これで何ができるか
副業で受けた仕事の発注書を読んでいて、こう思ったことはないでしょうか。「2,000字以上」と書いてあるのに、その2行下に「見出しは4つまで・各300字以内」と書いてある。掛けると1,200字にしかなりません。どちらかが間違っています。
この種のぶつかりは、書き終わってから気づくのがいちばん高くつきます。書く前に、機械のように洗い出させるのがこの記事です。
架空の副業の発注書を2本(記事1本の執筆/ネットショップの商品紹介ページ)作り、それぞれに同時には守れない条件を6組と、単に書かれていない項目を6件(想定読者・締切・納品形式・図の要否・キーワード・修正回数)仕込みました。7個の指示文を合わせて22回通しています。
- 黙って片方を捨てた回は0回でした。22回とも、仕込んだ6組を6組とも挙げます
- かわりに、発注書のどこにも書いていない「発注元の意図」を当ててきます——「禁止語リストの先頭は書き間違いではないか」「12が旧テンプレの残りではないか」
- 「矛盾を挙げて」と聞いた4回は、単に書かれていない項目を1件も挙げませんでした(0/6が4回)
どちらを優先するかを決めるのは、あなたと発注元です。AIに任せてよいのは「ぶつかっている場所を並べるところ」までで、その先は渡さないほうがいい、というのがこの記事の結論です。
前提
| かかる時間 | 15分 |
| 費用 | 無料。ブラウザのチャットAIで足ります |
| 必要なもの | 発注書(または募集要項)と、支給された素材 |
| プログラミング | 不要。2つを貼って、指示文をコピーするだけです |
発注元がAIの利用を禁じている場合があります。規約や指示書を先に確かめ、禁じられているなら使わないでください。この記事の使い方は「自分が受け取った発注書を自分で読み解く」ところまでで、AIに原稿を書かせて納品する話ではありません。納品物そのものの検品は発注書と自分の原稿を、AIに突き合わせさせるにあります。
なお、条件どうしがぶつかる現象そのものは副業に限りません。外国語の資料を、社内で出せる日本語に直させるでも「原文に無いことを足さない」と「専門用語に言い換えを添える」が正面からぶつかりました。
AIへの頼み方
1. まず、そのまま書かせてみる(比較の土台)
材料2本×各2回=4回。4回とも、仕込んだ6組が6組とも挙がりました。「黙ってどちらかを捨てて書き上げる」は、この22回では一度も起きていません。
問題は、挙げたうえで片方を選んだ原稿が付いてくることです。4回のうち3回が、そのまま原稿・暫定稿・下書きを付けました。選んだ根拠は、返り自身がこう書いています。
3:素材に価格がないため、13(触れない)を採用しました。 4・5:3の字数上限を優先し、900字前後で仕上げました。
もう1本の材料でも同じ形が出ました。
→ 下書きでは、より新しい判断と思われる項目13(触れない)に寄せてあります。
「より新しい判断と思われる」——発注書には、どちらが新しいかは1文字も書いていません。
2. 「足りない情報を挙げてください。まだ書き始めないでください」
これは足りない情報を先に聞かせるで使った指示文を、そのまま発注書に当てたものです。
4回。矛盾6組は4回とも6/6、そのうえ書かれていない項目も出ました。ただし数が4件・6件・4件・3件と回ごとに割れます。同じ指示文を2回通しても、出てくる欠落の数は同じになりません。
3. 「対にして挙げて」+「どちらを優先するかは決めないでください」
この記事でいちばん効いた形です。
4回とも6/6。「どちらを優先するかは決めないでください」を入れたこの4回は、発注元の意図を当てた文が0文でした(この一文を入れた指示文3・5・6の8回のうち、意図の推測が入ったのは2文だけで、どちらも「確認します」という形に収まっています)。返りはこうなります。
以上6組+1点について、どちらを優先するか(あるいは条件自体を差し替えるか)をご指示ください。方針が決まり次第、執筆に入ります。
4. 「決めないでください」を外すと、何が戻るか
同じ指示文から、最後の1行だけを抜いた版です。
各材料1回ずつ、計2回。矛盾の検出は変わらず6/6です。戻ってきたのは推測のほうで、2回とも2文ずつ入りました。
禁止語リストの雛形に商品名の欄が残ったまま、という写し間違いの可能性が高そうです。 確認したいこと: 13が新しい方針で12が旧テンプレの残り、という形をよく見ます。
もっともらしいのですが、根拠は発注書の外にあります。「よく見ます」は世間一般の話であって、この発注元の話ではありません。そのまま発注元に投げると、「あなたのテンプレが古いのでは」と言っていることになります。
5. 組ごとに〔私が決める〕欄を残させる
確認メールの材料まで作らせる形です。
各材料1回ずつ。両方の条件が引用で並ぶので、発注書を開き直さずに確認メールへ写せます。引用させる形は、数を数えさせるより確かめやすいという理由でこのサイトの他の記事でも使っています。
6. 書かせる。ただし守れない組は本文を書かせない
確認の返事を待たずに進めたいとき用です。
各材料1回ずつ。2回とも6組が末尾に並び、片方を選んだ宣言は0文でした。返りはこう書いています。
5の禁止語リストに誤って混入した可能性はありますが、こちらでは判断していません。
「可能性はある」と「判断していない」が分かれているのがこの形の値打ちです。指示文1では、同じ推測が判断とくっついて原稿に反映されていました。
7. 毎回使う保存版
材料2本×各2回=4回。返りは368字から595字まで縮み、矛盾6組も、書かれていない6件も、4回とも全部そろいました。
【同時には守れない組】
項目2 ↔ 項目3:「本文全体で2,000字以上」↔「見出しは4つまで。各見出しの本文は300字以内」
項目4 ↔ 項目5:「『食洗機』ではなく『食器洗い乾燥機』と書く」↔「使ってはいけない語:食器洗い乾燥機」
...
うまくいかないときの言い直し方
矛盾は出たのに、書いていない項目が1つも出てこない
これがこの記事でいちばん効きの大きい発見です。「同時には守れない組を挙げて」と聞いた4回は、単に書かれていない6件を1件も挙げませんでした(0/6が4回)。そのまま書かせた4回も同じく0/6です。
AIが見落としているのではありません。同じ材料に「足りない情報を挙げて」と聞けば3〜6件出ますし、両方を名指しした保存版なら4回とも6/6です。聞いた側しか返らない、というだけです。
矛盾と欠落は性質が違います。矛盾は発注書の中だけで成立が決まるので、探せば必ずそこにあります。欠落は「無いもの」なので、指させる文がありません。別々に、名指しで聞いてください。
「これは誤記だと思います」と言われて、そのまま発注元に送りそうになる
指示文3・6の形に戻してください。「どちらを優先するかは決めないでください」「あなたが決めないでください」を入れると、推測と判断が切り離されます。
送る前に、その1文が発注書のどの行を根拠にしているかを探してください。探して見つからなければ、それはAIが世間の相場から埋めた文です。確認メールには「4と5がぶつかっています。どちらが正でしょうか」とだけ書けば足ります。
保存版なのに、挙がる組の数が回によって違う
実際に起きました。材料Aの2回は7行と8行です。仕込んだ6組はどちらの回にも全部入っていて、増えたのは素材の側から来る本物の組でした(「各節に一次情報のURLを入れろ」×「素材にURLが1件も無い」など)。
行数だけを見ていると、増えた回を「今日は多いな」で流してしまいます。毎回、項目番号のペアを目で追ってください。前回と同じ発注元なら、ペアの並びもほぼ同じになるはずです。
応用・次の一手
発注書が来るたびに、自動で1回通す
保存版(指示文7)は368〜595字しか返らないので、置きっぱなしにできる形です。同じ発注元から毎月来る案件なら、決まった時刻に走らせて結果をメモに残すところまで持っていけます(「毎日決まった時刻に自動でやっておいて」をAIに作らせる)。
そのときは2回走らせて突き合わせてください。1回では「毎回同じ形で出る」とは言えません。実際、この記事の保存版も材料Aで7行と8行に割れています。
確認の返事が来るまでの過ごし方
矛盾6組の回答を全部待つと、着手が止まります。指示文6の形で「守れる組だけ書いて、守れない組は末尾に積む」を使うと、待ち時間に進められる範囲だけが進みます。
📌 見つかるのは、発注書に書いてある条件どうしがぶつかっている場合だけです。発注書は矛盾していなくても、記録そのものに一度も現れない作業が見積もりに紛れ込むことがあります。それは初めての取引先の見積もりを出すで扱っています。
⚠️ この記事の数字は、すべて架空の発注書から出したものです。どちらの条件を優先するかは、発注元に確かめて決めてください。AIが挙げた組はあくまで「確かめる場所の一覧」であって、答えではありません。