何が変わったか
Google は 2026年9月15日に、音声で会話するための2つのモデル Gemini 3.8 Live と Gemini 3.8 Live Extended Thinking を発表しました(出典: https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/gemini-3-8-live-gemini-3-8-live-extended-thinking/)。公式の発表ページ・モデルカード・料金ページに書かれている数字だけを並べます。3行にすると、こうなります。
- 会話の途中でも、97言語を自動で認識して切り替えます。発表ページに「97 supported languages」と明記されています(出典: 同上)。
- 料金は、前世代の「Gemini 3.1 Flash Live Preview」とまったく同じ価格の行にまとめられています。値上げも値下げもありません(出典: https://ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing)。
- モデルカードには、学習データの締め切りが2026年1月と明記されています(出典: https://deepmind.google/models/model-cards/gemini-3-8-audio/)。発表は今日ですが、知識は1年8か月前で止まっています。
先に断っておきます。この記事は運営者がこのモデルを試した記録ではありません。公式ページに書かれていることを読んで整理したものです。「自然に話せた」「賢くなった」といった使用感は一切書いていません。
前のモデルとの違い
同じ会社の1つ前は「Gemini 3.1 Flash Live Preview」
Gemini の音声対話モデルは、これまで Gemini 3.1 Flash Live Preview(プレビュー版)が最新でした。Google 自身のドキュメントに「Gemini 3.8 Live を、ほとんどの低遅延な音声エージェント用途でのデフォルトに更新することを推奨する」と書かれており(出典: https://ai.google.dev/gemini-api/docs/models/gemini-3.1-flash-live-preview)、この2つが前後の関係にあることは公式に確認できます。
いちばん大きな変化は、性能や値段ではなく「プレビューから正式版になった」ことです。3.1 Flash Live Preview のドキュメントには "legacy preview model" と書かれていますが、3.8 Live / 3.8 Live Extended Thinking のドキュメントは "Stable" と表示されています(出典: https://ai.google.dev/gemini-api/docs/models/gemini-3.8-live)。
| Gemini 3.1 Flash Live Preview(旧) | Gemini 3.8 Live / 3.8 Live Extended Thinking(新) | |
|---|---|---|
| 提供状況 | Preview(legacy preview model) | Stable |
| 入力できる量 | 131,072トークン | 131,072トークン |
| 出力できる量 | 65,536トークン | 65,536トークン |
| 入力の種類 | テキスト・画像・音声・動画 | テキスト・画像・音声・動画 |
| 出力の種類 | テキストと音声 | テキストと音声 |
| 最終更新 | 2026年3月 | 2026年9月 |
出典: https://ai.google.dev/gemini-api/docs/models/gemini-3.1-flash-live-preview、https://ai.google.dev/gemini-api/docs/models/gemini-3.8-live、https://ai.google.dev/gemini-api/docs/models/gemini-3.8-live-extended-thinking
一度に読める量・書ける量は、前世代からまったく変わっていません。入力13万トークンあまり・出力6.5万トークンあまりという数字は、両方のドキュメントに同じ値で載っています。
モデルカードには「Gemini 3.8 Audio is based on Gemini 3 Pro」とも書かれています(出典: https://deepmind.google/models/model-cards/gemini-3-8-audio/)。音声専用にゼロから作られたモデルではなく、テキスト向けの Gemini 3 Pro をもとにしたものです。
料金も、同じ行にまとめられている
料金ページを見ると、もっとはっきりします。gemini-3.1-flash-live-preview・gemini-3.8-live・gemini-3.8-live-extended-thinking の3つのモデルIDが、同じ価格表の1行にまとめて書かれています(出典: https://ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing)。
| 使い方 | 単価 |
|---|---|
| 入力(テキスト) | $0.75 |
| 入力(音声) | $3.00(または $0.005/分) |
| 入力(画像・動画) | $1.00(または $0.002/分) |
| 出力(テキスト・思考トークン込み) | $4.50 |
| 出力(音声・思考トークン込み) | $12.00(または $0.018/分) |
出典: https://ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing(100万トークンあたりのドル・有料層。3.1 Flash Live Preview を含む3モデル共通)
「正式版に格上げされた」のに、値段は1円も動いていません。読める量・書ける量も同じなので、この記事に書ける違いは「プレビューが取れたこと」と、次に挙げる新しい機能のほうです。
新しく明記された機能
発表ページには、3.1 Flash Live Preview には無かった機能がいくつか挙げられています(出典: https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/gemini-3-8-live-gemini-3-8-live-extended-thinking/)。
- 97言語を、会話の途中でも自動で検出して切り替えます。発表ページに「automatically detects and transitions between 97 supported languages mid-conversation」と明記されています。
- 道具を使う処理をバックグラウンドで進めながら、会話を止めない。「executes tools and API calls in the background while continuing the conversation」。
- Gemini 3.8 Live Extended Thinking は、答えながら同時に考える。"Let me check that…" のような相づちを挟みつつ、複数手順の作業を進行中に音声で説明すると書かれています。
これらは Google の発表ページに書かれている仕様であり、この記事の運営者が実際に試した感想ではありません。「自然に感じた」かどうかは書いていません。
提供場所も発表ページに書かれています(出典: 同上)。3.8 Live は本日から、開発者向けに Gemini API と Google AI Studio で、一般向けには Search Live で使えます。3.8 Live Extended Thinking はこれに加えて Gemini アプリで使え、Google AI Pro・Ultra の契約者は Docs で、Google AI の契約者全般は Gmail と Keep で使えると明記されています。企業向けの Gemini Enterprise 経由は、両モデルとも「private preview」(限定的な先行提供)にとどまります。
安全性の評価は、前の音声モデルではなく3.7 Flashと比べている
モデルカードのFrontier Safety(危険な能力がないかの評価)の項目には、こう書かれています。「Gemini 3.7 Flash(テキスト系のモデル)を評価した結果、追跡対象の危険な能力レベルに達していないことを確認した。Gemini 3.8 Live や 3.8 Live Extended Thinking は、3.7 Flash と比べて意味のある新しい能力や、性能の大きな向上を持たないと判断したため、3.7 Flash の評価結果をもとに、これらも危険な能力レベルに達していないと確信している」(出典: https://deepmind.google/models/model-cards/gemini-3-8-audio/・意訳)。
つまり、安全性の比較対象は前の音声モデル(3.1 Flash Live Preview)ではなく、別系統のテキストモデル(3.7 Flash)です。発表ページは「知性の大幅な向上」とうたっていますが、公式の安全性評価の根拠は「3.7 Flash と大差ない」という前提に立っています。どちらも Google 自身の公式文書に書かれていることで、この記事ではどちらか一方だけを採用せず、両方をそのまま書いています。
他社のモデルとの比較
ベンチマークの値
発表ページには、第三者機関による評価結果が挙げられています(出典: https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/gemini-3-8-live-gemini-3-8-live-extended-thinking/)。
この5つは指数・パーセント・順位が混在していて、満点も測り方も違うため、合計したり平均を取ったりできません。Google が発表ページで引用しているだけで、このサイトが独自に測定・検証したものではありません(このサイトの方針として、AIモデル同士の性能を自前で測ることはしていません)。
音声対話モデルを持っているのはGoogleとOpenAIだけ
OpenAI にも音声対話専用のモデル GPT-Live 1 があります(出典: https://developers.openai.com/api/docs/models)。ただし課金の仕組みがGeminiとは違います。
| Gemini 3.8 Live 系列(Google) | GPT-Live 1(OpenAI) | |
|---|---|---|
| 音声のやり取り自体の値段 | 入力$0.005/分・出力$0.018/分(音声の分あたり換算) | $0.05/分(セッション料金) |
| 会話の中身を考える「頭脳」の値段 | 同じ料金に含まれる | 別料金(バックエンドのモデルをトークン単位で別途課金) |
出典: Gemini はhttps://ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing、OpenAI はhttps://developers.openai.com/api/docs/pricing
単位も仕組みも違うので、この2つの金額をそのまま「安い・高い」とは比べられません。Gemini は音声も頭脳も1つの料金にまとまっているのに対し、GPT-Live 1 は音声のやり取り自体の代金で、実際に会話の中身を作るバックエンドのモデル(たとえば gpt-realtime-2.1 など)はここに別料金で乗ります。参考までに、その gpt-realtime-2.1 の単価は音声入力100万トークンあたり$32.00・出力$64.00、廉価版の gpt-realtime-2.1-mini は入力$10.00・出力$20.00です(出典: https://developers.openai.com/api/docs/pricing)。この2つも音声課金ではなくトークン課金なので、Geminiの分あたり価格とは単位が違い、表を分けています。
Anthropic の公式モデル一覧には、音声・音声対話(voice / real-time audio)についての記載が見当たりませんでした(出典: https://platform.claude.com/docs/en/about-claude/models/overview)。Claude には、Gemini や GPT-Live に相当する音声対話専用のモデルは無いようです。「提供していない」と断定できる公式の否定文は見つけられなかったため、この記事では「記載が見当たらない」という書き方にとどめています。
どういう人に効くか
気になっていい人
- 複数の言語がまざる会議や接客を、AIに音声でサポートさせたい人。97言語を会話の途中でも自動で切り替えるという仕様は、他社の発表ページにはここまで明記されたものが見当たりませんでした。
- すでに Gemini 3.1 Flash Live Preview を API で使っている人。乗り換えても値段は変わらず、プレビューの不安定さから外れて正式版になります。
急がなくていい人
- 企業向けの Gemini Enterprise 経由で使いたい人。発表ページには「private preview」(限定的な先行提供)と明記されており(出典: https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/gemini-3-8-live-gemini-3-8-live-extended-thinking/)、まだ全社に開かれた提供ではありません。
- 2026年1月以降の出来事についてAIに音声で質問したい人。学習データの締め切りは2026年1月です(出典: https://deepmind.google/models/model-cards/gemini-3-8-audio/)。今日発表されたモデルでも、知識はそこで止まっています。
この記事で分からないこと
実際に話しかけたときの反応の速さ、日本語での聞き取りやすさ、97言語の切り替えがどの程度スムーズか。発表ページには利用企業の声として「latency, fluidity, and tool-calling capabilities」への評価が紹介されていますが、具体的な数値は書かれていないため比較に使っていません。運営者も試していないので書けません。
出典一覧
すべて各社の公式ページです。まとめ記事・ニュースサイト・個人ブログは1件も使っていません。
- Gemini 3.8 Live・3.8 Live Extended Thinking の発表(Google・2026年9月15日): https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/gemini-3-8-live-gemini-3-8-live-extended-thinking/ (Google DeepMind 側の https://deepmind.google/blog/introducing-gemini-3-8-live-and-3-8-live-extended-thinking/ を開くと、このページへ転送されます)
- Gemini 3.8 Audio(Live, Live Extended Thinking)のモデルカード(Google DeepMind 公式): https://deepmind.google/models/model-cards/gemini-3-8-audio/
- Gemini API の料金(Google 公式): https://ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing
- Gemini 3.8 Live のモデルページ(Google 公式): https://ai.google.dev/gemini-api/docs/models/gemini-3.8-live
- Gemini 3.8 Live Extended Thinking のモデルページ(Google 公式): https://ai.google.dev/gemini-api/docs/models/gemini-3.8-live-extended-thinking
- Gemini 3.1 Flash Live Preview のモデルページ(Google 公式): https://ai.google.dev/gemini-api/docs/models/gemini-3.1-flash-live-preview
- API の料金(OpenAI 公式ドキュメント): https://developers.openai.com/api/docs/pricing
- モデル一覧(OpenAI 公式ドキュメント): https://developers.openai.com/api/docs/models
- モデル一覧と仕様(Anthropic 公式ドキュメント): https://platform.claude.com/docs/en/about-claude/models/overview
料金と仕様は変わります。実際に支払う前に、必ず上記の公式ページで現在の値を確認してください。