これで何ができるか

noteの記事やKindle本のタイトルを決めるとき、AIに「案を100個出して」と頼んだことはありませんか。並んだ100行を見ると、選び放題に見えます。しかし、並んだ100行のうち実際に選べる案は、見た目ほど多くありません。

架空のnote記事テーマ(在宅勤務の集中力)とKindle本テーマ(スマホで撮る料理写真)の2本で、「タイトル案を100個出してください」を1回ずつ試しました。返ってきた200件は、言い回しの近さをdifflibで測り、似たものを同じ組にまとめてPythonで機械的に判定しました。結果は3行で言えます。

  1. 件数はいつも頼んだとおり。2本とも100件ちょうど返ってきました
  2. しかし実質の種類数は35〜36件です。似た言い回しをまとめると、100件のうち6割以上が同じ発想の言い換えでした
  3. 減り方は一様ではありません。前半50件は新しい発想が30件前後出るのに、後半50件になると新しい発想は3〜5件しか出ません。残りは全部、前半で出た発想の言い回し違いです
タイトル案を100個出させたとき、新しい発想(それまでに出た案と似ていない新規クラスタ)の数が前半50件と後半50件でどう違うかを比べた横棒グラフ。note記事テーマは前半50件のうち30件が新規クラスタだったのに対し、後半50件は5件しかなかった。Kindle本テーマも前半50件のうち33件が新規クラスタだったのに対し、後半50件は3件だった。100件を通しで機械判定すると、実質の種類数はnote記事テーマで35件、Kindle本テーマで36件(いずれも100件中)。どちらのテーマも、後半50件に入ると新しい発想はほぼ出なくなる。
後半50件は、ほぼ前半の言い換えです。

この記事では、まず素朴な頼み方の実態を見せます。そのあと、件数を減らす代わりに密度を上げる頼み方と、件数を保ったまま密度も上げる頼み方の2つを試した結果を載せます。どちらも、読んで試せる指示文の形にしてあります。

前提

かかる時間 15分
費用 無料。ブラウザのチャットAIで足ります
必要なもの 書こうとしている記事・本のテーマ
プログラミング 不要。指示文をコピーして貼るだけです

この記事はタイトルを選ぶ前の下ごしらえです。選んだタイトルをそのまま使うかどうかは、「それはAIには難しいです」と言われたと同じく、最後は自分で決めてください。実測に使った架空テーマと、判定コードの全文は docs/evidence/title-brainstorm-real-count.md にあります。

AIへの頼み方

1. 素朴に「100個出して」——件数は合うが、中身の密度は見えない

まずは、ありがちな頼み方そのままです。

在宅勤務で集中力を保つ工夫について書いたnote記事の、売れるタイトル案を100個出してください。1行に1案ずつ書いてください。

100件ちょうど返ってきました。ただし先頭と末尾を見比べると、違いがはっきりします。

1件目: 在宅勤務でも集中力が切れない7つの習慣 100件目: 集中力を保つ在宅勤務のための工夫、まとめてみました

100件目に近い案は「集中力を保つ」「在宅勤務」「工夫」という同じ単語の並び替えです。Kindle本テーマ(スマホで撮る料理写真)でも、1回試して同じ崩れ方をしました。件数を見ているだけでは、この崩れには気づきません。

2. 言い換えをまとめさせて、実質の数を聞く

数える前に、AI自身にもまとめさせてみます。

いま出した100件のタイトル案を、言い回しが似ているものどうしでまとめてください。まとめたあと、実質何種類になったか数字で書いてください。

この頼み方は読者も今すぐ試せます。ただし、AI自身が数えた種類数を鵜呑みにしないでください。本記事の実質の種類数(35〜36件)はPythonで機械的に数えた数で、AI自身への自己申告だけに頼っていません。人が読み直して数えても、AIが数えても、最後はコードで裏取りするのが確実です。

3. 「言い換え禁止・無理に埋めない」——密度はほぼ100%、件数は減る

次に、件数より中身の濃さを優先する頼み方です。

在宅勤務で集中力を保つ工夫について書いたnote記事の、売れるタイトル案を出してください。ただし、結び方(「〜のコツ」「〜のまとめ」「〜入門」など語尾のパターン)を2回以上使わないでください。新しい切り口が思いつかなくなったら、数を埋めるために言い換えを足さず、「ここから先は言い換えになります」と正直に書いて、そこで止めてください。

note記事テーマは23件で自分から打ち切りました。Kindle本テーマ(スマホ料理写真)も22件で打ち切りました。Pythonで判定すると、実質の種類数はnote記事テーマが23件中20件(87%)、Kindle本テーマが22件中22件(100%)です。

「100個出して」と「言い換え禁止・無理に埋めないで」を比べた図。「100個出して」は出てきた件数100件に対し実質の種類数は35〜36件(密度35〜36%)。「言い換え禁止・正直に打ち切ってよい」は出てきた件数が22〜23件に減る代わりに、実質の種類数は20〜22件(密度87〜100%)に上がる。数を求めると埋め草が増え、正直さを求めると出てくる件数そのものは減るというのが、この記事の比較の軸。note記事テーマは23件中20件(87%)、Kindle本テーマは22件中22件(100%)が実質の種類数だった。
件数を求めると埋め草が増え、正直さを求めると件数そのものが減ります。

100件欲しいのか、本物の候補が欲しいのかで、頼み方は変わります。選ぶ作業だけを考えるなら、23件で全部本物のほうが、100件のうち65件が言い換えより選びやすいです。

4. それでも件数が欲しいなら、切り口を先に割り振る

件数と密度の両方が欲しいときの頼み方です。先に「どんな角度で書くか」を決めてから、角度ごとに数を割り振ります。

在宅勤務で集中力を保つ工夫について書いたnote記事のタイトル案がほしいです。まず次の5つの切り口で、1つずつ案を考えてください。 1. 数字訴求(「3つの」「7つの」のように具体的な数を見せる) 2. 疑問形(「〜なのか」で終わる) 3. 体験談(「私が」で始める) 4. 警告・逆説(常識と違うことを言う) 5. 比較(2つのものを比べる) 切り口が決まったら、それぞれの切り口で10案ずつ、合計50案出してください。どの案がどの切り口か、見出しを付けて分けてください。

note記事テーマで1回試しました。50件中、Pythonの判定で実質43件(86%)が別物でした。しかも切り口を割り振った50件では、前半25件・後半25件で新しい発想の出方がほぼ同じ(21件・22件)です。素朴に100個出させたときの「後半は言い換えばかり」という崩れが、起きませんでした。

⚠️ この4番だけは、note記事テーマ1本・1回の実測です。Kindle本テーマでは試していません。切り口を先に割ると密度が上がる、という傾向として読んでください。

うまくいかないときの言い直し方

100件のうち、どれが本物でどれが言い換えか分からない

全部を読み比べるのは大変です。先頭と末尾だけでなく、通しで聞いてみます。

いま出した100件を、出てきた順のまま1件ずつ見ていってください。直前までに出た案と発想が重なるものには「※言い換え」と印をつけてください。重ならない、新しい発想のものだけ、そのまま残してください。

この頼み方自体は読者も試せます。印をつける作業もAI自身の判断なので、結果を鵜呑みにせず、残った案の数が実際に少ないかをざっと見てください。件数が怪しいと感じたら、2番の「まとめさせる」頼み方と両方試して、数字が近いかを確かめてください。

50案・100案と頼むと、途中から案ではなく感想が混ざる

件数を多く頼むと、まれに「〜という案もありますが、やや弱いかもしれません」のような感想が本文に混ざります。

案だけを1行に1つ、番号を振って出してください。説明や感想は書かず、タイトルの文字列だけにしてください。

切り口を割り振っても、切り口の中で似た案が出る

4番の頼み方でも、同じ切り口の中で近い案が出ることがあります(実測でも「在宅勤務の集中力を保つ7つの習慣」と「在宅勤務の集中力、朝の3分習慣が効く」が、どちらも数字訴求の切り口の中で同じ組になりました)。

いま出た数字訴求の切り口の10案を見てください。このうち、言い回しが近いものを教えてください。近いものがあれば、その案を別の数字・別の事実に差し替えてください。

切り口を割っても、切り口の中は別にチェックしてください。角度を分けるのは全体の密度を上げる工夫であって、個々の重なりまで消すわけではありません。

応用・次の一手

同じ案件が続くなら、この頼み方を型にして保存します。

いまのやり取り(切り口を5つ決めてから、各切り口で案を出す)を、次のテーマでもそのまま使える手順にしてください。テーマを差し替える場所だけを空欄にしてください。

この型は、タイトルだけでなく同じ処理を複数の対象にまとめて頼むの考え方とも相性が良いです。切り口を先に決めるのは、対象を先に並べてから同じ処理をかけるのと同じ発想です。

案の数そのものの数え方は、コピー案でも同じ崩れ方をします。「30案出して」のあとに「もう30案」と頼んだときの重なり方は、コピー案を30から60に増やすに実測があります。あちらは2回に分けて頼む崩れ方、この記事は1回で大量に頼む崩れ方です。案の数ではなく「条件を通った数」で数えた実測は使えるコピー案だけを数えるにあります。どちらも、AIが新しい発想を使い切ったあとは言い換えで埋める、という同じ性質から来ています。

「何個出た」ではなく「何種類出た」を見てください。見る軸を変えるだけで、選ぶ時間は短くなります。