7. できた例は、AIに判定させて答え合わせする
作った壊れ例が本当に鳴るかは、自分の見張りに流すのがいちばんですが、その手前でもう1回できます。別の会話を開いて、記録と条文を渡します。4回通しました。
これは驚くほど正確でした。こちらが用意した記録3本(1本は条3だけが鳴る、2本は1条も鳴らない)について、5条 × 3本 = 15マスが、4回とも全部真値と一致(60マス中60マス)しました。
🚨 さらに良かったのは、頼んでいない欄が付いてきたことです。4回とも「判定には使っていない事実」「5条には書かれていないこと」という見出しを自分で作り、そこにこちらが仕込んだ抜け道そのものを書いてきました——「記録②は34行のうち12行が2025年1月の旧データです」「記録③は今日の請求が1件だけです」。
📌 判定と、判定の外を、自分から分けています。「5条の条文にないため、鳴る/鳴らないの判定には反映していません」と明記したうえで別枠に置く。この分け方は、こちらが指示していません。
うまくいかないときの言い直し方
「壊しました」と言うだけで、記録が返ってこない
いちばん多い詰まり方です。差分だけ書かれても、自分の見張りに流せません。指示文の最後の一文を落とさないでください。
実測でも、全文が返らず判定できなかった例が31例中5例ありました(すり抜ける例を3件足した回に集中しています)。依頼が増えるほど、この一文が薄まります。
6件と頼んだのに、同じ条にばかり当たっている
上の4番へ切り替えてください。件数で頼むかぎり、条の割り当ては回まかせです。切り替えたあと、返ってきた例の見出しを縦に読んで、条1から条5までの番号が1回ずつ出ているかを目で数えてください。ここは機械でなくても数えられます。
すり抜ける例が「意地悪すぎる」と感じる
実測で返ってきた例には、たしかに極端なものがあります。ただし極端かどうかは、あなたの記録で本当に起こりうるかで決めてください。「古い行が積み上がる」「ある種類が今日だけ激減する」は、実際の受付ログでは普通に起きます。判断がつかないときは、その例を7番の頼み方でもう一度判定させて、どの条にも当たらないことを確認してから捨てるか直すかを決めてください。
直したあと、また同じ穴が空く
条文を直したら、4番と5番をもう一度回してください。これは1回きりの作業ではありません。この記事の実測でも、条文の書き方(「2組以上」「1件以上」)そのものが穴の正体でした。条文を1行足すたびに、その行の抜け道が1つ増えます。
そもそも、うちの点検は条文になっていない
いちばんよくある状態です。「なんとなくおかしくないか見る」では、この記事の指示文はどれも効きません。まず番号を振った箇条書きにしてください。何を条文にすればいいか分からないときは、毎朝のAIは材料が1日古い日も同じ顔で結果を返すの4番(点検の欄を出す順番の1番目に作る)が、そのまま条文のたたき台になります。
応用・次の一手
この記事の結論は、頼み方を3つ並べるところにあります。どれか1つではなく、順番に回してください。
| 順 | 頼み方 | 何が出るか |
|---|---|---|
| 1 | 条文を読ませる(6番) | 抜け道の一覧。1回あたり4〜11文。仕込んだ穴を 4/4回・3/4回 で指した |
| 2 | 条ごとに1件ずつ作らせる(4番) | 鳴ることの確認。20例すべてが鳴り、申告も10/10一致 |
| 3 | 別の会話で判定させる(7番) | 答え合わせ。15マス × 4回が全部一致。条文の外は別枠で教えてくれる |
⚠️ 1回の作業で完了させないでください。1で穴を見つけ、条文を直し、2で閉じたことを確かめ、3で答え合わせをする。条文を直すたびに1へ戻ります。
📌 この記事が実測していないこと=ここで作った壊れ例を、実際に動いている見張りに流したときにどうなるか。チャットの上で条文どおり鳴っても、仕掛けの側の設定が間違っていれば鳴りません。仕掛けそのものの確認は静かに壊れたのを見つけさせるの側の話です。
隣の記事はこう分かれています。
- 入り口の材料がまともかを毎回見る → 毎朝のAIは材料が1日古い日も同じ顔で結果を返す
- 同じ指示文の出力を2回ぶん見比べる → 自動化を置く前に2回見比べる
- 1回の作業の完了報告を確かめさせる → やったことを報告させる前に、AIに確かめさせる
- 図の崩れを機械に見つけさせる → 公開前に、崩れた図を機械に見つけさせる
次の一手は、作った壊れ例を捨てないことです。条ごとに1件ずつ、全文で保存しておけば、条文を直すたびに同じものを流し直せます。⚠️ ただし、その保存先をAIに書き換えさせないでください。答えと問題を同じ相手に持たせると、答え合わせになりません。