これで何ができるか
副業を始めて何件か応募すると、必ずこう思います。「通ったやつと通らなかったやつ、何が違うんだろう」。
記録をAIに丸ごと貼って聞けば、それらしい答えは返ってきます。この記事でやるのは、その答えのどこまでが「数えれば確かめられること」で、どこからが「この件数では決められないこと」なのかを、返りの中で分けさせることです。
架空の応募記録12件(採用3・不採用9)を、種類の違う材料で2本作り、7個の指示文を合わせて20回通しました。結果は、始める前の予想と違いました。
- 心配していたことは、ほとんど起きませんでした。採用3件が偶然すべて火曜だった仕込みを、素朴に頼んだ4回とも自分から見つけて「偶然で十分説明がつく」と断っています
- かわりに逆のことが起きました。同じ4回とも、案件ごとの字数を1件も数えないまま「長さの差ではありません」と書きました
- 真値では、字数の多い順に並べた上位3件が、そのまま採用の3件です(材料2本とも)
否定は、肯定より検算されません。「これが効いています」と言われたら人は疑いますが、「これは関係ありません」と言われると、そこで見るのをやめてしまいます。
前提
| かかる時間 | 20分 |
| 費用 | 無料。ブラウザのチャットAIで足ります |
| 必要なもの | 応募の記録(案件名・送信日・結果・送った提案文)。10件くらいから |
| プログラミング | 不要。記録を貼って、指示文をコピーするだけです |
大事な前提が1つあります。あなたの手元にあるのは「自分が送ったもの」と「結果」だけで、「なぜそう決まったか」は1件も入っていません。相手の判断は相手の側にあります。だから、この記録から取り出せるのは数えれば確かめられることまでです。
真値が記録の中にある題材(表の数字から、おかしいところを先に見つけさせる)や、記録から計算できる題材(副業の本当の時給を、自分の作業記録から出す)とは、そこが違います。
AIへの頼み方
1. まず、そのまま聞いてみる(何が返るかを見る)
4回とも、読み応えのある答えが返りました。そして4回とも、こちらが仕込んだ偶然の一致を自分から見つけました。
通った3件の送信日は6/2・6/9・7/7で、全部火曜日です。落ちた9件に火曜日は1件もありません。これも12件全部できれいに分かれる「差」ですが、火曜に送ると通るという話ではまずないでしょう。(中略)3件そろって偶然一致する確率は、直感より高いです。
「12件しかないから断定する」という心配は、この実測では成立しませんでした。ただし留保の量は回で大きく割れます。留保にあたる言い方が何種類出たかを数えると、4回で 4・5・3・1種類。いちばん少ない回は「もうひとつの交絡」の1か所だけでした。
そして問題は別のところにありました。4回とも「長さの差ではありません」と書いています。
長さ・丁寧さではありません。 7(旅行)と12(食)は通った3件と同じくらい長く(中略)長短の両方が不採用側にいるので、長さは判定軸になっていません。
この4回は、案件ごとの字数を1件も数えていません。実際には7番は258字・12番は224字で、採用の最も短い3番(271字)より短い。目で見た印象で否定されています。
2. 「言えること」と「言えないこと」に分けさせる
件数を自分から申告して、2つの欄に割り当てさせます。
これは効きました。4回とも両方の欄が埋まり、案件番号が付きます。火曜の扱いも「言えないこと」側に自分で振り分けました。
火曜の3件(1・2・3)は、要項を引用した3件と完全に同じ3件です。曜日と書き方が丸ごと重なっているので、この12件では分離不能です。
「根拠にした案件の番号を必ず添えてください」が効いています。番号が付いた主張は、その場で自分が数え直せます。数え直せない主張は、番号の付けようがないので自然と「言えないこと」側へ落ちます。
ただし、字数の申告はここでもずれました。材料Aの1回目は3件について字数を書き、3件とも真値と違いました(5番270字→真値236字、7番300字→258字、12番290字→224字)。しかもずれ方が全部「長いほうへ」で、その数字を根拠に「長さは採否と対応していません」と結論しています。
3. 数えさせるなら、差も理由も書かせない
ここがこの記事でいちばん効いた形です。判断をやめさせて、記録の写しだけを作らせます。
材料2本で1回ずつ試して、24マスすべてが真値と一致しました(材料A 12件・材料B 12件)。頼んでいないのに、数え方の前提まで自分から添えています。
字数は「提案文:」より後ろの本文だけを対象にし、句読点・記号・空白・絵文字も1文字として数えました。案件名や送信日は含めていません。
この表さえあれば、字数の列で並べ替えるのは自分でできます。並べ替えれば、上位3件が採用の3件だと自分の目で分かります。AIの結論を待つ必要がありません。同じ形の効き方は副業の本当の時給を、自分の作業記録から出すにも出ています。
4. 対照——「次はどうすればいい?」と聞くとどうなるか
各材料1回ずつ試しました。返ってくるのは、番号の付いた具体的な改善策です。読むと納得できます。ただし、この聞き方では「この12件では決められない」がいちばん薄くなります。改善策を求めた質問なので、改善策が返るのは当然です。
聞くこと自体は悪くありません。指示文2か3を先に通してから、最後に聞いてください。順番を逆にすると、確かめていない話を先に受け取ることになります。
5. 記録に「書かれていないもの」を挙げさせる
これは、記録を育てるための工程です。応募総数・自分が何番目の応募だったか・提示単価・テストの有無・返信までの日数・相手が個人か法人か——いま無い列を先に知っておくと、次の10件から埋められます。
見つけたいものが「書かれていないもの」のときは独立した1回として聞く、という形は下書きを直させずに、どこが伝わらないかだけ言わせると同じです。
6. 「あと何件たまったら言えるか」だけを答えさせる
各材料1回ずつ。「まだ足りていません。なので傾向は書きません」から始まる返りになりました。返ってきた目安の数字(採用が5件たまるのは20件前後、切り口を1つ比べられるのは30〜40件)は、この記録から出た数ではなく一般論なので、そのまま信じないでください。使えるのは「いま件数を積むより先に、記録する列を増やすほうが効く」という向きのほうです。
うまくいかないときの言い直し方
「これは関係ありません」と言われて、そこで見るのをやめてしまった
今回いちばん危なかったのはここです。否定は、根拠を書かなくても文として成り立ちます。
言い直し方は単純で、否定された項目について「その数を1件ずつ書いてください」と聞き直すことです。上の指示文3の形でかまいません。数が並べば、否定が正しいかどうかはあなたが決められます。今回は、並べたら否定が外れていました。
断りの言葉が付いていたので、安心して読み流した
留保の言い回しは4回とも出ましたが、種類の数は4・5・3・1と割れました。しかもどの回も、留保と改善策が同じ返りの中に並んでいます。読む側は改善策のほうを持ち帰ります。
留保が付いているかどうかを、その回ごとに数えてください。同じ指示文を2回通して、留保が付いた回と付かなかった回を見比べるのが早いです(同じ処理を2回走らせて、違いだけを自分で確かめる)。
「3/3で100%」と書かれていた
返りのほうが自分で断っていた回もあります。
採用組の書き方は3回しか試していません。次の1件が落ちれば3/4になります。(中略)方向の目安としては使えても、確率の推定としては件数が足りない
割合(%)で書かれた数字は、分母を見るまで意味を持ちません。分母が3なら、1件動くだけで33ポイント動きます。
応用・次の一手
毎回おなじ形で点検する保存版にする
応募が増えるたびに同じ点検をしたいので、出す形を固定した保存版を作りました。
材料2本で2回ずつ(計4回)走らせました。1行目も、3つの見出しも、4回ともそろっています。改善策が混ざった回も0回でした。
そろわなかったのは、字数を書いたかどうかです。材料Aは1回目が12件全部(真値と一致)、2回目は1件も書かず「提案文の長さには不採用の中にも幅がある」という言葉に変わりました。材料Bは12件と6件です。
消えるのは数字のほうで、見出しではありません。見出しがそろっているぶん、毎回同じ点検をした気になります。置く前に2回走らせて、数字が入っているかを見比べてください。
記録の列を先に増やしておく
指示文5で挙がった項目を、いまの記録に足しておきます。応募総数・提示単価・返信までの日数・テストの有無。いま12件で決められないことの多くは、件数ではなく列が足りないせいです。列を足すのは今日からできて、件数がたまるのは待つしかありません。
提案文そのものの作り方は提案文を、実績を盛らずにAIと組むにまとめてあります。この記事で分かるのは「どう書くか」ではなく「いま何が言えるか」までです。
⚠️ この記事の数字は、すべて架空の記録から出したものです。実際の採否の理由は案件ごとに違いますし、この記事は「こう書けば通る」という指南ではありません。件数が足りないうちは、傾向を出さないでください。