これで何ができるか

作り始める前に、自分がやることの一覧が手に入ります。

AIに何かを作らせると、終盤になってこう言われます。

  • 「あとはGitHubでSecretsを設定してください」
  • 「APIキーを取得して貼り付けてください」
  • 「お使いの環境で実行してください」

どれも間違ってはいません。ただその作業が自分にできるかどうかは、頼む前には分からないまま進んでいます

実際にあった例を1つ。このサイト自体を公開したときの話です。ページを作る仕組みはAIが全部書きました。ところが公開の直前になって、人間にしかできない作業が3つまとめて出てきました。ドメインのDNS設定、HTTPSの有効化、検索エンジンへの登録です。どれもアカウントにログインして画面を操作する作業なので、AIは代わりにできません。

作業自体は難しくありませんでした。問題は、それが最後にまとめて出てきたことです。ドメインを取った日にまとめて済ませられたはずのものが、別の日に持ち越しになりました。この記事を書いている時点で、3つのうち2つはまだ終わっていません。

先に一覧さえ出ていれば、順番を入れ替えるだけで済んだ話です。

前提

かかる時間 5分
費用 無料
必要なもの 特になし(チャット画面だけのAIでも効きます)
プログラミング 不要

このサイトの他の記事と違って、手元で動かせるAIは要りません。分担を答えるのに実行環境は不要だからです。AIに「たぶん動きます」と言わせない の指示文は実際に動かせるAIが前提でしたが、この記事のものはチャットだけでも使えます。

ひとつ誤解を解いておきます。これはAIに全部やらせるための話ではありません。アカウントの作成、支払い情報の入力、権限の付与——このあたりは、どこまで行っても人間しかできません。変えられるのは、それをいつ知るかだけです。

AIへの頼み方

1. 分担表を先に出させる

これが本体です。何かを頼むとき、いちばん最初に置きます。

これを作る前に、作業の分担を教えてください。 あなたがやること、私がやること、私にしかできないこと(アカウントの登録、支払い、権限の設定など)の3つに分けて、一覧にしてください。

「私にしかできないこと」を独立した列にするのがコツです。「私がやること」ひとつにまとめると、手伝ってもらえる作業と、絶対に代われない作業が同じ列に並びます。混ざると後者を見落とします。

括弧の中の例も省かないでください。例が無いと、AIは「私にしかできないこと」を狭く解釈して、ほとんど何も入れてきません。

2. 自分の作業は、クリック単位まで出させる

一覧が出てきたら、自分の列だけもう一段細かくします。

私がやる作業について、どの画面を開いて、どこを押して、何を入力するかまで書いてください。 「設定してください」で終わらせず、手順を一つずつに分けてください。

「Secretsを設定してください」は、知っている人には一行、知らない人には30分の調べ物です。AIはこの差に気づきません。細かく書かせると、自分にできるかどうかがその場で判定できます。

3. 待ち時間を分けさせる

かかる時間を聞くときは、必ずこれを付けます。

かかる時間を教えてください。 そのうち、私が手を動かす時間と、待っているだけの時間を分けて書いてください。

このサイトの AIの最新情報を自動で集める は、記事の先頭に「1時間(うち待ち時間20分)」と書いてあります。1時間と言われると身構えますが、実際に手を動かすのは40分です。この差は、やるかやらないかを分けます。

4. 費用は「無料枠がどれくらいか」まで聞く

「無料です」で終わらせないための一文です。

費用を教えてください。 無料で始められるか、無料枠はどれくらいか、超えるとどうなるか(止まるのか、課金されるのか)まで書いてください。

YouTubeの動画を自動で要約させる を作ったときにこれを聞いたところ、10チャンネルを毎日追いかけても1日30ユニット、無料枠は10,000という答えが返ってきました。10チャンネル追いかけても、無料枠の300分の1しか使いません。ここまで余裕があると分かってから始めるのと、不安なまま始めるのとでは、続き方が違います。

「超えるとどうなるか」を必ず入れてください。止まるだけなら様子を見られますが、黙って課金される仕組みなら、先に上限を設定しておく必要があります。

5. 詰まりそうな場所を、先に言わせる

この作業で、私が詰まりそうなところはどこですか。 詰まったときに何を見れば分かるかも、一緒に書いてください。

先に聞くと素直に答えます。詰まってから聞くと、原因の推測が始まって話が長くなります。

6. できない作業が出たときの代案を、先に用意させる

私がやる作業の中に、私には難しそうなものがあれば教えてください。 その場合に別のやり方があるかどうかも、一緒に出してください。

代案は着手する前に聞くから意味があります。半分作ってから「できません」と言うと、そこまでの作りに合わせた回り道しか出てきません。

うまくいかないときの言い直し方

「あとはご自分で設定してください」で終わる

その設定のやり方が分かりません。どの画面を開いて、何を押して、何を入力するかを順番に書いてください。 画面に実際に出ている文字を、そのまま使って説明してください。

一般的な言葉で説明されると、目の前の画面のどれがそれなのか分かりません。画面に出ている文字をそのまま使わせると、探す作業がまるごと消えます。

見積もりが毎回外れる

前回は30分と言われましたが、実際には2時間かかりました。 今回の見積もりは、その差を踏まえて出してください。どこで差が出たのかも書いてください。

「どこで差が出たか」まで聞くと、次から同じ場所を厚めに見積もるようになります。数字を責めても直りませんが、外れた場所を特定させると直ります。

作業の途中で、自分の宿題が増えていく

最初に出してもらった分担表に無かった作業が増えています。 いま残っている私の作業を、もう一度すべて一覧にしてください。あとから増えたものには印を付けてください。

印を付けさせると、増え方の傾向が見えます。毎回同じ種類の作業が漏れているなら、最初の頼み方にその一言を足すだけで済みます。

「簡単です」としか言わない

簡単かどうかではなく、手順の数で教えてください。 私が押すボタンの数と、入力する項目の数を書いてください。

簡単かどうかは相手によって変わりますが、手順の数は誰にとっても同じです。数で答えさせると、感想が事実に置き換わります。

全部やってもらったが、自分では直せない

出来上がったものを、あとで私が自分で直せるようにしたいです。 直す可能性が高い場所はどこか、そこを直すときに気をつけることは何かを教えてください。

AIに「ついでに整理しておきました」と言わせない と同じで、あとで自分が触る前提を先に伝えると、作り方そのものが変わります。

応用・次の一手

まず1だけ試してください。「あなたがやること、私がやること、私にしかできないことを分けて一覧にしてください」の一文で、最後にまとめて来る事態はほぼ防げます。

毎回言うのが面倒になったら、覚えさせます。

「作り始める前に、私がやることを一覧で出す」を、この先ずっと守ってほしいです。毎回言わなくて済むように、理由も含めて覚えておいてください。

やり方は AIに「記憶」を持たせる に書きました。

最後に、冒頭の実例の続きを。人間しかできない作業が3つ出てきた話です。あのとき片付けたのは1つだけで、残り2つは「あとでやる」と書き留めました。書き留めてあるので忘れてはいません。それでも、今日まで終わっていません。

残った作業は、忘れて消えるのではありません。後回しになって、ずっと残ります。だから、始める前に一覧にします。