これで何ができるか
「長い会話を続けると、AIは前のほうの指示を忘れる」——検索するとよく出てくる話です。コンテキストウィンドウの上限で古いやりとりが参照されにくくなる、という説明が定番です。
この記事では、実際に15往復まで試しました。架空の副業の材料に機械で判定できる縛りを5つ渡し、縛りに一切触れない追加依頼だけを15回送り続けます。
結果は、定説に反して1件も崩れませんでした。材料2組×2会話=4会話・のべ60回の返りで、5つの縛りはすべて15往復目まで守られたままです。
この記事は縛りが5往復までは戻らなかった記事の続きです。あちらは5往復で打ち切っていたので、「もっと長く続けたら崩れるのでは」という疑問が残っていました。
前提
| かかる時間 | 20分(材料を用意する時間は別) |
| 費用 | 無料。無料のチャットAIで足ります |
| 必要なもの | 一覧のもとになる自分のメモ(何行でもかまいません) |
| プログラミング | 不要。この記事の指示文をコピーして貼るだけです |
この記事も、自分の記録から一覧を作る話です。発注元にそのまま出す成果物を作る話ではありません。
AIへの頼み方
1. 縛りは5つ、最初の1往復目にだけ渡す
材料は2本用意しました。①架空のオンライン講座の受講者名簿15行(氏名・受講コース・入金額・入金日・備考)②架空のせどり在庫リスト15行(商品名・仕入れ値・仕入れ日・状態)。どちらも既存記事の材料(在庫12行・案件記録11行)とは別のものです。
このあとに、自分の名簿・リストをそのまま貼ります。3行には「未確認」という但し書きを入れてあります(入金・仕入れの確認がまだ済んでいない、という想定です)。
2. そのあとは、縛りに一切触れない依頼を、1個ずつ15回送るだけ
2往復目からは、縛りのことを一言も書きません。1回のメッセージに1個だけ、同じ会話の続きとして送ります。実際に送った15件はこの順番です。
並べ替え・表にする・小計・見出し・全角半角の統一——どれも縛りには触れていません。もう1本の材料(せどり在庫リスト)にも、同じ位置で対応する語(仕入れ値・商品名・仕入れ日・状態)に置き換えただけの同型15件を、同じ順番で1個ずつ送りました。
材料2組×各2会話=4会話。同じ材料でもう1回ずつ繰り返したのは、1回だけでは「たまたま」を否定できないからです。
結果は、4会話・のべ60回とも同じでした。
| 縛り | 5往復目(既存記事・6会話) | 15往復目(今回・4会話のべ60回) |
|---|---|---|
| ① 全部の行を1行ずつ | 6/6 | 60/60 |
| ② 数字は原本のまま | 5/6 | 60/60 |
| ③ 原本に無い評価語を書かない | 6/6 | 60/60 |
| ④ 言い回しを整えない | 6/6 | 60/60 |
| ⑤「未確認」を残す | 6/6 | 60/60 |
往復を5から15へ3倍に伸ばしても、崩れ方は悪化しませんでした。むしろ既存記事で唯一崩れていた「②数字は原本のまま」も、今回は60回中0件でした(既存記事の1件は「表にした回」に限った偶発的なもので、材料を変えた今回では再現しませんでした)。
3. 「列の順番を変える」「まとめる」依頼は、データを行の外へ動かすことがある
9往復目に送った「列の順番を変えて、備考を先頭に持ってきてください」では、こう返ってきました。
1. 一括払い / A-01 佐藤みどり / 生成AI基礎コース / 入金額32,000円 / 入金日2026-07-02
2. 分割1回目 / A-02 田中健一 / 生成AI基礎コース / 入金額32,000円 / 入金日2026-07-03
(以下略)
備考(一括払い・未確認など)が行の先頭に動いただけで、中身は変わっていません。
14往復目の「受講コースごとにまとめて、コース名の五十音順に並べてください」では、もう一段階変わりました。
新品未開封
B-02 ワイヤレスイヤホン 仕入れ値3,200円 仕入れ日2026-06-02
B-06 タブレット端末 仕入れ値15,000円 仕入れ日2026-06-06
(中略)
未確認
B-01 ノートPC(型落ち) 仕入れ値18,000円 仕入れ日2026-06-01
B-04 デジタルカメラ 仕入れ値22,000円 仕入れ日2026-06-04
(以下略)
「状態」の列が、行ごとの文字ではなくグループの見出しに変わっています。データ自体は消えていません(「未確認」の4件は「未確認」という見出しの下にまとまっているだけです)が、1行だけを見ても状態が分からなくなる、という変化です。
⚠️ 「まとめて」「グループ化して」を頼むと、その項目が行から見出しへ移ることがあります。あとで機械やAIに1行ずつ照合させたいなら、この形になっていないか先に確認してください。
4. 最後に、最初の名簿と突き合わせさせる
15往復のあと、既存記事と同じ突き合わせの指示文も送りました。
4会話とも「差異なし」と正しく自己申告しました。今回は実際に差異が無かったので、自己申告と機械照合が一致した回です。既存記事では自己申告のほうが間違っていましたが、それは「本当に崩れていた」からこその話で、崩れていない今回まで自己申告を疑う理由にはなりません。
📌 それでも、自分で数え直す手間を惜しまないでください。自己申告が正しいかどうかは、崩れているときにしか分かりません。
うまくいかないときの言い直し方
「見直して」だけだと、一覧そのものが返ってこない
最初、15回目の依頼を「最後に見直して、おかしいところがあれば教えてください」にしたところ、4会話とも所感だけが返り、一覧は再掲されませんでした。
縛りが守られているか確かめたいなら、「見直して」だけでは不十分です。「番号付きの箇条書きに戻して、15件全部を書き出してください」のように、一覧そのものを書き出す指示にしてください。見直し・監査をしたいときは、それは別の依頼として分けて送ってください(3番の突き合わせがその形です)。
途中で「列の順番を変えて」「まとめて」と頼んだら、中身が心配になった
上の3番のとおり、データが消えたわけではなく、行の外(先頭・見出し)に動いただけのことが多いです。心配なら、そこで一度「元の1行ずつの形に戻して、全部書き出してください」と頼み直してください。今回の実測では、それで15件とも正しく戻りました。
応用・次の一手
この定説は、この2材料・この15往復では支持されませんでした
「長い会話ほど指示を忘れる」という説明は、少なくともこの2材料・この15往復・この縛りの種類では起きませんでした。コンテキストウィンドウの説明自体を否定するものではありません——確かめたのは「実務的な追加依頼を15回重ねる」という、副業でよくある使い方の範囲です。もっと長い会話、もっと複雑な縛り、もっと多くの往復では、また違う結果になるかもしれません。
毎回やっているなら、決まった時刻に動かす形へ
同じ一覧を毎週作っているなら、決まった時刻に自動で動かす形に移せます。今回の実測は「同じ会話を続ける」場合の話で、会話を切って要約を挟む場合はまた別の実測が要ります。
崩れていないかを自分で確かめる方法
いちばん確実なのは、AIの自己申告だけに頼らないことです。自分で壊れを仕込んで確かめる記事のやり方で、時々わざと誤った版を混ぜて、指摘してくれるかを試してください。
⚠️ 最後に一つ。この実測で「崩れなかった」のは、この2材料とこの15往復での話です。「何回続けても大丈夫」という意味ではありません。長く使う会話ほど、最初のメモをもう一度貼り直す・突き合わせを頼む、といった一手間は取っておいてください。