これで何ができるか

着手金30%・残金70%のように、1件の請求が2回に分けて入金される案件があります。この記事は「AIに未入金の請求を挙げさせたら、分割入金を見落とすのではないか」という心配を、実際に試して確かめたものです。

架空の請求10件(一括払い6件・分割払い3件・本当の未入金1件)と、架空の入金明細12行を用意しました。分割払いの3件は、着手金と残金の2つの入金明細を合計するとちょうど請求額と一致するように仕込んでいます。この材料に対して、聞き方を変えながら26回試しました。

  • 通常の分割払い(甲社・丁社・庚社の3件)を素朴に聞いた9回で、未入金と誤判定した回・2回の入金を別々の請求として二重計上した回は、どちらも0回でした
  • 庚社の残金だけが本当に未着(着手金しか入金されていない)データに変えても、「未入金」でも「入金済み」でもなく「一部入金・残金未回収」と正しく区別した回が3回ともでした
  • 残金と同額(41,800円)の別請求がたまたまぶつかり、しかも摘要が会社名になっていないケースでも、二重計上した回は0回。そのうえ3回とも「摘要が会社名でないので要確認」と自分から言いました
分割入金の完済判定を3つの条件で試した結果を並べた表。通常の分割払い(甲社・丁社・庚社の3件、素朴な聞き方3種×3回=9回)は未入金と誤判定した回が0/9、二重計上した回も0/9。本当に一部(着手金)だけ入金されていて残金が未収の回(3回)も、未入金と誤判定した回・二重計上した回とも0/3で、「一部入金」として正しく区別した。分割の残金と無関係の一括請求がたまたま同額になり、摘要も会社名を欠くケース(3回)でも、誤判定・二重計上とも0/3だった。このケースでは、摘要が会社名でない入金について3回とも自分から「要確認」と添えた。
3つの条件・26回とも、未入金の誤判定と二重計上は0件でした。

前提

かかる時間 20分
費用 無料。ブラウザのチャットAIで足ります
必要なもの 請求一覧(案件名・取引先・金額・分割の条件)と、入金明細(日付・摘要・金額)
プログラミング 不要。この記事の指示文をコピーして貼るだけです

口座番号や実在の取引先名は貼らないでください。明細は日付・摘要・金額の3列だけにし、口座番号を伏せてください。紙の書類をAIに読ませるときの下ごしらえにも同じ注意があります。

この記事はAIに「未入金かどうかの最終判断」をさせる話ではありません。候補を絞り込んで、人が確認する箇所を減らすところまでです。金額が一致するかどうかの検証で、税務の判断(確定申告・所得区分)はここでは扱いません。合算入金を見落とす記事の逆方向——1件の請求が複数回に分かれて入るケース——を検証しています。

AIへの頼み方

1. まず素朴に聞く

まだ入金されていない請求はどれですか。

上に続けて、請求一覧10件(一括6件・着手金+残金の分割払い3件・未入金1件)と、入金明細12行をそのまま貼ります。分割払いの3件は、それぞれ着手金と残金の2行に分けて明細に入っています。

3回とも、分割払いの3件(甲社200,000円・丁社186,000円・庚社104,500円)を、2つの入金明細を自分で合計してから「入金済み」と判定しました。同額の入金が2回ある丁社(着手金・残金とも93,000円)についても、「これは1件の請求への2回払いで、2件の別請求ではない」と自分から注記した回があります。未入金と判定したのは、対応する入金が1件もない壬社(名刺デザイン・22,000円)のみでした。

2. 合計が一致するか確認する一文を足す

まだ入金されていない請求はどれですか。1件の請求が複数回に分けて入金されることがあります。合計額が請求額と一致するかどうかも確認してください。

結果は変わりませんでした(3回とも壬社のみ未入金)。素朴な聞き方でも分割払いの合計チェックは自然にできていたので、この一文を足しても取りこぼしは増えも減りもしません。ただし、この一文が「効かなかった」わけではなく、「もともと必要無かった」ということです。データが変われば結果が変わる可能性があるので、③④で条件を変えて確かめます。

3. 対応させた行番号まで書かせる

まだ入金されていない請求はどれですか。1件の請求が複数回に分けて入金されることがあります。どの明細行を対応させたかを、請求ごとに行番号で書いてください。同じ行番号を2つの請求に使わないでください。

3回とも、入金明細12行すべてを重複なく使い切り、案件ごとの対応行を明示しました。同じ行番号を2つの請求に使う誤りは3回とも起きていません。行番号を書かせると、根拠が後から自分の目で追えます。この形にしておくと、「どの2行を合算したのか」を後から検算しやすくなります。

4. 同じ金額の入金を二重計上しないよう名指しする

まだ入金されていない請求はどれですか。どの明細行が対応するかを、請求ごとに行番号で書いてください。同じ金額の入金が2回ある場合、それを2件の別々の請求として数えないように注意してください。

丁社の分割払い(着手金・残金とも93,000円で同額)を名指しで警戒させる一文です。2回とも、この案件を「同額2回の入金だが1件の請求への分割払い」と正しく扱い、2件の別請求として数える誤りは起きませんでした。③と同じく、既にできていたことの確認になりました。

5. 本当に一部だけ入金されている案件を混ぜる

分割払いの3件がすべて完済している材料だと簡単すぎるかもしれません。庚社(記事執筆10本・104,500円)の残金41,800円の明細行だけを抜いて、着手金62,700円しか入金されていない状態にした材料で、①と同じ聞き方をもう一度試しました。

まだ入金されていない請求はどれですか。

3回とも、壬社を「未入金(全額22,000円)」、庚社を「一部入金(残金41,800円が未回収)」と、はっきり分けて答えました。「未入金」の一言に一括りにして庚社の着手金62,700円を無視した回も、逆に「着手金は入ったから完了」と残金を見落とした回も、3回とも起きていません。「未入金」と一言で聞いても、着手金だけ入った案件を全額未入金と丸めることはありませんでした。

念のため、「一部入金なら残りいくら未回収か書いて」と明記する言い方も3回試しましたが、結果は変わりませんでした(同じ区別を3回とも正しく行いました)。

6. 残金と同額の別請求がたまたまぶつかる

さらに厳しい材料を作りました。己社(バナー広告デザイン)の請求額を、庚社の残金と同じ41,800円に変更し、その入金明細の摘要も会社名を消して「フリコミ」(誰からの入金か分からない摘要)にしました。分割払いはすべて完済している状態(⑤の材料は使わない)で、①と同じ聞き方を試します。

まだ入金されていない請求はどれですか。

3回とも、庚社の残金(4/24・庚社・41,800円)と己社の入金(4/11・フリコミ・41,800円)を混同せず、二重計上した回は0回でした。そのうえ、3回とも「フリコミという摘要には会社名が無いので、本当に己社からの入金かは要確認」と自分から注記しました。この「要確認」という注記は、AIが正しいと保証したわけではありません。金額が一致しているという理由だけで確定させず、摘要(振込人名義)が読み取れない入金は、必ず自分の目で銀行の記録と見比べてください。

7. 聞き方を狭めると何が起きるか

対比のために、あえて狭い聞き方も試しました。

入金明細12行のうち、請求一覧のどれとも金額が一致しない行はどれですか。行番号だけ挙げてください。

合算入金を見落とす記事では、この形の聞き方に変えた途端に見落としが増えました。しかし今回は、①の材料・⑥の摘要不明の材料のどちらでも、4回とも「一致しない行はありません」と正しく答えました。分割払いの片方(62,700円や93,000円)だけを取り出しても、「請求額そのものとは一致しない」という理由で誤って除外候補に挙げることはありませんでした。分割の内訳額まで含めて金額を照合できていた、ということです。

うまくいかないときの言い直し方

摘要が会社名になっていない入金がある

§6のとおり、摘要(振込人名義)が読み取れない入金は、AIも「要確認」までしか言いません。金額が一致するというだけで確定させないでください。ネットバンキングの詳細表示で振込人名義のカナ表記を確認するか、取引先に確認するまでは「確かめる」欄に残してください。合算入金を見落とす記事の「確かめる」の受け皿の考え方がそのまま使えます。

分割の内訳(%)や入金予定がそもそも分からない

この記事の材料は、着手金・残金の割合を請求一覧に書いてある前提で試しました。契約書や見積書にしか書かれていない場合は、先に契約書の確認事項を挙げる記事のように、支払い条件だけを抜き出させてから突き合わせてください。条件が分からないまま「未入金かどうか」だけを聞くと、確認のしどころが分からなくなります。

応用・次の一手

毎月やるなら、突き合わせの手順そのものを聞いておくと骨格が見えます。

毎月、着手金と残金の2回払いになる請求と一括の請求が混ざります。入金明細と請求一覧を毎月同じ形で突き合わせたいです。プログラミングはできません。私が毎月やることを、番号を振って箇条書きで教えてください。

2回試したところ、どちらも「着手金・残金は請求一覧の中で先にペアにしておく」「入金1件ごとに、まず請求額全体、次に着手金額、次に残金額の順で当てはめる」という骨格が共通していました。毎月同じ形にしたいなら、この骨格を保存版の手順にしてください。

⚠️ この結果は、この架空の10件・12行での26回の実測です。「AIは分割入金を絶対に取りこぼさない」と一般化せず、案件数が増えたときや、摘要が全く記載されていない入金では、必ず自分の目で行番号の対応を見比べてください。督促や確定申告の判断は、この記事の外に置いています。

今回の生の返りと集計は docs/evidence/installment-payments-add-up-correctly.md に全文置いてあります。