これで何ができるか
複数の取引先や発行元からの連絡をまとめてAIに貼り、「急ぎのものはどれか」を毎朝一度で確認できます。プログラミングは要りません。ただしこの記事が扱うのは「できる」ことではなく、その手前にある落とし穴です。
複数の相手を1つのチャットに貼って緊急度を判定させるとき、多くの人は「件名に『至急』『緊急』があれば急ぎ」という、いちばん分かりやすい基準を指示文にします。ところが相手(取引先・発行元)ごとに、緊急を伝える型は違います。件名にはっきり書く相手もいれば、本文の冒頭だけに書く相手、そもそも「至急」という言葉を使わず返信期限の日付だけで伝える相手、逆に毎回の口癖のように件名へ付けていて本当の緊急度とは無関係な相手もいます。
架空の取引先5社×5件を2セット(計50件、今日は2026-09-16という設定)用意し、社ごとにこの4つの型を仕込みました。真の緊急案件は各セット8件です。「件名に緊急を示す言葉があれば教えて」という1つの基準だけを渡すと、材料2本×各2回=4回とも、本文にしか緊急のサインがない相手の分(各4件)が一覧からまるごと消えました。同時に、毎回同じ慣習語を件名に付ける相手では、逆に急ぎでない案件(各3件)が誤って一覧に残りました。
「相手によって緊急の伝え方が違うかもしれません。まず各社の書き方の癖を確認してから」と1文加えると、材料2本×各2回=4回とも、正解8件と過不足なく一致しました。全部で14回試した記録は docs/evidence/one-rule-does-not-fit-every-sender.md に生のまま置いてあります。
前提
| かかる時間 | 20分 |
| 費用 | 無料。無料のチャットAIで足ります |
| 必要なもの | ブラウザで使えるAI(ChatGPT・Claude・Geminiなど)と、複数の相手からの連絡の一覧 |
| プログラミング | 不要 |
⚠️ この記事の指示文は、下の「(ここに、本日までに届いた連絡の一覧をそのまま貼ります)」の位置に、実際の連絡(教材)を差し込んで測っています。記事の指示文ブロックそのものには教材を含めていません。読者が自分の連絡を貼るときも、同じ位置にそのまま貼ってください。
📌 「重要です・見逃すと困ります」のような念押しフレーズの効果は扱いません。それは念押しの一文を足しても、検出できる数は動かなかったにあります。あちらは「読む側(AI)に念を押すか」が変数でしたが、この記事は「送る側(複数の相手)の書き方がそもそも違う」ことが変数で、向きが逆です。
📌 「判定に迷ったときにどちらへ倒すか」の話とも別です。それは迷ったときの倒れ方をそろえるにあります。この記事が扱うのは、迷う手前の話——そもそも1つの基準が、相手の型に合っていないと機能しないという核です。
📌 監視対象を1件増やすときの「過去分が新着に化けるか」問題とは別です。それは監視対象を増やしても、古い記録は新着にしないにあります。この記事は監視対象の追加ではなく、複数の相手の書き方の違いだけを扱います。
AIへの頼み方
1. 「件名に緊急を示す言葉があれば」と、いちばん分かりやすい基準で聞く
材料2本(取引先5社×5件を2セット)×各2回、計4回試しました。4回とも、一次回答の一覧(見出しの直下に並ぶ「該当した連絡」)は件名の言葉だけで選ばれ、真の緊急8件のうち本文にしか緊急のサインがない相手の分(各4件)が完全に抜け落ちました。逆に、毎回の口癖のように件名へ同じ言葉を付ける相手では、5件中3件(本当は急ぎでない)が誤って一覧に残りました。
📌 AI自身は矛盾に気づいて、「件名だけで判断すると誤ります」という注意書きを本文中に自発的に添えてきました(4回中4回)。ただし気づいていることと、要求した一覧そのものが直っていることは別です。指示文が求めた「件名に緊急を示す言葉があれば教えて」という一覧は、注意書きが付いた後も最後まで件名基準のままでした。
2. 「相手によって伝え方が違うかもしれない」と、確認の手順を先に置く
材料2本×各2回、計4回とも、真の緊急8件を過不足なく抽出できました。誤検知(本当は緊急でないのに緊急とした)も0件です。AIはまず「A社は件名の【至急】が実態と一致する」「D社は件名に毎回付くが本文で否定されているものが多い」というように、相手ごとの型を自分で言語化してから、本文の期限や実害まで見て判定していました。
3. もっと軽い注意でも足りるか
材料1のみ2回試したところ、こちらも2回とも8件全部を正しく検出できました。「まず癖を確認してから」という手順まで書かなくても、「伝え方が違うかもしれない」という短い注意だけで足りています。⚠️ この軽い版は材料1でしか確認していません。迷うなら2番の、手順まで書く言い方を使ってください。
うまくいかないときの言い直し方
「件名を確認して」と頼んだはずなのに、急ぎのものが漏れている
1番の症状です。「件名に〜があれば」という言い方をしていないか、指示文を見直してください。特定の1つの手がかり(件名・キーワード・特定の書式)だけを基準にすると、その手がかりを使わない相手の分がまるごと抜けます。2番か3番の一文に差し替えてください。
AIの返答に注意書きは付いているのに、リストや表には反映されていない
これも1番と同じ症状です。試しに、出力を表だけに強制してみました。
材料1で2回試すと、2回とも1番と同じ欠陥のある表(本文だけに緊急のサインがある4件が「-」のまま、口癖で件名に付く3件が誤って「急ぎ」のまま)がそのまま出力されました。説明文という逃げ場を塞ぐと、1番で自発的に付いていた注意書きが消え、欠陥のある一次回答が表の値としてそのまま固定されます。自動処理でこの表をそのまま使うなら、注意書きは最初から存在しないのと同じです。
表形式に強制しても、2番の直し方は崩れないか
同じ表形式の強制を、2番の指示文にも試しました。
癖の確認を先に置く2番の指示文なら、表形式に強制して材料1で2回試しても、2回とも真の緊急8件と過不足なく一致する表になりました。形式を変えても中身は崩れません。自動処理に組み込むなら、この形(癖の確認を指示に含め、出力は表だけ)が実用的です。
相手が6社・7社と、もっと多い場合は
この記事は5社での実測です。相手の数が増えても、AIが「まず各社の型を確認する」という手順自体は変わらないと考えられますが、社数が増えたときに確認そのものが雑になるかは確かめていません。相手が多いときは、最初の1回だけ、社ごとの型の説明が実際の書き方と合っているか自分の目で確認してください。
応用・次の一手
手で1回確かめてから、毎日決まった時刻にAIを動かす仕掛けを作らせるに載せるのが、この記事の使いどころです。自動実行に組み込むなら、3番(軽い注意)を短い表形式にした、次の指示文が実用的です。
この軽い注意+2列の表でも、材料1で2回試すと、2回とも真の緊急8件と1件も違わない表になりました。軽い注意の一文だけでも、列を絞った短い表形式に強制して崩れませんでした。
⚠️ この記事が実測していないこと=相手が6社以上に増えた場合、1つの相手が複数の型を混ぜて使う場合(同じ会社でも案件によって件名で伝えたり本文で伝えたりする場合)、日本語以外の言語で届く連絡の3つです。実際に使う人は、最初の1回だけ、報告された一覧と元の連絡を自分の目で見比べてください。
📌 件名だけの基準がなぜ2種類の壊れ方をするか=1つの基準は「ある特定の相手の型」を暗黙に前提にしています。件名を見る基準は、件名で伝える相手には効きますが、本文でしか伝えない相手には届きません(見落とし)。逆に、慣習で毎回同じ言葉を件名に付ける相手には効きすぎます(誤検知)。同じ1つの基準が、相手によって「効かない」と「効きすぎる」の両方の壊れ方をします。これは相手(送り手)の数が増えるほど起きやすくなります。