これで何ができるか
副業の作業記録を付けていると、ある偏りが起きます。記録に残っているのは、たいてい「もう何度もやっている取引先」の仕事です。初めての相手との1件目は、まだ記録を取る習慣がなかったころだったり、記録があっても「初回だから」という欄が無かったりします。
そこへ、初めての相手からの依頼が来ます。その見積もりを、続けている取引先の記録から出すとどうなるかを試しました。
架空の作業記録3本(K社の4件目・5件目、M社の3件目=すべて続けている相手)と、新しい案件を2本(A=「この発注元は初めてです」/B=「K社からは6件目です」)用意し、7個の指示文を合わせて20回通しています。初回にだけ発生する工程は4件(様式の読み合わせ・連絡手段とアカウントの用意・テスト納品の1本目・請求書の書式合わせ)を先に決め、記録のどこにも書いていないことをコードで確かめました。
- 穴は自分から指摘されました。そのまま聞いた2回とも「3件とも慣れている発注元です。初めての発注元の記録が1件もありません」と返ります
- 同じ返りの中で、その穴を推測の数字で埋めて合計に足します。記録から出るのは405分前後なのに、提示された合計は500〜600分
- 「記録に対応する行が無い工程は、数字を出さずに『記録なし』と書いてください」を足すと、405分・408分で止まります
初回にかかる時間を決めるのは、AIではなくあなたです。推測の数字が入ること自体は悪くありません。それが合計に溶けて、記録から出た数字と見分けがつかなくなるのが問題です。
前提
| かかる時間 | 15分 |
| 費用 | 無料。ブラウザのチャットAIで足ります |
| 必要なもの | 過去の作業記録(工程ごとの分数)と、新しく来た案件の条件 |
| プログラミング | 不要。2つを貼って、指示文をコピーするだけです |
1件が何時間かかるかを記録から出す手順そのものは案件にかかる時間を、AIに当てさせず自分の記録から出すにあります。この記事はその続きで、扱うのは「記録の中の欠測」ではなく「記録に構造的に一度も現れない工程」です。前者は書き忘れですが、後者は書き忘れではなく、そもそも起きていないので、記録を見直しても増えません。
同じ穴は手順書でも起きます。手順書をAIにそのとおり実行させて、穴を見つけるに「手順書を書くのは毎月やっている人なので、一度やれば二度と要らないものがまるごと抜ける」とあります。書く人が慣れている、というだけで同じ形の穴が空きます。
AIへの頼み方
1. まず、そのまま聞いてみる
材料2本×各2回=4回。初めての相手(材料A)の2回とも、穴は自分から出ました。
記録1 → K社の4件目/記録2 → K社の5件目/記録3 → M社の3件目 3件とも「もう慣れている発注元です。」初めての発注元の記録が、1件もありません。
これは不完全な材料を貼ると、穴のほうが返ってくるという形で、記録を渡す価値そのものです。
問題はその先です。同じ返りが、初回の上乗せを分数で書いて合計に足しました。
本体 360分(記録から) 初回だけの上乗せ 60〜120分(推測。記録に材料なし) 修正 40分 × 2〜3回 80〜120分 合計 500〜600分 = 8時間半〜10時間
「推測」と書いてあります。それでも合計は1本の数字になっていて、下の行だけを取り出すことはできません。もう1回のほうは「8〜10時間(500〜600分)で見ておくのが安全」と冒頭に結論を置きました。記録から出るのは405分前後です。
続けている相手(材料B)の2回では、初回だけの工程は1件も出ませんでした。合計も400分・400〜430分で、記録どおりです。
2. 「記録なし」と書かせる
4回。材料Aの2回とも、合計は405分・408分にとどまりました。初回の工程は名前だけが並び、分数は付きません。
記録なしの工程 ・レギュレーション・執筆マニュアルの読み込み — 記録なし ・初回のすり合わせ(要件確認・方向性の相談) — 記録なし ・テストライティング・サンプル提出 — 記録なし
同じ返りが、こうも書いています——「上の405分は『N社が2件目以降になったときの数字』に近いと考えたほうが安全です。上振れの方向にどれくらいかは、記録が無いので出せません」。出せないことが、出せないと書かれている状態です。
3. 初回だけの工程を別枠にして、時間は空欄のままにさせる
4回とも、別枠の時間は空欄のまま返りました。「そこは私が入れます」と書いておくと、AIは空欄を空欄のまま返します。
続けている相手にこれを渡すと、初回の工程が並びます——ただし今回は、返り自身が線を引きました。
ひとつ確認させてください。今回はK社からの6件目なので、この別枠は今回の案件には発生しません。ご依頼どおり別枠として挙げましたが、今回の見積もりに乗るものではなく、次に新しい発注元と組むときのひな形として使う想定で合っていますか。
架空の初回工程を今回の見積もりに混ぜた回は、20回で0回でした。相手が何件目かは材料に書いてあるので、そこは埋められずに判定されます。
4. 「まだ計算しないでください」で、工程の名前だけ出させる
各材料1回ずつ。返りは729字・691字と短く、合計の数字は2回とも0件でした。見積もりを出す前に、まず何が起きるかだけを確かめたいときの形です。
5. 「毎回」と「初めてのときだけ」に分けさせる
各材料1回ずつ。「記録あり/記録なし」の印が付くので、記録を増やすべき場所がその場で分かります。
6. 初回の分数は、自分で決めて渡す
各材料1回ずつ。渡した4件の数字は1分も変わらず、記録から出た405分と別の行のまま、合計570分になりました。
ここまで来ると、570分のうち165分は自分が決めた数字だと分かった状態で相手に出せます。指示文1の500〜600分とは、数字の近さではなく出どころの分かりやすさが違います。
7. 毎回使う保存版
各材料1回ずつ。357字と424字。続けている相手のほうは、3つ目の欄がこうなりました。
【この発注元が初めてなら追加で発生する工程】
該当なし(K社は6件目のため)
うまくいかないときの言い直し方
合計が実感より大きいのに、どこが大きいのか分からない
指示文2に戻してください。「記録に対応する行が無い工程は、数字を出さずに『記録なし』と書いてください」の一文で、合計は記録から出る数字に戻ります。
そのうえで、記録なしの行に自分で分数を入れて指示文6の形で足し直してください。同じ570分でも、内訳の165分を自分が決めたことが残ります。
初回だけの工程が、毎回ちがう内訳で出てくる
これは実際に起きました。4件仕込んだうち、そのまま聞いた材料Aの2回は3件と1件です。同じ指示文なのに、2回目は様式の読み込みしか挙がりませんでした。
特に「テスト納品の1本目」は出にくい——こちらから名前を渡さなかった18回のうち、出たのは2回だけでした。1回聞いて満足しないでください。初回の工程の一覧は、AIに毎回作らせるものではなく、自分の側に持っておいて毎回貼るものです。
続けている相手の案件にも、初回の工程が並んでしまった
指示文3の形だと、別枠自体は作られます。ただし今回は、返りが自分で「今回は6件目なので発生しません」と断りました。断り書きが無い回に当たったら、指示文7の保存版に切り替えてください。3つ目の欄が「該当なし」と書かれる形になります。
応用・次の一手
初回の一覧を、自分の様式として固定する
指示文6で渡した4件は、一度決めたら毎回同じものを貼るのがいちばん確かです。AIに毎回作らせると、上のとおり内訳が回ごとに変わります。
起きなかった回も、0分と書いて残してください。「テスト納品なし=0分」と記録が残っていれば、次に同じ発注元から来たときに「初回だけ何分余分にかかったか」が実測で出ます。この一覧が育つと、この記事の推測はまるごと不要になります。
毎回やるなら、決まった時刻に動かす
保存版(指示文7)は357〜424字しか返らないので、置きっぱなしにできます。案件が定期的に来るなら、決まった時刻に走らせて結果をメモに残す形まで持っていけます(「毎日決まった時刻に自動でやっておいて」をAIに作らせる)。
その際は必ず2回走らせて突き合わせてください。この記事でも、同じ指示文の2回で初回工程の数が3件と1件に割れています。
出した見積もりを、時給に直す前に
初回コストは、終わった記録には残りません。だから副業の本当の時給を、自分の作業記録から出すで集計しても、初回にかかった時間は最初から入っていない可能性があります。初回の案件だけは、記録の取り方を変えてください。
📌 今回は「記録に無い工程」の話でしたが、発注書の条件どうしがぶつかっている場合は別の測り方が要ります。発注書の矛盾を、書く前に洗い出すにまとめました。
⚠️ この記事の数字は、すべて架空の作業記録から出したものです。初回にかかる時間をいくつにするか、その見積もりで受けるかどうかは、AIではなくあなたが決めてください。発注元がAIの利用を制限している場合は、その指示に従ってください。