これで何ができるか
何かを頼む前に、「AIがやること・自分がやること・自分にしかできないこと」の3つに分かれた分担表を、20項目でも一括で出させられます。プログラミングは要りません。
AIに「あとはご自分で」と言われないための頼み方は、「私にしかできないこと」を独立した列にすること、そして括弧の中に例(アカウントの登録、支払い、権限の設定など)を添えることを勧めています。ただし、この2つの一文の効き目そのものは、これまで実測されていませんでした。
架空の20項目の作業一覧(アカウント作成・支払い・押印のような人にしかできないもの8件、下書きや整理のようなAI向けのもの9件、判断が分かれそうな紛らわしいもの3件)を、内容の異なる2つの架空プロジェクトで用意し、5つの言い回し×新規の会話で2回ずつ、計20回試しました。
人にしかできない8件が「AIがやること」の列に入ってしまった例は、20回・のべ160件の判定のうち1件もありませんでした。これはこの記事でいちばん安心できる結果です。
ところが、括弧の中の例を書かずに「あなた・私・私にしかできない」の3つに分けてとだけ頼むと、正しく「私にしかできない」に入った件数は32件中27件(84%)に落ちました。いちばん多く漏れたのは、他でもない「アカウントの新規作成」——括弧の例に書かれている、まさにその項目でした。
前提
| かかる時間 | 10分 |
| 費用 | 無料 |
| 必要なもの | これから頼みたい作業の一覧(頭の中にあるものを書き出すだけでよい) |
| プログラミング | 不要 |
AIに「あとはご自分で」と言われないための頼み方と同じく、チャット画面だけのAIで使えます。実行環境は要りません。この記事では、架空の「経費申請チェックツールを作るプロジェクト」「問い合わせメール自動振り分けツールを作るプロジェクト」という2つの場面で、20項目の作業一覧を使いました。
AIへの頼み方
1. まず2列で聞いてみる
いちばん単純な聞き方です。「あなた(AI)」と「私(人)」の2つに分けるだけ。
2回とも、AI向けの9件(下書き・整理系)はきちんと「あなた」に、人にしかできない8件は「私」に入りました。ただしこの形では、「アカウントの新規作成」も「社内Wikiから部署一覧を抜き出す」も同じ「私」の列にまとまってしまい、どちらが本当に自分にしかできないのか、あとから見分けが付きません。実際に1回目の返答には「W-19は該当ページの内容を共有してもらえれば抜き出しはあなたに移せます」という補足が付き、AI自身は両者を区別して考えていたのに、列としては区別されていませんでした。
2. 3列に増やし、括弧の中に例を必ず入れる
AIに「あとはご自分で」と言われないための頼み方が勧めている形です。「私にしかできないこと」を独立した列にし、括弧の中に例を添えます。
2回とも、人にしかできない8件が全部「私にしかできない」に入りました(8/8)。「公開してよいか、上司に確認してから決める」という、一覧には無い紛らわしい1件も、2回とも同じ列に入りました。
括弧の例を外した版(先ほどの1と同じ「3列にする」指示文から、括弧の中身だけを削ったもの)も比較のため2回試したところ、正しく「私にしかできない」に入ったのは32件中27件(84%)でした。取りこぼした3件はどれも「アカウントの新規作成」で、4回中3回、ただの「私」の列に紛れました。皮肉なことに、記事の指示文が括弧の例としてまさに挙げている項目です。
3. 別のプロジェクトでも確かめる
材料を「問い合わせメール自動振り分けツールを作るプロジェクト」に差し替えて、同じ指示文(括弧の例あり)を試しました。
こちらも2回とも8/8で全問正解でした。架空の経費精算プロジェクト・問い合わせ振り分けプロジェクトという中身の異なる2本、あわせて32件×2回=64件の判定のうち、人にしかできない8件×2プロジェクト×2回=32件は、括弧の例を書いた版では32件とも「私にしかできない」に入り、AI側の列に入った例は0件でした。
4. アクセス権が無くてもいいと言い添えてみる
「対象になる部署の一覧を、既存の社内Wikiから抜き出す」は、AIでもできそうな単純作業なのに、どの版でも「私」の列に入りました。理由を尋ねると「Wikiの中身がこの場に共有されていないから」という答えが返っていたので、「情報さえあれば引き取ってよい」と一文を足して確かめました。
結果は変わらず、2回とも「社内Wikiから抜き出す」は「私」の列のままでした。理由を読むと「Wikiの内容や表記ルールそのものが、この場にまだ共有されていない」からで、実際にこの記事の指示文はWikiの中身を一度も渡していません。「情報があれば引き取ってよい」と言い添えても、AIは実際に情報が渡っているかどうかを律儀に確認していて、渡っていなければ自分の列に入れませんでした。これは崩れなかった側の結果です。中身を渡していないのに「なぜ自分でやらないのか」と思ったら、まず中身を渡し忘れていないか確認してください。
うまくいかないときの言い直し方
「どちらとも決まらない」欄を足したら、決まっているはずの項目まで紛れた
判断に迷うものの受け皿として、4つ目の「決まらない」欄を足すとどうなるか試しました。
たしかに、狙いどおり判断が分かれる1件(「通知メールの文言が社内の表記ルールに合っているか」)は2回とも「決まらない」に正しく入りました。ところが引き換えに、「窓口での書類の受け取り」が1回だけ「決まらない」に、「社外への送信可否の最終判断」が2回とも「私」または「決まらない」に流れ、はっきり人にしかできないはずの項目が2つ、「私にしかできない」から漏れました。「決まらない」という逃げ道を作ったことで、AI自身が「本当に私にしかできないと言い切れるか」を必要以上に迷い始めたように見えます。
言い直し方は、欄を増やさないことです。手順2の指示文(3列・括弧の例あり)に戻せば、この記事の実測では32件中32件が正しく分かれました。判断が分かれそうな項目が出てきたら、分担表を作り直すのではなく、その項目だけを別に聞き直してください。
1件だけを聞き直すほうが、分担表全体の精度を犠牲にせずに済みます。
応用・次の一手
まず手順2だけ試してください。「あなたがやること、私がやること、私にしかできないこと(アカウントの登録、支払い、権限の設定など)の3つに分けて」の一文で、この記事の実測では32件中32件が正しく分かれました。
括弧の例は、自分のプロジェクトに合わせて書き換えてもかまいません。この記事では「アカウントの登録、支払い、権限の設定」のままでも別プロジェクトの項目(電話対応・窓口受け取りなど)を正しく拾えましたが、契約書への押印や現金の受け渡しのように毎回パターンが違う業種では、自分の業種でよくある例に差し替えたほうが安全です。
判断に迷う項目が出てきたときは、分担表そのものに4つ目の欄を足すのではなく、AIに「あとはご自分で」と言われないための頼み方の「詰まりそうな場所を、先に言わせる」のように、その項目だけを個別に聞き直してください。
渡す作業の一覧をどこから作るかで迷ったら、やることの中から、AIに任せられるものを見つけるが出発点になります。あちらは「自分の1週間から、AIに渡せそうな候補を探す」側の記事で、この記事は「すでにある一覧を、あなた・私・私にしかできない、に仕分ける」側です。渡す一覧を毎回自分で書き出すのが面倒なら、AIに「記憶」を持たせるの要領で、この分担のルールごと覚えさせておくと、次回から「あなた」の一言で済みます。
📌 この記事の実測は、架空の20項目の作業一覧(人にしかできない8件・AI向け9件・紛らわしい3件)を、内容の異なる2つの架空プロジェクト×5つの言い回し(2列/3列・例なし/3列・例あり/3列・例あり+アクセス許可の一文/3列・例あり+決まらない欄)で、新規の会話ごとに2回ずつ、計20回試したものです。判定はすべて機械照合(ID単位の列名抽出と、あらかじめコードで決めた正解の突き合わせ)で、生の回答はdocs/evidence/bracket-example-fixes-the-split.mdに全文置いてあります。⚠️ 実測に使ったAIはclaude --safe-mode --tools ""(CLAUDE.md・skills・plugins・履歴を無効化した新規プロセス)で、呼び出しごとに独立した会話です。事前知識ゼロとは言い切れないため、素のAIがどう返すかの一般化はせず、機械で確認できた件数だけを根拠にしています。