これで何ができるか

「納品したのに入金が無い」に一番早く気づけるのは、自分の記録とつき合わせたときです。ただし、突き合わせ方によって見落とすものが変わります

架空の納品記録12件と、架空の入金明細10行を用意しました。実際の案件には、素直に金額が一致するもの、同額でどちらの入金か決められないもの、1つの入金が2件ぶんまとめて払われたもの、振込手数料ぶん金額がずれるもの、そして本当に未入金のもの——を仕込んであります。

  • 同額の2件(甲社と戊商店、どちらも30,000円)をどちらか一方に決めつけて答えた回は、13回中0回でした。「決められない」ときは、ちゃんと「決められない」と言います
  • 🚨 ところが「1つの入金が2件ぶんの合算だった」ケースは、素朴に聞いた9回のうち3回しか見つかりませんでした。残る6回は、合算されている2件をそのまま「未入金」と判定しています
  • 「合算がないか確認して」と1文足すと、2回とも見つかりました(2/2)
架空の納品記録12件と入金明細10行を突き合わせる4つの頼み方を並べたマス目。同額の2件(甲社・戊商店)をどちらかに決めつけて誤配分した回は、素朴に聞いた版でも受け皿を用意した版でも0件。合算入金(LP制作Fと動画編集Gの2件ぶん)を正しく発見した回は、素朴な版で3回中0回、受け皿ありの版で3回中1回、行番号つきの版で3回中1回、合算チェックを明記した版で2回中2回だった。
同額の取り違えは0件のまま。動いたのは「合算に気づけたか」のほうです。

前提

かかる時間 20分
費用 無料。ブラウザのチャットAIで足ります
必要なもの 納品記録(案件名・取引先・金額・日付)と、入金明細(日付・摘要・金額)
プログラミング 不要。この記事の指示文をコピーして貼るだけです

口座番号や実在の取引先名は貼らないでください。明細は日付・摘要・金額の3列だけにし、口座番号を伏せてください。紙の書類をAIに読ませるときの下ごしらえにも同じ注意があります。

この記事はAIに「未入金かどうかの判断」をさせる話ではありません。候補を絞り込んで、人が確認する箇所を減らすところまでです。税務の判断(確定申告・所得区分)はここでは扱いません。

AIへの頼み方

1. まず素朴に聞く

まだ入金されていない案件を挙げてください。

上に続けて、納品記録12件と入金明細10行をそのまま貼ります。

3回とも、頼んでいないのに「明らかに未入金」と「要確認」を自分から分けて答えました。同額の2件(案件1と案件5、どちらも30,000円)をどちらか一方に決めつけることは、3回とも起きませんでした。

ただし3回とも、2件ぶんの合算入金(48,000円+32,000円=80,000円の1行)を見抜けず、その2件をそのまま「未入金」に入れました。合算されている入金は、単純な金額一致では見つかりません。

2. 「確かめる」の受け皿を作る

決められないものを、未入金と混ぜないための一言です。

まだ入金されていない案件を挙げてください。どの行と対応するか決められない案件は、「未入金」ではなく「確かめる」に分けてください。

同額の2件を確定的に誤配分した回は、これも3回中0回でした。合算入金への気づきは3回中1回に上がりましたが、まだ半分にも届きません。

⚠️ 1回だけ、同じ案件が「未入金」と「確かめる」の両方に登場する自己矛盾が起きました。受け皿を作っても、出力自体がその受け皿どおりに分かれているかは別に確認してください。

3. 対応させた行番号まで書かせる

まだ入金されていない案件を挙げてください。どの行と対応するか決められない案件は、「未入金」ではなく「確かめる」に分けてください。案件ごとに、対応させた明細の行番号を書いてください。同じ行番号を2つの案件に使わないでください。

3回とも、同じ行番号を2つの案件に使う誤りはありませんでした。「案件1と案件5、どちらも行4の候補」という書き方はしても、どちらか一方に行4を確定で割り当てることはしていません。行番号を書かせると、根拠が後から自分で追えます。

4. 「合算がないか」を名指しで確認させる

ここがいちばん効いた一文です。

まだ入金されていない案件を挙げてください。どの行と対応するか決められない案件は、「未入金」ではなく「確かめる」に分けてください。案件ごとに、対応させた明細の行番号を書いてください。同じ行番号を2つの案件に使わないでください。1つの入金明細行が、複数の案件の合計と一致することがないかも確認してください。

🔑 この一文を足した2回は、2回とも合算入金を見つけ、正しく「確かめる」に分類しました。版1〜3の9回では3回だった発見率が、この一文だけで2回中2回になっています。摘要(振込人名義)が一致しないことも自分から指摘しており、「金額が合うから確定」とは判定していません。

5. 決め手になる確認事項を1つだけ聞く

「確かめる」に残った案件について、次に何を見ればいいかも聞けます。

案件1(ロゴA制作/甲社/30,000円)と案件5(ロゴE制作/戊商店/30,000円)のどちらに行4(フリコミ・30,000円)の入金が対応するかを判断するために、次に確認すべき情報を1つだけ挙げてください。

「振込人名義が『甲社』か『戊商店』かを、通帳の記載で確認してください」という、版1〜4の「確かめる」欄と同じ答えが返りました。督促文や確認メールの文面は作らせていません。相手に送る文面が要るときは発注者への連絡文の記事を使ってください。

6. 聞き方を狭めると、見つかっていたものまで見失う

対比のために、あえて狭い聞き方も試しました。

下の入金明細10行のうち、納品記録12件のどれとも金額が対応しない行はどれですか。行番号だけ挙げてください。

🚨 この聞き方に変えた途端、振込手数料ぶん500円少なかった入金(案件9)まで「対応しない行」に含めてしまいました。版1〜4では9回+2回とも「500円足りないので要確認」と正しく拾えていたのに、金額の完全一致だけを聞くと、この差引ぶんは拾えなくなります。同じデータでも、聞き方を狭めると見落としが増えます。

うまくいかないときの言い直し方

同じ案件が「未入金」と「確かめる」の両方に出てくる

§2で実際に1回起きました。受け皿を作る指示文を使っても、出力そのものが受け皿どおりに一件ずつ分かれているかは別問題です。「未入金」と「確かめる」、両方に同じ案件が出ていないかを、自分の目で一覧を見比べて確認してください。AIに聞き直すより、出てきた一覧を並べて数えるほうが確実です。

合算入金に気づいてくれない

§4の一文(「1つの入金明細行が、複数の案件の合計と一致することがないかも確認してください」)を足してください。この記事の実測では、この一言だけで発見率が33%から100%に上がりました。まとめて振り込まれる取引先が多いなら、保存版の指示文に最初から入れておいてください。

摘要(振込人名義)だけで安心して確定してしまう

摘要のカタカナ表記だけで社名が一致しても、それだけで確定しないでください。今回の実測では摘要と金額が両方一致した案件だけを「入金済み」として扱い、片方しか合わないものは「確かめる」に残していました。この線引きを崩さないでください。

応用・次の一手

毎月やるなら、§4の一文まで含めた形を保存版にしてください。「合算がないか確認して」を外すと、振込がまとまる月にだけ見落としが増えます。

この型は入金確認以外にも使えます。1つの明細が複数の案件の合計と一致するかを見る、という考え方は、経費の突き合わせや月をまたぐ集計にも応用できます。

この記事は時給を自分の記録から出す記事の「納品済・未入金」という材料の列がどこから来るのかを、実際に突き合わせて確かめたものです。毎月の入金予定を出す話は契約額から手取りを出す記事の応用欄にも書きました。

⚠️ この結果は、この架空の12件・10行での実測です。「AIは合算を見逃す」と一般化せず、§4の一文を必ず添えて使ってください。督促や確定申告の判断は、この記事の外に置いています。

今回の生の返りと集計は docs/evidence/combined-payment-missed-as-unpaid.md に全文置いてあります。