これで何ができるか

ランサーズでライティングの案件を募集するとき、AI利用の可否をAIに聞いても、答えは一枚岩ではありませんでした。架空のSEOブログ記事の募集文を、コンペ方式とプロジェクト方式の2パターンで用意しました。AI利用についての記載は一切入れていません。それぞれ5回ずつ、計10回聞きました。

  • 素朴に聞いて、最初の結論文で「使ってOK」と言い切った回——10回中1回(コンペ方式のみ)
  • 「結局、一言で」と答えを迫った回(同じコンペ方式の募集文・5回)——5回とも「使ってOK」
  • ランサーズの実際の「選べる」制度に自分から触れた回——10回中0回
  • 「原文のまま抜き出して」と言い直した回——3回とも規約への言及自体が消えました
業務をライティングに差し替えてランサーズのAI利用可否を実測した結果を示す表。1〜4行目は少ないほど良く、5行目は多いほど良い。募集文を見せて可否を聞き、最初の結論文で「使ってOK」と言い切った回数は10回中1回、「結局、一言で」と答えを迫ると「使ってOK」に変わった回数はコンペ方式5回中5回、素朴に聞いて実際の仕組みの語に自分から触れた回数は10回中0回、「原文のまま抜き出して」と言い直した回で規約に触れた回数は3回中0回、制度の有無を直接尋ねた回で実際の仕組みに近い語が出た回数は3回中3回。下の枠には、素朴に聞くと10回中9回は「書かれていないので確認を」だったが1回だけ最初の結論が断定に寄ったこと、「一言で」と決断を迫ると同じ材料の5回全部が「使ってOK」側に変わったこと、実際の「選べる」制度には10回とも触れずライティング限定の確信度も先行記事より低かったことが書かれている。
一言で迫ると、「要確認」は崩れました。

「要確認」という答えは、強く迫られると崩れることがあります。最初の答えでは9割が慎重だったのに、決断だけを求めると全部が肯定側に変わりました。慎重な答えが、どのくらい強いかは別問題です。

既存記事ランサーズのAI可否は「要確認」はロゴデザインの依頼で実測し、末尾に「業務はロゴデザインのみ(デザイン・ライティング以外は試していません)」という宿題を残していました。この記事はその宿題のライティング版です。おおむね同じ結果を再現しましたが、完全に同じではありませんでした。理由と、新しく見つけたことを、このあとに書きます。

前提

かかる時間 15分
費用 無料。ブラウザのチャットAIで足ります
必要なもの 特にありません
プログラミング 不要。この記事の指示文をコピーして貼るだけです

実在の募集文・実在の発注者名は貼らないでください。この記事は架空のサイト名・金額を使っています。実在の人物・団体とは関係ありません。

AIへの頼み方

1. コンペ方式の募集文で、素朴に聞く

架空のSEOブログ記事の募集文(依頼形式=コンペ方式)を用意しました。AI利用についての記載は一切入れていません。

この募集文でAIを使って作業してよいか教えてください。

上に続けて、募集文を貼ります。

5回のうち4回は「記載が無いので確認を」という結論でした。「文面だけでは判断できません」「確定はできません」のように、確認を促す形です。残り1回だけ、最初の結論文が「この募集文にはAI利用を禁止する記載はなく、文面上は使っても問題ない状況です」という、断定に近い形になりました。どの回も、ランサーズが実際に持つ「使用許可・制限を選べる」機能や【AIで生成】ラベルには、5回とも1件も触れていません。

2. 同じ聞き方を、プロジェクト方式の募集文でも試す

契約形式の1行だけを「プロジェクト方式」に差し替えた募集文で、同じ実験をしました。

この募集文でAIを使って作業してよいか教えてください。

こちらは5回とも「要確認・避けるのが安全」という結論でした。断定に寄った回は0回です。コンペ方式版との違いは、断定に寄った1回があったかどうかだけです。実際の仕組みを示す語は、コンペ方式・プロジェクト方式を合わせた10回中0回でした。

3. 結局どちらか、一言で答えさせる

最初の結論は9割が慎重でした。では、迷いの余地を与えずに決断だけを迫るとどうなるでしょうか。同じコンペ方式の募集文で、新しい会話として5回試しました。

結局、使ってよいかダメか、一言で教えてください。

5回とも「使ってOK」でした。「結論:使ってOKです。ただし条件付きです」「一言で言うと『使ってよい』です」のように、最初の一言はすべて肯定側です。素朴に聞いた指示文1では1/5だった肯定が、同じ材料・同じ募集文のまま5/5まで増えました。

なぜこの言い方が変わるのか

「要確認」という結論は、クライアントに確認するまで保留するという「決めない」側の姿勢です。この姿勢は、別の判断を強く求める指示が重なると崩れます。素朴に聞くと「書かれていないので確認してください」という、人に判断を預ける答えが返りますが、「一言で」と決断そのものを求められると、もう一度よく読んでも募集文に禁止の記載は無いので、肯定側に倒れると考えられます。慎重な答えの9割は、決断を迫られるとその場では崩れることがあります。

うまくいかないときの言い直し方

原文だけを聞きたいとき

「コンペ方式」という募集文自身の語を繰り返した回がありました。原文だけを答えさせる言い直しでも、同じように止まるかを確かめました。

この募集文に書かれている文を、原文のまま抜き出してください。規約の一般的な内容や可否の判断は書かないでください。 この募集文でAIを使って作業してよいか教えてください。

3回とも「AI利用に触れている文は募集文の中にありません」と答えました。募集文自身の項目名への言い換えも含めて、規約への言及が消えています。既存記事で確かめた「原文のまま抜き出して」という言い直しは、業務をライティングに変えても効きました。

制度そのものを直接尋ねてみると

「自分からは言及しない」ことは「知らない」ことと同じでしょうか。募集文を見せず、業務をライティングに限定して、制度の有無だけを直接尋ねました。

ランサーズには、コンペ方式のライティング依頼で、発注者が生成AIの「使用許可・制限」を選べる制度がありますか。知っていることを教えてください。

制度の有無を直接尋ねると、3回とも「選べる」「選択」という実際の仕組みに近い語を自分から出しました。ただし、既存記事(ロゴデザインで同じ質問をした回)とは様子が違います。「コンペ形式のライティングでも同じ選択肢があるのか…はっきり言えません」「ライティング依頼で…専用の制度や項目があるとは、私の知識では断定できません」のように、3回とも「ライティングに限った適用」には確信を持てていませんでした。募集文の可否を聞かれた場面では10回中0回だった同じ知識が、制度の有無を直接尋ねると言葉としては出てきますが、ライティングという業務に限定した確信度は、デザインのときより低いことが分かります。

応用・次の一手

複数の回が「応募前に発注者へ確認を」と自分から提案していました。その確認文をAIに作らせられるかも試しました。

この募集文の発注者に、AI利用の可否を確認するための質問文を1つ作ってください。

2回とも、そのまま送れる丁寧な質問文ができました。1回は「1. 生成AIの利用は一切不可 2. 構成案やアイデア出しのみ可 3. 下書きに利用してもよいが加筆・修正は自分で行う 4. 特に制限はない」という選択肢まで自分から作り、発注者が一度の返信で答えやすい形にしていました。

「一言で」と迫ると答えが変わることを知っておくと、確認の聞き方そのものにも応用できます。たとえばAIに案件の下調べをさせるとき、「結局どちらですか」と決断だけを求めると、材料が薄いまま片方に倒れた答えが返ってくることがあります。傾向を語らせない記事や見積もりの前提を埋めさせない記事にも近い注意があります。自分が「決めてほしい」と思って一言を求めるときほど、AIは無理にでも一言を作ってくることを覚えておいてください。

⚠️ この結果は、この1種類の業務(ライティング・SEOブログ記事)・合計23回の実測です。「ランサーズのAI可否は一言で迫れば必ず崩れる」と一般化しないでください。試したのは、次の範囲までです。

  • 業務はSEOブログ記事の執筆のみ(他のライティング区分・デザイン以外のカテゴリは試していません)
  • 募集文にAI利用の記載が無い場合だけ(明記がある場合は既存記事の型に戻ります)
  • 「一言で」の言い直しはコンペ方式のみで試しました(プロジェクト方式では未検証です)
  • 制度の有無を直接尋ねた3回も、正確さまでは検証していません

ランサーズの制度そのものが今も同じ内容かは、応募のたびに公式ヘルプで確認してください (制度は2024年3月時点のプレスリリースが根拠で、更新されている可能性があります)。

今回の生の返りは docs/evidence/lancers-writing-contest-still-needs-confirmation.md に全文置いてあります。