何が変わったか

Google は 2026年9月24日に Gemini 3.8 Live with Live Avatar を発表しました(出典: https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/gemini-3-8-live-with-live-avatar/)。公式ページに書かれている数字だけを並べます。3行にすると、こうなります。

先に断っておきます。この記事は運営者がこの機能を試した記録ではありません。公式ページに書かれていることを読んで整理したものです。「自然に見えた」「よくできていた」といった使用感は一切書いていません。

前のモデルの話は Gemini 3.8 Live に書いています。9日しか間が空いていないので、そちらを読んだ直後の人向けの記事でもあります。

Live Avatar は何をする機能か

発表ページには、こう書かれています(出典: https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/gemini-3-8-live-with-live-avatar/)。

  • 動画の生成と音声を組み合わせ、「聞き・見て・話す」動く人物像を作る
  • 口の動きと音声を同期させ、自然な表情とスムーズな会話の切り替えができる
  • 想定用途は「カスタマーサービス」「対話型の案内」

これは音声AIに顔と映像を足した機能で、文章を生成する機能ではありません。Google Cloud 側の発表では「conversational video agents across web, mobile, and interactive kiosks」(Webサイト・スマホアプリ・案内端末向けの対話動画エージェント)と、より具体的に書かれています(出典: https://cloud.google.com/blog/products/ai-machine-learning/gemini-3-8-live-with-live-avatar-is-now-generally-available)。

前のモデルとの違い

同じ会社の1つ前は「Gemini 3.8 Live」(音声のみ)

前のモデルは、9日前の2026年9月15日に発表された Gemini 3.8 Live(音声のみ)です。両方とも同じモデルカード(「Gemini 3.8 Audio」)の中で説明されており、Live Avatar は追加のオプション扱いです(出典: https://deepmind.google/models/model-cards/gemini-3-8-audio/)。

Gemini 3.8 Live(音声のみ・9/15) Gemini 3.8 Live with Live Avatar(9/24)
出力の種類 音声とテキスト 音声・動画・テキスト
一度に書ける出力の上限 64,000トークン 24,000トークン
提供経路 Gemini API・AI Studio・Gemini アプリ・Search Live など Gemini Enterprise のみ
対応言語の自動切替 97言語 97言語

出典: https://deepmind.google/models/model-cards/gemini-3-8-audio/、https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/gemini-3-8-live-with-live-avatar/

アバターを足すと一度に書ける出力トークンの上限がどれだけ減るかを示した横棒グラフ。Live(音声・テキストのみ)は64,000トークン、Live with Avatar(+動画)は24,000トークン。62.5%の下がり幅はモデルカードの2つの数字からこの記事が計算した値で、ページに直接の記載はない。
動画を足すと、書ける文字数は半分以下になります

62.5%という下がり幅は、モデルカードの2つの数字(64,000と24,000)からこの記事が割り算した値です(1-24,000÷64,000)。ページにこの割合そのものは書かれていません。すでに音声のみの Live を組み込んでいるシステムに、あとから動画を足すと、返ってくる応答の長さの上限が変わることに注意が必要です。

動画の出力にも「連続で話せる時間」の上限がある

モデルカードの「既知の制限」には、こう明記されています(出典: https://deepmind.google/models/model-cards/gemini-3-8-audio/)。

「Live Avatar は、長時間ではなく数分程度の連続対話をサポートする」と書かれています(原文: "can support a few minutes of continuous interaction, rather than extended hours")。具体的な分数は公表されていません。長時間の常時接続を前提にした窓口・受付用途では、この制限を先に確認する必要があります。

料金:動画の出力は、音声どころかテキストより安い

料金は Google Cloud の Agent Platform 料金ページに、テキスト・音声・動画(アバター)の3種類で載っています(出典: https://cloud.google.com/gemini-enterprise-agent-platform/generative-ai/pricing)。

種類 単価(100万トークンあたり)
入力(テキスト) $0.75
入力(動画・画像) $1.00
入力(音声) $3.00
出力(テキスト・思考トークン込み) $4.50
出力(音声) $12.00
出力(動画・アバター) $1.00

出典: https://cloud.google.com/gemini-enterprise-agent-platform/generative-ai/pricing(100万トークンあたりのドル・Non-global リージョン。この6行に期限つきの導入価格の注記は無い)

Gemini 3.8 Live APIの出力単価を3種で比べた横棒グラフ。100万トークンあたりのドル。音声は12.00ドル、テキスト(応答・思考)は4.50ドル、動画(アバター)は1.00ドルで最も安い。この「動画(アバター)」の行はGemini Enterprise向け料金表のみに載っている。
動画の出力が、いちばん安い区分になっています

動画(アバター)の出力単価は、音声出力の1/12、テキスト出力の1/4.5です(出典: 同上)。人物の映像を動かす機能のほうが、言葉を返すより単価が低いというのは直感に反しますが、公式の料金表にそのまま書かれている数字です。

この「出力(動画・アバター)」の行は、Gemini Enterprise 向けの料金ページにだけ載っています。開発者向けの通常の Gemini API 料金ページ(https://ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing)には、この行自体が存在しません(2026年9月25日に確認)。個人や小規模開発者が、通常の API 経由で同じ機能を使うことはできません。

安全対策

発表ページには、こう書かれています(出典: https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/gemini-3-8-live-with-live-avatar/)。

  • 既製のアバターは、申請なしで使えます。用意されたアバターの一覧から選ぶだけです。
  • 独自の顔写真からアバターを作る機能は、企業のアローリスト(許可リスト)経由でしか使えません。「Custom avatar creation is currently available only through enterprise allowlisting」と明記されています。
  • 出力される音声・動画の両方に SynthID の電子透かしが埋め込まれます。AI生成であることを検出できるようにするためと説明されています。

他社の最上位モデルとの比較

Gemini と同じ「リアルタイムで話す音声AI」を、OpenAI・Anthropic の公式ページで確認しました。

リアルタイム音声モデルの有無・動画アバター出力・独自アバターの作りやすさを3社で比べた表。リアルタイム音声モデル=Geminiは3.8 Live / 3.8 Live Extended Thinkingあり、GPTはGPT-Live 1あり(頭脳は別モデル)、Claudeは記載なし。動画のアバター出力=Geminiはあり(Live Avatar・Gemini Enterprise限定)、GPTは記載なし(音声の入出力のみ)、Claudeは—。独自アバターを作れるか=Geminiは企業の許可制(アローリスト経由のみ)、GPTは—、Claudeは—。「記載なし」「—」は機能が無いと明言されているのではなく、公式ページに書かれていない意味。
動画のアバターを出せるのは、3社のうちGeminiだけです

OpenAI の公式モデル一覧には、リアルタイム音声用の専用モデルとして GPT-Live 1($0.05/分・秒単位で課金)と、GPT-Realtime シリーズが載っています(出典: https://developers.openai.com/api/docs/pricing、https://developers.openai.com/api/docs/models)。ただし、これらのモデルの入力・出力はテキスト・音声・画像のみで、動画の出力(アバター)は一覧のどこにも出てきません(出典: 同上・2026年9月25日に確認)。

Anthropic の公式モデル一覧には、こう明記されています。「All current models support text and image input, text output, multilingual capabilities, vision, and tool use」(出典: https://platform.claude.com/docs/en/about-claude/models/overview)。音声・動画への言及は一切なく、リアルタイムで話す音声AI自体が製品として存在しません(2026年9月25日に確認)。

3社の公式ページを確認した結果、動画のアバターを出せるのは Gemini だけでした。ただし前述のとおり、Gemini 側もこの機能を使えるのは Gemini Enterprise 経由に限られます。「音声だけのリアルタイムAI」という土俵では OpenAI の GPT-Live 1 が競合しますが、GPT-Live 1 は分単位の課金($0.05/分)で、頭脳にあたるモデルの利用料は別途かかると案内されています(出典: https://developers.openai.com/api/docs/pricing)。課金の単位そのものが違うため、単純に安い高いは比較できません。

どういう人に効くか

次に検討する価値がある人

  • 自社のカスタマーサービスや案内窓口に、顔のある対話型AIを検討している企業の担当者。既製のアバターなら申請不要で試せます。
  • 複数言語で問い合わせを受ける窓口を持つ企業。97言語を会話の途中でも自動で切り替えると発表ページに明記されています。
  • すでに Gemini Enterprise を契約している企業。追加の営業窓口を通さなくても、既製アバターの範囲なら使い始められます。

急がなくていい人・見送っていい人

  • 個人でちょっと試してみたい人。Gemini アプリや無料の Google AI Studio では使えません。企業契約(Gemini Enterprise)が前提です。
  • 長時間の常時接続を想定している人。モデルカードに「数分程度」と明記されており、具体的な分数も公表されていません。
  • 自社ブランドの顔を使いたい人。独自アバターの作成は企業のアローリスト経由に限られ、審査を待つ必要があります。

この記事で分からないこと

実際に動かしたときの応答の速さ、口の動きの自然さ、日本語での品質。発表ページにはデモ動画へのリンクがありますが、この記事では動画の中身は評価していません。運営者も試していないので書けません。

出典一覧

すべて各社の公式ページです。まとめ記事・ニュースサイト・個人ブログは1件も使っていません。

  1. Gemini 3.8 Live with Live Avatar の発表(Google・2026年9月24日): https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/gemini-3-8-live-with-live-avatar/ (Google DeepMind 側の https://deepmind.google/blog/introducing-gemini-38-live-with-live-avatar/ を開くと、このページへ転送されます)
  2. 一般提供(GA)の発表(Google Cloud 公式ブログ・2026年9月24日): https://cloud.google.com/blog/products/ai-machine-learning/gemini-3-8-live-with-live-avatar-is-now-generally-available
  3. Gemini 3.8 Audio のモデルカード(Google DeepMind 公式): https://deepmind.google/models/model-cards/gemini-3-8-audio/
  4. Gemini Enterprise Agent Platform の料金(Google Cloud 公式): https://cloud.google.com/gemini-enterprise-agent-platform/generative-ai/pricing
  5. Gemini API の料金(Google 公式・動画アバターの行が無いことの確認用): https://ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing
  6. API の料金(OpenAI 公式ドキュメント): https://developers.openai.com/api/docs/pricing
  7. モデル一覧(OpenAI 公式ドキュメント): https://developers.openai.com/api/docs/models
  8. モデル一覧(Anthropic 公式ドキュメント): https://platform.claude.com/docs/en/about-claude/models/overview

料金と提供状況は変わります。実際に導入を検討する前に、必ず上記の公式ページで現在の値を確認してください。