これで何ができるか
キャッチコピーの案出しは、AIがいちばん気持ちよく応えてくれる仕事です。「30案出して」と言えば、きれいに30行返ってきます。
問題は、その30が何の数かということです。返ってきた案の数であって、選べる案の数ではありません。
架空の商品を2件(中小企業向けの勤怠管理アプリ/山あいの小さな温泉旅館)と、○×が機械で決まる4条件だけを並べた架空の発注書を作りました。条件は「全角20字以内」「『勤怠』を必ず入れる」「禁止語3語を使わない」「英数字を使わない」の4つで、どれもコピー1本を渡せばコードだけで判定できます。6個の指示文を合わせて24回通しました。
- 返ってきた案は、24回とも30案ちょうどでした。数はいつも合っています
- 🚨 条件を渡さないと、通ったのは4件・4件・0件・0件。温泉旅館の材料では2回とも0件——30案あって、1案も使えません
- 条件を渡した4回は、4回とも30案すべてが通りました
- 🚨 〔条件外〕の欄を作ると、その欄を埋めるための案が8〜11件作られます。総数は30のままなので、使える案は19〜24件に減ります
商標や既存のコピーと衝突しないかは、AIに判定させないでください。この記事でAIにやらせるのは、発注書に書いてある条件の○×までです。出てきた一覧は納品物ではなく、「20件のリスト」は自分が確かめる作業リストとして受け取ると同じで、自分が確かめる作業リストとして受け取ります。
前提
| かかる時間 | 20分 |
| 費用 | 無料。ブラウザのチャットAIで足ります |
| 必要なもの | 商品の説明と、発注書(○×が決まる条件が書かれているもの) |
| プログラミング | 不要。貼って、指示文をコピーするだけです |
発注元がAIの利用を禁じている場合があります。規約や指示書を先に確かめ、禁じられているなら使わないでください。この記事は「案を出す作業をAIに丸投げして納品する」話ではなく、自分が選ぶ前の下ごしらえです。
この仕事の単価も置いておきます。
AIへの頼み方
1. 条件を渡さないと、30案のうち0〜4件しか通らない
まず商品の説明だけを貼って、こう頼みます。
4回とも、きっちり30案返ってきました。中身も悪くありません。「月末が、ただの月末に戻る。」「何もない、が贅沢になる場所。」——読むぶんには十分です。
🚨 ところが、発注書の4条件を当てると 4件・4件・0件・0件でした。温泉旅館のほうは、2回とも1案も通っていません。理由は単純で、「温泉」という語がどの案にも入っていないからです(「湯」「露天」「湯宿」で書かれています)。
これは案の質の問題ではありません。条件を渡していないので、AIは条件を知らないだけです。それでも画面には「30案」が並びます。
2. 条件を一緒に貼るだけで、30案すべてが通る
発注書の条件を、指示文と一緒に貼ります。これが実測でいちばん効いた一手です。
4回とも30案すべてが4条件を通りました(機械判定です)。字数も、必須語も、禁止語も、英数字も、120案ぶん見て違反ゼロです。
📌 このとき、返りのほうから「人数を出したい案は『三十人』と漢数字にしました」と書いてきます。条件4(英数字を使わない)を回避する手を自分で見つけているわけです。
3. 「条件を満たさない案は出さないで」を足しても、変わらない
念のため、禁止の一文を足した版も4回通しました。
数字は§2とまったく同じ(4回とも30/30)でした。足しても悪くはなりませんが、良くもなりません。条件を渡した時点で、もう守られているからです。
4. 〔条件外〕の欄を作ると、使える案は減る
落とした案も見たくなります。落ちた理由が分かれば、次の発注で条件を交渉できるかもしれません。そう思って、受け皿の欄を作らせました。
🚨 使える案が 20・19・21・22件に減りました。総数は4回とも30案のままです。〔条件外〕に入った8〜11件を読むと、こうなっています。
- 「日本一かんたんな勤怠アプリ」——条件3違反
- 「業界初、勤怠はスマホだけで」——条件3違反
- 「30人までの会社の勤怠管理」——条件4違反
禁止語も全角数字も、条件を渡した§2の120案には1件も出てきませんでした。つまりこれらは、〔条件外〕の欄を埋めるために作られた案です。
🔑 受け皿を作ると、その受け皿に入れるものが作られます。落ちた理由の見本としては読めますが、「30案のうち10案が落ちた」ではありません。ここを取り違えると、条件が厳しすぎると勘違いします。
✅ そのかわり、判定そのものは完全に正確でした。〔使える案〕に紛れ込んだ違反も、〔条件外〕に誤って捨てられた案も、4回とも0件でした。条件が機械で決まるものなら、AIの○×は当てになります。
5. 一覧を「自分が確かめる作業」に変える
条件の○×はAIで足ります。足りないのは、確かめようがないことのほう——商標、既存のコピーとの衝突、その言い方を自社が言えるかどうか。そこを自分の作業として書き出させます。
4回とも、1案ごとに1つの確認事項が付きました。「『残業が消える』と言い切れる導入先の実績が手元にあるか」「送迎は行き帰りとも出るのか、片道だけか」——商品説明に書いていないことばかりです。そして4回とも、商標との衝突は判定していません(禁じたとおりです)。
6. 毎回同じ形にするなら、2見出しだけに固定する
案件が続くなら、返る形を固定します。
4回とも2つの見出しだけで返り、余計な前置きは0行でした。使える案は 24・20・22・19件。この幅は毎回ありますので、「今日は少ない」と気にする必要はありません。
うまくいかないときの言い直し方
案が似たり寄ったりに見える
数えてみると、思ったほど重なっていませんでした。条件を渡した30案の中に、完全に同じ案は1組もありません。文字の重なりでゆるくまとめても25〜30種で、言い換えだけの水増しは起きていないというのが実測です。
似て見えるのは、条件2(必ず入れる語)のせいです。30案すべてに「勤怠」または「温泉」が入るので、頭から読むと同じに見えます。⚠️ 条件を緩める交渉をする前に、必須語を外した部分だけを見比べてください。
もっと案が欲しい
同じ指示文をもう一度そのまま通してください。2回転で完全に同じ案が出たのは、24回を通して0〜2件でした。つまり2回走らせれば、案はほとんど2倍になります。
⚠️ ただし2回目も「30案」と返ってくるので、合わせて何案あるかは自分で数えてください。この種の数の申告はAIに任せた作業は、報告ではなく現物で確かめるの型そのものです。
条件が「機械で決まらないもの」ばかりの発注書だった
「若々しい印象で」「上品に」のような条件は、この記事のやり方では判定できません。この記事が扱ったのは、字数・必須語・禁止語・文字種の4つだけです。
機械で決まらない条件は、AIに判定させても回ごとに答えが割れます(発注書と自分の原稿を、AIに突き合わせさせるに実測があります)。割れた項目は、AIに聞き直さずに発注元へ質問してください。
応用・次の一手
条件表を1つのファイルに置いて、案件ごとに数字だけ差し替える。§6の指示文は、条件の中身が変わっても形が変わりません。案件が続くほど、貼るだけで済むようになります。
毎週決まった時刻に走らせる形にする。同じ商品で案を貯めていく仕事なら、決まった時刻に回して貯めるほうが確実です。仕組みはGitHub Actionsで、毎日決まった時刻に動かすにまとめてあります。
発注書の条件が矛盾していないかは、案を出す前に確かめる。「20字以内」と「商品名と機能を両方入れる」が同時に来ることがあります。書く前の洗い出しは発注書の矛盾を、書く前に洗い出すにあります。
今回の数字はすべて架空データでの実測(材料2件 × 各2回 = 1つの頼み方につき4回、全24回)です。生の返りと判定コードは docs/evidence/count-copy-ideas-that-pass.md に全文置いてあります。