これで何ができるか
案出しをAIに頼むと、「30案出して」で30案返ってきます。足りなければ「もっと」と言えば、また30案返ります。では、それで60案になったのでしょうか。
架空の発注書を2本(街のパン屋の食パン/オンラインのヨガ教室)作り、1巡目の指示文はまったく同じにして、2巡目の言い方だけを5通りに振って20回試しました。そのあと、発想の重なりを直接聞く指示文とまとめさせる指示文を追加で8回、言い直し方を7回試しました。判定はすべて Python です。
結果は3行で言えます。
- 数はいつも合う。20回とも1巡目30案・2巡目30案ちょうどで、発注書の4条件は1,200案すべてが通りました
- 文字列としては、ほとんど重複しません。1巡目と完全に同じ文字列だった案は、各版120案のうち0〜5件です
- 🚨 それでも「新しい案」ではありません。同じ会話でAI自身に「1巡目と発想が重なる案はどれ」と聞くと、30案のうち19〜28案が重なると答えました。60案をまとめさせると13〜16通りです
案出しの1巡目そのものの頼み方は使えるコピー案だけを数える——「30案出して」の30は、選べる数ではないにあります。この記事はその続き(2巡目)だけを扱います。
前提
| かかる時間 | 20分 |
| 費用 | 無料。ブラウザのチャットAIで足ります |
| 必要なもの | 商品の説明と、発注書(○×が決まる条件が書かれているもの) |
| プログラミング | 不要。貼って、指示文をコピーするだけです |
発注元がAIの利用を禁じている場合があります。規約や指示書を先に確かめてください。この記事は「案をAIに出させてそのまま納品する」話ではなく、自分が選ぶ前の下ごしらえです。商標や既存のコピーと衝突しないかは、AIに判定させないでください。
この仕事の単価も置いておきます。
実測に使ったのは、架空の商品2件(街のパン屋「こむぎ堂」の食パン/オンラインヨガ教室「そらのしたヨガ」)と、○×が機械で決まる4条件だけを並べた架空の発注書です。条件は「全角20字以内」「必須語を必ず入れる」「禁止語3語を使わない」「英数字を使わない」の4つです。試した記録は docs/evidence/second-thirty-not-new.md にあります。
AIへの頼み方
1. 1巡目は、条件を貼って30案
全版で共通の出発点です。条件を一緒に貼るだけで、30案すべてが条件を通ります。
20回試して、20回とも30案ちょうど、600案すべてが4条件を通りました。ここは前の記事の実測と同じ結果です。
2. 「もっと案をください」——数も条件も落ちない
いちばん雑な頼み方から見ます。同じ会話の続きで、これだけ送ります。
材料2本×各2回=4回試して、4回とも30案返り、120案すべてが条件を通りました。「もっと」としか言っていないのに、発注書の条件は2巡目にも引き継がれます。数が減ることも、条件が緩むこともありませんでした。
1巡目と文字列が完全に一致した案は0件です。ここだけ見れば「30案増えた」で終わります。
3. 「あと30案出してください」——数を指定しても結果は同じ
数を明示した版も試しました。
4回とも30案・条件は120/120・完全一致0件で、2番とまったく同じでした。⚠️ ただし返りの言い分は揺れます。4回のうち1回は「60案」と書いてきました(実際に2巡目で出したのは30案です)。本人が言う数は、数えたものではありません。
4. 「一つも重ならない案を」——重なりがいちばん減る言い方
ここが実測でいちばん効いた一手です。
4回とも30案・条件120/120・完全一致0件は同じです。違うのは言い回しの近さでした。1巡目に近い案(difflib の類似度0.7以上)を数えると、この版が120案中8件でいちばん少なくなりました。
🚨 意外だったのはここです。いちばん重なったのは「最初の指示文をもう一度送る」やり方でした——同じ会話で再送が43件、新しい会話でやり直しても40件です。「会話を変えれば新しい発想になる」とはなりませんでした。
5. 「発想が重なる案はどれ」と、同じ会話で聞き返す
ここまでは、重なりを機械で数えていました。AI自身に聞くと、答えが変わります。
材料2本×各2回=4回試した結果です。4回とも「30案のうち19〜28案は重なっている」と答えました。残った「本当に新しい案」は2〜11案です。
見ての通り、2巡目は「やわらかさ/素材/朝食シーン/お店の自慢/誕生/しあわせ」という1巡目と同じ6テーマの言い換えが大半で、本当に新しい切り口(話題性・ターゲット像・高級感・製法)は4件のみでした。
機械の数字は0〜9件、AI自身の判定は19〜28件。同じ60案を見ていて、重なりの数が1桁違います。文字列を見るか、発想を見るかの違いです。納品するのは文字列ですが、発注者が読むのは発想のほうです。
6. 60案をまとめさせて、切り口の数を数える
いちばん実用的なのがこれです。60案を並べたまま渡さず、まとめさせます。
4回とも、13〜16通りにまとまりました。中身はこういう形です。
③ 少人数・先生が一人ずつ見てくれる系(4, 7, 14, 19, 23, 25, 35, 38, 46, 55, 58) 代表:一人ひとりを見てくれるヨガ教室
11案が1つの組に入っています。発注者に見せるのは、この代表案だけで足ります。60行の一覧より、13〜16通りの切り口のほうが選びやすいからです。
7. 足りないと感じたら、案ではなく「切り口」を足す
まとめさせた結果を見ると、次にやることが決まります。案を増やすのではなく、空いている切り口を埋めます。実測でも、AIのほうから次の方向を挙げてきました。
純粋に新しい残り2案だけでは案数として心もとないので、必要であれば「呼吸」「リズム」以外の新しい切り口(例:季節・天気・仕事終わり・自分だけの時間・体の変化を感じる、など)で3巡目を作ることもできます。
⚠️ 提案された切り口をそのまま使わないでください。商品として言えるかどうかは、発注者しか決められません。切り口の一覧は、「20件のリスト」は自分が確かめる作業リストとして受け取ると同じで、自分が選ぶための材料です。
うまくいかないときの言い直し方
「60案出しました」と言われたが、数が合わない気がする
実測でも、2巡目で30案しか出していないのに「60案」と書いた回がありました(4回中1回)。本人が言う数は数えたものではありません。
材料2本で1回ずつ試して、2回とも「1巡目30案・2巡目30案・合計60案」と正しく返りました。分けて数えさせれば合います。
⚠️ それでも、数を当てにするなら自分で数えるほうが速いです。行数を数えるだけなので、表計算ソフトに貼れば終わります。
2巡目が、1巡目の言い換えばかりに見える
見えるのではなく、実際にそうです。実測では19〜28案が「発想が重なる」と本人も認めました。言い方を変えます。
材料2本で1回ずつ試しました。2回とも10案ちょうど・条件は10/10で通り、それまでの60案と完全に一致した案も、言い回しが近い案も0件でした(difflib の0.7線で機械判定)。
挙がった切り口も、それまでに出ていないものでした——「食べ方・使用シーン」「普段づかいの気軽さ」「断面の見た目」(食パン)、「人目を気にしなくていい」「月謝の手頃さ」「心のケア」(ヨガ)。
「もう30案」より「切り口3つ×10案」のほうが、重なりは減りました。数を先に決めると、数を埋めるために言い換えが増えます。
新しい会話でやり直したのに、似た案しか出ない
実測では、新しい会話でのやり直しがいちばん重なりの多い側でした(120案中40件)。会話を変えても、材料が同じなら発想は同じところへ戻ります。
変えるのは会話ではなく、材料の見せ方です。
1回試して、5つとも質問の形(「何枚切りで販売しますか」「小麦の産地や品種は決まっていますか」「職人の経歴やこだわりはありますか」など)で返りました。案ではなく質問が返ると、発注者に投げられます。答えが1つ増えれば、そこから新しい切り口が立ちます。
条件を後から足したら、前の案が使えなくなった
「『朝』を必ず入れる」を5つ目の条件として足して1回試したところ、60案すべてに1件ずつ判定が付き(満たす14件・外れる46件)、外れた案も消されずに残りました。後から条件を足しても、案を出し直す必要はありません。60案は選び直せます。
⚠️ 条件を渡すと、その条件は2巡目以降にも引き継がれます(この記事の2番の実測)。引き継がれてほしくない条件は、明示的に取り消してください。
応用・次の一手
1巡目の頼み方は、別の記事にまとまっています。条件を渡さないと30案のうち0〜4件しか通らない、という実測は使えるコピー案だけを数えるにあります。この記事の1番はその結論をそのまま使いました。
選ぶ前に、確かめることを書き出させる。切り口が13〜16通りに絞れたら、次は「その言い方を発注者が言えるか」です。一覧を作業リストとして受け取る形は「20件のリスト」は自分が確かめる作業リストとして受け取るにあります。
同じ案件が続くなら、2巡目まで含めて型にする。
1回試して、差し替え箇所(発注書と商品説明)と、固定して使う指示文(1巡目・2巡目)が分けて返りました。⚠️ ただし返ってきた型は、こちらが実測した形とは少し違いました——2巡目が「まず切り口ごとに分類してから追加する」順序になっています。悪くはありませんが、自分が試した形と同じか、貼る前に読んでください。
⚠️ この記事の実測は、架空の発注書2本・のべ51回の送信(本編20回+発想の重なりを聞く追加8回+言い直し7回)の結果です。返ってくる案は、商品やAIによって変わります。変わりにくいのは、「30案返ってきた」と「30通りの切り口があった」は別の数だという形のほうです。数は数えれば分かりますが、切り口の数は、まとめさせるまで見えません。