これで何ができるか

クラウドソーシングの案件で、AIを使ってよいかどうかを募集文から正しく読み取れるようになります。ここでいう「正しく」は2つの意味です。書いてあることを見落とさないこと、そして書いていないことを勝手に判断しないことです。

クラウドワークスの公開ポリシーは、この点をはっきり書いています。

ユーザーのみなさまがAIを利用してクラウドワークス上の業務を行うことは当社として禁止しておらず、受発注者間の取り決めに委ねております。

クラウドワークスでは、決めるのはクライアントで、プラットフォームではありません。(ただし全プラットフォームがそうとは限りません。後述の「応用・次の一手」参照)。そして実測でわかったのは、AIに「使ってよいか」とそのまま聞くと、AIが自分でその判断を代行してしまうということです。

前提

  • プログラミングは不要です。やることはAIに文章で頼むことだけです
  • クラウドソーシングで案件に応募したことがある、またはこれからする方
  • 実測には架空の募集文4パターンを使いました(実在の募集文の著作権に配慮し、ブログ記事執筆の案件として自作したものです)。AI利用について「禁止」「要申告」「可」「一言も書かれていない」の4通りを、位置をそろえて仕込んでいます
  • この記事はAI利用の可否そのものを決めるものではありません。可否を決めるのはクライアントです。ここで確かめるのは「募集文に書いてあることを、AIが正しく拾えるか」だけです

AIへの頼み方

まず、そのまま聞いてみる

次の募集文の案件で、AIを使って作業してよいですか。 (ここに募集文を貼る)

これを4パターンの募集文それぞれに、2回ずつ試しました(全8回)。AI利用について一言も書かれていない募集文(4パターンのうちの1つ)にこの聞き方をした2回は、2回とも自分で可否を判断しました。1回は「事前確認をしてから使うべき」という留保つきの許容、もう1回は、黒とまでは言えないがグレーな要素があり無条件の白とも言えない、という趣旨の自作の判定です。

AI利用について何も書かれていない募集文に4通りの頼み方をした実測で、可否を断定した回数を版ごとに示す図。そのまま聞いた版は2回中2回で可否を断定した(1回は留保つきの許容、1回は自作のグレー判定)。抜き出すだけを頼んだ版・確認文の下書きを頼んだ版・規約を別枠で挙げさせた版は、いずれも2回中0回で、2回とも「書かれていない」と正しく答えた。
同じ「何も書かれていない」募集文でも、そのまま聞くと判断が生まれ、抜き出すだけを頼むと生まれませんでした。

書かれていないのに、判断だけは返ってきます。これが厄介なのは、読者が「AIがそう言うなら」とその判断をそのまま信じてしまう点です。

次に、抜き出すだけを頼む

(ここに募集文を貼る) AIの利用について書かれている文を、原文のまま抜き出してください。 書かれていなければ「書かれていない」とだけ書いてください。 使ってよいかどうかは決めないでください。

同じ4パターンに、同じく2回ずつ試しました。「使ってよいかどうかは決めないでください」を添えるだけで、判断語はこの8回中0回になりました。AI利用について書かれている3パターン(禁止・要申告・可)では、仕込んだ文が3パターン×2回の6回すべてで一字一句そのまま引用されました。書かれていないパターンでは、2回とも「書かれていない」とだけ返り、可否には触れませんでした。

「決めないでください」の一言が、AIに可否の判断をさせないための境界線になっています。これが無いと、AIは聞かれてもいない可否まで答えてしまいます。

読み違いは起きなかった

「要申告(着手前に知らせれば使ってよい)」を「禁止」と読み違えたり、「禁止」を「可」と読み違えたりした回は、それぞれ8回中0回・合わせて16回中0回でした。3パターンの条件そのものは、AIは取り違えていません。問題は条件の中身の理解ではなく、条件が無いときにどう振る舞うかのほうでした。

うまくいかないときの言い直し方

「書かれていなかったら」の条件が、書かれていても効かないことがある

(ここに募集文を貼る) AIの利用について書かれている文を、原文のまま抜き出してください。 書かれていなければ「書かれていない」とだけ書いてください。 使ってよいかどうかは決めないでください。 書かれていなかった場合は、クライアントに送る確認文の下書きを作ってください。 確認文には、募集文に書いてあること以外を入れないでください。

書かれていなかった場合は確認文を作ってください」と条件をつけて頼みました。AI利用について書かれている3パターン(禁止・要申告・可、計6回)では、確認文は要らないはずです。ところが6回中5回は、書かれているのに確認文を作りました。残る1回は「今回は該当箇所が見つかったため確認文の下書きは不要です」と正しく判断したうえで、それでも参考としてテンプレートを付け足しました。

確認文の中身自体は正確でした。募集文に無い条件が混ざった回は、6回中0回です。「余分に作る」ことはあっても「作った中身をでっち上げる」ことはありませんでした。ただし、これは読者が確認しないと気づけない余分さです。書かれているのに確認文が出てきたら、それは「今回は不要でした」の合図だと思ってください。

条件をもう一段はっきり書くと直るか、書かれている3パターンそれぞれで1回ずつ試しました。

(ここに募集文を貼る) AIの利用について書かれている文を、原文のまま抜き出してください。 書かれていなければ「書かれていない」とだけ書いてください。 使ってよいかどうかは決めないでください。 すでに書かれている場合は、確認文は作らないでください。 書かれていない場合だけ、クライアントに送る確認文の下書きを作ってください。 確認文には、募集文に書いてあること以外を入れないでください。

「すでに書かれている場合は、確認文は作らないでください」を1文足すと、3回とも確認文を作りませんでした。「書かれていなかった場合は」という条件節だけでは弱く、禁止の形で明示すると効きます。3回だけの確認なので、これで必ず直るとまでは言い切れませんが、余分な確認文が出たら、この1文を足してみてください。

プラットフォームの規約を、勝手に挙げさせない

(ここに募集文を貼る) AIの利用について書かれている文を、原文のまま抜き出してください。 書かれていなければ「書かれていない」とだけ書いてください。 使ってよいかどうかは決めないでください。 プラットフォームの規約で決まっていることがあれば別枠で挙げ、出典を書いてください。 募集文から読み取れることと混ぜないでください。

今回使った架空の募集文には、どのプラットフォームの案件かを書いていません。この条件で聞いた8回のうち、実在しないプラットフォームの規約を作り話した回は0回でした。8回とも、募集文からはどのプラットフォームか特定できないため規約は挙げられない、という趣旨で正直に答えています。

AI利用について書かれた文に加えてプラットフォームの規約も別枠で挙げるよう頼んだ実測で、出典を辞退した回数と作り話した回数を示す図。8回中8回が、募集文からはどのプラットフォームか特定できないため規約は挙げられない、という趣旨で正直に答え、実在しない規約を作り話した回は0回だった。
聞かれてもいない規約を、AIは作り話しませんでした。分からないものは「分からない」と答えています。

🚨 ただし、これは「プラットフォーム名を書かなかった場合」の実測です。もし募集文に実在のプラットフォーム名が入っていたら、その会社の規約をAIが記憶から挙げようとして、正しい引用と作り話が混ざる可能性があります。そこは今回試していません。規約の中身を確かめたいときは、AIの記憶に頼らず、自分でそのプラットフォームの公開ポリシーページを開いて確認してください。クラウドワークスの場合はAI活用に関するポリシーです(2026-08-21確認)。

応用・次の一手

募集文を読む前に、プラットフォーム自体に決まりがないかを確認してください。同じ観点でココナラの規約も確認しました。クラウドワークスは「受発注者間の取り決めに委ねる」でしたが、ココナラは違います。

各カテゴリにおけるサービスの信頼性、適正価格を損なう行為につながることは出品者保護の観点から回避したく、一部カテゴリにおいてAIによる生成イラストそのものを納品物とするサービスの出品を禁止させていただいています。

このたび、AI生成コンテンツを判定するAIシステムを正式に導入することといたしました。

(ココナラ通信12月号・2026-08-22確認。掲載日は2023年12月5日で、確認時点でも同じ内容がページに残っていることを確かめています)

2社を開いて、2通りの答えが返ってきました。クラウドワークスの案件なら「募集文を読んで、無ければクライアントに聞く」で足りますが、ココナラの禁止カテゴリでは、募集文に何も書かれていなくても、聞くこと自体に意味がありません。プラットフォームが先に決めているからです。

読者がやることは、この記事の頼み方の前にもう1段あります。

  1. まずプラットフォーム側に、そのカテゴリ・その案件に関する決まりがあるかを確認する(ヘルプページ・規約・お知らせ)
  2. 決まりが無ければ、この記事の頼み方で募集文を確認する
  3. それでも書かれていなければ、クライアントに一言聞く

⚠️ 今回確かめたのはこの2社だけです。ランサーズなど他のプラットフォームは確認していません。「どこも同じです」とも「ここだけです」とも言えません——2社を開いて2通りだったので、他のプラットフォームがどちらに近いかは分かりません。

近い題材を扱った貼り忘れても止まる指示文にするは「材料が1つ足りない回に止まるか」を実測していますが、あちらはあるはずのものが欠けている(異常)場合の話です。この記事は逆に、その項目自体が存在しないのが普通な場合を扱っています——募集文にAIの話が無いのは、異常ではありません。

(ここに募集文を貼る) この募集文に、AI利用について書かれている条件をすべて、原文のまま抜き出してください。 書かれていない項目は「書かれていない」と書いてください。 どの項目についても、可否や解釈は決めないでください。

この頼み方の要点は「決めないでください」を明示することです。AIに聞くこと自体が悪いのではありません。AIに聞いてよいのは「何が書いてあるか」までで、「それで使ってよいか」を決めるのはクライアントか、プラットフォームです。クラウドワークスのポリシーが「事前に利用可否をクライアントに確認する」「利用していることを意図的に隠さないようにする」と求めているのも、同じ理屈です——AIは、決める側ではありません。答えを出典つきで受け取る頼み方は調べものは「答え」ではなく「答えと出典」で受け取るにまとめています。この記事の版④(規約を別枠で挙げさせる頼み方)は、その型そのものです。

⚠️ この記事の判定はAIの回答についての実測です(全39回=架空の募集文4パターン×頼み方4通り×2回に加え、確認文を作らないよう言い添えた版を書かれている3パターンで1回ずつ、条件をまとめて抜き出す応用版を4パターンで1回ずつ)。生の返りと判定コードは docs/evidence/job-ai-policy-check.md に全文置いてあります。プラットフォームの規約は変わるので、実際の案件で確かめるときはご自身で最新のポリシーを開いてください。