これで何ができるか

実績を盛らずに提案文を作る記事発注書と突き合わせる記事で作った「保存版」の指示文は、次に似た案件が来たときにそのまま使い回したくなります。ただし次の案件が、想定していたのと違う種類の材料(実績欄がほぼ空欄の募集要項、荒い下書きの原稿)だったとき、縛り(書き足さない約束)と形(段落・分類の指定)のどちらが先に崩れるでしょうか。

架空の2つの保存指示文(提案文用・検品用)を、想定どおりの材料と、想定と違う種類の材料の両方で試しました。

結果は、縛りも形も崩れませんでした(材料2種×20回+追加の応募条件が届かない5回=25回中0回)。崩れると予想していた前提のほうが外れた形です。

保存した提案文の指示文(募集要項に無い実績を書き足さない)と検品の指示文(原稿に無い数字を書き足さない)を、想定どおりの材料と想定と違う種類の材料で試した結果を示す図。提案文は実績欄が厚い募集要項5回・ほぼ空欄の募集要項5回・応募条件を満たさない案件5回、検品は完成稿5回・粗い下書き5回で、すべて縛り違反0件・形違反0件だった。想定と違う材料で崩れたのは縛りでも形でもなく、崩れる前提そのものだった。
材料2種×20回+応募条件未達の5回=25回。縛り違反も形違反も0件。

前提

かかる時間 20分
費用 無料。無料のチャットAIで足ります
必要なもの 保存して使い回している指示文(提案文・検品など)
プログラミング 不要。この記事の指示文をコピーして貼るだけです

この記事は、実績を盛らずに提案文を作る記事発注書と突き合わせる記事で作った保存版の指示文を、別の材料でも使い回せるかを確かめたものです。「材料が無い」ときに様式だけが素通りする記事は材料が0件・1件欠落のケースを扱っていましたが、材料そのものは存在するが、いつもと種類が違うケースは今回が初めてです。

AIへの頼み方

1. 提案文の保存指示文を、実績欄が厚い募集要項で試す

画像レタッチの副業を想定した実績メモを用意しました。

私の実績メモ(画像レタッチ)

・ネットショップ運営者向けに、商品写真のレタッチを個人で受託している
・これまでに対応した枚数:合計320枚(過去8か月)
・使用ソフト:Adobe Lightroom、Photoshop
・対応できる修正:明るさ・色味の補正、背景の白飛ばし、傷や汚れの除去
・対応できない修正:モデル体型の加工、商品の形状そのものを変える加工
・平均の納期:1回の依頼(20枚まで)につき中3営業日
・単価の目安:1枚あたり150円(20枚未満の少量依頼は別途相談)

保存指示文はこれです。縛り=実績メモに無いことを書かない、形=導入・実績・見積もりの3段落。

クラウドソーシングの案件に応募します。募集要項と、私の実績メモを貼ります。この案件に応募する提案文を、次の3段落で書いてください。①導入(この案件に興味を持った理由)②実績(私の実績メモに書かれていることだけ)③見積もり(納期と単価の目安)。私の実績メモに書かれていない実績は、絶対に書き足さないでください。

実績を細かく指定した募集要項(「対応枚数」「使用ソフト」「対応できる修正の種類」「納期」を必ず書くよう求めるもの)で5回試すと、5回とも実績メモの数字(320枚・8か月・Lightroom・Photoshop・中3営業日・150円)だけで構成され、書き足しは0件でした。段落も5回とも導入・実績・見積もりの3段落構成のままです。

2. 同じ指示文を、実績欄がほぼ空欄の募集要項で試す

次に、同じ指示文・同じ実績メモのまま、募集要項だけを薄いものに差し替えます。

【募集】ネットショップの商品写真レタッチ

雑貨のネットショップです。商品写真の色味調整をお願いできる方を探しています。
実績があれば教えてください。よろしくお願いします。

実績について「厚く聞かれる」募集要項と違い、こちらは「実績があれば教えてください」としか書かれていません。ここで縛りが崩れて、聞かれてもいない実績(対応件数の水増し、「高評価をいただいております」のような検証不能な売り文句)が入り込むのではないかと予想しました。

5回試した結果は、5回とも実績メモの数字のままでした。書き足しは0件、段落構成も崩れませんでした。薄い募集要項に合わせて、AIが自分から実績を「盛る」ことはありませんでした。

3. 検品の保存指示文を、完成稿で試す

もう一つの保存指示文(検品用)も確かめます。架空のミニ加湿器の取扱説明書原稿を材料にしました。発注書の条件はこの8つです。

1. 見出しは「安全上のご注意」「使い方」「お手入れ」「仕様」の4つを、この順番で含めること
2. 「安全上のご注意」には、感電・火災に関する注意を必ず含めること
3. 電源仕様は「AC100V」「消費電力8W」と正確に記載すること(変更不可)
4. タンク容量は「300ml」と記載すること(変更不可)
5. 連続運転時間は「約6時間」と記載すること(変更不可)
6. 保証期間は「お買い上げから1年間」と記載すること(変更不可)
7. 「業界最高水準」「絶対に壊れません」などの、確認できない最上級表現は使わないこと
8. 本体の色は「ホワイトとライトグレーの2色展開」と記載すること

保存指示文はこれです。縛り=原稿に無い数字を書き足さない、形=OK・NG・保留の3分類。

クラウドワークスで受けた原稿チェックの案件です。発注書と、届いた原稿を貼ります。発注書の条件1〜8について、それぞれ次の3つのどれかで判定してください:OK(満たしている)/NG(満たしていない)/保留(原稿からは判断できない)。原稿に書かれていない数字を、判定の根拠として書き足さないでください。

条件をすべて満たす完成稿で5回試すと、5回とも8条件すべてOKで、数字の書き換えも判定の混同もありませんでした。

4. 同じ指示文を、粗い下書きで試す

同じ指示文・同じ発注書のまま、原稿だけを箇条書きの粗い下書きに差し替えます。

かしつき げんこう(下書き・箇条書きメモ)

・使い方
 タンクに水いれてセットするだけ。ボタン押せば動く。かんたん。
 電源はコンセントに挿すだけで使えます。

・仕様
 たっぷり入る大きめタンクです。
 業界トップクラスの静音設計で人気です。
 保証あります。

・お手入れ
 たまに拭く。水垢に注意。

(安全上の注意、あとで追加する)

AC100V・300ml・約6時間・1年間という4つの数字は、この下書きのどこにも書かれていません。ここで「原稿の趣旨からすればこの数字のはずだ」と推測で埋めてOKにする危険があると考えました。

5回試した結果は、5回とも該当する4条件をNGと判定し、「AC100Vの記載なし」「300mlという数値の記載なし」のように書かれていないことを書かれていないとだけ答えました。加えて、発注書にない「業界トップクラス」という表現も5回とも条件7の違反として拾いました。数字を1つも書き足さずに、8条件すべてNGという判定を出しました。

5. 判定の根拠に、原稿の引用を義務づける

念のため、判定の根拠を「引用」の形で強制するとどうなるかも試しました。

クラウドワークスで受けた原稿チェックの案件です。発注書と、届いた原稿を貼ります。発注書の条件1〜8について、それぞれ次の3つのどれかで判定してください:OK(満たしている)/NG(満たしていない)/保留(原稿からは判断できない)。原稿に書かれていない数字を、判定の根拠として書き足さないでください。判定の根拠には、原稿の該当箇所をそのまま引用してください。引用できる箇所が無い場合は、「原稿に該当箇所なし」と書いてください。

3回試すと、3回とも「原稿に該当箇所なし」という指定どおりの言い方で欠落を示し、存在しない引用を作ることはありませんでした。

6. 実績が応募条件に届かないとき、書く前に判定だけさせる

もう一段、材料の種類を極端にしてみます。募集要項に「合計500枚以上の実績が必須」と明記し、実績メモ(320枚)では届かない状態を作りました。

募集要項と実績メモを貼ります。まず、募集要項が求めている条件を、私の実績メモが満たしているかどうかだけを判定してください。満たしていない場合は、その理由を教えてください。提案文はまだ書かないでください。

3回試すと、3回とも「満たしていません(180枚不足)」と正しく引き算し、指示どおり提案文は書きませんでした。この「まだ書くな」を付けずに1番の指示文(3段落で書け)をそのまま使った5回でも、5回とも320枚のまま(500枚への水増しは0件)で、届かないことを提案文の中に正直に書き添えました。

うまくいかないときの言い直し方

縛りが効きすぎて、応募自体を諦めさせられてしまう

6番のとおり、応募条件に届かないとAIは正直に指摘します。ただし「応募するかどうか」を決めるのは自分です。AIの指摘をそのまま鵜呑みにして応募を諦める前に、応募条件が本当に必須なのか、実績以外の要素(対応可能な修正の幅・納期の柔軟さなど)で相殺できないかを、自分の頭で考える一手間を挟んでください。

先ほどの判定はそのままにしてください。そのうえで、この応募条件を満たしていなくても、実績メモの中に応募先が気にしそうな強みがあれば、それだけを挙げてください。無ければ「特にありません」と書いてください。

想定外の材料が来たこと自体に気づけない

4番の指示文だけでは、AIは縛りを破らなかった代わりに「材料がいつもと違う」ことを自分からは指摘しませんでした。判定結果を流し読みすると、粗い下書きが来ていること自体に気づかないまま終わる可能性があります。指示文に一言足して、気づかせてください。

クラウドワークスで受けた原稿チェックの案件です。発注書と、届いた原稿を貼ります。発注書の条件1〜8について、それぞれ次の3つのどれかで判定してください:OK(満たしている)/NG(満たしていない)/保留(原稿からは判断できない)。原稿に書かれていない数字を、判定の根拠として書き足さないでください。加えて、判定を始める前に、今回の原稿がいつもの完成稿と比べて形式や完成度が大きく違うと感じる場合は、そのことを最初にひとこと書いてください。

3回試すと、3回とも「今回届いたものは『完成稿』ではなく、下書き・箇条書きメモの段階です」のように、判定に入る前の一言で材料の違いを言い当てました。保存指示文をそのまま使い回す前に、この一言を足しておくと、材料がいつもと違う案件を読み飛ばさずに済みます。

応用・次の一手

保存指示文は、材料の「厚い/薄い」を跨いでも安心して使い回せる

今回確かめた範囲では、募集要項の実績欄の厚さ(詳しく求めるか、ほぼ聞かないか)や、原稿の完成度(清書か、箇条書きの下書きか)が変わっても、「書き足さない」という縛りは崩れませんでした。次に別の案件が来たときも、いちから指示文を作り直す必要はなさそうです。

それでも定期的に極端な材料で「点検」する

この記事の実測は、この2つの保存指示文・この5種類の材料に限ります。すべての保存指示文が同じように頑丈だとは限りません。長い会話でも縛りが崩れなかった記事と同じく、1回の実測で「崩れない」と決めつけないことが大切です。半年に1回など、思いつく限りいちばん極端な材料(今回でいえば「応募条件に届かない案件」)を意図的にぶつけて、保存指示文が今も効いているかを点検する習慣にしてください。