これで何ができるか
募集文に実在のプラットフォーム名が入っていたら、AIが語る「規約の中身」が本当に合っているかを、実際に禁止されているカテゴリで確かめられるようになります。
案件のAI利用ルールを、サイト名を出さずに聞くでは、クラウドワークスの名前を書いた募集文で、AIが規約の中身を自分から語る現象を見つけました。ただしクラウドワークスの規約は「受発注者間の取り決めに委ねる」という柔らかい型で、白黒がはっきりした一次情報が薄いという弱点がありました。今回は、実際に「一部のカテゴリでAI生成物の出品そのものを一律で禁止している」プラットフォーム(ココナラ)と、その禁止対象カテゴリ(AIイラスト生成)そのものを材料にして、同じ質問を試しました。
結果——実際に禁止されているカテゴリの募集文でも、AIは5回中5回、規約の具体的な中身を自分から語りました。しかしその5回すべてが、真値(ココナラの公式ガイドライン原文)と食い違っていました。3回は「禁止されていない」という正反対の断定、2回は「明示すれば出品できる」という、実際には無い開示制度に弱めた説明でした。
前提
- プログラミングは不要です。やることはAIに文章で頼むことだけです
- クラウドソーシング・スキルマーケットで、募集文に実在のプラットフォーム名が書かれている案件に応募する方
- 実測には架空の募集文2パターン(SNSアイコンイラスト制作・健康食品通販サイトのレシピコラム執筆)を使いました。どちらもAI利用についての記載は一切入れていません(実在の募集文の著作権に配慮した自作です)
- イラスト制作案件は、ココナラが実際にAI生成イラストの出品を禁止しているカテゴリを選びました。レシピコラム執筆案件は、その禁止対象に該当しない業務です
- 各パターンに、「ココナラで募集しています」と明記した版と、「オンラインのスキルマーケット」に置き換えた版を用意し、それ以外の文面は1文字も変えていません
- 真値には、ココナラ公式ニュース「ココナラ通信12月号」(2023年12月5日掲載、2026-09-15確認)に書かれている生成AIガイドライン原文を使いました
- この記事はココナラ1社ぶん、この2パターンの実測です。他のプラットフォームや他のカテゴリで同じことが起きるかは確かめていません
AIへの頼み方
まず、実際に禁止されているカテゴリで「あり」「なし」を試す
同じ質問を、募集文の中の1文だけを変えて試しました。イラスト制作案件です。
健康食品通販サイトのレシピコラム執筆案件でも、同じように1文だけを変えて試しました。こちらはココナラの禁止対象に該当しない業務です。
イラスト制作案件・レシピコラム案件の2パターン×「あり」「なし」の2条件×各5回、計20回試しました(いずれも会話を引き継がない独立した依頼)。
イラスト制作案件でプラットフォーム名を伏せた版は、5回とも具体的な規約内容を語りませんでした。一方、名前を明記した版は5回中5回、聞いてもいないのにココナラの規約の中身に触れました。たとえばこんな言い方です。
ココナラの利用規約上、AI生成イラストの出品・納品自体を一律禁止してはいませんが、多くのケースで「AI生成である旨の明示」を求められます。
ココナラ自体はAI生成イラストの出品・受注を全面禁止してはいません。
ところが、ココナラの公式ガイドライン(ココナラ通信12月号、2023年12月5日掲載)の原文はこうです。
現状ココナラではAI技術を利用したイラスト生成サービスは、一律で出品を禁止しています。
「一律」という同じ単語を使いながら、真偽が逆になっていました。
触れた5件のうち、真値と一致したのは0件
5件をココナラの公式ガイドライン原文と1件ずつ突き合わせました。3件は「禁止されていない」という正反対の断定、2件は「明示すれば出品できる」という、実際には無い開示制度への言い換えでした。案件のAI利用ルールを、サイト名を出さずに聞くで見つかった崩れ方は「お願い」を「禁止」に強めるものでしたが、今回は逆に、実際にある「禁止」を「開示すれば足りる」「禁止されていない」に弱める方向でした。ズレる方向は、話題によって強まる場合も弱まる場合もある、ということです。
一方、健康食品のレシピコラム案件(ココナラの禁止対象に該当しない業務)では、名前を明記しても、具体的な規約内容を断定した回は5回中0件でした。案件のAI利用ルールを、サイト名を出さずに聞くを書いた時点では、「実名があると対象外の業務にまで規約の話が広がるのでは」という懸念もありましたが、少なくとも今回の2パターン・20回では、対象外の業務にまで話が広がることはありませんでした。実際に該当する話題では中身を外し、該当しない話題では黙る、という結果です。
うまくいかないときの言い直し方
「規約の判断は書かないで」を添えると、実際に禁止されているカテゴリでも言及が消えた
イラスト制作案件・レシピコラム案件それぞれの名前明記版に、この頼み方を各2回、計4回試しました。4回とも「書かれていない」とだけ返り、ココナラの文字列自体が回答に一度も現れませんでした。素朴に聞いた場合はイラスト制作案件で5回中5回あった言及が、この言い直しでは4回中0回になりました。
「募集文に書かれている文を、原文のまま抜き出す」型に切り替えると、実際に禁止されているカテゴリの話題であっても、AIが規約の中身を自分の言葉で語る余地そのものが無くなります。案件のAI利用ルールを確かめるで確かめた型と同じ考え方が、禁止の有無に関わらず同じように効きました。
応用・次の一手
募集文に実在のプラットフォーム名が入っていたら、AIが語る規約の中身は聞き流し、自分で一次情報を確認してください。しかも今回分かったのは、AIが語る内容の的外れさは「実際には対象外の話題に広げる」ときだけでなく、「実際にど真ん中の話題」でも起きるということです。今回はむしろ的外れの度合いが強く、実際は一律禁止されている行為を「禁止されていない」と正反対に言い切った回すらありました。
話題が当たっているからといって、中身まで合っているとは限りません。案件のAI利用ルールを、サイト名を出さずに聞くで見つけた「お願いを禁止に強める」崩れ方と、今回見つけた「禁止を開示制度に弱める」崩れ方は、方向こそ逆ですが根は同じです。実名という1語が、AIに規約の中身を語らせる引き金になっています。
実務での使い分けは次の順番になります。
- 募集文にプラットフォーム名が書かれていなければ、案件のAI利用ルールを確かめるの頼み方(抜き出すだけを頼む)で足ります
- 募集文にプラットフォーム名が書かれていたら、この記事とサイト名を出さずに聞くの言い直し版(「規約の一般的な内容や可否の判断は書かないでください」)を使い、AIには募集文に書かれている文だけを抜き出させます
- 規約そのものの中身が知りたいときは、AIには聞かず、自分でそのプラットフォームの公開ガイドラインページを開いて確認します。イラスト出品などAI生成物を扱うカテゴリでは、ココナラの生成AIガイドラインのように「一律禁止」と「判定AIによる検知」までセットになっている場合があり、聞いた相手に確認するだけでは足りません
⚠️ 今回確かめたのはココナラ1社ぶん、この2パターンの募集文への言及だけです。他のプラットフォームや他のカテゴリでも同じ傾向になるとは限りません。また、言及の中身が「弱める」方向にずれるか「強める」方向にずれるかも、話題によって変わりうると考えてください。全24回(主実験20回+言い直し版の確認4回)の生の回答と判定は docs/evidence/platform-name-guesses-the-rule-backwards.md に全文置いてあります。