これで何ができるか
毎日の引き継ぎメモに残った「先週」「来月まで」を、絶対日付に直させられます。このサイトのAIに「記憶」を持たせるという記事に、こう書きました。
「先週」「来月まで」「最近」を禁止してください。AIにとって「先週」は読んだ時点から見た先週です。会話が数日中断して再開したとき、冒頭で取った日付をそのまま使って、間違った日付で公開してしまったことがあります。
もっともらしい話ですが、この禁止語リストが実際に誤変換を防ぐかは、その記事では一度も測っていませんでした。しかも「先週」「来月まで」「最近」という3語を禁止したところで、メモにはそれ以外の相対日付(「明日」「3日前」「来週の水曜」…)がいくらでも出てきます。
そこで、架空の引き継ぎメモ20行を作りました。変換すべき相対日付を12件(昨日・一昨日・明日・明後日・今週の月曜・来週の水曜・先週の金曜・3日前・1週間後・来月10日・2週間前・先月末)、変換してはいけない語を8件(「先週号」という社内報の名前、「毎週火曜」「四半期ごと」のような繰り返しルール、「先月比」「前年同月比」のような比較の言葉など)仕込み、指示文を4版・のべ12回、独立したclaude --safe-modeのサブプロセスに送って試しました(本人と答える側を分けています。詳しくは材料が古いのを毎回数えさせるの実測と同じやり方です)。
分かったことは3つです。
① 変換すべき12件そのものは、ほぼ間違えません。4版・のべ12回(あとで足した2版を含めると12回×12件=144件)のうち、正解は143件。曜日をまたぐ週の境界(月曜始まり・来週・先週)も含めて、間違えたのは1回だけでした。
② 記事の推奨(先週/来月まで/最近を禁止)は、誤変換を減らしませんでした。むしろ素のまま頼んだ版より1件多く誤変換しました(下のグラフ)。禁止した3語と、実際に誤変換される語(「先月比」「先週号」)が一致していなかったからです。
③ 効いたのは、誤変換の対象そのものを名指しすることでした。「○○比のような比較の言葉は残してください」と1行足すと、「先月比」の誤変換は2回とも0件になりました。
前提
| かかる時間 | 15分。溜まった引き継ぎメモを1回直すときにやります |
| 費用 | 無料。ブラウザのチャットAIで足ります |
| 必要なもの | 「今日の分」を毎日追記している引き継ぎメモ(作成日を書いてあるもの) |
| プログラミング | 不要。メモを貼って、指示文をコピーするだけです |
📌 数字はすべて架空データでの実測です。メモの内容(社名・件名・日付)は、この記事のために作った例です。
⚠️ メモに「いつ書いたか」が無いと、この頼み方は使えません。基準日が分からないと、AIは「明日」も「来週」も計算できません。まず日付入りのメモにすることが前提です。
AIへの頼み方
1. まず、そのまま頼む
架空メモ20行(作成日2026-08-20〈木〉。「昨日、A社への見積書を提出した」のような相対日付12件と、「先週号の社内報に」「先月比で問い合わせ件数が15%増えている」のような、日付ではないが「先週」「先月」を含む語8件を混ぜてある)を貼って、2回試しました。
変換すべき12件は2回とも全問正解でしたが、2回とも「先週号」を「先週(2026-08-10〜08-16)号」のような期間へ書き換え、1回は「先月比」まで「先月(2026年7月)比」に書き換えました。指示していないのに、比較の言葉まで巻き込んでいます。
2. 記事の推奨(先週・来月まで・最近を禁止)を足す
AIに「記憶」を持たせるの推奨をそのまま足した版です。2回とも「先週号」「先月比」は変わらず誤変換され、1回は「前年同月比」「翌月初」まで巻き込みました。禁止した語は「先週」「来月まで」「最近」の3つですが、メモの中で実際に誤変換されたのは「先月比」「前年同月比」——禁止リストに1文字も入っていない語でした。禁止語のリストは、実際に壊れる場所と一致していないと効きません。
3. 基準日と「決められないときの逃げ道」を足す
「先週号」は2回中1回、〔基準日不明〕を付けて安全に処理されました。もう1回は、変わらず期間に書き換えられました。「先月比」は2回とも誤変換されたまま——基準日を渡しても、逃げ道を用意しても、比較の言葉だという判断にはつながりませんでした。
4. 誤変換の対象そのものを名指しする
「先月比」「前年同月比」の誤変換は、2回とも0件になりました。「先週」を禁止しても効かなかったものが、「比較の言葉は残せ」で直りました。止めたいものを一般化して禁止するのではなく、実際に壊れた形をそのまま名指しするほうが効いています。
5. 禁止語リストを外した最終形
②で効かなかった「先週/来月まで/最近を禁止」を外し、③④で効いた2つ(基準日と逃げ道/比較の言葉を残す)だけにした版です。2回とも、変換すべき12件は全問正解、触ってはいけない8件も0件誤変換、「先週号」は2回とも〔基準日不明〕で正しく保留されました。このサイトの記事が推奨していた禁止語リストは、無くても困らなかったということです。
うまくいかないときの言い直し方
何を変換して何を変換しなかったか、自分の目で確かめたい
出来上がったメモを読むだけでは、どの行が変換され、どの行がそのままかを見落とします。変換一覧を別に出させてください。
2回試したところ、2回とも変換した行・変換しなかった行が理由つきで一覧になり、触ってはいけない8件を誤変換した回は0回でした。ただし2つ、見過ごせない粗もありました。
1回は、「今週の月曜」を2026-08-18(火曜)と誤答しました。しかも根拠の欄には「基準日を含む週(8/17〜8/23)の月曜」と正しく書いていながら、隣の日付欄だけ1日ずれています。理由が合っていても、書かれた数字が合っているとは限りません。必ず2回目の結果を自分の目で突き合わせてください。
もう1回は、変換不要な「翌月初」にまで〔基準日不明〕を付けました。逃げ道を用意すると、迷わなくていい所にまで逃げることがあります。〔基準日不明〕が付いた行は、それが本当に一意に決まらないのか、自分でも一度確認してください。
メモに作成日が書かれていない
この頼み方は、メモ自体に基準になる日付(作成日・最終更新日など)が無いと成立しません。「今日は何日か」をAIに聞かれる前に、メモの先頭に日付を書く習慣を先につけてください。AIに「記憶」を持たせるの「5. 『次に何をするか』は別のファイルにさせる」で、最終更新の日時を入れる指示文を紹介しています。
応用・次の一手
毎日の引き継ぎメモに、その日の分を追記するたびに、⑤とまったく同じ指示文を1回通してください。「先週」「先月比」が半年後まで生き残る前に、書いた当日のうちに絶対日付へ直しておけます。
毎回コピーするものを1つに決めておくと、その日の気分で言い回しを変えて結果がぶれる、ということが起きにくくなります。
この記事の核は「禁止するなら、実際に壊れている形を名指しすること」です。「先週」という言葉を禁止しても、「先月比」という別の言葉は素通りしました。AIに「記憶」を持たせるの一文は、事故が起きた実例としては正しいものでしたが、その禁止語だけでは今回の材料の誤変換を1つも防げませんでした。同じメモの中の矛盾を新旧の日付で片づける話は、メモの矛盾は「新しい日付が勝ち」で片づくにまとめてあります。あちらは「どちらを信じるか」、こちらは「どこまでが日付か」という、別の崩れ方です。