これで何ができるか
作業記録・家計メモ・読書ログのように、1日1行ずつ足していくだけのファイルがあります。これをAIに任せると、走り書きを渡すだけで整った1行になって積み上がっていきます。あとで表計算ソフトに貼るなら、毎日同じ形で出ることが全部です。形がそろっていない行が1本混ざるだけで、貼り付けたときに列がずれます。
その「同じ形」を、どこで決めればいいのか。指示文に書くのか、ファイルの中にお手本を1行置くのか。やることリストをAIに毎日1件ずつ進めさせるは、末尾でこう書いていました——「指示文で教えるより、ファイルの中に1行お手本を置くほうが効く場合があります」。ファイルにお手本を置くほうが効くというのは、一度も測っていない推測でした。
この記事で測ります。架空の記録ファイルを2本(副業の作業記録/家計の買い物メモ)作り、毎日ひとつの走り書きを渡して1行だけ追記させる形を、書式をどこで伝えるかだけを6通りに振って通しました。前の日の返りから取り出した「更新後のファイル」を、そのまま次の日の入力にしています。自動実行では返事の文章は捨てられ、ファイルだけが翌日に渡るからです。6版 × 材料2本 × 各2回 × 3回転 = 全72回。そのほかに、3日目のファイルを別の新しい会話に点検させた回が8回あり、合わせて80回です。
分かったことは3つです。
① お手本1行は、たしかに効きました。書式の説明を1文字も書かなくても、ファイルの中に規定の形の行が1本あれば、3日とも12回中12回、同じ形で追記されました。日付の書き方も、区切り記号も、末尾の単位も全部そろっています。
② ただし「指示文より効く」は外れでした。お手本をスラッシュ区切りにしたまま、指示文ではカンマ区切りだと説明した版では、12回とも指示文の側が勝ち、ファイルのお手本に従った回は0回でした。お手本は弱い決め方です。指示文が黙っているときにだけ効きます。
③ いちばん危ないのは、どちらも書かないときでした。書式をどこにも書かない版は規定の形が12回中0回。ところが、どこにも書かない12回は「ばらけた」のではなく、3日とも同じ形にそろっています。決めたのが自分ではなく、初日の走り書きの見た目だっただけです。
前提
| かかる時間 | 20分。ファイルを作るときに1回だけやります |
| 費用 | 無料。無料のチャットAIで足ります |
| 必要なもの | ブラウザで使えるAI(ChatGPT・Claude・Geminiなど)と、テキストファイル1つ |
| プログラミング | 不要。ファイルはメモ帳で作れるただのテキストです |
⚠️ プログラムを書く人向けの話ではありません。ここで扱うのは、やることリストをAIに毎日1件ずつ進めさせると同じ「AIが毎回テキストを書き換える形」です。決まった時刻にひとりでに走らせる仕掛けは毎日決まった時刻にAIを動かす仕掛けを作らせるにあります。
📌 この記事の数字は、すべて架空データでの実測です。走り書きにも、渡した日付にも、半角スラッシュと半角カンマは1文字も入れていません(入れると、それ自体がお手本になってしまうため)。
AIへの頼み方
1. まず、書式をどこにも書かずに頼んでみる
ファイルには見出しの1行しかなく、指示文にも書式を書きません。この版を材料2本 × 各2回 × 3回転=12回通しました(下の指示文そのものは、3番の版でも同じものを使っています)。
このあとに 【今日ぶん】 として走り書きを1行、【記録ファイル】 としてファイルの中身をそのまま貼ります。ファイルの中身は初日なら # 副業の作業記録(1日1行) の1行だけです。
12回とも、狙った形(2026-08-01 / C社 / 記事の下書き / 90分)にはなりませんでした。初日に返ってきたのは、4回とも渡した走り書きの丸写しです。
🔑 面白いのは2日目からでした。2日目に渡した走り書きは 2026年8月2日。D社の打ち合わせメモ起こし。45分。 と「。」で区切ってあるのに、返ってきた追記行は 2026年8月2日 D社 打ち合わせメモ起こし 45分 でした。初日の行と同じ形に整えられています。3日目の 2026年8月3日 C社の修正対応をやった 60分 も 2026年8月3日 C社 修正対応 60分 になりました。2日目の「。」が追記行に残った回は4回中0回、2日目・3日目の8回とも半角スペースで4つの欄に割れています。
なぜこれが怖いか=ファイルの中を見ると毎日きれいにそろっているので、うまく動いているように見えるためです。決めたのは自分ではありません。初日にたまたま書いたメモの見た目が、そのまま仕様になっています。
2. 指示文で書式を説明する
いちばん普通のやり方です。書式を言葉で説明します。この指示文は、ファイルにお手本が無い版とある版の両方で使いました。材料Aぶんで合わせて12回です。
家計メモのほうは、欄の名前と単位だけ入れ替えます。こちらも材料Bぶんで12回です。
指示文で書式を説明すると、材料A・Bどちらも12回とも規定の形でした。日付・区切り記号・末尾の単位を別々に判定しても、それぞれ12回中12回です。版ごとに割っても、お手本が無い版で12回中12回、ある版で12回中12回——差は出ませんでした。
なぜここまで細かく書くか=「日付 / 相手 / 内容 / 所要時間 の形で」だけだと、日付をどう書くかが決まりません。2026年8月1日 も 8/1 も、その説明には従っています。出す形を毎回そろえると同じで、欄の名前を並べただけでは形は決まりません。
3. ファイルに、お手本を1行だけ置く
指示文は1番とまったく同じ(書式について1文字も書かない)まま、ファイルの2行目に規定の形の行を1本だけ置いておきます。この版も12回です。
# 副業の作業記録(1日1行)
2026-07-31 / C社 / 記事の下書き / 90分
書式を1文字も書かない指示文のままでも、お手本を1行置けば12回とも規定の形になりました。1番が12回中0回だったのと同じ指示文です。決めているのはファイルの側だと、これではっきりします。
📌 お手本の行は、本物のデータでなくて構いません。上の 2026-07-31 は前日ぶんとして置いた1行ですが、2026-01-31 / 相手 / 内容 / 90分 のような見本の行を1本置いて、あとで消してもよいはずです(⚠️ その形は試していません。この実測で置いたのは、データとして自然な1行だけです)。
📌 家計メモのほうで、2回だけ返事に断りが付きました——「日付と項目の区切りは、既存行の書式に合わせました。依頼文の表記そのままがよければお知らせください」。自動実行では、返事に付いた断りの文章は捨てられます。翌日に渡るのはファイルだけです。
4. 両方書くなら、食い違わせない
ここがこの記事の芯です。ファイルのお手本はスラッシュ区切りのまま、指示文の説明だけをカンマ区切りに変えました。この版は12回(材料Aで6回・材料Bで6回)です。
家計メモのほうは、その12回のうち6回ぶんです。
12回とも、指示文の側(カンマ)に従いました。ファイルのお手本に従った回は0回です。推測は外れました。
🚨 本当に困るのはその先です。指示文には「すでにある行は1文字も変えないでください」と書いてあります。自動実行では当然そう書きます。だからお手本の1行だけがスラッシュのまま取り残され、3日たっても直りません。ファイルの中に2通りの形が混ざったまま残った系列は4系列中4系列、直した回は0回でした。
🔑 AIは間違えていません。毎日きちんと指示文どおりに書き、こちらの禁止も守っています。壊れているのは、こちらが2か所に別々のことを書いたという一点だけです。
5. 書式を書かずに「ファイルに合わせて」でもよい
書式の中身を1文字も書かず、ファイルを見ろとだけ言う形も試しました。この指示文は材料が変わっても同じ文なので、2本合わせて12回です。
「ファイルにある行と同じ形に」とだけ言った版も、12回とも規定の形でした。2番(指示文で全部説明する)と同じ成績です。
🔑 この形の値打ちは、成績ではなく「食い違いようがないこと」です。書式の実体はファイルの中に1つしか無いので、4番の事故が起きません。⚠️ 裏返すと、ファイルの1行目が間違っていたらそのまま従います。置くときに1回だけ、自分の目で確かめてください。
📌 どの版でも崩れなかったこと=72回すべてで、追記されたのはちょうど1行でした。すでにある行が1文字でも変わった回も72回中0回です。心配していた「勝手に過去の行を整形し直す」は起きませんでした。
うまくいかないときの言い直し方
いつのまにか形が2通りになっていた
追記の72回で、形が食い違っていることを断ってきた返りは1つもありません。気づくには、こちらから聞くしかありません。3日目のファイルを別の新しい会話に渡して、こう聞きます。
このあとにファイルの中身をそのまま貼ります。形が混ざったファイル4回では、4回とも取り残された1行を一字一句そのままコピーして返しました。そろっているファイル4回では、4回とも「ありません」——誤検出0件です。
⚠️ 1つのファイルにつき1回ずつ、合わせて8回しか試していません。混ざったファイルで挙げてくるのが「取り残された1行」なのか「多数派の3行」なのかは、こちらが決めていません(8回では4回とも前者でした)。月に1回、これを走らせるくらいの使い方が合っています。
何も書いていないのに、毎日同じ形で出てくる
そろっていること自体は、うまくいっている証拠になりません。1番で見たとおり、書式をどこにも書かなくても3日とも同じ形になります。決めたのは初日のメモです。
確かめ方は簡単で、ファイルの1行目の下に、自分が使いたい形の行を1本書き足してから始め直すだけです。3番のとおり、それだけで12回中12回そろいました。すでに何日かぶん溜まっているなら、混ざっているかどうかを上の点検で聞いてから決めてください。
4日目以降が分からない
📌 この実測は3回転までしか測っていません。4日目・10日目・50日目にどうなるかは、この記事は何も言っていません。行が増えるほどお手本になる行も増えるので、そろいやすくなる方向に見えますが、測っていないので書けません。
長く回すなら、2回ぶんを自分で見比べるの型を月に1回だけ当てて、変わってよいところと困るところを分けておくのが安全です。
応用・次の一手
手でうまくいったら、時刻を決めて自動にします。毎朝ひとりでに走らせる仕掛けは毎日決まった時刻にAIを動かす仕掛けを作らせるにあります。この記事で決めた「書式をどこに書くか」は、そのまま自動実行の設定になります。
この記事の結論を一言にすると、書く場所は1か所にする、です。指示文に全部書くか(2番)、ファイルのお手本に任せるか(3番)、ファイルを見ろとだけ言うか(5番)。どれでも12回中12回そろいました。やってはいけないのは、2か所に書いて中身を食い違わせることだけです。
同じ形は、待ち行列にも使えます。やることリストをAIに毎日1件ずつ進めさせるは済の印を残す話でしたが、その印の形も同じ理屈で決まります。⚠️ あちらの記事が「指示文で教えるより、ファイルの中に1行お手本を置くほうが効く場合があります」と書いていた点については、この記事の実測では、効くのは本当・「より効く」は外れでした。
次に測るなら=お手本を「データではない見本の行」(2026-01-31 / 相手 / 内容 / 90分)にした場合と、ファイルが100行を超えたあとで走らせた場合の2つです。どちらもこの80回では触っていません。