これで何ができるか
ダウンロードフォルダとデスクトップが、もう見たくない状態になっている。ファイル名を全部コピーしてAIに貼り、「整理してください」と頼む——ここまでは思いつきます。
架空の散らかったフォルダ45ファイルを作って、実際にそう頼んでみました。返ってきたのは、きれいなフォルダ構成案と、削除をすすめる一覧です。そのまま従うと、2つのことが起きます。
1つめ。9件が「スクリーンショット5点」「〜など」に丸められて、一覧から消えます。提案の側に「5点」と書いてあるので、読んでも抜けたことに気づけません。
2つめのほうが厄介です。削除をすすめられた14件のうち、名前だけで確実に判定できるのは3件(~$ で始まるExcelの一時ファイルなど)で、残り11件は名前からの推測でした。そして、その推測が実際に外れていました。
| AIが言ったこと | 更新日時 | |
|---|---|---|
見積書_A社_最終_確定.xlsx |
(最新版) | 2026-02-14 18:03 |
見積書_A社_最新2.xlsx |
最終版があるため旧版です | 2026-02-27 11:16 |
「旧版なので削除」とすすめられたほうが、12日17時間ぶん新しいファイルでした。更新日時を渡していないので、AIは名前を根拠にするしかありません。「最終」「確定」は、その名前を付けた時点の気持ちであって、更新の順番ではありません。
この記事は、AIに決めさせるものと、自分が決めるものを分ける頼み方です。同じ45件で、こう変わりました。
AIに整理してもらうのではなく、自分が見るべきファイルを19件に絞ってもらう——これがこの記事の頼み方です。
前提
プログラミングは要りません。用意するのはファイル名の一覧だけです。
Windows なら、フォルダを開いて Ctrl+A ですべて選び、Shift を押しながら右クリック →「パスのコピー」。Mac なら、すべて選んで右クリック →「項目をコピー」ではなく、Finder で Option+Command+C(パスのコピー)です。うまくいかなければ、フォルダの表示を「詳細」にして、名前と更新日時の列を選んで貼り付けても構いません。
⚠️ 更新日時も一緒に貼ってください。この記事でいちばん危ない取り違えは、更新日時を渡さなかったせいで起きています。名前だけでは新旧は決まりません。
⚠️ ファイル名そのものが社外に出せない情報のことがあります(取引先名・案件名・個人名)。そのAIに貼ってよいかの線引きはAIに「ついでに整理しておきました」と言わせないための頼み方にまとめてあります。
そして、この記事を通しての前提です。ファイルを消す操作も動かす操作も、AIにはさせません。出させるのは移動先の案までで、動かすのは自分です。
AIへの頼み方
まず、効かなかった言い方から
これで冒頭の結果になります。「整理」に何をしてよいかが入っていないのが原因です。フォルダ分けも、重複の判定も、削除も、全部「整理」に含まれると読めます。だから全部やろうとして、確かめようのない推測まで断定で返ってきます。
📌 返ってきた文には「最新版」が2回、「不要です」が2回、「旧版です」「可能性が高いです」「と思われます」が1回ずつ入っていました。根拠が名前しか無いのに、言い切りで返ってきます。
全件を1行ずつ出させ、決まらないものは「判断できない」に置く
効いたのはこれです。長いですが、5つの条件はどれも実測で必要でした。
45行が45行のまま返りました。機械で数えたところ、入力にあって出力に無いものが0件、出力にあって入力に無いもの(AIが作った名前)が0件、同じ名前が2行に出たものが0件、削除の提案が0件です。
条件ごとに、効いている理由を書きます。
「1行1ファイル」と「まとめないこと」は、冒頭の9件が消えた原因への直接の対策です。まとめる書き方を名指しで禁じないと、似た名前のファイルは束ねられます。同じことは長文の要約でも起きていて、そちらは長い文書の要約から「ただし書き」だけが静かに消えるのを防ぐにまとめました。丸められて消えるのは、AIの決まった癖です。
「消す提案はしないこと」は、判断の持ち主を分けるためです。消してよいかは、中身を見ていない側には決められません。移動なら間違えても戻せますが、削除は戻せません。
「判断できない」という行き先が、この指示文の中心です。これを用意しないと、決まらないものは推測で振り分けられます。実測では、この19件のうち11件が削除候補に、5件が「スクリーンショット5点」に丸められていました。
「何を見れば決まるか」を書かせると、19件が自分の作業に変わります。返ってきた内訳がこれです。
| 何を見れば決まるか | 件数 |
|---|---|
| 開いて中身を見る | 15 |
| プロパティの発行元を見る | 2 |
| 社内規程を見る(個人情報を含む名簿) | 1 |
Excelを全部閉じる(~$ の一時ファイル) |
1 |
「入力の行数と出力の行数を書くこと」は、自分が数え直すためです。ここが合っていなければ、その先は読まなくてよいと分かります。
📌 3列目の「そう考えた理由」は読み飛ばしたくなりますが、残してください。理由が「名前に〜と書いてあるから」しか無い行が、名前を信じただけの行です。
同じものの別バージョンは、束ねるだけにする
見積書_A社 が4つ、提案資料 が4つ——この判定こそAIにさせたくなりますが、させないほうが速く終わります。
「どれが最新かは判断しないでください」を付けると、答えの代わりに確認事項が返ります。実測では、見積書のグループに「更新日時、ファイルサイズ、開いて見積金額と日付、A社へ送ったメールの添付」が挙がりました。送信済みメールの添付は、自分では思いつきにくい確認先です。
📌 スクリーンショット5枚については「日付でまとまっていますが、別バージョンではなく別々の画面です」と、グループから外して返ってきました。束ねすぎない方向に倒れるのは、この用途では都合がよい挙動です。
更新日時を渡して、名前を根拠にさせない
冒頭の取り違えを防ぐ一手です。渡すだけでは足りません。
「名前を根拠にしないでください」まで言う必要があります。名前に「最終_確定」と書いてあれば、それは日本語として強い手がかりで、日時と並んでいても引きずられます。根拠にしてよいものを1つに決めて渡すと、答えが検算できる形になります(自分でも日時を見比べれば済むので)。
フォルダの作りすぎを、数えて戻す
「整理して」と頼むと、分類は細かくなる方向に倒れます。
実測では1件しか入らないフォルダが3つ出て、AIが挙げた3つと、こちらがPythonで数えた3つは一致しました。ついでに「取引先ごとの階層は、同じ取引先が3件を超えてから作る」という目安も返ってきています。
移動する順番を出させる
案が出ても、45件を前にすると手が止まります。順番だけ先に決めます。
返ってきた手順で効いていたのは、「判断できない」19件を先に一時フォルダへどけることが2番目に来ていた点です。迷うものを先にどけると、残り26件は迷わず動かせます。
もう1つ、「元のフォルダが空になったことを確認する」が手順に入っていました。空でなければ、一覧をコピーしたあとに増えたファイルがあるということです。
⚠️ 手順の中の「作るフォルダは9個」という数は、間違っていました。実際に必要なのは親フォルダを含めて15個で、02_営業/見積書/A社 や 05_データ/在庫 が抜けています。そのまま進めると、移動の途中で行き先が無いファイルが出ます。手順は使えますが、手順の中の数は数え直してください——移動先の表さえ合っていれば、フォルダの一覧はその表から作れます。
「判断できない」19件を、見る順に並べる
最後にこれを流すと、19件が20分の作業になります。
Excelを閉じるだけで済む1件が先頭に、開いて思い出す必要があるスクリーンショット5枚が最後に来ました。段ごとの件数を足すと19件で、前の表と合っています。
うまくいかないときの言い直し方
また「ほか5点」でまとめられた
これを流すと19件が19行、名前も19/19そろって返りました。言えば直ります。ただし、言うまでは戻りません。
⚠️ 一度守らせても、次の指示文では戻ります。この記事を書くあいだに3回起きました——最初の提案で9件、「見る順に並べる」で6件、下の「仕事とそれ以外に分ける」で4件。件数はどの回も合っていたので、件数を見ても気づけません。名前を突き合わせるまで分かりません。チェックリストとして使うなら、そのつど付け直してください。
移動先が細かすぎる/大ざっぱすぎる
階層を増やすか、名前を長くするかの二択です。片方を上限で止めると、もう片方に寄ります。「どのくらいがちょうどいいですか」と聞くより決まります。
📌 実測では3段だったのは1か所(02_営業/見積書/A社)だけで、02_営業/見積書 に統合されました。おもしろいのは区別の語は「不要」と返ってきたことです——「4件とも名前に _A社 が入っているので、並び替えれば取引先ごとに固まります」。名前にすでに入っている情報は、フォルダで作り直さなくてよいという判断で、これは正しいです。
一覧が長くて途中で切れた
⚠️ 区切って頼むときは、番号で区切ってください。「前半」「残り」で頼むと境目がずれて、重複か抜けが出ます。実測では、番号で区切ると入力の1〜20行目がその順で20行返り、21件目以降は出てきませんでした。件数が多いときの分け方は同じ作業のくり返しは、1件ずつ頼まずまとめて渡すにまとめてあります。
仕事と個人のファイルが混ざっている
実測では、仕事26件・仕事ではない2件・決められない17件で、合計は45件と合いました。2か所に出たファイルもありません。⚠️ ただし、このときも4件の名前が 同 (2).xlsx のように縮められていました(上の「また『ほか5点』でまとめられた」を続けて流してください)。
会社のPCなら、個人のファイルは「整理して残す」のではなく、そもそも置き場所を分けるほうの問題です。返ってきた分類をそのまま信じず、年賀状リスト.xlsx のようなものが仕事側に混ざっていないかだけ見てください。
応用・次の一手
次に散らからないようにするところまで、同じ一覧で頼めます。
実測で返ってきた5行のうち、この記事にいちばん効くのは2行目でした。版は日付で表す。「最新」「最終」「確定」は名前に入れない——これだけで、冒頭の取り違えは起きなくなります。名前に順番の情報が入っていれば、AIも人も同じ結論になります。
「原因を挙げてください」の部分は、証拠が一覧の中にあるので効きます。実際、領収書 (2).pdf setup (1).exe の (n) は、ダウンロードしたまま放置した回数がそのまま残ったものだと指摘されました。
📌 同じ考え方は、溜まったメールにも使えます。「重要なものを教えて」ではなく、行き先を先に決めて全件を振り分ける形です。そちらは溜まったメールから「自分が動くもの」だけ抜き出させる頼み方にまとめてあります。
最後に、この記事で分かったことを1つだけ。AIに「整理して」と頼むと、決められないものまで決めてしまいます。「判断できない」という行き先を1つ用意しておくだけで、返ってくるものが推測の混ざった提案から自分の作業リストに変わります。
📌 この記事の実測(45件の一覧・7通りの指示文とその返り・照合スクリプト)は、リポジトリの docs/evidence/tidy-files-without-deleting.md に置いてあります。