これで何ができるか
Kindle本の印税を、率ではなく式で出せるようになります。「70%」という数字は聞いたことがあっても、それが何の70%なのかを知っている人は多くありません。
結論から書くと、70%は定価の70%ではありません。消費税を引き、さらに配信コストを引いた後の額に70%を掛けます。しかも70%を選べる価格には上限があります。
この記事は、その式と条件をAmazonの原文から確かめる頼み方を扱います。全17回の実測をもとにしています(そのまま聞く3回・原文を貼る3回・追いの3種を各3回・前提を渡して表を作らせる2回)。
⚠️ この実測は、AIに検索やツールを一切使わせずに測ったものです(依頼に「ツールは一切使わず(検索もファイル読み取りもしないでください)」を添えています。そのまま聞いた3回には、さらに「あなたの知識だけで」を付けました。添え書きは最初の依頼に入れてあり、続きの質問では繰り返していません)。検索を有効にしたAIに同じ文を貼ると、AIが原文を読みにいくので結果は変わりえます(検索を有効にした条件は測っていません)。貼らずに聞く回で見ているのはAIが覚えている数字の精度、貼る回で見ているのは渡した原文をどこまで使えるかです。
間違いが揃っているところが厄介です。3回聞いて3回同じ数字が返れば、確からしく見えます。
前提
- プログラミングは不要です。やることはAIに文章で頼むことだけです
- Kindleダイレクト・パブリッシング(KDP)のヘルプページを開ける環境
- この記事の数字は2026-08-26に原文で確認したものです。規約と料率は変わります。自分で出版するときは必ず当日の原文を開いてください。式と配信コストは電子書籍の希望小売価格、日本の価格帯と消費税の扱いは日本のマーケットプレイス向けの価格設定にあります
AIへの頼み方
まず、そのまま聞いてみる
この頼み方を3回試しました。3回とも金額は返ってきます。ただし返ってきたものを原文と突き合わせると、次の3つが崩れていました。
①「70%を選べる価格帯」の上限を、3回とも間違えました。答えは1,250円で揃いましたが、原文は1,650円(税込)です。1回は下限も99円と答えていて、これは35%オプションの下限(99円)と同じ数字です。隣の行が混ざったように見えます。
②配信コストの例外が落ちました。配信コストそのものには3回とも触れます。落ちるのはその先で、「日本での販売では、10 MB 以上の書籍に関しては配信コストが差し引かれません。」という一行に触れたのは3回中1回だけで、しかもその1回は「10MBある本なら10円ほど引かれて」と、原文と逆でした。原文どおりに書けた回は0回です。
③日本で70%を選ぶ条件が、日本の条件になりませんでした。3回ともKDPセレクトという言葉は出します。ところが原文の条件と正しく結べたのは0回で、1回は「登録していない場合は日本国外での販売分が35%になったり」と書いていて、向きが逆でした。
次に、原文を貼って聞く
貼ったのは、35%と70%の選択制・販売地域外の売上は35%になること・35%の式・70%の式・配信コスト(10MBの例外を含む)・日本の70%条件の6か所です。価格帯と消費税率は、わざと貼っていません(渡していないことをどう扱うかを見るため)。同じく3回試しました。
⚠️ 自分の本の金額を出したいだけなら、価格帯のページ(日本のマーケットプレイス向けの価格設定)も一緒に貼ってください。今回貼らなかったのは実測のためです。
原文を貼ると、10MBの例外と日本の条件は3回とも原文どおりになりました。価格帯を数字で言い切った回は0回で、3回とも、渡していないもの(消費税率か価格帯)を、資料に書かれていない/明記されていないと自分から断りました。
⚠️ ただし、原文を貼った3回が無傷だったわけではありません。3回のうち1回は、冒頭の一文(「350円です(KDPの35%ロイヤリティを選んだ場合)」)が、同じ回答の本文(35%=約159円または175円)と食い違っていました。1回だけなので傾向とは言えませんが、貼っても、見出しの数字だけ拾う読み方は危険です。
なぜこの言い方が効くのか
貼らないと出てこないのは「例外のほう」です。配信コストという言葉自体は、貼らなくても3回とも出ました。落ちたのは、日本では10MB以上だと引かれないという例外です。3回中1回は10MBに触れましたが、向きが逆でした——消えるだけでなく、逆に出ることもあります。よく知られた部分は貼らなくても出て、知られていない部分だけが静かに落ちます。だから返ってきた文章は、読んだかぎりでは完成して見えます。
「書かれていない」と言えるのは、範囲が決まっているときだけです。貼らずに聞いた3回は、いずれも価格帯を数字で答えました。貼った3回で言い切りが0回だったのは上に書いたとおりで、自分から価格帯は資料に無いと書いたのは1回、あとの2回は消費税率について同じことを書いています。そのうえで、書かれていないなら書かれていないとだけ答えるよう言い添えて聞き直すと、3回とも「資料には書かれていません」と答えました。答えの範囲をこちらが決めると、AIは範囲の外を「無い」と言えるようになります。同じ形の受け皿は調べたことだけを書かせるでも使っています(あちらは別の題材での実測です)。
うまくいかないときの言い直し方
数字は返ってくるのに、それが正しいか分からない
前提を名指しで聞き返させます。そのまま聞いた3回に、続けてこう聞きました。
3回とも、税込か税抜かの分岐を自分で挙げ、税込前提の金額を出し直しました。出し直した額は3回とも約317〜318円です(うち1回ははっきり「訂正します」と書き、2回は両方の前提を並べて、どちらか断定はできないと添えています)。税込と読むか税抜と読むかだけでも印税は約1割動きます(70%は1MBの本で、税込読みなら約317円・税抜読みなら約349円。35%は税込読みで約159円・税抜読みで175円)。率の選択とファイルサイズまで含めると約159円〜約350円に広がるので、1つの数字だけ答えている回答は、どこかを黙って仮定しています。
直ったのは金額だけでした。3回とも、間違った価格帯(250〜1,250円・99〜1,250円)を書き直さずに再掲しました。しかも3回中2回は、その価格帯を自分で挙げた仮定の一覧に並べたうえで再掲しています。残る1回は「私の記憶は確実ではありません」と添えましたが、数字はそのままでした。仮定だと自覚しても、その中身の数字までは検算されません。「前提を挙げて」は前提の在りかを出させる頼み方で、前提の正しさは別に確かめる必要があります。
⚠️ つまり、貼らずに聞いた回は追いの質問だけでは直りきりません。
🚨 ただし「原文を貼れば正しい価格帯が出る」とは書けません。今回貼った資料に価格帯は入れていないので、確かめたのは「間違った数字を言い切らなくなる」ところまでです。価格帯を含む原文を貼った回は試していません。正しい数字が要るなら、その数字が載っている原文を自分で渡すしかありません。
資料を貼ったうえで、そこに無いことを埋めさせない
以下の2つは、原文を貼った3回の会話に続けて送ったものです(貼っていない回には当てていません)。
貼った資料に価格帯は入れていません。3回とも「資料には書かれていません」と答え、数字を埋めませんでした。さらに3回とも、こちらが聞いたのは価格帯だけなのに、前の回答で自分が置いた消費税10%は資料に書かれていない前提だった、と自分から申し出ました(3回とも、付加価値税等は数式のまま残し、具体的な金額は資料だけでは確定できないとして引っ込めています。「訂正します」という語まで使ったのは1回だけです)。この3回は、逃げ道を先に作ったうえで、数字を埋めませんでした。⚠️ ただし、逃げ道が効いたとは言えません。資料を貼った3回は、逃げ道を付ける前から埋めていませんでした。逃げ道だけを足して資料を渡さない条件は測っていません。価格帯の数字を埋めたのは、資料も逃げ道も無い3回のほうでした。
条件の向きを、引用させて確かめる
⚠️ これは上の指示文のさらに後(同じ会話の3ターン目)で送っています。単独で送った場合は測っていません。
3回とも原文を正確に引用し、日本・インド・メキシコ・ブラジルの4か国と答えました。日本国外の話ではありません。資料を渡したうえで引用させると、条件の向きは3回とも原文どおりに揃いました。連載のKindle出版のAI申告を原文で確かめるでは、資料を渡さずに、引用できないなら引用できないとだけ答えてよいという逃げ道を付けて聞き、2回とも引用できないと答えました。条件の向きは、引用元をこちらが渡して引用させた3回とも、原文どおりに揃いました。ただし、この2つの実測は聞いた対象も逃げ道の有無も違うので、差が資料の有無だけによるとは言えません。
応用・次の一手
冊数を変えるだけなら、掛け算を自分でやる必要はありません。式が決まっているので、前提を書いて頼めば済みます。
これを2回試しました。2回とも1冊317円に到達し、10冊と50冊の金額(3,175円・15,874円)も一致しました。100冊だけは31,749円と31,748円で1円ずれています(丸めの位置の違いです)。価格・税込か税抜か・ファイルサイズ・70%の可否——この4つを先に書いて頼んだ2回は、2回とも同じ317円に着きました。この4つのうち、先に書かずに聞くと落ちるのは税込か税抜かです。そのまま聞いた3回のうち2回は、希望小売価格が税込か税抜かに一言も触れないまま税抜として計算していました。その2回とも、源泉徴収や確定申告といった別の税の話は書いています。税の話は書いてあるのに、印税の額を1割動かすこの分岐だけが抜けていました。残る1回だけが、注意書きの中で自分から税込の場合の317円に触れていました。
ファイルサイズと70%の可否は、逆に元の回答の時点で3回とも触れられていました(1回目は「1MB未満」、3回目は「70%には条件があり」といった具合で、書き方は違います)。なお価格は今回どの回でも先に渡しているので、渡さなかった場合は測っていません。
計算を頼んだだけなのに、頼んでいない価格帯の注意書きが付いてきて、その数字が間違っていました。はっきり確認できたのは1回です(もう1回は回答の一部しか保存しておらず、価格帯に触れたかどうかを確かめられていません)。計算させた部分が合っていても、周りに添えられた説明は別に確かめる必要があります。
この連載はここで終わりです。売る場所の原文から、収入を決めている変数を並べてきました。noteの手数料では、率を貼らずに聞いた3回とも、決済手段はクレジットカードと携帯キャリアの2つ止まりでした。選ぶのは購読者だという一言も、その3回では一度も出ていません。noteの手取りでも、料率を貼らずに聞いた回は決済手段の数に触れず、原文に無い率で計算しました。KindleのAI申告は、原文を貼らずに聞いた2回とも4つの判定が原文どおりでしたが、根拠の一字一句の引用は2回とも「引用できません」でした。そしてこの回で扱った印税は、定価の70%ではありませんでした。その70%を選べる価格帯の上限も、AIは3回とも400円低く答えました。答えが返ってくることと、その答えを原文で確かめられることは、4本とも別のことでした。
⚠️ この記事の数字はAIの回答についての実測です(全17回=そのまま聞く3回・原文を貼る3回・追いの3種を各3回・前提を渡して表を作らせる2回)。生の返りと判定コードは docs/evidence/kindle-royalty-formula.md に全文置いてあります。式と配信コストは電子書籍の希望小売価格、価格帯(250円〜1,650円)と消費税の扱いは日本のマーケットプレイス向けの価格設定からの転記です。規約は変わるので、使う前にご自身で両方を開いて確かめてください。