これで何ができるか

副業でAIに請求書の下書きを作らせるとき、適格請求書(インボイス)として必要な項目のうち、どれが抜けやすいかを実測しました。発行者・宛先・取引内容・金額だけを渡し、登録番号を渡さずに「請求書を作ってください」と頼んだ結果です。

  • 登録番号は、渡さなければ3回中0〜1回しか欄に残りません
  • 架空の番号をでっち上げた回は、6回とも0件でした
  • 税率が2種類(10%・8%)混ざる材料のほうが、単一税率より登録番号も税率の内訳も残りやすいという、意外な結果になりました
登録番号の欄が出た回数と、税率ごとの消費税額が明記された回数を示す表。登録番号の欄は、単一税率で渡さない場合3回中0回、税率2種混在で渡さない場合3回中1回、「不明なら明記して」を追加した場合4回中4回。税率ごとの消費税額は、単一税率で渡さない場合3回中1回、税率2種混在で渡さない場合3回中3回、情報をすべて渡した場合8回中8回。下の枠には、登録番号を渡さなかった6回のうちでっち上げた回は0回だったこと、税率が2種類混ざる材料のほうが単一税率より残りやすかったこと、「不明なら明記して」を足すと登録番号は4回とも正しく「不明」と書かれたことが書かれている。
登録番号は渡さないと消える回が多く、税率が混ざると残りやすくなりました。

単一税率の材料では、税率ごとの消費税額(必須項目の1つ)も3回中2回省略され、税込の合計額だけが書かれました。税率が混ざる材料では3回とも明記されています。「複雑な条件のほうが崩れる」という見立ては、今回は逆向きに外れました。

前提

かかる時間 15分
費用 無料。ブラウザのチャットAIで足ります
必要なもの 発行者の情報(氏名・名称・登録番号)、取引の内容・金額・日付
プログラミング 不要。この記事の指示文をコピーして貼るだけです

実在の取引先名・実在の登録番号は貼らないでください。この記事は架空の社名・金額を使っています。実在の人物・団体とは関係ありません。

適格請求書に必要な記載事項は、国税庁の質疑応答事例「4 適格請求書の記載事項」(2026-10-23確認)によると次の6つです。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
  2. 課税資産の譲渡等を行った年月日
  3. 取引内容(軽減税率対象品目なら、その旨も)
  4. 税率ごとに区分した金額の合計と適用税率
  5. 税率ごとに区分した消費税額
  6. 交付を受ける事業者(取引先)の氏名または名称

この記事は「下書きが何個欠けるか」という実測に絞っています。実際の請求書は、発行前に自分で6項目を目で確認してください。副業の手取りを契約額から出す記事と合わせて読むと、受け取る側の計算にも役立ちます。

AIへの頼み方

1. 登録番号を渡さず、単一税率の取引を頼む

発行者名・宛先・取引内容・金額(税込)だけを渡し、登録番号は書きません。

次の内容で請求書を作ってください。発行者は合同会社ヒカリデザイン、宛先は株式会社みどり商事です。11月20日に行ったウェブサイト制作の代金55万円(税込)を請求します。

3回試しました。3回とも、登録番号の欄そのものが出てきませんでした(0/3)。架空の番号を作文した回は1回もありません。静かに欄ごと消えるだけでした。さらに3回中2回は、税率ごとの消費税額も書かれず、「55万円(税込)」という合計額だけで終わっています。

2. 登録番号を渡さず、税率が2種類混ざる取引を頼む

次は、標準税率10%の品目と、軽減税率8%の品目が1枚の請求書に混ざる場合です。登録番号は同じく渡しません。

次の内容で請求書を作ってください。発行者は合同会社ヒカリデザイン、宛先は株式会社みどり商事です。11月25日の取引で、事務用品22,000円(税込)と、軽減税率対象の飲食料品3,240円(税込)を、まとめて請求します。

3回試すと、登録番号の欄は1回だけ残りました(1/3)。残った1回は、実際の番号は書かず「T(記入してください)」という空欄にして、備考で「登録番号を追記してください」と案内しています。一方、税率ごとの消費税額(10%対象・8%対象の内訳)は、3回とも正しく明記されました。単一税率の材料より良い結果です。

3. 登録番号を渡して頼む(基準)

比較のため、登録番号を含むすべての情報を渡した場合も確認しておきます。

次の情報から、請求書を作ってください。 発行者:合同会社ヒカリデザイン(登録番号T1234567890123) 交付先:株式会社みどり商事 取引年月日:2026年11月20日 取引内容:コーポレートサイト制作一式 金額:550,000円(税込、消費税率10%)

3回とも、6項目すべてが請求書に転記されました。材料に書いてあれば、確実に写されます。消えるのは「渡していない情報」だけです。

うまくいかないときの言い直し方

登録番号が静かに消える

指示文1・2と同じ条件に、「分からなければ分からないと明記して」の一文を足します。

次の内容で請求書を作ってください。発行者は合同会社ヒカリデザイン、宛先は株式会社みどり商事です。11月20日に行ったウェブサイト制作の代金55万円(税込)を請求します。 適格請求書として必要な項目(発行者の登録番号・取引年月日・取引内容・税率ごとの金額と消費税額・交付先名)をすべて書いてください。登録番号が分からない場合は、分からないと明記してください。

単一税率・税率混在の両方の材料で2回ずつ、合計4回とも「登録番号:不明(ご確認ください)」という形で欄が残りました。架空の番号は4回とも書かれていません。欄ごと消える事故は、材料に書くか、この一文を足すかのどちらかで防げます。

応用・次の一手

分割請求(着手金・残金のように2回に分けて発行する場合)でも、情報を渡せば同じように正しく記載されるかも確認しました。

次の情報から、2回に分けて発行する請求書を、それぞれ作ってください。 発行者:合同会社ヒカリデザイン(登録番号T1234567890123) 交付先:株式会社みどり商事 取引内容:ロゴデザイン制作一式(契約金額330,000円・税込、消費税率10%) 支払い: ・1回目(着手金):2026年11月5日発行、165,000円(税込) ・2回目(残金):2026年12月10日発行、165,000円(税込)

2回試すと、4枚の請求書すべてで6項目が独立して正しく記載されました。金額(165,000円の税抜150,000円・消費税15,000円)も2回とも一致しています。登録番号を情報として渡しておけば、請求書が複数枚に分かれても抜けません。

単一税率と税率2種混在のとき、税率ごとの消費税額がどれだけ残るかを比べる図。上段=単一税率(10%のみ)で頼んだとき、「代金55万円(税込)」とだけ渡すと、3回中2回は税込の合計額だけで完結し、税率ごとの消費税額を省略した。下段=税率が2種類(10%・8%)混ざるとき、合計額を出すには税率ごとに分けて計算する必要があり、3回とも税率ごとの内訳(税抜金額・消費税額)がそのまま出力に残った。どちらも登録番号を渡さない同じ条件で、税率の数だけを変えた2つの依頼。下の枠には、単一税率は合計額を書けば用が足りるため内訳を書く動機が弱くなること、税率が混ざると合算のために内訳をいったん経由する必要がありその過程がそのまま出力に残ることが書かれている。
税率が混ざると、内訳を経由しないと答えが出せないぶん、内訳が残りました。

請求書を毎回AIに作らせているなら、渡す情報をテンプレート化しておくのが確実です。

今後、私が請求書を頼むときに毎回渡す情報(発行者名・登録番号・取引先名など)をテンプレートにしてください。私が空欄を埋めるだけで、6項目(登録番号・取引年月日・取引内容・税率ごとの金額・消費税額・交付先名)が必ず揃う形にしてください。

2回試すと、2回とも6項目すべてに対応する空欄を持つテンプレートが返り、税率ごと(10%対象・8%対象)の金額欄もあらかじめ分かれていました。渡す情報を固定書式にしてしまえば、「渡し忘れる」という人間側の抜けごと防げます——これが今回の実測から見えた、いちばん確実な予防線です。

士業・出演料でも源泉徴収の式を実測した記事も、同じ「必要な情報を渡せば正しく処理される・渡さなければ抜ける」という構図でした。

⚠️ この結果は、単一税率・税率混在の2材料・計20回(分割請求2回・テンプレート化2回を含む)の実測です。「税率が多いほど必ず正確になる」と一般化しないでください。試したのは、次の範囲までです。

  • 税率は10%と8%の2種類のみです。複数の軽減税率品目が多数混ざる場合は未検証です
  • 登録番号を「渡さない」パターンは2材料のみ。社名や業種が変わった場合は未検証です
  • 判定は「項目が本文に出たか」の機械的な確認です。記載された日付・金額が実際に正しいかは別途、本文で個別に照合しています

今回の生の返りは docs/evidence/invoice-registration-number-fades-mixed-rate-keeps-it.md に全文置いてあります。