何が変わったか

Sakana AIは2026年9月16日、法人向けリサーチAI「Sakana Marlin」に2つの機能を追加したと発表しました。3行にすると、こうなります(出典: https://sakana.ai/marlin-update/)。

  • レポートを読みながらAIエージェントと対話できる「Interactive Reading」が加わりました。引用をクリックすると、AIが出典ページを開いて根拠の箇所を示します(出典: 同上)。
  • 調査結果を、編集可能なPowerPoint形式で出力できるようになりました。文章・図形・表・グラフのデータを変更でき、各スライドに出典URLも載ります(出典: 同上)。
  • Marlin自体は2026年6月に公開済みで、独自技術「AB-MCTS」により最大8時間の自律的なリサーチを行います(出典: https://sakana.ai/marlin/)。今回の更新は、その結果を人間が理解し確かめる部分を補うものです。

先に断っておきます。この記事は運営者がSakana Marlinを実際に使った記録ではありません。公式の発表ページと料金ページに書かれていることを読んで整理したものです。

なぜこの更新が必要になったのか

発表ページには、ベータ利用者から寄せられたフィードバックが3件、原文のまま引用されています(出典: https://sakana.ai/marlin-update/)。

  • 「情報の網羅性は評価できるが、数十ページもの調査報告を読み解くのが大変で、結局調査業務に費やしている時間があまり減っていない」
  • 「人間の成果物をレビューするときのように、出典まで遡って主張の確からしさを確認したいが、AIが何を根拠にどう解釈したのか質問できない」
  • 「社内で共有・報告する際には、レポートを修正したり自分の解釈や理解を反映したいが、そうしたインタラクティブな機能が不足している」

つまり、これまでのMarlinは「調べる」時間は短くしても、「読み解く」時間は減らせていませんでした。数十ページのレポートは出力できます。ですが、それを人間が理解し、確かめ、伝える工程がボトルネックとして残っていた、と公式ページは説明しています(出典: 同上)。

Sakana Marlinが公開されてから今回の更新までの年表。2026年6月、AB-MCTSで最大8時間の自律リサーチを行いレポートを自動生成するSakana Marlinを公開。2026年9月16日(公開の3か月後)、対話しながら出典を確認できるInteractive Readingと、編集可能なPowerPoint出力を追加した。「3か月後」は記事側の計算で、発表ページは公開月を「今年6月」とだけ書いている。
「調べる」を速くした3か月後に、「読む」を助ける機能が来た

更新前との違い

1. Interactive Reading——読み、問い、確かめる

更新前は、AIが生成したレポートの主張を確かめたいとき、出典ページを自分で開いて該当箇所を探す必要がありました。更新後は、レポート内の引用をクリックするとAIエージェントが出典を開き、記述の根拠となる箇所を提示します(出典: https://sakana.ai/marlin-update/)。

さらに、レポートについてチャット形式でエージェントと議論したり、質問したりできるようになりました。レポートの当該箇所へ直接飛べるため、上から順に読むだけでなく、気になる部分に絞って確認できます(出典: 同上)。

2. PowerPoint出力——編集して、自分の考えとして出す

更新前のMarlinは、調査結果をレポート形式で出力するのが中心でした。更新後は、文章・図形・表やグラフのデータ・書式まで変更できる編集可能なPowerPointファイルとして出力できます。各スライドには出典URLも記載され、任意のスライドテンプレートにも対応します(出典: 同上)。社内やクライアント指定のテンプレートを使えば、出力後に体裁を整える手間を減らせる、と説明されています(出典: 同上)。

料金の内訳

料金プランは4つあります。1回のリサーチはどのプランでも100クレジットを消費します(出典: https://sakana.ai/marlin/)。

プラン 月額 月内付与クレジット 追加クレジット単価
従量課金(都度払い) なし なし ¥98 / クレジット
Pro ¥150,000 2,000クレジット ¥90 / クレジット
Team ¥400,000 6,000クレジット ¥85 / クレジット
Enterprise 個別見積もり カスタム 個別見積もり

出典: すべてhttps://sakana.ai/marlin/の料金セクション

月内に付与されたクレジットを使い切る前提で計算すると、1回あたりの実質金額はプランごとに変わります。従量課金は100クレジット×¥98で¥9,800/回。Proは月2,000クレジット=20回ぶんなので¥150,000÷20=¥7,500/回。Teamは月6,000クレジット=60回ぶんなので¥400,000÷60≈¥6,667/回です。この割り算はページに書かれている数字ではなく、この記事が計算したものです。

Sakana Marlinのプランごとに、リサーチ1回あたりの実質金額を比べた横棒グラフ。従量課金(都度払い)は100クレジット×98円で9,800円/回。Pro(月15万円)は月2,000クレジット付与で20回ぶんに相当し7,500円/回。Team(月40万円)は月6,000クレジット付与で60回ぶんに相当し6,667円/回。1回あたりの円額は記事側の計算(月額÷月内に使い切れる回数)で、ページに直接の記載はない。
安くなるのは、月内のクレジットを使い切れる会社だけです

Team以上を選ぶ意味があるのは、月に60回近いリサーチを実際に走らせる会社に限られます。月に数回しか使わないなら、従量課金の¥9,800/回のほうが総額は安くなります。キャンセルしてもクレジットは消費される、とFAQに明記されています(出典: 同上)。

他社の類似サービスとの比較

「AIに調査を任せる」という機能は、OpenAIとGoogleも提供しています。ただし3社の提供形態がそもそも違うため、1本の表に単価を並べて比較することはできません

  • OpenAIは「Deep research」を開発者向けAPIの機能として提供しています。
  • 使うモデルはo3-deep-researcho4-mini-deep-researchと公式ガイドに明記されています(出典: https://developers.openai.com/api/docs/guides/deep-research)。
  • ただし公式の料金ページには、この2モデル名の価格表が見つかりませんでした
  • ガイドのコード例は汎用モデルgpt-6-astraを使っています。単価は100万トークンあたり入力$10.00・出力$50.00(短い入力の場合)です(出典: https://developers.openai.com/api/docs/pricing)。
  • 実行時間は「数十分かかることがある」とガイドに書かれています(出典: 同上)。
  • Googleは「Gemini Deep Research」をGeminiアプリの一機能として提供しています。
  • 無料のFreeプラン($0/月)でも利用できます。ただし利用回数の上限は有料プランより低くなります(出典: https://gemini.google/subscriptions/)。
  • より高い上限が欲しければ、Google AI Pro($19.99/月)やGoogle AI Ultra($99.99/月〜)を選べます(出典: 同上)。
  • 公式は「数分で」レポートを生成すると説明しています(出典: https://gemini.google/overview/deep-research/)。
Sakana Marlin・OpenAI Deep Research・Google Gemini Deep Researchの3つを、提供形態・実行時間の目安・最安で始める値段で比べた表。提供形態=Sakana Marlinは法人向けSaaS(クレジット制)、OpenAIは開発者向けAPI(トークン課金)、Googleは個人向けアプリの機能(無料枠あり)。実行時間の目安=Sakana Marlinは最大8時間、OpenAIは数十分、Googleは数分(いずれも各社公式の表現)。最安で始める値段=Sakana Marlinは1回9,800円(従量課金)、OpenAIは単価非公開でモデル単体は百万トークンあたり10ドルから、Googleは0ドル/月(Freeプランに含む)。単位がそれぞれ違うため1本の表には並べられない。
「AIに調べさせる」の値段は、3社で単位からして違います

Sakana Marlinだけが「1回の実行にいくら」という単価をはっきり公開しています。OpenAIは開発者向けのAPIです。max_tool_callsという上限回数の設定はできますが、1回あたりの総額は使い方次第です(出典: https://developers.openai.com/api/docs/guides/deep-research)。Googleは個人向けサブスクの中に含まれる機能です。そもそも「1回いくら」という値段の概念自体がありません。

実行時間も比較できません。Marlinの「最大8時間」・OpenAIの「数十分」・Googleの「数分」は、いずれも各社ページの表現です。同じ条件・同じ調査テーマで測った数字ではありません。長さの違いは、調査の深さや手法の違いを反映している可能性もあります。この記事では優劣として扱いません。

どういう人に効くか

いま検討するといい人

  • すでにMarlinを使っていて、レポートを疑いながら読む・出典を確かめる作業に時間を取られている人。Interactive Readingはこの記事が引用したフィードバック3件にそのまま対応する機能です。
  • 調査結果を社内会議やクライアントに見せる資料に加工している人。編集可能なPowerPoint出力で、体裁を整える手間を削れます。
  • 月に60回近い頻度でMarlinを使う会社。Teamプランなら1回あたり約¥6,667まで下がります。

急がなくていい人

  • 月に数回しか使わない人。従量課金の¥9,800/回のほうが、月極めプランより総額は安くなります。
  • すぐに答えが欲しい人。Marlinは公式が「最大8時間」と説明する長時間型のリサーチで、数分で終わるGoogleのDeep Researchとは設計思想が違います。
  • 個人で軽く使いたい人。Googleの無料プランでもDeep Research自体は使えます。Marlinは法人向けサービスで、個人向けの安価な入口はありません。公式FAQは対象を「法人・団体・個人事業主その他の事業者の方」と定めています(出典: https://sakana.ai/marlin/のFAQ)。

この記事で分からないこと

Interactive Readingの実際の使い勝手、PowerPoint出力の編集のしやすさ、日本語レポートの読みやすさ。発表ページには利用企業からの好意的な声も載っていますが、運営者自身は試していないため、体験としては書けません。

出典一覧

すべて各社の公式ページです。まとめ記事・ニュースサイト・個人ブログは1件も使っていません。

  1. Sakana Marlinアップデートの発表(Sakana AI・2026年9月16日): https://sakana.ai/marlin-update/
  2. Sakana Marlinの製品ページ・料金・FAQ(Sakana AI公式): https://sakana.ai/marlin/
  3. Deep research の開発者ガイド(OpenAI公式ドキュメント): https://developers.openai.com/api/docs/guides/deep-research
  4. API の料金(OpenAI公式ドキュメント): https://developers.openai.com/api/docs/pricing
  5. Gemini Deep Researchの紹介ページ(Google公式): https://gemini.google/overview/deep-research/
  6. Geminiのプラン一覧(Google公式): https://gemini.google/subscriptions/

料金と仕様は変わります。実際に契約する前に、必ず上記の公式ページで現在の値を確認してください。