これで何ができるか
クラウドソーシングには「リスト作成」という仕事の区分があります。条件を渡されて、当てはまる会社や店を何十件か集める仕事です。AIに条件を渡せば一瞬で終わりそうに見えます。
実際にやってみると、そうはなりませんでした。架空の条件(関東の中小の印刷会社を20件・連絡先つき)で頼んだところ、4回とも、社名は1件も返ってきませんでした。断られたのです。
この記事は、その先の話です。AIが作れるのは納品物ではなく、自分が確かめるための作業リストでした。自分で集めた候補25件を渡して条件で絞らせた3回は、3回とも同じ形に割れています。
前提
| かかる時間 | 30分(候補を集める時間は別) |
| 費用 | 無料。無料のチャットAIで足ります |
| 必要なもの | 自分で集めた候補の一覧(会社名・所在地・業種などが1行に並んだもの) |
| プログラミング | 不要。この記事の指示文をコピーして貼るだけです |
この記事では、自動で集める手口(スクレイピングなど)は扱いません。集め方はサイトの規約に触れることがあるためです。扱うのは、集めたあとに何をAIにやらせるかだけです。
この仕事の単価がどのくらいかも置いておきます。
この「1件2分」は、確かめる時間です。確かめずに出す前提の速さではありません。この記事の指示文は、その2分を短くするためのものです。
AIへの頼み方
以下は架空の発注条件(関東・印刷会社・従業員100人以下)と、架空の候補25行での実測です。候補の会社はすべて架空で、こちらが作りました。
1. まず、AIに集めさせようとするとどうなるか
4回試して4回とも、社名は1件も返りませんでした。断られた理由も4回ともほぼ同じで、返ってきた文をそのまま引くとこうです。
それらしい形式の番号やドメインを出すことはできますが、それは事実上の捏造です。
たちが悪いのは実在する無関係な会社の番号が紛れ込むケースです。
⚠️ これは「どのAIでも必ず断られる」という意味ではありません。検索機能が動く状態なら別の返りになりますし、この結果は試した環境での4回ぶんです。
🔑 大事なのは断られたことではなく、断り文の中身でした。4回とも、集め方(組合の名簿・法人番号公表サイト・タウンページ)と確認手順、そして所要時間まで書いてあります。断り文が、そのままこの仕事の手順書になっています。そして4回とも、同じ申し出をしました——集めたものを貼れば、絞り込みと整形はできます、と。
2. 自分で集めた候補を渡して、条件で絞らせる
ここが本体です。先にこちらが候補を集めます。そのうえで渡します。
この25行には、こちらが先に仕込みを入れてあります。3条件すべてを○にできるのは7件だけで、12件は従業員数が空欄、3件は101人以上、2件は印刷会社ではなく、1件は静岡です。さらに1番と20番は同じ会社の表記ゆれです。つまり20件は、どうやっても作れません。
3回試した結果です。
| 1回目 | 2回目 | 3回目 | 真値 | |
|---|---|---|---|---|
| 20件を出したか | 出さない | 出さない | 出さない | — |
| 確定(3条件とも○) | 7件 | 7件 | 7件 | 7件 |
| 自分で確かめる(従業員数が空欄) | 11件 | 11件 | 11件 | 11件(+重複1) |
| 条件から外れる | 6件 | 6件 | 6件 | 6件 |
| 重複(1番と20番)を見つけたか | ○ | ○ | ○ | — |
3回とも「作れません」と断り、数をそろえるために条件外を混ぜた回は0回でした。返ってきた文はこうです。
無理に20件にすると、条件違反の会社を混ぜることになります。
🔑 値打ちは「20件が7件に減ったこと」ではありません。11件が自分の作業として残ったことです。この11件は、AIには決められません。決められないことが、こちらに見える形で分かれています。
3. 判定は「○/×/確かめていない」の3つで書かせる
2択にすると、決まらないものがどちらかに寄ります。行き先を3つ作ります。
2回試して、25行×3条件=75マスすべてが真値と一致しました。「確かめていない」に入るべき12マスも、2回とも12マスちょうどです。
⚠️ 効いているのは「推測するな」ではなく、「確かめていない」という行き先を作ったことです。禁止だけを渡すと、行き先が無いので推測が別の欄に混ざります。
2回とも、こちらが聞いていないのに範囲まで断りました——「業種欄の記載をそのまま採用しました。実際の事業内容までは確かめていません」。○の意味が「記載がそうなっている」に限定されます。
4. 「1件2分で確かめられる形」に変えさせる
ここで単価が決まります。確認に1件5分かかるか2分で済むかで、時給が倍以上変わります。
2回試しました。2回とも、「見当がつかない」に置いたのは同じ4行で、これは確認が要る12行のうち、こちらが「サイト不明」と書いておいた行と完全に一致します(25行全体では「サイト不明」は6行です)。存在しないURLを埋めた回は0回でした。1回目は理由まで書いています。
適当に検索結果ページを指定することもできますが、それは「どこを見れば分かるか」の答えにはなっていないので書きませんでした。
⚠️ 2回で違ったところもあります。1回目は確認が要る12行だけを表にし、2回目は25行すべてに「開かなくてよい」まで書きました。同じ指示文でも、表に出す範囲は割れます。2回目は所要時間まで出しました(開くのは8行・2分×8=約16分)。
うまくいかないときの言い直し方
発注元が「20件そろえてほしい」と言って譲らない
1回だけの結果です。不足13件と書いたうえで、条件ごとに増える件数が出ました。真値と全部一致しています——従業員150人以下まで許すと+1件、人数条件を外しても+3件、業種を広げても最大+2件、地域を外しても最大+1件。
🔑 いちばん効いたのは、返り自身が書いたこの一行でした。
B単独(最大9件)とC単独(最大8件)では20件に届きません。
「緩められる余地がどこにも無い」ことが、数で言えるようになります。これは発注元に持っていける材料です。「集まりませんでした」と言うのと、「地域条件を全部外しても8件です」と言うのは別のことです。
⚠️ どれを緩めるかは決めさせないでください。条件を動かすのは発注元との約束の話で、こちらが決めることではありません。約束をどう伝えるかは発注者への返事にあります(丁寧に書かせると、決めた条件のほうが消えます)。
一覧の見た目が整っていて、確かめたくなくなる
これがこの仕事のいちばんの罠です。表になった瞬間、全部の行が同じ顔になります。
今回の実測では、AIの側が3回とも欄を分けてくれました。ただし分けさせる指示文を書かなければ、同じ表に並びます。同じ型の事故は出品文を事実だけで書かせるでも出ています(あちらは1件の商品、こちらは何十件の一覧です)。
→ 「そのまま出せる行」と「私が確かめる行」を、別の表に分けて出してください。1つの表に印を付ける形だと、コピーしたときに印が落ちます。
応用・次の一手
確かめた結果を書き戻す欄を、先に作らせる
確認は自分の作業なので、書き込む場所が要ります。1回だけ試した結果です。
12行×3欄=36マスが、すべて空欄で返りました。埋める代わりに書き方の目安だけが添えられ、貼り付け用のTSVまで付いてきます。
「確かめた場所」の欄が、この仕事の成果物そのものです。納品するときに「どこを見て確かめたか」が1行ずつ残っていれば、それは確かめずに出したリストとは別の商品になります。
毎回同じ条件で集めるなら、自動にする
同じ発注元から似た条件で繰り返し受けるなら、条件文と絞り込みの指示文をファイルに置いて、決まった時刻に自動で動かす形にできます。⚠️ そのときも「確かめていない」という行き先を、指示文から落とさないでください——短くする工程で真っ先に削られるのは、出力の見た目に効かない一文です。
この記事の外に置いたもの
AIが出した実在の会社名は、この記事に1件も載せていません。確かめていないものを載せれば、この記事自身が「確かめずに納品する」ことになるからです。教材の25件はすべて架空です。
自分の中にある売り物を掘り出す話は売れるものの棚卸しにあります。この記事は逆で、外から集めたものをどう受け取るかの話でした。確かめる工程は消えません。消えるのは、確かめる場所を探す時間のほうです。