これで何ができるか
クラウドソーシングの募集文に実在のプラットフォーム名が入っていたら、AIが自分から語る「規約の中身」をそのまま信じてよいかを確かめられるようになります。
案件のAI利用ルールを確かめるでは、プラットフォーム名を出さない募集文で実測し、「規約で決まっていることがあれば別枠で挙げて」と頼んだ8回は、8回とも実在しない規約を作り話しませんでした。ただしその記事自身が「もし募集文に実在のプラットフォーム名が入っていたら、そこは今回試していない」と書いて終わっています。今回、その続きを試しました。
架空の募集文に「クラウドワークスで募集しています」と実名を書いた版と、「オンラインの受発注サイト」に伏せた版で、同じ質問を計20回試した結果——実名を書いた版は10回中4回、AIが規約の具体的な中身に自分から触れました。伏せた版は10回中0回でした。しかも触れた5件のうち4件は、実際のクラウドワークスの規約が「心がけてください」「留意してください」というお願いの強さで書いている項目を、「規約違反」「禁止されているのが一般的」という禁止事項であるかのような強さに言い換えていました。
前提
- プログラミングは不要です。やることはAIに文章で頼むことだけです
- クラウドソーシングで、募集文に実在のプラットフォーム名が書かれている案件に応募する方
- 実測には架空の募集文2パターン(コラム記事執筆・データ入力)を使いました。どちらもAI利用についての記載は一切入れていません(実在の募集文の著作権に配慮した自作です)
- 各パターンに、「クラウドワークスで募集しています」と明記した版と、「オンラインの受発注サイト」に置き換えた版を用意し、それ以外の文面は1文字も変えていません
- 真値には、クラウドワークスのAI活用に関するポリシーの原文9項目を使いました(2026-08-21確認)
- この記事はクラウドワークス1社ぶんの実測です。他のプラットフォームで同じことが起きるかは確かめていません
AIへの頼み方
まず、同じ質問を「あり」「なし」で試す
同じ質問を、募集文の中の1文だけを変えて試しました。
データ入力案件でも同じように、募集文の中の1文だけを変えて試しました。
コラム記事執筆案件とデータ入力案件の2パターン×「あり」「なし」の2条件×各5回、計20回試しました(いずれも会話を引き継がない独立した依頼)。
伏せた版(なし条件)は10回とも「クラウドワークス」の文字列自体が回答に一度も出てきませんでした。募集文に書かれていない以上、当然の結果です。一方、実名を書いた版(あり条件)は10回中4回(のべ5件)、聞いてもいないのに規約の具体的な中身に触れました。たとえばこんな言い方です。
クラウドワークスは「発注者に無断でAIを使い、人間が書いたかのように納品する」ことを問題視するガイドラインを出しています。
クラウドワークスの契約でも、業務上知り得た情報の第三者提供・目的外利用は禁止されているのが一般的です。
触れた5件のうち、原文どおりだったのは1件だけ
触れた5件をクラウドワークスの規約原文9項目と1件ずつ突き合わせました。原文で「禁止いたします」と明記されているのは9項目中3項目だけで、残りは「心がけてください」「守ってください」「留意してください」「控えてください」という、お願いの強さで書かれています。触れた5件のうち4件は、この「お願い」の項目を「禁止」「規約違反」「規約に抵触」という、実際より強い言い方に変えていました。
正確に一致していたのは、この1件だけです。
クラウドワークス自体は「AI生成物の納品」を一律禁止しているわけではありませんが、案件ごとに発注者が禁止条件を付けている場合があります。
原文の「AIを利用してクラウドワークス上の業務を行うことは当社として禁止しておらず、受発注者間の取り決めに委ねております」と、実質同じ内容です。話題は当たっているのに、強さだけが原文とずれる——これが今回見つかった崩れ方です。実在しない規約をゼロから作り話ししたわけではないので、調べものは「答え」ではなく「答えと出典」で受け取るで扱った「捏造」とも少し違います。原文にある話題を、原文より強い言葉に言い換える、という崩れ方です。
うまくいかないときの言い直し方
「規約の判断は書かないで」を添えると、言及そのものが消えた
実名を書いた版(コラム記事執筆・データ入力の2パターン)に、この頼み方を各2回、計4回試しました。4回とも「書かれていない。」とだけ返り、クラウドワークスの文字列自体が回答に一度も現れませんでした。素朴に聞いた10回中4回あった言及が、この言い直しでは4回中0回になりました。
「募集文に書かれている文を、原文のまま抜き出す」型に切り替えると、AIが規約の中身を自分の言葉で語る余地そのものが無くなります。この頼み方は案件のAI利用ルールを確かめるで「使ってよいかどうかは決めないでください」と組み合わせて効果を確かめた型と同じ考え方です。募集文に書かれていない話題(実名のプラットフォームの規約)についても、同じ効き方をしました。
応用・次の一手
募集文に実在のプラットフォーム名が入っていたら、AIが語る規約の中身は聞き流し、自分で一次情報を確認してください。クラウドワークスの場合はAI活用に関するポリシーです(2026-08-21確認)。
今回の崩れ方は、実在しない規約をゼロから作る「捏造」よりも見抜きにくいものです。話題自体は本物の規約にある内容なので、読んだ側は「知っている話だ」と思って信じやすくなります。ずれているのは強さだけ——「留意してください」と「禁止されています」の違いは、規約を自分で読み比べないと気づけません。AIに数字を「それっぽく」埋めさせないための頼み方で扱った「出典にない数字」と同じ構造の問題が、数字ではなく規約の強さで起きていると考えてください。
実務での使い分けは次の順番になります。
- 募集文にプラットフォーム名が書かれていなければ、案件のAI利用ルールを確かめるの頼み方(抜き出すだけを頼む)で足ります
- 募集文にプラットフォーム名が書かれていたら、この記事の言い直し版(「規約の一般的な内容や可否の判断は書かないでください」)を使い、AIには募集文に書かれている文だけを抜き出させます
- 規約そのものの中身が知りたいときは、AIには聞かず、自分でそのプラットフォームの公開ポリシーページを開いて確認します
⚠️ 今回確かめたのはクラウドワークス1社ぶん、2パターンの募集文への言及だけです。他のプラットフォーム名でも同じ傾向になるとは限りません。また、言及が「10回中4回」という頻度も、この2パターンでの実測値であり、どんな募集文でも同じ頻度になるとは言い切れません。全24回(主実験20回+言い直し版の確認4回)の生の回答と判定は docs/evidence/site-name-invites-guessed-rules.md に全文置いてあります。