これで何ができるか
毎朝の自動レポートに、新しい監視対象を1件追加する場面を実測しました。SNSの対応待ちコメント、取引先からの未対応メールなど、「対象ごとの件数を毎朝まとめて出す」自動処理に、対象を1件足すたびに起きる事故です。
新しい対象には、当然まだ「対応済み」の記録がありません。だから取得できた記録を機械的に数えると、何ヶ月も前の投稿やメールまで、まるで今日届いたかのように「対応待ち」の件数に入ってしまいます。これを防ぐために「初期化してください」と頼むわけですが、この「初期化」という一言が、頼み方によって別の壊れ方をすることが分かりました。
架空のSNS対応待ち一覧・取引先未対応メール一覧の2本を用意しました。どちらも、すでに5つの監視対象を運用しているところへ、6つ目を新しく追加する場面です。新しい対象には「取得できた過去の記録」が7件ありますが、本日投稿・本日届いたものは、どちらも0件です。つまり正しい報告は「新しい対象の対応待ちは0件、既存5件(3・0・5・2・1件)はそのまま」のはずです。
結果は、聞き方によって大きく割れました。新しく追加した対象の名前を主語にして「〇〇を追加したので、初期化して」と頼む4回は、4回とも正しく処理できました。一方、対象名を出さず「この一覧をいったん初期化して」とだけ頼む8回では、正しく処理できたのは3回だけでした。残り5回のうち4回は新しい対象の過去分7件をそのまま「対応待ち」として数え、1回は新しい対象だけでなく既存5件の対応待ちまで、まとめて0件に巻き戻りました。全部で32回、材料2本ぶんの記録は docs/evidence/reinitialize-list-does-not-stay-scoped.md に生のまま置いてあります。
前提
| かかる時間 | 20分 |
| 費用 | 無料。無料のチャットAIで足ります |
| 必要なもの | ブラウザで使えるAI(ChatGPT・Claude・Geminiなど)と、監視対象の一覧 |
| プログラミング | 不要 |
⚠️ この記事は「毎朝、この一覧を自動で作らせる仕組み」がすでにある前提です。仕組みそのものを決まった時刻に動かす話は毎日決まった時刻にAIを動かす仕掛けを作らせるにあります。
📌 「新しく追加した対象の過去分が、翌朝の新着に化けるか」は扱いません。それは監視対象を増やしても、古い記録は新着にしないにあります。あちらは「未読/既読」という枠組みで新着を判定する自動処理が対象で、この記事が扱うのは「初期化してください」と明示的に頼んだときの壊れ方です。判定の入口が違うので、両方とも読んでおくと安全です。
📌 監視対象そのものではなく、監視の「項目」を増やす場合は別です。監視の項目をあとから増やすを見てください。
AIへの頼み方
1. 新しい対象の名前を主語にして頼む
「新しい対象を追加したので初期化してください」と、追加した対象の名前を主語にして頼む言い方です。材料2本(SNS対応待ち・取引先未対応メール)×各2回、計4回試しました。
4回とも、新しい対象の対応待ちは正しく0件、既存5件の件数もそのままでした。「TikTokを追加したので、初期化して」という言い方だと、AIは「初期化」の対象がTikTokだと文脈から素直に読み取っています。
2. 対象名を出さず、「この一覧をいったん初期化して」と頼む
同じ場面を、対象名を出さずに聞くとどうなるかを試しました。「監視対象を追加したので、一覧そのものを作り直してほしい」という、日々の運用ではむしろ自然に出てきそうな頼み方です。材料2本×各4回、計8回試しました。
🚨 8回中5回、答えが崩れました。内訳は2通りです。4回は、新しい対象の過去分7件をそのまま「対応待ち7件」として数えました。「初期化」を「今回取得できた分をそのまま報告する」という意味に読んだためです。
📌 残り1回は、もっと深刻でした。新しい対象だけでなく、既存5件(3・0・5・2・1件)まで、すべて0件に巻き戻りました。これはCLAUDE.mdに実際に書いてある、--mode bootstrap が既読状態を空にして「溜まっている他ソースの分を捨ててしまう」事故と同じ壊れ方です。まれにしか起きませんが、起きたときの被害は一番大きい壊れ方でした。
なお、正しく処理できた3回のうち2回は、実行の前に「これは表組みの作り直しですか、それとも件数のリセットですか」と確認を求めてきました。確認してくること自体は正しい振る舞いですが、毎朝自動で走らせる仕組みでは、その確認に誰も答えられません。
3. 範囲を明示する一文を足す(詳しい版)
8回とも、新しい対象は正しく0件、既存5件も一切変わりませんでした。「Fだけを対象にする」「他は残す」の両方を明示したのが効いています。
4. もっと短い一言でも足りるか
🔑 こちらも4回とも正しく処理できました。3番より短い一言でも、「対象を名指しする」+「他は変えない」の2点さえ入っていれば足りています。
5. 対象名だけ挙げて「0件にして」でも足りるか
「他は変更しないでください」という一文すら省き、対象名だけを挙げて「0件にしてください」とだけ頼むとどうなるかも試しました。
4回とも、TikTokの対応待ちは0件、既存5件もそのままでした。2番との違いは「TikTok」という対象名を主語にしたかどうかだけです。「一覧」を主語にすると崩れ、「対象名」を主語にすると崩れませんでした。
うまくいかないときの言い直し方
「初期化してください」とだけ頼んだら、新対象の過去分が対応待ちに計上された
2番の症状です。指示文の中に、追加した対象の名前が主語として出ていないか確認してください。「一覧を」「システムを」のような、全体を指す言葉が主語になっていたら、3番・4番・5番のどれかに言い直してください。
まれに、既存の対象まで0件に巻き戻ることがある
これも2番の症状の一部ですが、より深刻です。「初期化」という言葉を、既存分も含めた全体のリセットとして読んでしまう回が、8回に1回ありました。頻度は低くても、起きれば当日の対応待ちが全部消えて見えるので、「初期化してください」という言い方そのものを、日々の運用から外すのが確実です。3番・4番・5番のように、対象名を主語にするか、対象を明示的に限定する一文を、テンプレートとして毎回使ってください。
監視対象を2つ以上、同時に追加した場合は
範囲を明示する言い方が、対象を2件同時に追加しても崩れないかを確かめました。TikTokとThreadsを同時に追加する場面です。
2回とも、TikTok・Threadsとも正しく0件、既存5件もそのままでした。範囲を明示する言い方は、対象が2つに増えても崩れていません。
📌 なお、2番と同じ「対象名を出さない」言い方のまま対象を2件同時に追加した場合も試しています。2回とも、AIは実行前に「表組みの作り直しか、件数のリセットか」を確認してきました。単独追加のときのように黙って過去分を計上した回はありませんでしたが、自動実行では誰も答えられない確認が挟まるという意味で、これも安全とは言えません。
過去分の記録がとても多い(何十件・何百件)場合は
今回の過去分は7件です。何十件・何百件という規模でも同じ結果になるかは確かめていません。件数が多い監視対象を追加するときは、最初の報告を必ず自分の目で確認してください。
応用・次の一手
この記事の3番・4番・5番のどれかを、監視対象を追加するときのテンプレートとして固定してください。「初期化してください」という一言に頼らず、必ず対象名を主語にするか、対象を明示的に限定する一文を添える形です。
📌 新しく追加した対象の過去分が「新着」に化けるかどうかは、この記事の一歩手前の話です。監視対象を増やしても、古い記録は新着にしないと合わせて使ってください。この記事(初期化してと明示的に頼んだとき)→ あちらの記事(未読/既読の枠組みで自動判定するとき)、で監視対象を追加する場面のほとんどをカバーできます。
⚠️ この記事が実測していないこと=過去分が何十件・何百件と多い場合、記録に日付が書かれていない場合、対象を3件以上同時に追加した場合の3つです。実際に追加する人は、最初の1回だけ、報告された件数と元の一覧を自分の目で見比べてください。
次の一手は、この一文を毎朝の自動実行の指示文そのものに、あらかじめ書き込んでおくことです。「新しい監視対象を追加したときは、対象名を主語にして、他の対象の値は変更しないことを明記する」という運用ルールを、一度だけ手元のメモに残しておけば、次に対象を追加する日に同じ事故を防げます。手で1回確かめてから、毎日決まった時刻にAIを動かす仕掛けを作らせるの指示文に組み込むのが、この記事の使いどころです。