これで何ができるか

副業を始めて何件か応募すると、必ずこう思います。「通ったやつと通らなかったやつ、何が違うんだろう」

記録をAIに丸ごと貼って聞けば、それらしい答えは返ってきます。この記事でやるのは、その答えのどこまでが「数えれば確かめられること」で、どこからが「この件数では決められないこと」なのかを、返りの中で分けさせることです。

架空の応募記録12件(採用3・不採用9)を、種類の違う材料で2本作り、7個の指示文を合わせて20回通しました。結果は、始める前の予想と違いました。

  • 心配していたことは、ほとんど起きませんでした。採用3件が偶然すべて火曜だった仕込みを、素朴に頼んだ4回とも自分から見つけて「偶然で十分説明がつく」と断っています
  • かわりに逆のことが起きました。同じ4回とも、案件ごとの字数を1件も数えないまま「長さの差ではありません」と書きました
  • 真値では、字数の多い順に並べた上位3件が、そのまま採用の3件です(材料2本とも)
架空の応募記録12件を、提案文の字数の多い順に並べた横棒グラフ。字数は材料そのものから数えた真値で、手で書いたものではない。1番が311字で採用、2番が284字で採用、3番が271字で採用。ここまでが上位3件で、そのまま採用の3件と一致する。以下は不採用で、7番258字、5番236字、12番224字、10番160字、9番151字、11番126字、6番119字、4番108字、8番85字と続く。つまり字数で並べるだけで採用と不採用が完全に分かれており、これは記録の中で数えれば誰でも確かめられる事実である。ところが「通った提案と通らなかった提案の差を出してください」と頼んだ4回は、4回とも「長さの差ではありません」と書いた。しかもその4回とも、案件ごとの字数を1件も数えていない。数えずに否定している。
「長さは関係ない」は、数えた結果ではありませんでした。

否定は、肯定より検算されません。「これが効いています」と言われたら人は疑いますが、「これは関係ありません」と言われると、そこで見るのをやめてしまいます。

前提

かかる時間 20分
費用 無料。ブラウザのチャットAIで足ります
必要なもの 応募の記録(案件名・送信日・結果・送った提案文)。10件くらいから
プログラミング 不要。記録を貼って、指示文をコピーするだけです

大事な前提が1つあります。あなたの手元にあるのは「自分が送ったもの」と「結果」だけで、「なぜそう決まったか」は1件も入っていません。相手の判断は相手の側にあります。だから、この記録から取り出せるのは数えれば確かめられることまでです。

真値が記録の中にある題材(表の数字から、おかしいところを先に見つけさせる)や、記録から計算できる題材(副業の本当の時給を、自分の作業記録から出す)とは、そこが違います。

AIへの頼み方

1. まず、そのまま聞いてみる(何が返るかを見る)

副業の応募の記録です。いまのところ12件しかありません。 (応募の記録を、案件名・送信日・結果・提案文の順に、1件ずつ貼る) 通った提案と通らなかった提案の差を出してください。

4回とも、読み応えのある答えが返りました。そして4回とも、こちらが仕込んだ偶然の一致を自分から見つけました

通った3件の送信日は6/2・6/9・7/7で、全部火曜日です。落ちた9件に火曜日は1件もありません。これも12件全部できれいに分かれる「差」ですが、火曜に送ると通るという話ではまずないでしょう。(中略)3件そろって偶然一致する確率は、直感より高いです。

「12件しかないから断定する」という心配は、この実測では成立しませんでした。ただし留保の量は回で大きく割れます。留保にあたる言い方が何種類出たかを数えると、4回で 4・5・3・1種類。いちばん少ない回は「もうひとつの交絡」の1か所だけでした。

そして問題は別のところにありました。4回とも「長さの差ではありません」と書いています。

長さ・丁寧さではありません。 7(旅行)と12(食)は通った3件と同じくらい長く(中略)長短の両方が不採用側にいるので、長さは判定軸になっていません。

この4回は、案件ごとの字数を1件も数えていません。実際には7番は258字・12番は224字で、採用の最も短い3番(271字)より短い。目で見た印象で否定されています。

2. 「言えること」と「言えないこと」に分けさせる

件数を自分から申告して、2つの欄に割り当てさせます。

副業の応募の記録です。いまのところ12件しかありません。 (応募の記録を、案件名・送信日・結果・提案文の順に、1件ずつ貼る) 12件しかありません。この記録から言えることと、言えないことを分けて書いてください。 言えること=この12件を数えれば確かめられること。 言えないこと=この12件からは決められないこと。 どちらの欄にも、根拠にした案件の番号を必ず添えてください。

これは効きました。4回とも両方の欄が埋まり、案件番号が付きます。火曜の扱いも「言えないこと」側に自分で振り分けました。

火曜の3件(1・2・3)は、要項を引用した3件と完全に同じ3件です。曜日と書き方が丸ごと重なっているので、この12件では分離不能です。

「根拠にした案件の番号を必ず添えてください」が効いています。番号が付いた主張は、その場で自分が数え直せます。数え直せない主張は、番号の付けようがないので自然と「言えないこと」側へ落ちます。

ただし、字数の申告はここでもずれました。材料Aの1回目は3件について字数を書き、3件とも真値と違いました(5番270字→真値236字、7番300字→258字、12番290字→224字)。しかもずれ方が全部「長いほうへ」で、その数字を根拠に「長さは採否と対応していません」と結論しています。

3. 数えさせるなら、差も理由も書かせない

ここがこの記事でいちばん効いた形です。判断をやめさせて、記録の写しだけを作らせます。

副業の応募の記録です。いまのところ12件しかありません。 (応募の記録を、案件名・送信日・結果・提案文の順に、1件ずつ貼る) 差や理由は書かないでください。記録に書いてあることだけを表にしてください。 1件につき1行、12行です。列は「番号」「送信の曜日」「提案文の字数」 「冒頭が『はじめまして』か」「絵文字の有無」「結果」の6つです。 集計や順位付けはしないでください。数え直すのは私がやります。

材料2本で1回ずつ試して、24マスすべてが真値と一致しました(材料A 12件・材料B 12件)。頼んでいないのに、数え方の前提まで自分から添えています。

字数は「提案文:」より後ろの本文だけを対象にし、句読点・記号・空白・絵文字も1文字として数えました。案件名や送信日は含めていません。

頼み方を4通りに変えて、案件ごとの提案文の字数を何件ぶん書いたかを並べた図。分母は12件で、真値は材料そのものから数えたもの。そのまま「差を出して」と頼んだ4回は、材料Aの1回目も2回目も、材料Bの1回目も2回目も、すべて0件で、字数を1件も書いていない。「言えること/言えないことに分けてください」と頼むと、材料Aの1回目が3件、2回目が0件、材料Bの1回目が5件、2回目が0件で、書いた回と書かない回に割れた。しかも材料Aの1回目に書いた3件は、3件とも真値とずれていた。「差や理由は書かないでください。記録に書いてあることだけを表にしてください」と頼むと、材料Aも材料Bも12件すべてを書き、24マス全部が真値と一致した。出す形を固定した保存版では、材料Aの1回目が12件、2回目が0件、材料Bの1回目が12件、2回目が6件で割れた。形は4回ともそろっているのに、2回目だけ字数が消えて「長短だけでは分かれていない」という言葉に置き換わっている。
数えさせたいなら、判断をやめさせるのがいちばん速い、という結果でした。

この表さえあれば、字数の列で並べ替えるのは自分でできます。並べ替えれば、上位3件が採用の3件だと自分の目で分かります。AIの結論を待つ必要がありません。同じ形の効き方は副業の本当の時給を、自分の作業記録から出すにも出ています。

4. 対照——「次はどうすればいい?」と聞くとどうなるか

副業の応募の記録です。いまのところ12件しかありません。 (応募の記録を、案件名・送信日・結果・提案文の順に、1件ずつ貼る) 次の応募では何を変えればいいですか。

各材料1回ずつ試しました。返ってくるのは、番号の付いた具体的な改善策です。読むと納得できます。ただし、この聞き方では「この12件では決められない」がいちばん薄くなります。改善策を求めた質問なので、改善策が返るのは当然です。

聞くこと自体は悪くありません。指示文2か3を先に通してから、最後に聞いてください。順番を逆にすると、確かめていない話を先に受け取ることになります。

5. 記録に「書かれていないもの」を挙げさせる

副業の応募の記録です。いまのところ12件しかありません。 (応募の記録を、案件名・送信日・結果・提案文の順に、1件ずつ貼る) この記録に書かれていないもので、採用・不採用が分かれた理由になりうるものを挙げてください。 記録の中から答えを探さないでください。記録に載っていない項目の名前だけを並べてください。

これは、記録を育てるための工程です。応募総数・自分が何番目の応募だったか・提示単価・テストの有無・返信までの日数・相手が個人か法人か——いま無い列を先に知っておくと、次の10件から埋められます

見つけたいものが「書かれていないもの」のときは独立した1回として聞く、という形は下書きを直させずに、どこが伝わらないかだけ言わせると同じです。

6. 「あと何件たまったら言えるか」だけを答えさせる

副業の応募の記録です。いまのところ12件しかありません。 (応募の記録を、案件名・送信日・結果・提案文の順に、1件ずつ貼る) あと何件たまったら、この記録から傾向を言えるようになりますか。 件数が足りているかどうかだけを答えてください。 足りていないなら、傾向は書かないでください。かわりに、いま記録に足しておくと あとで役に立つ項目を挙げてください。

各材料1回ずつ。「まだ足りていません。なので傾向は書きません」から始まる返りになりました。返ってきた目安の数字(採用が5件たまるのは20件前後、切り口を1つ比べられるのは30〜40件)は、この記録から出た数ではなく一般論なので、そのまま信じないでください。使えるのは「いま件数を積むより先に、記録する列を増やすほうが効く」という向きのほうです。

うまくいかないときの言い直し方

「これは関係ありません」と言われて、そこで見るのをやめてしまった

今回いちばん危なかったのはここです。否定は、根拠を書かなくても文として成り立ちます。

言い直し方は単純で、否定された項目について「その数を1件ずつ書いてください」と聞き直すことです。上の指示文3の形でかまいません。数が並べば、否定が正しいかどうかはあなたが決められます。今回は、並べたら否定が外れていました。

断りの言葉が付いていたので、安心して読み流した

留保の言い回しは4回とも出ましたが、種類の数は4・5・3・1と割れました。しかもどの回も、留保と改善策が同じ返りの中に並んでいます。読む側は改善策のほうを持ち帰ります。

留保が付いているかどうかを、その回ごとに数えてください。同じ指示文を2回通して、留保が付いた回と付かなかった回を見比べるのが早いです(同じ処理を2回走らせて、違いだけを自分で確かめる)。

「3/3で100%」と書かれていた

返りのほうが自分で断っていた回もあります。

採用組の書き方は3回しか試していません。次の1件が落ちれば3/4になります。(中略)方向の目安としては使えても、確率の推定としては件数が足りない

割合(%)で書かれた数字は、分母を見るまで意味を持ちません。分母が3なら、1件動くだけで33ポイント動きます。

応用・次の一手

毎回おなじ形で点検する保存版にする

応募が増えるたびに同じ点検をしたいので、出す形を固定した保存版を作りました。

副業の応募の記録です。いまのところ12件しかありません。 (応募の記録を、案件名・送信日・結果・提案文の順に、1件ずつ貼る) 毎回この形で点検したいので、出す形をそろえてください。 1行目に「応募の記録の点検(件数: ◯件)」とだけ書いてください。 次に「数えれば確かめられること」を箇条書きで、根拠の案件番号つきで書いてください。 次に「この件数では決められないこと」を箇条書きで書いてください。 最後に「まだ記録していない項目」を箇条書きで書いてください。 傾向・原因・おすすめの改善策は書かないでください。あいさつと前置きも書かないでください。

材料2本で2回ずつ(計4回)走らせました。1行目も、3つの見出しも、4回ともそろっています。改善策が混ざった回も0回でした。

そろわなかったのは、字数を書いたかどうかです。材料Aは1回目が12件全部(真値と一致)、2回目は1件も書かず「提案文の長さには不採用の中にも幅がある」という言葉に変わりました。材料Bは12件と6件です。

消えるのは数字のほうで、見出しではありません。見出しがそろっているぶん、毎回同じ点検をした気になります。置く前に2回走らせて、数字が入っているかを見比べてください

記録の列を先に増やしておく

指示文5で挙がった項目を、いまの記録に足しておきます。応募総数・提示単価・返信までの日数・テストの有無。いま12件で決められないことの多くは、件数ではなく列が足りないせいです。列を足すのは今日からできて、件数がたまるのは待つしかありません。

提案文そのものの作り方は提案文を、実績を盛らずにAIと組むにまとめてあります。この記事で分かるのは「どう書くか」ではなく「いま何が言えるか」までです。

⚠️ この記事の数字は、すべて架空の記録から出したものです。実際の採否の理由は案件ごとに違いますし、この記事は「こう書けば通る」という指南ではありません。件数が足りないうちは、傾向を出さないでください。