これで何ができるか
複数の不良理由も1件で全部見るという前の記事には、著者自身が残した未測定事項がありました。「この記事が試したのは3基準までです。検品の基準がさらに増えた場合(4つ以上)に、同時違反の理由をすべて列挙できるかは試していません」。
測りました。前の記事の架空納品記録20件(重量・使用期限・型番)に、数量・産地コードの2基準を増設して5基準にしました。材料を2本(材料C・材料D)作り、どちらにも「4基準すべてが同時違反の項目」を2件、「5基準すべてが同時違反の項目」を1件仕込みました。
結論は、基準を5つに増やしても、全数確認は複数の基準に同時に違反する項目を「見逃さない」です。材料2本×各6回=合計12回試しました。すべての回で、AIは違反している4つ(または5つ)の基準を正しく書きました。
| やり方 | 結果 |
|---|---|
| 全数確認・4基準同時違反パターンA(材料2本×各6回=12回) | 12/12。4つの基準をすべて正しく列挙 |
| 全数確認・4基準同時違反パターンB(材料2本×各6回=12回) | 12/12。別の1基準だけ合格だったパターンでも12/12 |
| 全数確認・5基準すべて同時違反(材料2本×各6回=12回) | 12/12。5つすべてを正しく列挙 |
| 全数確認+「該当する基準をすべて書いて」の念押し(材料2本×各2回=4回) | 4/4。すでに天井で変化なし |
| 抜き取り6件・サンプル外への「補足」言及(材料2本×各2回=4回・言及7件) | 7件中6件は理由を完全に列挙。1件は1つ漏れた |
この記事は、架空の納品データを使った実測です。実際の検品現場の記録ではありません。
前提
| かかる時間 | 20分。検品の頼み方を決めるときに1回だけやります |
| 費用 | 無料。無料のチャットAIで足ります |
| 必要なもの | ブラウザで使えるAI(ChatGPT・Claude・Geminiなど)と、検品の基準(数値・日付・型番など) |
| プログラミング | 不要。基準と一覧をそのまま貼るだけです |
この記事は、複数の不良理由も1件で全部見る・境界線上の不良も検品で見逃さないの続きです。基準は次の5つです。
- ①重量480〜520g
- ②使用期限は本日(2026-10-25)から60日以上先
- ③型番ASSY-118-B
- ④数量12個(今回追加)
- ⑤産地コードJP-07(今回追加)
📌 材料は2本用意しています。材料C・材料Dとも、良品17件に加え、4基準同時違反を2件(どの1基準だけ合格かはパターンごとに違います)、5基準すべて同時違反を1件仕込みました。仕込みは、Pythonで本日の日付から60日後を計算して検算しています。
AIへの頼み方
各回は独立した新規セッション(claude --safe-mode --tools "")で実行しました。人格は --system-prompt で汎用アシスタントに固定し、前の回の結果は参照できません。
1. 全数確認で、材料Cの4基準・5基準同時違反を見られるか
このあとに、材料Cの20件(識別子・重量・使用期限・型番・数量・産地コード)を貼ります。6回試しました。
6回とも、3件の違反理由はすべて正しく列挙されました。D-09は4つ(①②④⑤)、D-16も4つ(①③④⑤)、D-14は5つすべてです。1回目の返りです。
| D-09 | ①②④⑤ | 530g(上限520g超)、期限2026-11-20は26日後、数量9個、産地JP-11 | | D-14 | ①②③④⑤(5項目すべて) | 470g(下限未満)、期限2026-11-01は7日後、型番ASSY-118-X、数量15個、産地JP-02 | | D-16 | ①③④⑤ | 472g(下限未満)、型番ASSY-118-9、数量10個、産地JP-03(②期限は適合) |
良品17件・不良3件という項目数も、6回とも真値どおりでした。
2. 材料Dでも、同じ試験をもう一度確かめる
材料だけ、具体的な数値をすべて変えて6回試しました。材料Dの仕込みは材料Cと同じ構造です(4基準同時違反2パターン・5基準すべて同時違反1件)。ただしどの1基準だけ合格になるかはパターンごとに変えています。材料DではD-09が①重量だけ合格、D-16が⑤産地コードだけ合格です。
材料を変えた6回も、D-09・D-16の4つの違反理由、D-14の5つの違反理由が、すべて正しく列挙されました。2回目の返りです(表形式でOK/違反を明記した回)。
| D-09 | ①重量 OK(500g) | ②使用期限 違反(2026-11-15、21日後) | ③型番 違反(ASSY-118-Z) | ④数量 違反(8個) | ⑤産地 違反(JP-20) | | D-16 | ①重量 違反(478g) | ②使用期限 違反(2026-11-10、16日後) | ③型番 違反(ASSY-118-7) | ④数量 違反(14個) | ⑤産地 OK(JP-07) |
材料C・材料Dの合計12回で、違反パターンが違う2種類の4基準同時違反・1種類の5基準すべて同時違反が、どれも12/12で正しく列挙されたことになります。
3. 「該当する基準をすべて書いて」と念押ししたら
複数基準の列挙を明示的に求める一文を足して、材料Cで2回試しました。
同じ念押しの一文を、材料Dでも2回試しました。
材料C・材料Dそれぞれ2回、合計4回試しました。「該当する基準をすべて書いて」と念押しした4回も、違反理由はすべて正しく列挙され、変化はありませんでした。すでに全数確認だけで天井(見逃しゼロ)に達していたからです。これは「重要です」を足しても見逃しは減らないと同じ構図です。見出しの件数(合格17件・不良3件)と列挙件数の食い違いも、この4回では起きませんでした。
4. 抜き取り6件で、4基準・5基準の同時違反品はどう扱われるか
先の記事の抜き取りの指示文を、同じ材料で試しました。
材料C・材料Dそれぞれ2回、合計4回試しました。4回とも「3個おきの等間隔」のような機械的なルールでサンプルを選びました。サンプルに入った同時違反品は、全数確認と同じく違反理由をすべて正しく列挙しました。
4回とも、サンプル外の同時違反品についても「補足」で自分から言及しましたが、理由の完全さは一定しませんでした。合計7件の言及があり、6件は違反理由を全部書きました。1件(1回目のD-09)だけ②使用期限の違反が漏れました。真値は①②④⑤の4つですが、①④⑤の3つしか書かれませんでした。
D-09(補足・1回目) | ①④⑤(②使用期限が漏れた) | 重量530g、数量9個、産地JP-11 |
うまくいかないときの言い直し方
抜き取りで、サンプル外の同時違反品も正確に見つけてほしい
この記事の抜き取り4回では、サンプル外の同時違反品についても自分から「補足」で触れてくれましたが、理由の個数は7件中1件で1つ漏れました。前の記事の「抜き取り対象外で気づいた点は、理由をいくつ拾うかが安定しない」という結論は、基準が4〜5個に増えても変わりません。複数基準の同時違反を見逃したくないなら、抜き取りではなく全数確認を使ってください。
基準がもっと増えたら、同時違反品がもっと増えたらどうなるか
この記事が試したのは5基準・材料2本・同時違反品3件(1件あたり)までです。基準が6つ以上に増えた場合、同時違反の件数が20件中4件以上に増えた場合、材料をこの2組以外に増やした場合は試していません。
応用・次の一手
この記事の結論は1つです。検品の基準を3つから5つに増やしても、全数確認は複数の基準に同時に違反する項目の理由をすべて正しく列挙しました。材料2本×各6回=合計12/12です。
⚠️ 念押しの一文は、今回も天井に達した挙動を伸ばしませんでした。全数確認だけで見逃しゼロなら、「該当する基準をすべて書いて」を足す必要はありません。前の記事では見出しの件数と列挙件数が1回だけ食い違いましたが、今回の12回ではその食い違いも再現しませんでした。1回だけの不具合は、別の12回では出たり出なかったりします。「直った」ではなく「この12回では起きなかった」が正確な書き方です。
📌 抜き取りを使うなら、サンプルに入った同時違反品については理由を正しく書きます。ただし、サンプルに入らなかった項目についての「補足」はあてにしないでください。今回も7件中1件で理由が1つ漏れました。
同じ検品の場面を、基準3つまでで見たのが前の記事です。この記事はそこに残っていた「基準が4つ以上に増えたらどうなるか」という宿題にだけ答えました。
⚠️ この記事が実測していないことは次の3つです。
- 検品の基準が6つ以上に増えた場合
- 同時違反が仕込まれた件数が20件中4件以上に増えた場合
- 材料をこの2組の納品記録以外に増やした場合
実際に検品を自動化する人は、最初の1回だけ、報告された違反理由と元の記録を自分の目で見比べてください。