これで何ができるか

副業の見積もりを出すとき、「この工程は根拠が薄いから外れやすい」とAIに言わせることができます。前の記事で試した頼み方です。「根拠にした記録の件数が少ない順に並べてください」と聞けば、それらしい順位表が返ってきます。

ただし、その表に書かれた「件数」自体が正しいとは限りません。架空の作業記録2本で20回試したところ、3回(15%)は、AIが「◯件」と申告した数字と、AI自身がその下に列挙した日付の数が食い違っていました。件数を数え間違えたまま、順位表だけは体裁よく出ていたのです。

この記事は、その食い違いを見つけて直す頼み方を載せます。使うのは、記事に載せる数字とは違う場所——AIが自分で挙げた根拠の中です。

「この見積もりで、いちばん外れやすい工程はどれですか。根拠にした記録の件数が少ない順に並べてください。件数と、根拠にした記録の日付も書いてください」と、5通りの前置き(素朴に聞く・先に最大値だけを基準にする質問を挟む・先に2工程だけに絞る質問を挟む・先に無関係な雑談を挟む・「何件から選んだかを書いてください」を念押しで足す)×材料2本×各2回=20回試した結果の表。素朴に聞いた回は、材料Aの1回目は件数・日付とも真値と一致したが、2回目は「下調べ」を4件のところ5件と申告し、自分で挙げた日付は4つしか書けていなかった。材料Bは1回目・2回目とも一致。先に最大値だけを基準にする質問を挟んだ回は、材料A・材料Bとも1回目・2回目とも一致。先に2工程だけに絞る質問を挟んだ回は、材料Aの2回目でまた「下調べ」を5件と申告する同じ誤りが起きたが、他の3回は一致。先に無関係な雑談を挟んだ回は、材料Bの1回目で「修正」をいったん6件と申告したあと、同じ回答の中で「数え直すと7件でした」と自分で訂正した。他の3回は一致。「何件から選んだかを書いてください」を念押しで足した回は、材料A・材料Bとも1回目・2回目とも一致し、この4回だけは食い違いが1件も起きなかった。
20回中17回は正確でした。食い違った3回は、すべて「件数」と「列挙した日付の数」が合っていませんでした。

前提

かかる時間 15分
費用 無料。ブラウザのチャットAIで足ります
必要なもの 副業の作業記録(工程名・日付・分数)。見積もりに使う分だけ
プログラミング 不要。この記事の指示文をコピーして貼るだけです

見積もりそのものの出し方(自分の記録を貼って時間を出す頼み方)は前の記事にあります。この記事は、その先の確認だけを扱います。

AIへの頼み方

1. 件数と日付をセットで出させる

まず基本形です。件数だけを聞くと検算できないので、その根拠にした日付も一緒に出させます。

この見積もりで、いちばん外れやすい工程はどれですか。根拠にした記録の件数が少ない順に並べてください。件数と、根拠にした記録の日付も書いてください。

架空の作業記録2本(工程ごとの件数がすべて違う13行・15行)で20回試しました。17回(85%)は件数・日付とも実物と一致しましたが、3回は「件数」と「列挙した日付の数」がその場で食い違っていました。たとえば、ある回は「下調べ:5件」と書いたすぐ下に、日付を4つしか並べていません。

件数だけを見ていると、この食い違いには気づけません。日付まで書かせて、初めて突き合わせられます。

2. 何件から選んだかを、念のため問い直す

この見積もりで、いちばん外れやすい工程はどれですか。根拠にした記録の件数が少ない順に並べてください。件数と、根拠にした記録の日付も書いてください。 何件から選んだかを、工程ごとに書いてください。

この形を足した4回は、4回とも件数・日付とも一致しました。ただし正直に書くと、比較のために試した他の版でも同じ4回とも一致した回があり、この一文だけの効果かどうかは、この材料・この回数では確かめきれていません。念押しの一文があっても油断せず、後述の数えなおしの検算はセットで行うのが安全です。

3. よくある頼み方でも、母数は崩れないか

「見積もりは最大値を基準にすべき」という頼み方もよく使われます。この頼み方の直後に件数を聞くと、「1件だけを基準に選んだこと」と「何件の中から選んだか」を混同しないかが気になるところです。

それぞれの工程について、記録の中でいちばん時間がかかった1件だけを基準にして、見積もり時間を出してください。

この質問を先に通してから件数を聞いた8回では、8回とも母数(記録件数)と選んだ1件を混同しませんでした。「基準にしたのは1件」と「その工程には何件記録があるか」は、別の数字として保たれていました

4. 一部の工程だけに絞って見積もる

案件の一部だけ経験が浅いとき、範囲を絞って見積もることもあります。

このうち、下調べと執筆は今回はじめて担当した工程です。この2つだけに絞って、集中して見積もってください。

4回試して、4回とも指示どおり2工程だけに絞り込めました。ただし絞り込んだ先で、また同じ「下調べを5件と申告」の誤りが1回起きています。範囲を絞ることと、件数を正しく数えることは別の話でした。

うまくいかないときの言い直し方

申告した件数と、挙げた日付の数が合わない

ここが一番肝心です。件数と日付の数を自分の目で見比べて、ずれていたらこう返します。

いま挙げてもらった件数を、元の記録と1件ずつ突き合わせて数えなおしてください。件数と実際に挙げた日付の数が一致しているかも確認して、ずれていたらそこを教えてください。

「下調べを5件」と誤って申告した回に試したところ、1回で正しい件数(4件)に訂正されました。それだけでなく、頼んでもいないのに「工程ごとの件数の合計が、元の記録の総行数と一致するか」という検算まで自分から示しました——13行の記録に対し、訂正後の合計は1+4+6+2=13で一致、訂正前の合計は14で1行超えていた、という指摘です。この合計チェックは、こちらが指示文に書かなくても出てきました。

「件数が少ない順に」と頼んだのに、独自の判断で並べ替えられた

件数が最少(1件)の工程より、2番目に少ない(2件)工程を「実質的に危ない」として上に置く回もありました。額面どおりの順番に戻します。

「件数が少ない順」は、あなたの主観的な判断ではなく、件数の数字だけで並べてください。理由を書きたい場合は、件数の横に別の列で書いてください。

この言い直しで、順番は件数の数字どおりに直りました。ただし、順番は直っても、間違っていた件数の値そのものは直っていませんでした。表の中の「5件」という誤記は、本文の注記で「訂正しています」と書かれているのに、表の欄では「5件」のまま残っていました。順番の言い直しと、値の言い直しは別物です。先に前項の数えなおしをしてから、必要ならこちらを使ってください。

応用・次の一手

この確認の型は、案件が変わっても、そのまま使い回せます。

このチェックの型を、次の案件でも使い回したいです。工程名や記録の件数が変わっても同じ手順で確認できるように、私が次回そのまま貼って使える指示文のテンプレートを作ってください。

返ってきたテンプレートには「件数」「日付」「除外した記録とその理由」の3つが入っていました。ただし、このテンプレートに数えなおしの検算までは含まれていません。テンプレートを貼ったあと、件数がおかしいと感じたら、指示文5(数えなおし)は別途頼んでください。

同じように「件数が少ないからこそ危ない」という考え方は、応募の記録が少ないときにも使えます。件数が少ない状態でAIに傾向を語らせると何が起きるかは、少ない記録に傾向を語らせないに書きました。あちらは応募12件、こちらは作業記録13〜15行と、扱う記録の性質は違いますが、「少ない件数のまま断定させない」という芯は同じです。

最後に1つだけ。今回の20回では、直前に「最大値だけを基準に」という質問を挟んでも、母数の申告そのものは崩れませんでした。この結果は前の記事で見つかった「直前の質問が母数を決めていた」というケースとは違います。同じ現象がいつも起きるとは限りません。申告した数字は、頼み方にかかわらず、その場で自分の目で日付と突き合わせてください。