これで何ができるか
SNSのDMや広告で「AIで稼げる」という勧誘が届く。金額は数万円から数十万円。怪しい気もするが、本物の講座だってある。そこでAIに貼って「これは詐欺?」と聞く——多くの人がやっていて、検索の言い回しにも「ai 副業 詐欺」が実際に残っています。
これを実測しました。架空の「AI副業講座」の勧誘文を2種類作り、それぞれ別の新しい会話で判定させます。2種類は、検証できない主張5件(92%が初収益・メディア掲載実績・返金保証・二重価格・運営者の表記なし)が全部共通で、文面の丁寧さだけが違います。
| 判定の返り | |
|---|---|
| 粗い版(「残り3名」「本日23:59まで」) | 「黒に極めて近い」 |
| 整えた版(同じ中身・丁寧な敬語) | 「グレー(要警戒)」 |
判定が見ているのは中身ではなく、文面の印象です。文面を整えるのは、こちらが思っているよりずっと簡単です——今回の「整えた版」も、AIに書き直させれば数秒で作れる程度のものです。
そしてもうひとつ。どちらの判定も、それらしい理由をたくさん挙げてくれますが、「92%が本当か」「返金されるのか」は、AIには確かめられません。判定の最良の結果でも「グレー・推奨しない」まで。結局、決められないのです。
⚠️ AIの判定の文言は、使うAIや環境によって変わります。上の結果は一例です。変わらないのは、文面だけからは誰にも(AIにも)事実の確認ができないという構造のほうです。
だからこの記事は、判定を聞くのをやめます。代わりに、主張を「確かめられる/確かめられない」に仕分けさせ、確認の手順に変える頼み方をまとめました。
前提
| かかる時間 | 15分 |
| 費用 | 無料 |
| 用意するもの | 届いた勧誘文・案内ページの文章(コピーして貼る) |
| プログラミング | 不要 |
⚠️ この記事は一般的な確認の手順の話で、法律の判断はしません(私たちは弁護士ではありません)。また、特定の会社や講座が詐欺かどうかをこの記事が判定することもありません。教材の勧誘文は架空です。
お金を動かす前は、その場で決めない・一人で決めない。この2つが先で、AIはその手伝いです。
AIへの頼み方
1. まず「これは詐欺?」と聞くと、どうなるか
返ってきたものは立派に見えます。実測では赤信号を8個挙げ、相談窓口まで案内してきました。それでも「詐欺です」とは言いません——「最終的には司法の判断」という留保が付きます。正しい留保です。文面だけからは、誰にも断定できないのですから。
問題は、この返りを読んだ自分が「AIが怪しいと言った/言わなかった」で決めてしまうことです。冒頭の実測のとおり、その判定は文面の丁寧さで一段動きます。判定を決断の材料にすると、文面を整えるのが上手い相手ほど通り抜けます。
2. 主張を「確かめられる/られない」に仕分けさせる
効いたのはこれです。
実測では9件の主張が引用つきで返り、引用は9件すべて原文にそのまま実在しました(機械照合)。仕込んだ検証不能の主張5件は5件とも拾われ、「92%(当社調べ)」は母数も定義も無いから確かめられない、「メディア掲載実績」は媒体名が無いから検索のしようがない、と1件ずつ理由が付きます。さらに「文面に書かれていないこと」——事業者名・住所・特定商取引法に基づく表記が無いこと——まで確認ポイントとして挙がりました。
「確かめられないものの一覧」が、そのまま「まだ申し込めない理由の一覧」になります。判定と違って、この一覧は文面を整えても減りません。中身が同じなら同じだけ残ります。
📌 「判定はしないでください」と禁止だけを渡すのではなく、代わりにやること(仕分けと確かめ方)を隣に置くのがこの指示文の作りです。
3. 「はい/いいえ・数字・書類」で答えられる質問に変える
申し込む気持ちが残っているなら、確認は具体的な質問にします。
実測では運営側への質問18項目と、自分で調べられること9項目が返りました。「92%の母数は何人中何人ですか」「『初収益』の金額の下限はいくらですか」「返金条件の全文を申し込み前に書面でもらえますか」——全部、答え合わせのできる形です。
あいまいな売り文句は、数字と書類の質問に変えた瞬間に強さを失います。そして返ってきた答えが「書面では出せません」「LINEでご説明します」の連続なら、それ自体が判断の材料です。
4. 急がせている言葉に、印を付けさせる
粗い版の実測では、急がせ4件・言い切り5件——8行の文面に、ほぼ1行1個の密度で入っていました(引用9件は全部原文に実在・機械照合)。
「残り3名」「本日23:59まで」「迷っている時間はありません」。急がせる言葉は全部、「今日は決めない」と決めた人には効きません。確認の手順(2と3)は時間がかかります。その時間を作ることが、この一覧の使い道です。本当に良い話なら、明日もあります。
5. 家族に相談するための「1枚メモ」を作らせる
「一人で決めない」を実行するための形です。
実測では、「書いてあること」7項目が全部「〜とある」の形(事実と主張を混ぜない)で並び、「書いていないこと」に運営者・92%の根拠・返金条件・媒体名がそろいました。仕込んだ5件は5件とも「書いていないこと」側に載り、意見や判定は最後まで混ざりませんでした(機械照合)。
判定入りのメモを渡すと、相談が「AIがこう言ってた」の伝言になります。事実の一覧だけを渡して、判断は人間ふたりでする——そのための「判定は書かないで」です。
うまくいかないときの言い直し方
急いでいて、一言で答えてほしい
これも実測しました。
返ってきたのは「限りなく黒に近いグレー」——一言を求めても、やはり断定はしません。「詐欺かどうか」は、どう聞いても答えの出ない質問です。急いでいるときほど、聞く相手はAIではなく時間です。今日は申し込まない、とだけ決めてください。
すでに申し込んで(払って)しまった
この記事の範囲を超えます。すぐ公的な窓口へ相談してください(下の相談窓口)。クレジットカードで払った場合は、カード会社への相談も並行してください。時間が経つほど選択肢が減ります。
有名人が勧めている動画・広告だった
有名人の顔と声はAIで作れる時代です。本人が本当に言ったかどうかは、その動画からは確かめられません——確かめる場所は、本人の公式サイト・公式アカウントに同じ告知があるかどうかです。出典に戻って確かめる型は調べものは「答え」ではなく「答えと出典」で受け取るにまとめてあります。数字の出所を確かめる型はAIに数字を「それっぽく」埋めさせないための頼み方にあります。
応用・次の一手
このやり方は「AI副業講座」に限りません。投資の誘い、情報商材、高額なコンサル、副業案件の勧誘——「うまい話」全般に同じ手順が効きます(この記事は投資の助言はしません。誘いを確かめる手順の話だけです)。
足りない情報を先に挙げさせる、という同じ型を仕事で使う話はAIに聞く前に、足りない情報を聞き返してもらうにあります。
最後に、この実測でいちばん大事だったことです。「詐欺かどうか」は答えにくい質問ですが、「何が確かめられないか」は答えられる質問です。答えられる質問に変えてから、AIに手伝わせてください。
相談窓口(公的なもの・無料)
- 消費者ホットライン: 188(局番なし。最寄りの消費生活センターにつながります)
- 警察相談専用電話: #9110(緊急でない相談)
⚠️ この記事は法的助言ではありません。個別のトラブルは上記の窓口や専門家に相談してください。
📌 この記事の実測(架空の勧誘文2種・6本の指示文・返ってきた生の内容・照合の結果)は、リポジトリの docs/evidence/too-good-offer-checklist.md にそのまま置いてあります。