これで何ができるか
よく言われます。AIで書いた提案文はテンプレ感が出て、他の応募者と被る。「実績あります」しか書いていない、案件の具体的な内容に触れていない、発注者は何十件も見ているから一発で分かる——だいたいこの形で語られます。
けれど、実際に何文が一致したのかを数えた話は見当たりませんでした。そこで数えました。
架空の募集文を2本(記事執筆と手順書の清書)作り、募集文は一字一句そのまま固定して、渡すものだけを3通りに振り、それぞれ4本ずつ=24本の提案文を作らせています。突き合わせはすべて Python の文字列照合です(AIには判定させていません)。
結果を先に書きます。定説は、文の単位ではほとんど再現しませんでした。
同じ募集文・同じ頼み方の4本すべてに現れた文は、そのまま比べて 2〜5件。募集文が指定した項目名と行頭の番号を落とすと 1〜2件まで減ります。しかもその中身は「はじめまして」と「■ ご指定の5点」です。
被っていたのは、挨拶と見出しと結びだけでした。「はじめまして」は 24本すべて、「よろしくお願いいたします」も 24本すべて。冒頭の1文は、どの4本組でも4本とも同じです。
🚨 かわりに出たのは、自分の提案文どうしで答えが割れる事故でした。自分の素材を渡さずに作らせた8本では、募集文が「必ず書いてください」と指定した5項目に、8本とも答えているのに、答えの中身が毎回違います。希望単価は 1.0円・1.2円・1.5円。使える時間は 8時間・10時間・12時間。初稿までの日数は 3日・4日。
他人と被る前に、自分の中で割れていました。
前提
プログラミングは要りません。
- AIとの会話(無料の範囲で足ります)
- 架空でよいので、募集文を1本
- 自分の素材メモ(実績・条件を、事実だけ9行くらい)
⚠️ 実在の募集文・実在の発注者を材料にしないでください。この記事の実測も、募集文は全部こちらで作った架空のものです。
⚠️ この記事で測ったのは「文が被ったか」だけです。受かるかどうかは測っていません。通過率や受注率の話は一切しません。
📌 AIに書かせてそのまま出すことを勧める記事ではありません。出すのは自分です。
AIへの頼み方
下の指示文は「下の募集文」「私の素材メモ」と書いてあります。同じメッセージの中に、その2つを貼ってください。この実測で使ったのは、次の2つです(どちらも架空のもので、ご自分のものに差し替えて使えます)。
募集文(架空)
【募集】暮らしの情報サイトの記事執筆(継続あり)
■ お願いしたいこと
高齢のご家族と同居している方に向けた、暮らしの工夫の記事です。
1本あたり2,000字前後。月4本から6本を予定しています。
写真の用意はこちらでやりますので、原稿だけお願いします。
■ 進め方
構成案をこちらから1本ずつお渡しします。取材はありません。
初稿をいただいたあと、こちらから1回だけ修正のお願いをします。
■ 応募のときに必ず書いてください
1. ご希望の文字単価
2. 1週間に使える時間
3. これまでに書いた記事の有無(無くても応募できます)
4. 初稿までにかかる日数
5. 原稿を書くときに使っている道具
以上の5点が書かれていない応募は、こちらから確認の連絡をすることになります。
素材メモ(架空。事実だけを9行)
【自分の素材メモ】
- 前の職場で社内報「みなとだより」を2年間、毎月1本ずつ書いた(合計24本)
- 扱ったのは介護施設の人手不足と、地域の防災訓練の2つのテーマが多かった
- 1本あたりの字数は1,800字前後で書いていた
- 表記ゆれを見るための自作のチェック表を使っている
- 取材は電話で30分、原稿は3日で出していた
- いま空いているのは平日の夜21時から23時と、土曜の午前
- 希望は1文字1.5円から
- 画像の用意はしたことがない
- 締切に遅れたことが1度あり、理由は取材先の入院だった
📌 5番と6番の指示文の「下の4本」は、1〜4番で作った下書きです。4本そろってから使ってください。
1. 募集文だけ渡す(5項目には答える。中身は毎回変わる)
募集文2本×各4本=8本。8本とも、募集文が指定した5項目すべてに答えました。形の上では完璧です。
ところが、答えの中身がそろいません。
| 項目 | 4本で出た種類(記事執筆) | 4本で出た種類(手順書の清書) |
|---|---|---|
| 希望単価 | 3/4 | 4/4 |
| 1週間に使える時間 | 3/4 | 3/4 |
| 初稿までの日数 | 2/4 | 2/4 |
手順書の側では、単価が 1本あたり4,000円/1文字1.2円/1本5,000円/1本あたり4,500円 と、数え方そのものが割れました。
🚨 そして「実績」は、8本とも中身がありません。「これまでに書いた記事の有無:あります」で終わり、何をどれだけ書いたかが8本とも0件です。定説が挙げている「『実績あります』しか書いていない」は、そのまま再現しました。
🔑 ただし原因は「AIだから」ではありません。渡していないからです。次でそれが分かります。
2. 自分の素材メモを一緒に渡す
素材メモは架空の9行にして、機械で照合できる固有の事実を9個入れてあります(社内報の名前、本数、字数、道具、取材のやり方、空いている曜日と時間、希望単価、画像の経験、遅れた1回の理由)。
「実績あります」だけの本は、8本とも0本になりました。そして5項目の答えは、単価・時間・日数とも4本すべて同じ値になります(種類 1/4)。
中身が決まっているものは割れません。割れていたのは、決まっていなかったからです。
📌 素材の9件のうち、返りに出てくるのは 6〜8件でした。落ちるものは決まっています。
| 素材メモの行 | 16本のうち何本に出たか |
|---|---|
| 社内報の名前・本数・道具・空いている時間・希望単価 | 16/16本 |
| 1本あたりの字数 | 15/16本 |
| 遅れた1回の理由 | 7/16本 |
| 扱っていたテーマ | 9/16本 |
| 取材のやり方 | 5/16本 |
⚠️ 落ちるのは、募集文が聞いていない行です。取材の話は「取材はありません」と書かれた案件なので落ちます。落ちること自体は正しいのですが、落ちたことは画面から分かりません。
3. 「なぜこの案件か」を1行書かせる
定説が言う「案件の具体的な内容に触れていない」への対処側です。8本とも、募集文から実際の言葉を引いて1行を書きました(「高齢のご家族と同居している方に向けた」「取材はありません」「図は不要です」など)。引用した言葉が募集文に実在するかを機械で照合したところ、8本とも実在し、作られた引用は0件でした。
⚠️ ただし、被りは減りませんでした。4本すべてに共通した文は、項目名を落とした当て方で 2件。2番の版と同じです。1行足しても、挨拶と見出しは残ります。
📌 減ったのではなく、増えていました。そのまま比べる当て方では、この版だけ共通文が 4〜5件に増えています。中身(単価・時間・日数)が4本ともそろうので、その行がまるごと一致するためです。
4. 素材を渡していないときは、空欄で残させる
これがこの記事の出口です。
4回とも、5項目すべてが空欄で残りました(〔私が決める:〕が4回とも5件)。募集文にも素材にも無い数値は、4回とも0件です。
- ご希望の文字単価:〔私が決める:いくらから受けるか〕
- 1週間に使える時間:〔私が決める:何時間出せるか。曜日と時間帯も〕
- これまでに書いた記事の有無:〔私が決める:書いたものがあるか。あるなら本数と字数と題材〕
🔑 空欄には「何を決めればよいか」が書かれます。値ではなく問いが残るので、埋めるときに迷いません。1番の版では、この5項目が黙って埋まっていました。
📌 募集文から分かることは、ちゃんと書かれます。「1本2,000字前後、月4〜6本」「構成案はそちらから、取材なし」など、募集文に実在する条件だけが本文に残りました。
5. 4本を並べて、共通した文を抜き出させる
2回とも、こちらの機械照合と件数も中身も一致しました(どちらも2件)。
🔑 これは珍しいことです。うちの実測では、AIの突き合わせと機械の突き合わせは数え方が違って合わないほうが普通でした。ここが合ったのは、比べる単位(文)と一致の条件(一字一句)をこちらが決めていたからだと思います。
📌 返りは、惜しかったところも書いてきました。「1文字1.5円から」に近い文は4本ともあるが、末尾が「を希望します。」「から。」「からでご相談させてください。」と分かれるので一致しない、という具合です。
6. 4本の答えを表にして、そろっていない項目に印を付けさせる
2回とも、! が付いたのは単価・時間・日数の3項目でした。こちらが機械で数えた「4本で出た種類」と一致します。
うまくいかないときの言い直し方
表は正しいのに、その下のまとめが1つずれた
6番の1回で出ました。表には「1本あたり4,000円/1文字1.2円/1本5,000円/1本あたり4,500円」と正しく並んでいるのに、その下のまとめは「4本のうち2本が1本あたりの金額、1本が文字単価」と書いています。数え直すと 3本と1本です。
→ 読む側はまとめから読みます。表を写させたら、まとめの数は自分で数え直してください。同じ型は副業ライティングの納品前検品を、AIに「直させずに」やらせるにもあります。
素材を渡したのに、書いてほしかった行が出てこない
素材9行のうち、返りに出るのは 6〜8件でした。落ちたのは募集文が聞いていない行です。
→ 落としてよいかどうかは自分で決めてください。「素材メモのどの行を使って、どの行を使わなかったかを一覧にしてください」と足すと、使わなかった行が見えます(長い文書の要約から「ただし書き」だけが静かに消えるのを防ぐと同じ形です)。
「実績あります」だけの提案文になった
素材を渡していない8本は、8本ともこの形でした。素材を渡した16本は 0本です。
→ 書き方を直しても直りません。渡していないものは書けません。4番の空欄版にして、空欄を自分で埋めてください。
4本作ったのに、どこが同じか自分では見つけられない
5番の指示文を使ってください。⚠️ ただし「似ている文」ではなく「一字一句そのまま」で頼むこと。末尾が1文字違うだけで一致しなくなりますが、そこがそろっていない証拠になります。
→ 被った文が見つかったら、それは自分の素材が無くても書ける文です。似た切り分けは応募文・提案文をAIと作ると、盛られるのは実績ではなく「約束」のほうにあります。あちらはAIに自己申告で分類させる型で、こちらは別々に作らせた提案文どうしを突き合わせる型です。
応用・次の一手
📌 素材メモを先に作って、使い回してください。この実測で効いたのは指示文ではなく、渡した9行のほうでした。事実だけを書き、確かめていないことは書かない。⚠️ 希望単価も素材メモに書いておくこと。書いていなかったから、4本ごとに3〜4種類に割れました(記事執筆の4本は3種類、手順書の清書の4本は4種類)。
📌 応募する前に、4本作って並べてください。同じ募集文から4本作り、5番と6番の指示文を当てるだけです。! が付いた項目が、自分がまだ決めていないところです。
📌 同じ晩に測った近い記事が2本あります。集計表の数式が壊れる話は行が増えても合う集計表を作るに、契約額から手取りを出す話は副業の手取りを契約額から出すにあります。この記事は他人との被りを測りに行って、自分の提案文どうしの割れを見つけたという点が違います。
🔁 案件が続くなら、同じ形で毎回回せます。素材メモをファイルに置いて、募集文だけを差し替える形にします。置き方は「毎日決まった時刻に自動でやっておいて」をAIに作らせるにあります。⚠️ ただし送るのは自分です。
⚠️ この記事の数字はすべて架空データでの実測です(全32回=提案文24本+空欄版4回+突き合わせ2回+表にさせた2回)。生の返りと照合に使ったコードは docs/evidence/proposal-draft-what-actually-repeats.md に全文置いてあります。測ったのは文が被ったかどうかだけで、受かるかどうかは測っていません。