これで何ができるか

副業でブログ・noteの原稿を書くとき、「結論→理由→具体例→結論」というPREP法でAIに書かせる、という定石をよく見かけます。この記事は、その定石を「資料に無い具体例を、AIが自分で作ってしまわないか」という角度から実際に試したものです。

架空のお知らせ文を2本用意しました。どちらも事実は1つだけで、理由も、変更前の状態も書いていません

  • 材料A:「2026年10月1日より、送料を全国一律550円に改定いたします。」
  • 材料B:「2026年11月1日より、平日の受付時間を19時までに変更いたします。」

この2本に、PREP法を指定する条件・型を指定しない条件・PREP法に「書かれていない情報は補うな」を足した条件を、それぞれ3回ずつ試しました(計18回)。

  • 「理由」の捏造は、材料Aでは型を指定してもしなくても3/3でした。値上げの案内という書き方そのものに「理由を添えるものだ」という慣習が強く効くようです
  • ところが材料Bでは、型を指定しない回は0/3で理由に触れなかったのに、PREP法を指定した回は3/3が理由を作り出しました。型が「【理由】」という欄を用意すること自体が、書かなくてもよいはずの理由を書かせています
  • さらに材料Bでは、PREP法の「具体例」欄が、資料に無い「変更前の受付時間」を3回とも作りました。しかも18時・17時・9時と、回によって数字が食い違いました。同じ架空の会社の話なのに、聞くたびに違う過去が語られたことになります
  • 「書かれていない情報は補わないでください」という一文を足すと、理由の捏造・変更前の捏造とも0/3に戻りました
PREP法(結論→理由→具体例→結論)を指定すると資料に無い内容を作るかを試した図。送料改定のお知らせでは、PREP法指定・型指定なしのどちらも3/3が理由を捏造した。受付時間変更のお知らせでは、型指定なしは0/3で理由に触れなかったが、PREP法を指定すると3/3が理由を作り出した。さらに受付時間変更では、PREP法の「具体例」欄が変更前の時刻を3/3捏造し、18時・17時・9時と回ごとに数字が食い違った。型指定なしでは変更前の時刻を書いた回は1/3にとどまった。「書かれていない情報は補わないで」という一文を足すと、理由の捏造・変更前の捏造とも0/3に戻った。
「理由」の捏造は型と無関係に起きることがある。「変更前」の捏造はPREP法で顕著に増えた。

前提

かかる時間 15分
費用 無料。ブラウザのチャットAIで足ります
必要なもの 自分が書きたいお知らせ・案内文の「事実だけ」の元原稿
プログラミング 不要。この記事の指示文をコピーして貼るだけです

この記事はPREP法そのものを否定するものではありません。「型を指定すると、資料に無い欄まで律儀に埋めようとする」という性質を確かめて、埋めさせない頼み方まで載せています。実際に送るお知らせ文に実在の顧客名や社内の内部事情を含める場合は、紙の書類をAIに読ませるときの下ごしらえと同じ注意で、伏せてから貼ってください。

AIへの頼み方

1. まずPREP法を指定して書かせる(材料A・送料改定)

次のお知らせをもとに、PREP法(結論→理由→具体例→結論)の構成で、お客様向けの案内文を書いてください。 【お知らせ】2026年10月1日より、送料を全国一律550円に改定いたします。

3回とも、【理由】に相当する部分に「近年、燃料費や配送コストの上昇が続いており」「燃料費・配送コストの高騰により」のような、資料に一言も書いていない値上げの理由が入りました。3回のうち1回は、さらに「それ以前にご注文いただいた商品につきましては、従来の送料が適用されます」という、書いていない移行措置まで付け加えました。

2. 型を指定せずに同じ資料で書かせる(材料A)

次のお知らせをもとに、お客様向けの案内文を書いてください。 【お知らせ】2026年10月1日より、送料を全国一律550円に改定いたします。

結果はほとんど変わりませんでした。PREP法を指定しなくても3回とも「近年の輸送コストの上昇に伴い」のような理由が入り、しかも3回とも「(税込)」という資料に無い表記や、「2026年9月30日までのご注文は従来の送料が適用されます」という具体的な移行日まで作りました。この材料に関しては、理由や移行措置の捏造はPREP法のせいではなく、「値上げのお知らせ」という文書ジャンルそのものの慣習でした。

3. 材料を変えて同じ2条件を試す(材料B・受付時間変更・PREP法指定)

理由が要らない種類のお知らせでも同じことが起きるか、材料を変えて確かめます。

次のお知らせをもとに、PREP法(結論→理由→具体例→結論)の構成で、お客様向けの案内文を書いてください。 【お知らせ】2026年11月1日より、平日の受付時間を19時までに変更いたします。

3回とも【理由】に「お仕事帰りなど夕方以降にお問い合わせいただくお客様が増加しており」のような、これも資料に無い理由が入りました。ここまではA材料と同じです。問題は【具体例】欄です。3回とも「変更前の受付時間」を書いたのですが、1回目は「9:00~18:00」、2回目は「従来は17時までとしておりました」、3回目は「土日祝は従来通り」で始まる9時始業——3回とも違う「変更前」が出ました。資料には変更前の時刻は一言も書かれていません。

4. 型を指定しない場合(材料B)

次のお知らせをもとに、お客様向けの案内文を書いてください。 【お知らせ】2026年11月1日より、平日の受付時間を19時までに変更いたします。

ここで材料Aとは違う結果になりました。3回のうち2回は理由にもいっさい触れず、変更前の時刻も書きませんでした。残り1回は「変更前:平日 ○時〜18時」と書き、開始時刻は「○時」というプレースホルダーで正直に「分からない」を示しつつ、終業時刻だけ「18時」と資料に無い数字を当てはめました。型を指定しない場合の「変更前」の捏造は1/3にとどまり、PREP法を指定した3/3より明らかに少ない結果でした。

5. 「書かれていない情報は補うな」を足す(材料A)

次のお知らせをもとに、PREP法(結論→理由→具体例→結論)の構成で、お客様向けの案内文を書いてください。書かれていない情報(改定の理由・以前の料金・税込か税別かなど)は、想像で補わないでください。書かれていないことは書かないでください。 【お知らせ】2026年10月1日より、送料を全国一律550円に改定いたします。

3回とも、理由・以前の料金・税込表記のどれも書きませんでした。1回は本文の後に「補足:お知らせ元の文面に『改定理由』『改定前の料金』『税込・税別の区分』の記載がなかったため、これらは本文に含めていません」と自分から除外した理由を明記しました。

6. 同じ一文を材料Bにも足す

次のお知らせをもとに、PREP法(結論→理由→具体例→結論)の構成で、お客様向けの案内文を書いてください。書かれていない情報(変更前の受付時間・変更の理由など)は、想像で補わないでください。書かれていないことは書かないでください。 【お知らせ】2026年11月1日より、平日の受付時間を19時までに変更いたします。

3回とも、理由にも変更前の時刻にも触れませんでした。3回目までの実測で最悪だった「変更前の時刻が回ごとに食い違う」問題は、この一文で0/3まで下がりました。

うまくいかないときの言い直し方

「具体例」の欄をPREP法から外していいか迷う

外す必要はありません。今回の実測でも分かるとおり、問題はPREP法という型そのものではなく、「型の欄を埋めるために、無い情報を作ってしまう」動きです。型は残したまま、5・6で試した「書かれていない情報は補わないで」を末尾に足すだけで、理由も具体例も0/3まで下がりました。型を使う効率は残して、埋め方だけ止める頼み方です。

自分では、どこが作り話か見分けられない

同じ資料・同じ指示文を、もう一度、別の会話で試してください。今回の実測で「変更前の受付時間」が18時・17時・9時と割れたように、資料に本当は無い情報は、聞き直すたびに違う数字が返ってくることがあります。2回試して数字が一致しないなら、それは資料から読み取ったのではなく、その場で作られたものです。逆に、2回とも同じ数字が返るなら、少なくとも「毎回同じ思いつき」をしているだけで安心はできないので、最終的には元の資料と1つずつ突き合わせてください。この考え方は「たぶん動きます」と言わせないための頼み方と同じです。

さきほどの案内文について確認します。「変更前の受付時間」や、値上げの「理由」として書いた内容は、私が渡したお知らせのどこに書いてありましたか。書いていなければ、書いていないと教えてください。

応用・次の一手

毎回同じ種類のお知らせを書くなら、「補うな」の一文を保存版の指示文に組み込んでおくと、次回から確かめ直す手間が減ります。保存した指示文が材料を替えても同じに動くか確かめる記事のとおり、一度効いた一文でも、お知らせの種類が変わると効き方が変わることがあるので、種類を変えた最初の1回だけは、この記事の②のように型を確認してから使ってください。

もう1つ、この記事で見えたのは「理由の捏造」と「具体例の捏造」は別の原因で起きうるということです。理由の捏造は文書ジャンルの慣習(値上げなら理由を書くものだという思い込み)で起きることがあり、これはPREP法の有無に関係ありません。一方、具体例欄の「変更前」の捏造は、型が比較を要求したときに、比較対象そのものを作り出す動きでした。納品前検品をAIにやらせる記事見積もりの数字が資料にどれだけ埋まっているかで漏れが変わる記事も合わせて読むと、「材料に無いところを、AIがどう埋めるか」という同じ性質を、別の場面で確かめられます。

⚠️ この結果は、この架空の2本・18回での実測です。「PREP法は具体例を捏造する」と一般化せず、実際に使う資料でも、変更前の状態や理由を自分で用意できないときは、必ずこの記事の5・6のような一文を添えてから使ってください。役割設定など、他の定説を試した記事はAIに役割を与える効果を確かめた記事にまとめています。

今回の生の返りと集計は docs/evidence/prep-method-invents-the-missing-before.md に全文置いてあります。