これで何ができるか
打ち合わせのメモや業務の説明文を、AIに頼んで関係図にしてもらう——これはよくやる使い方です。ただ、できあがった図を見ても判断できないことがあります。本当に文章に書いてあった関係なのか、AIが分かりやすくするために足した関係なのかです。
この記事でやるのは、いきなり図にさせず、先に「何が → 何に → 何をする」の一覧を作らせる頼み方です。一覧なら1行ずつ、根拠になる一文を照合できます。架空の業務説明2本(経費精算の流れ・図書館の予約の流れ)で実際に試しました。すると出典の一文を引用させるだけでは、本文に無い言葉が1つ混じっていることに気づけませんでした。合計21行のうち3行(14%)で、関係に使った言葉そのものが、引用した一文の中には存在していませんでした。
前提
| かかる時間 | 15分 |
| 費用 | 無料。無料のチャットAIで足ります |
| 必要なもの | ブラウザで使えるAI(ChatGPT・Claude・Geminiなど)だけ |
| プログラミング | 不要。この記事の指示文を順番にコピーして貼るだけです |
図を描く手段(Canvas・画像生成・矢印つきの図解機能)はツールごとに違うので、この記事では主役にしません。主役は図にする前の「何と何が、どう繋がるか」という構造です。ここを一覧の形で確認してから、最後に図の構成案を作らせます。
AIへの頼み方
1. いきなり図にさせず、関係の一覧を作らせる
元の説明文を貼って、まず一覧化だけを頼みます。
架空の経費精算の説明文(9つの関係を含む)で試すと、9行とも元の文章と対応する、筋の通った一覧が返ってきました。この段階では悪くありません。問題は、この一覧をそのまま信じてよいかどうかです。
2. 行ごとに、根拠の一文を引用させる
一覧の行それぞれに、裏付けとなる一文を付けさせます。
これを2つの架空データ(経費精算9行・図書館の予約12行)で試したところ、「出典なし」と書かれた行は合計21行のうち0件でした。AIは必ず、それらしい一文を見つけて引用してきます。ここで「全部根拠があるなら安心」と思うと、次の落とし穴に気づけません。
3. 一覧に入っていない関係を、自分で見つけさせる
一覧が元の説明文の全部をカバーしているかも、AIに確認させます。
経費精算の材料では「説明文に含まれる関係は、既にすべて一覧に入っています」という回答でした。1回目の一覧化で、すでに完全だったということです。確かめずに「完全です」と書かず、この指示文で裏付けを取ってから次に進みます。
4. 引用した一文に、その言葉が本当にあるかを確認させる
ここがこの記事のいちばんの発見です。指示文2で「出典なし」は0件でしたが、引用した一文そのものを読み直すと、関係に使った言葉が実際には書かれていない行がありました。
図書館の例で見てみます。一覧の1行は「予約者 → 図書館 → 来館する」でした。根拠として引用した一文は「予約者は、メールを受け取ってから1週間以内に来館して本を受け取る必要があります。」です。
この一文のどこにも「図書館」という言葉はありません。来館先が図書館であることは文章全体を読めば明らかです。ですがこの一文単体には書かれていません。
この指示文を2つの材料に試しました。経費精算では9行中2行が「申請」という、根拠文に無い言葉を使っていたため修正されました。図書館では12行中1行(「図書館」の行)が、直せる言葉が無いため削除されました。合わせて21行中3行(14%)です。「出典を引用する」工程と、「その引用に本当に書かれているかを確認する」工程は別物だと分かります。
5. 検品済みの一覧だけから、図の構成案を作らせる
言葉の確認が済んだ一覧を渡して、ここで初めて図にします。
「一覧の言葉だけを使う」と縛りを明示すると、2つの材料ともノードの数・矢印の数が、検品後の一覧の行数とぴったり一致しました。経費精算は9個・9本、図書館は11個・11本です。
縛りを入れずに素朴に「図の構成案を作って」と頼んだ比較では、1本ずつ照合できる形になりませんでした。理由は3つあります。
- 分岐の記号(◇など)の提案が、関係そのものと同じ文章に混ざる
- 矢印の色分け・線の種類といった見た目の提案まで一緒に返ってくる
- 「差し戻された申請は最初の登録に戻る」という、元の説明文には無い補足が、確認できる事実と同じ調子で付いてくる
6. 図と一覧を、最後にもう一度突き合わせる
今回の2つの材料は、どちらも不一致ゼロでした。手順5で縛りを明示できていたからです。それでも、縛りを忘れた回の保険として、図を作らせたら必ずこの確認を挟むのが安全です。
うまくいかないときの言い直し方
「出典があるから正しい」と思い込んでしまう
指示文2だけで止めると、「根拠の一文が付いている=正しい」と見えてしまいます。実測ではどちらの材料も「出典なし」は0件でした。引用文が実在する一文であることと、その中に使った言葉が実在することは別です。指示文4を必ず続けてください。
図から直接、間違いを探そうとしてしまう
図(ノードと矢印の構成案)の段階で誤りを探すのは、一覧の段階で探すより難しくなります。矢印のラベルが長くなったり、配置の都合で言葉が省略されたりするためです。照合は一覧の段階で済ませ、図は「検品済みの一覧をそのまま絵にする」だけの工程にするのが安全です。
素朴に「図の構成案を作って」と直接頼むと、分岐の記号や矢印の色分けまで1つの回答に混ざります。本文に無い推測(「差し戻しは最初の工程に戻る」など)も、同じ調子で混ざってきました。
一覧が長すぎて、照合が大変になる
説明文が長いと一覧も長くなります。その場合は指示文4を一度に全部ではなく、10〜20行ずつに区切って確認させるほうが安定します。まとめて渡すほど結果が雑になることは、同じ指示を何回もコピペしているなら、まとめて1回で頼めるでも触れています。
応用・次の一手
毎回同じ種類の説明文を図にしているなら、一覧の列をテンプレート化できます。「何が/何に/何をする/根拠の一文」の4列を決めます。説明文を貼るだけでこの4列が埋まる指示文にしておけば、次回からコピーして貼るだけです。
毎週同じ形式の報告書や議事録を図にしているなら、自動化の余地もあります。「毎日決まった時刻に自動でやっておいて」をAIに作らせると組み合わせれば、一覧の生成と検品まで自動で回せます。
この記事で使った「引用させた一文に、使った言葉が本当にあるか確認する」という考え方は、数字の確認にも応用できます。出典のURLは正しいのに、そのページにその数字が書かれていないことがあります。この別の落とし穴はAIに数字を「それっぽく」埋めさせないための頼み方にまとめました。
なお、この記事が検査しているのは図の中身(関係が本当にあったか)です。図の見た目の崩れ(文字が線を貫く・枠からはみ出す)は別の問題で、AIに図を作らせると崩れる、を検査で止めるで扱っています。軸が違うので、両方を別に確認してください。