これで何ができるか
毎朝ひとりでに走らせている処理が、材料の側の事情で途中までしか進まない日があります。止まった日に「明日の自分が、残った文字だけを見て続きから動ける」メモを書かせる頼み方です。プログラミングは要りません。
このサイトでは調べものの待ち行列を1行足すだけで回すで「止まったときは、次に読む人がそのまま作業を再開できるように書いてください」という指示文を勧めてきました。ところが、その指示で書かれたメモが翌日に実際に使えるかは、一度も測っていませんでした。今回それを測っています。
架空の待ち行列を2本つくり、6通りの頼み方で全20回走らせました。そのうえで、返ってきた引き継ぎメモを1通ずつ別のまっさらな会話に渡し、待ち行列も資料も見せずに16回、続きが分かるかを聞いています。
止まった行の名指しは崩れませんでした。16回とも、止まった2行を2行とも当てています。
崩れたのは「次にどの行から始めるか」でした。そのまま頼んだメモ・3項目を入れさせたメモ・「会話ではなくファイルに書いて」と足したメモの12回で、答えられたのは5回です。残る7回は「このメモからは決まらない」と返しました。
効いたのは長さではなく、「そのままコピーして貼って」の一言でした。これを足した4回だけが、仕込んだ6個の値を24個中24個そのまま残しています。
前提
- 毎朝の処理が待ち行列のような一覧を1行ずつ片づける形になっていること
- その処理が、次回に渡るファイル(更新した一覧・引き継ぎメモ)を書く形になっていること
- 止まる日が実際にあること。全部きれいに片づく処理なら、この記事の話は起きません
この記事は「止まるかどうか」の話ではありません。材料が足りないときにAIが素通りせず止まるかは材料が足りない日に、AIを黙って進ませないで測ってあります。ここで扱うのは止まったあとに残った文字だけです。
AIへの頼み方
1. まず、止まる日を作って、そのまま頼んでみる
材料は架空の待ち行列10行を2本つくりました。1本目は副業ライターの「調べものの待ち行列」です。
# 調べものの待ち行列(`_shirabemono.md`)
- [ ] R-01 長野県の観光客数の推移 / 資料: nagano-kanko-2026.pdf
- [ ] R-02 松原市の移住支援金の受付期間 / 資料: matsubara-ijuu.txt
- [ ] R-03 北支店の来客数の月次推移 / 資料: kita-shiten-raikyaku.csv
- [ ] R-04 中古車の平均下取り価格 / 資料: chuko-shatori.txt
- [ ] R-05 給湯器の交換にかかる日数 / 資料: kyutoki-kokan.txt
(以下 R-10 まで、資料のそろった行が続く)
上から3行に、別々の止まり方を仕込んであります。
| 行 | 仕込んだこと |
|---|---|
| R-01 | 資料が取れない(資料集には (取得できませんでした: 404 Not Found) の1行だけ) |
| R-02 | 資料はあるが、受付開始日が 2026-07-14 と 2026年7月4日 の2通り書いてある |
| R-03 | 資料名は「北支店の来客数」なのに、中身は南支店の備品発注データ(先頭が KX-2200) |
2本目は経理の下調べで、「請求書の突き合わせ待ち行列」10行です。同じ3種類を、0バイト の空ファイル・締め日が 2026年7月5日 になっている請求書・宛先が 株式会社ひばり工房 になっている請求書として仕込みました。
この6行それぞれに、「行の名前・資料のファイル名・止まった理由を特定する文字列」の3つを埋めてあります。あとから機械で数えるためです。
そのうえで、いちばん素朴な頼み方から始めます。
(この下に、上の待ち行列と資料集をそのまま貼ります。以下の指示文もすべて同じです)
なぜこの言い方か。「ここに書いたものが、そのまま明日のファイルになります」を先に宣言しておくと、あとで「会話に書いたことは明日に届かない」を測れる形になります。自動実行では返事の本文は捨てられ、ファイルだけが翌日に渡るからです。
2. 「日付が食い違う行」は、止まる行にならなかった
書き始める前の見立ては外れました。3行のうち止まったのは2行だけです。
受付開始日が2通りある行(R-02・S-02)は、20回とも - [x] になりました。AIは食い違いに全部気づいたうえで、「開始日は資料だけでは決められないので、記事に書く前に市への確認が要る」と注記を添えて処理を終えています。
私が「止まる理由」に数えていたものは、実際には「処理して、注記を付ける理由」でした。この材料を作ったときの想定のほうが間違っていたので、真値を作り直しています。
資料が取れない行と、中身が別案件の行の2行は、20回とも - [ ] のまま残りました。行の消失も、済の印の付け間違いも0件です。
3. 「何が起きたか・何を試したか・次に何をすれば直るか」を足す
既存記事が勧めているのがこの形です。1で貼った指示文の「処理できなかった行があれば〜」の行を、下の一文に差し替えます。
メモは1,004字から1,254字に伸びました。中身も読みやすくなり、行ごとに3つの見出しが付きます。
ところが、仕込んだ6個の値がメモに残った数は 20/24 から 21/24 になっただけでした。
落ちるものは決まっています。調べもののほうは KX-2200(別案件だと分かる品目コード)が6回とも落ちました。請求書のほうは seikyu-shinonome-06.txt(宛先違いの請求書のファイル名)が6回中4回落ちています。
理由は読むと分かります。メモは「南支店の備品発注データ」「東雲メンテナンス」と、人が読んで分かる言葉に言い換えて書いてあります。読み物としては正しいのに、翌日がファイルを探すときに使う文字列だけが消えている、という形です。
4. 「会話ではなくファイルにだけ書いて」は、8回とも守られなかった
自動実行では返事が捨てられるので、そう伝えてみます。3の一文の後ろに、下を足します。
メモは1,721字まで伸びました。行ごとの説明が厚くなり、翌日向けの見出しも増えます。
それでも、「私への連絡」の欄には毎回文章が書かれました。この一文を入れた版と、次の5で足す版を合わせて8回すべてで、481字から702字の連絡文が付いています。0字だった回は0回です。
しかも、そこに書かれていた内容は捨てるには惜しいものでした。「止まっている行が先頭に残り続けると後続が進みません」「他社宛の請求書が届いているということは、こちらの請求書が他社に届いている可能性もあります」——どれも明日には残りません。
この形は待ち行列の「済」の印を、翌日まで生き残らせるで1度出ています。あちらは印が残るかの話で、こちらは文章の置き場所の話です。禁止の一文では動きませんでした。直し方は後半に書きます。
5. 「そのままコピーして貼って」を足すと、6個とも残る
4の一文の後ろに、下を足します。
4回とも、仕込んだ6個の値が24個中24個そのまま残りました。落ちた値は0個です。
メモは2,316字になりました。そのまま頼んだときの2.3倍です。ただし増えたぶんの大半は引用で、判断の文章ではありません。
📌 「言い換えずに」の3文字が効いています。3の版でも4の版でも、AIは同じ内容を自分の言葉でまとめ直していました。まとめ直した瞬間に、ファイル名とコードが消えます。
6. メモだけを、翌朝のまっさらな会話に渡す
ここからが本題です。20回ぶんのメモのうち16通を、1通ずつ別の会話に渡しました。待ち行列も資料も、前日の会話も渡していません。
1つ目は16回とも正解でした。止まった2行を、2行とも名指ししています。
3つ目が割れました。
行の番号そのものは、16回とも答えの中に出てきます。それでも 12回中7回は「このメモからは決まらない」でした。断った理由は返り自身が書いています——「その行が本当に未着手かはメモに書かれていない」「その行が何の行なのか(取引先名)はメモに書かれていない」。
メモは「明日は R-04 以降に進めるかを判断してほしい」と書きます。それは相談であって、宣言ではありません。読む側は、その行がまだ手つかずだと確かめられないのです。
7. 「次はこの行から: 」を1行だけ書かせる
5で足した一文の後半が、これに当たります。書かせた4回のうち3回は、翌日がその1行を根拠に正しく答えました。
残る1回は、AIが「次はこの行から」に止まっている行のほうを書きました。翌日はそれを見て、正しく「このメモからは決まらない」と答えています。受け皿を作っただけでは、そこに何を入れるかは決まりません。
うまくいかないときの言い直し方
「次はこの行から」に、止まった行が書かれる
5の一文の末尾に、下を足します。
この一文を足して、外れたほうの材料で2回走らせたところ、2回とも未着手の行を書きました。仕込んだ6個の値も 12個中12個そのまま残っています。
大事なことが「私への連絡」に書かれてしまう
禁止では動きません。4で見たとおり、「会話ではなくファイルにだけ書いてください」は8回とも守られませんでした。効いたのは、書く場所そのものを消すことです。【返してもらう形】を2つに減らします。
2回とも、連絡の見出しごと出てきませんでした。返答は引き継ぎメモの最終行で終わります。しかも捨てられていたはずの気づきが、メモの中に移りました——2回目は「今日わかったこと(次回に効く)」という見出しを自分で作り、「資料はファイル名ではなく中身が行の題目と合っているかを先に見る」と書いています。
⚠️ この形にすると、あなたが読む文章は無くなります。毎朝ひとりでに走らせるならそれで正しいのですが、手で動かしているうちは、返事を読めなくなることを承知のうえで切り替えてください。
メモが長すぎて、翌朝そのまま貼れない
長さのほうは、削っても構いません。測ったかぎり、翌日が使ったのは引用した文字列と最後の1行だけでした。ただし削るときに真っ先に消えるのが、その引用です。短くしたら、6個の値がまだ入っているかを1度だけ目で確かめてください。
止まった理由そのものが分からない
この記事は「止まったあとに残る文字」の話です。なぜ止まったのかを絞り込むほうは、動かなかった朝の原因を絞るにあります。先にそちらで原因を1つに決めてから、この記事の形でメモに残すと噛み合います。
翌日が、メモに無いことを勝手に埋めていないか心配
埋めませんでした。16回とも、足りない情報を「メモに書かれていない」と名指ししています。連絡先・依頼先・元のURL・置き場所——1回あたり2件から9件、自分から並べました。翌日に不足を挙げさせるのは、そのままメモの改善点の一覧になります。
応用・次の一手
このメモの検査は、1日ぶんで終わります。書かせたメモを別のまっさらな会話に貼って、6の指示文をそのまま聞くだけです。答えが返らない項目が、そのままメモに足すべき項目になります。
📌 毎朝ひとりでに走らせるなら、毎日決まった時刻にAIを動かすの形に載せられます。そのとき、この記事の指示文をそのまま保存版にしてよいのは、5と、言い直し方の2つを足したものです。3と4だけでは、翌日が動けない回が残ります。
材料の点検を先に置くと、止まる回そのものが減ります。入り口で数を数える形は定期実行が本当に動いたかを、材料の数で確かめるにあります。
⚠️ 今回試したのは「1日止まって、翌日に渡す」の1回ぶんだけです。止まったまま何日も続いた場合にメモがどうなるかは測っていません。
手で回している人へ。同じことを毎週やっているなら、まず1回だけ手で走らせて、その返りを翌週の自分に渡してみてください。渡してみて初めて、何が足りないかが分かります。このサイトの調べものの待ち行列は、その1回から始まっています。
📌 この記事の実測は、架空の待ち行列2本・全20回と、翌朝の会話16回(のべ36通の返り)です。判定はすべて機械照合で、生の返りは docs/evidence/memo-that-names-the-next-row.md に全文置いてあります。