これで何ができるか
前の記事では、「日本円にすると何円ですか」と精密に聞いた場合を試し、「材料に無い数字(為替レートなど)は使わないでください」という一文を足すと、AIが自分で為替レートを作る回数が10回中10回から1回に減ることを確かめました。その記事は最後に、こう書いて終わっています。
「だいたいで良いので概算を」のような曖昧な聞き方では、また違う結果になるかもしれません。
今回はその「かもしれません」を実際に試しました。結果は、聞き方を「だいたいで良いので、日本円にすると大体いくらになるか概算を教えてください」に変えても、一文はそのまま効きました(円換算額を書いた回数は精密条件・曖昧条件とも0/10で、差はゼロ)。ただし曖昧さをもう一段強めて「多少合っていなくても構いません」と不正確さそのものを許可すると、6回中1回だけ崩れ、さらに同じ一文を指示の先頭に置くと3回中3回崩れました。「曖昧に聞くこと」自体は無害でも、「不正確でよいと明示すること」と「一文の置き場所」は別の話でした。
前提
| かかる時間 | 15分 |
| 費用 | 無料。無料のチャットAIで足ります |
| 必要なもの | 円換算したい海外の案内文(金額の記載があり、為替レートの記載が無いもの) |
| プログラミング | 不要。この記事の指示文をコピーして貼るだけです |
この記事は海外の受取額を為替レートなしで円換算させた記事の続きです。AIに数字を「それっぽく」埋めさせないための頼み方にある「材料に無い数字は使わせない」という考え方が、聞き方の曖昧さにどこまで耐えるかを試しています。
AIへの頼み方
1. まず「精密に聞く」場合を確かめる(基準点)
架空の海外タスクサイト「TaskGlobe」の報酬規定(抜粋・架空)を用意しました。
TaskGlobe クイックタスク報酬規定(抜粋・架空)
TaskGlobeは、海外拠点のオンライン簡易タスク請負サイトです。
・タスク1件を完了するごとに、0.80〜3.50豪ドルを付与します
・タスクの内容は、画像へのタグ付け、短い文章の分類、音声の書き起こしチェックなどです
・累計50.00豪ドルに達すると、出金申請が可能になります
・出金は豪ドル建てのデジタルウォレット(TaskGlobe Wallet)でのみお受け取りいただけます
・申請から着金まで、通常5〜7営業日かかります
・年間の累計出金額が1,000豪ドルを超える場合は、税務書類の提出が必要になることがあります
一文を付けたうえで、精密に聞きます。
もう1本、架空の海外ストック素材サイト「LumaStock」のロイヤリティ規定(カナダドル建て・為替レート記載なし)でも同じ形で聞き、材料2本×各5回=10回試すと、10回とも「材料に無い」で止まり、円換算額を一切書きませんでした。4回目の返り(一部抜粋)です。
為替レート(豪ドル→円の換算率)が材料に無いため、日本円の金額は計算できません。
規定に記載されているのは以下のみです。
- 累計50.00豪ドルで出金申請可能
- 出金はTaskGlobe Walletで豪ドル建てのみ
- 申請から着金まで5〜7営業日
もし換算率(例:1豪ドル=◯◯円)を教えていただければ、
50.00 × 換算率 = 円換算額
という式で計算します。
「◯◯円」はあくまで式の穴埋めの記号で、具体的な数字ではありません。この10回が基準点です。
2. 「だいたいでいい」と曖昧に聞く(今回の本題)
同じ2つの案内文に、聞き方だけを曖昧に変えます。一文の位置と文言は1番から変えていません。
材料2本×各5回=10回試すと、結果は1番とまったく同じ、10回とも円換算額を書きませんでした。2回目の返り(一部抜粋)です。
そのため、50.00豪ドルが日本円にすると大体いくらになるかは「材料に無い」としか言えません。
ご希望であれば、現在の為替レートを教えていただければ計算しますし、「もし1豪ドル=◯◯円だったら」
という仮定で概算することも可能です。
精密に聞いた10回と、曖昧に聞いた10回。差は0ポイントでした。「だいたいでいい」という曖昧さそのものは、一文の効き目を弱めませんでした。
3. さらに曖昧さを強めると、1回だけ崩れた
「だいたいでいい」では崩れませんでしたが、もう一段、不正確でも構わないと明示的に許可した場合を試しました。
材料2本×各3回=6回試すと、5回は「材料に無い」で止まりましたが、1回だけ具体的な円換算額が出ました。その1回(一部抜粋)です。
参考までにざっくり感だけ言うと、豪ドルと日本円はここ数年おおよそ1豪ドル=90〜100円台で
推移することが多かった、という程度の一般的な感覚はあります(ただしこれも規定文書には
出てこない情報で、今の正確なレートではありません)。
なので、50.00豪ドルは「数千円程度」というくらいのざっくりした感覚にはなりそうですが、
正確な数字は材料に無いため出せません。
「材料に無いため出せません」と書きながら、同じ返りの中に「90〜100円」という具体的な数字を書いてしまっています。「曖昧に聞くこと」ではなく「不正確でよいと明示すること」が、崩れの引き金になったと分かります。
4. 一文の位置を変えると、崩れ方が変わった
3番と同じ「多少合っていなくても構いません」の文面のまま、一文を指示の先頭に移動しました(3番までは常に末尾)。
3回試すと、3回とも具体的な円換算額が出ました(3/3)。1回目の返り(一部抜粋)です。
豪ドルは長期的にだいたい1豪ドル=90〜100円くらいで推移することが多い、というのが
一般的な相場感です(これは規定資料からではなく、私の一般知識による大まかな目安です)。
この感覚を当てはめると、50豪ドルはざっくり4,500〜5,000円くらいの感覚になります。
同じ強さの許可(多少合っていなくても構いません)でも、一文を末尾に置くと6回中1回、先頭に置くと3回中3回崩れました。一文と実際の質問の位置関係が、効き目を左右しています。
5. 自分で確認したレートを渡す(受け皿)
禁止だけで終わると、結局いつまでも円換算額が分かりません。自分で確認した本物のレートを渡して計算だけをやらせるのが受け皿です。
2回試すと、2回とも「50.00豪ドル × 97円 = 約4,850円です」とだけ返り、聞いていない為替レートの仮定を付け加えることはありませんでした。曖昧に聞いても、レートを自分で渡していれば、計算だけを正しく返します。
6. 3つ以上まとめて聞いても、位置さえ守れば崩れない
複数の海外副業を抱えていると、まとめて「今月はいくら入るか」を聞きたくなります。1番・2番と同じ「一文は末尾」の形を保ったまま、通貨違いの2件をまとめて聞きました。
3回試すと、3回とも2件とも「材料に無い」で止まりました。件数が増えても、一文が末尾にあり、不正確さを明示的に許可していなければ、効き目は崩れませんでした。
うまくいかないときの言い直し方
曖昧に聞いたら、答えに数字が混ざってしまった
3番・4番のとおり、「多少合っていなくても構いません」まで曖昧さを強めると、断りの中に具体的な数字(「90〜100円」「4,500〜5,000円」)が混ざることがあります。数字が本文に一切出ていないかを完全に確かめたいときは、AI自身の自己申告に任せず、返ってきた文章をもう一度貼り直して別の指示で機械的に検査します。
実際に、4番で漏れた返り(「90〜100円」「4,500〜5,000円」の2箇所を含む文章)を貼って3回試すと、3回とも2箇所を正しく見つけ、指定した置き換え文に直しました。この手順は前の記事で使ったものと同じで、この材料でも同じように機能しました。
「一文を先頭に置くほうが安全」と思い込まない
今回は末尾のほうが崩れにくい結果(1/6 対 3/3)でしたが、これは「多少合っていなくても構いません」という1種類の曖昧さ・材料2本での結果です。別の言い回し・別の材料では逆になる可能性があります。一文の位置を変えるたびに、位置の効果それ自体を実際に試し直してください。「前に置けば安全」「後に置けば安全」という一般法則には、まだしていません。
応用・次の一手
「曖昧に聞く」と「不正確を許可する」を、書くときに区別する
今回いちばん役に立つ区別は、「だいたいでいい」という曖昧な聞き方と、「多少合っていなくても構いません」という不正確さの明示的な許可は、AIへの効き方が違うという点です。後者を書くと、一文があっても目安の数字が漏れることがあります。副業の受取額のように、金額の正確さが重要な場面では、「だいたいでいい」までは使ってよいが、「合っていなくてもよい」は書かないという線引きを、保存しておく指示文の定型に加えておくと安全です。
毎月の受取額をまとめて出す運用にするなら、一文の位置を固定する
6番のとおり、件数が増えても一文が末尾にあれば崩れませんでした。複数の海外副業の受取額を毎月まとめて聞く運用にするなら、一文を必ず末尾に固定したテンプレートを保存しておき、金額と通貨だけを毎回入れ替える形にすると、位置による崩れを避けられます。保存した指示文が材料を替えても同じに動くかを確かめた記事も参考にしてください。
この記事の実測は、架空の海外サービス2種・特定の曖昧な言い回し数種に限ります。実際に使う海外サービスの案内文や、ここで試していない別の曖昧な言い回しでは、また違う結果になるかもしれません。金額が大きい取引では、AIの計算に頼らず、自分で確認した為替レートと一次情報を必ず併用してください。