これで何ができるか

弁護士やタレントなど、原稿料・講演料とは別の業務でも、源泉徴収の正しい手取り額をAIに 計算させられるかを実測しました。講演料・翻訳料・著作権使用料で確かめた記事の続きです。

結果は3つに分かれました。

  • 204条の明記がある契約は、弁護士(204条2号)もタレントの出演料(204条5号)も、3回中3回で正解
  • 204条の明記を外すと、タレントの出演料は1/3まで落ちる(1回は計算ミス、1回は源泉徴収を適用せず)
  • 弁護士の肩書「弁護士」の語だけ残せば明記が無くても3/3のままだが、肩書まで外すと0/3まで落ちる
士業・出演料・法人を含む6条件で、正しい最終金額に到達した回数を示す表。弁護士個人・204条の明記ありは3回中3回、弁護士個人・肩書のみ(204条の明記なし)も3回中3回、弁護士個人・肩書も明記もなし(一般的な記述)は3回中0回、タレント出演料・204条の明記なしは3回中1回、タレント出演料・204条の明記ありは3回中3回、税理士法人(法人)・明記なしの負例は3回中3回。下の枠には、法人は何も明記しなくても3回とも法人格の表記だけで正しく除外したこと、出演料は204条の明記が無いと1/3まで落ちたこと(1回は計算ミス・1回は源泉徴収を適用せず)、弁護士は肩書が残っていれば足りたが肩書も外すと0/3まで落ちたことが書かれている。
法人は明記なしで3/3正解。出演料は明記なしだと1/3に落ちました。

もう1つ、意図していなかった発見があります。支払先を弁護士個人から税理士法人(法人)に変えた負例です。「法人だから源泉徴収は不要です」という条項はどこにも書いていません。それでも3回とも、受注者名「◯◯税理士法人」という表記だけから自分から法人格に気づき、正しく除外しました(3/3)。

前提

かかる時間 20分
費用 無料。ブラウザのチャットAIで足ります
必要なもの 業務委託契約書・出演契約書(報酬の種類・支払金額・消費税の扱いが分かるもの)
プログラミング 不要。この記事の指示文をコピーして貼るだけです

実在の取引先名・実在の金額は貼らないでください。この記事は架空の社名・金額を使っています。実在の人物・団体とは関係ありません。

この記事は「手取り額を計算できるか」という実測に絞っています。確定申告のやり方には踏み込みません。実際の税率・適用条件は制度が変わることがあります。契約では必ず国税庁の最新情報(No.2798 弁護士や税理士等に支払う報酬・料金・No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは、2026-10-23確認)で確認してください。

原稿料・デザイン料の源泉徴収を実測した記事と講演料・翻訳料・著作権使用料に広げた記事も、同じ手取り計算シリーズです。

AIへの頼み方

1. 弁護士個人の顧問料(204条の明記あり)で聞く

法人が個人の弁護士へ、月額顧問料を直接支払う架空の契約です。契約書に、所得税法204条1項2号に該当する旨と源泉徴収義務があることを明記しています。消費税は「別」(契約の金額に消費税が加算される)としました。

この契約の手取り額を計算してください。

上に続けて、契約書を貼ります。

3回とも「手取りは598,740円」と正しく計算しました。式は600,000円×10.21%=61,260円の源泉徴収。消費税別なので請求総額は600,000円+消費税60,000円=660,000円、そこから源泉徴収61,260円を引いて598,740円です。204条1項2号(士業)でも、原稿料・講演料(1号)と同じ式が正しく適用されました。

2. タレントの出演料(204条の明記あり・100万円の段階を跨ぐ)で聞く

次は、法人が個人のタレントへCM出演料を支払う契約です。150万円という、源泉徴収の税率が途中で変わる金額です。204条1項5号に該当する旨を契約書に明記しています。

この契約の手取り額を計算してください。

3回とも「手取りは1,445,800円」と正しく計算しました。源泉徴収は100万円以下の部分が102,100円、100万円を超える50万円の部分が102,100円、合計204,200円。消費税別の請求総額1,650,000円から、この204,200円を引いた金額です。出演料(5号)でも、弁護士報酬・原稿料等と同じ2段階の式が崩れませんでした。

3. 204条の明記を外し、弁護士の肩書だけを残して聞く

指示文1の契約から、「所得税法204条1項2号に該当し、源泉徴収を行う」という条項を削除しました。業務内容も「弁護士業務に関する顧問サービス」から「毎月定例の顧問サービス」という一般的な言い方に変えました。ただし受注者名には「桜井法律事務所 桜井 健一(個人事業主・弁護士)」という肩書だけを残しています。

この契約の手取り額を計算してください。

こちらも3回とも「手取りは598,740円」と、明記ありの版とまったく同じ結果になりました。204条の条文番号は書いていませんが、3回とも「弁護士」という肩書から自分で「源泉徴収の対象業務」と判定しています。

うまくいかないときの言い直し方

肩書まで外すと、判定に自信を持てなくなる

指示文3からさらに、受注者名の「弁護士」という肩書も削除し、「桜井 健一(個人事業主)」という名前だけに変えました。業務内容は指示文3と同じです。

この契約の手取り額を計算してください。

3回とも、単一の正しい答えに到達できませんでした。2回は「源泉徴収なし・660,000円」を主結論にしました。それでも「もし資格保有者なら598,740円」と条件付きで併記しています。残り1回は、正答(598,740円)への言及が一度もありませんでした。肩書も明記も両方外すと、業務内容が「顧問サービス」という一般的な言い方のままでは、正しい判定に確信が持てなくなります。

→ 業務委託契約で源泉徴収の判定をAIに任せるなら、受注者の肩書・資格名(弁護士・税理士等)を契約書に残しておくのが安全です。明記を省くときも、資格名だけは必ず書いておいてください。

出演料は、明記を外すとさらに不安定になる

指示文2の出演契約から、204条の明記を外しました(受注者の肩書「タレント」はそのまま残しています)。

この契約の手取り額を計算してください。

3回試すと、正しい最終金額(1,445,800円)に到達したのは1回だけでした。1回は源泉徴収の式も手順も正しかったのに、最後の引き算を1,445,600円と誤りました(200円差)。もう1回は「契約書に源泉徴収に関する記載がないため」と、源泉徴収そのものを適用しませんでした。弁護士は肩書だけで3/3のままでしたが、タレントは肩書(「タレント」)があっても明記を外すと1/3まで落ちました。

→ 204条の明記を外した状態での正答率は、業務の種類によって違います。明記を省いて一般化する前に、その業務ごとに実測し直してください。明記そのものを残すのが、いちばん確実な直し方です(指示文2の版なら3/3)。

応用・次の一手

支払先が法人のときは、何も教えなくても正しく気づくかを試しました。指示文1と同じ月額60万円の顧問料を、弁護士個人ではなく税理士法人(法人)に支払う契約に変え、204条の明記も「法人だから対象外」という注記も、どちらも書きませんでした。

この契約の手取り額を計算してください。

3回とも「法人への支払いなので源泉徴収は不要。手取りは660,000円(全額)」と正しく判定しました。3回とも、自分から「源泉徴収は支払先が個人の場合に限られる」という条文の仕組みを説明しています。気づいた根拠は、受注者名「まつば税理士法人」の法人格の表記だけです。

同じ月額顧問料600,000円(消費税別)という条件だけを揃え、受注者の形態だけを変えた2契約を比べる図。上段=受注者が弁護士個人(桜井法律事務所 桜井健一)の場合、顧問料600,000円+消費税60,000円=660,000円から、源泉徴収61,260円(10.21%)を差し引いて手取りは598,740円。下段=受注者が税理士法人(まつば税理士法人)の場合、同じ660,000円から、支払先が法人のため源泉徴収は原則不要で、手取りは全額660,000円。どちらの契約書にも源泉徴収の要否を説明する条項は書いていない。下の枠には、源泉徴収は支払先が個人の場合に適用される制度で法人への支払いは原則対象外であること(国税庁No.2792)、3回とも受注者名の法人格の表記だけからこの条文の分岐に自分で気づいたことが書かれている。
同じ60万円でも、受注者が法人なら源泉徴収は不要でした。

報酬の種類・受注者の形態が増えてきたら、契約のたびに同じ手順で確認できるようにしておくと安心です。

士業・出演料・法人など、さまざまな相手から報酬を受け取る(または支払う)契約が増えてきました。契約ごとに源泉徴収の対象かどうかと、正しい手取り額を毎回確認したいです。プログラミングはできません。私が契約のたびに確認することを、番号を振って箇条書きで教えてください。

試したところ、次の骨格が共通していました。

  • まず、報酬の名目が源泉徴収の対象業務(204条1項に列挙される業務)に当たるかどうかを確認する
  • 受注者が個人か法人かを確認する。法人(弁護士法人・税理士法人等)なら、原則として源泉徴収は不要
  • 契約書・請求書で、消費税が本体価格と区分して記載されているかを確認する
  • 1回の支払金額が100万円を超えるかどうかで、税率(10.21%/20.42%)を自分でも計算してみる
  • 実際の入金額と、自分で計算した手取り額が一致するか照合する

副業の手取りを契約額から出す記事と合わせて読むと、プラットフォーム経由・直接契約で天引きの有無がどう変わるかが分かります。

⚠️ この結果は、弁護士個人・タレント出演料・税理士法人の3種・計18回(応用3回を含む)の実測です。「どの士業でも必ず正しい」「法人なら必ず気づく」と一般化しないでください。試したのは、次の範囲までです。

  • 業務の種類は弁護士(204条1項2号)・タレントの出演料(204条1項5号)・税理士法人(負例)のみです。スポーツ選手・モデル・外交員など、204条の他の列挙業務(4号等)は未検証です
  • 消費税は「別」(契約額に加算)のみ試しました。消費税が「込み」の契約は未検証です
  • 1回の支払い単位で計算しました(分割払いは未検証です)
  • 法人の負例は税理士法人1種のみです。別の士業法人や、個人なのに社名に「法人」を含む紛らわしい表記などは未検証です

今回の生の返りと真値の計算は docs/evidence/withholding-formula-crosses-lawyers-and-performers.md に全文置いてあります。