結論:立場ごとに、こうなります
Google は 2026年7月30日に Gemini Robotics ER 2 を発表しました(出典: https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/google-deepmind/gemini-robotics-er-2/)。ロボットの「高レベルの頭脳」として、人との対話・物理世界の理解・多段階タスクの計画を担う専用モデルです。実際の手足の動き(低レベルの制御)は別のモデルに渡します。立場で結果が分かれます。
| どんな立場か | 今日からできること | どうなるか |
|---|---|---|
| 物理AIエージェント(ロボット)を作っている開発者 | Gemini API・Google AI Studioでそのまま使える | 単価は2027年1月1日に2倍になる(入力$1.00→$2.00、出力$5.00→$10.00) |
| Gemini Enterprise Agent Platformの利用企業 | プライベートプレビューに申し込む | 一般提供の時期は発表に書かれていない |
| 自動化したい一般の会社員(このサイトの主な読者) | 特にすることはない | ロボット本体を動かす仕組みの話で、チャットやオフィス作業の自動化には使えない |
一言でいうと、ロボットの「頭脳」役の専用モデルで、値段は年明けに2倍になる。チャット向けの他社モデルと比べる相手がいない。
先に断っておきます。この記事は運営者がこのモデルを試した記録ではありません。公式ページに書かれていることを読んで、立場ごとに整理したものです。
ここから下は、表の3行がなぜそうなるのかの説明です。
なぜそうなるのか
「頭脳」と「手足」を分けた設計
発表ページは、Gemini Robotics ER 2 を「ロボットの高レベルの頭脳」と位置づけています(出典: 同上)。担う役割は3つです。
- 人と会話する
- 物理世界を理解する
- 多段階のタスクを計画する
実際の動作(モーター制御)は、任意の低レベルVLA(Vision-Language-Action)モデルに引き渡します。Google Searchなどのツールや、開発者が自分で定義した関数も呼び出せます。
前のモデル Gemini Robotics ER 1.6 からの変更点として、公式は次の3つを挙げています(出典: 同上)。
- 連続した映像フィードを見ることで、ロボットが自分の進捗を追跡し、問題があれば適応できるようになった
- 新機能としてマルチロボット協調を追加。複数の種類のロボットが同じ空間で連携して作業できる
- Gemini Live APIに統合され、低遅延の双方向ストリーミングに対応した
進捗の追跡と「決定的な瞬間」の検出
公式が挙げる数字は2つです(出典: 同上)。
- 進捗の分類(5段階):動画の各場面を、完了度5段階(0〜20%・20〜40%・40〜60%・60〜80%・80〜100%)に分類する課題。正解率57.4%
- 決定的な瞬間の検出:コーヒーを注ぐのをいつ止めるか、といった重要な瞬間のフレームを当てる課題。正解率91.3%・平均絶対誤差0.96秒
公式はこの検出について、「はるかに大きなモデルのカテゴリに近い性能を、計算コストを抑えて実現した」と説明しています。速さも前世代比4倍と書かれています(出典: 同上)。
「前のモデルや競合モデルを上回った」とは書かれていますが、ER 1.6自身の点数は数値として書かれていません(出典: 同上)。比較のグラフ自体は発表ページに載っています。ただしこの記事では、文章にはっきり書かれた数字だけを使いました。グラフの目盛りから読み取った値は使っていません。
値段は2027年1月1日に2倍になる
Gemini Robotics ER 2自身の価格は、発表ページやモデルカードには書かれていません。Vertex AI の公式料金ページに「Gemini ER 2.0」として載っています(出典: https://cloud.google.com/vertex-ai/generative-ai/pricing)。
| 期間 | 入力 | キャッシュ済み入力 | 出力 |
|---|---|---|---|
| 〜2026年12月31日(導入価格) | $1.00 | $0.10 | $5.00 |
| 2027年1月1日から(標準価格) | $2.00 | $0.20 | $10.00 |
出典: 同上(100万トークンあたりのドル)
キャッシュ済み入力は、どちらの期間も入力価格の10%(90%引き)で揃っています。これは $0.10÷$1.00 と $0.20÷$2.00 から、この記事が計算した比率です。Gemini 4 Argon・Gemini 4 Carbonでも、同じ型が使われています。「導入期間は半額、年明けに2倍」という型です。今回のER 2も、その型に乗っています。
他社の最上位モデルと比べると
ロボット向けの同種モデルは、他社には無い
OpenAIの公式モデル一覧(出典: https://developers.openai.com/api/docs/models)を見ました。Anthropicの公式モデル一覧(出典: https://platform.claude.com/docs/en/about-claude/models/overview)も見ました。どちらにも「robot」や「robotics」を含むモデル名は1つもありません。ロボット制御の「頭脳」役という同じ土俵の製品が他社に無いため、性能やベンチマークの横並び比較はできません。できるのは、単価という数字だけの比較です。
| Gemini Robotics ER 2(標準価格) | Claude Opus 5.5 | GPT-6 Astra(短い入力) | |
|---|---|---|---|
| 入力(100万トークン) | $2.00 | $4.00 | $10.00 |
| 出力(100万トークン) | $10.00 | $20.00 | $50.00 |
| 一度に読める量 | 12.8万トークン | 100万トークン | 92.2万トークン |
| 一度に書ける量 | 6.4万トークン | 12.8万トークン | 12.8万トークン |
出典: ER 2はhttps://cloud.google.com/vertex-ai/generative-ai/pricingとhttps://deepmind.google/models/model-cards/gemini-robotics-er-2、Claudeはhttps://platform.claude.com/docs/en/about-claude/pricingとhttps://platform.claude.com/docs/en/about-claude/models/overview、GPTはhttps://developers.openai.com/api/docs/pricingとhttps://developers.openai.com/api/docs/models/gpt-6-astra(入力92.2万・出力12.8万トークンの内訳はこのモデル専用ページに記載)
ER 2の標準価格(2027年以降・入力$2.00/出力$10.00)は、Gemini 4 Argonの導入価格と1円も違いません。両方ともGoogleの公式料金ページで確認しました。ただし使い道がまったく違う製品の単価を並べているだけで、「どちらが安いか」の答えにはなりません。ER 2は会話や文章作成のために作られたモデルではなく、ロボットに次の一手を指示するために作られたモデルです。
一度に読める量(コンテキストウィンドウ)も、ER 2だけ一回り小さいことが分かります。モデルカードには「Gemini Robotics ER 2 は Gemini 3.5 Flash をもとにしている」と明記されています(出典: https://deepmind.google/models/model-cards/gemini-robotics-er-2)。関係がありそうですが、公式がその理由を説明しているわけではないので、ここでは数字だけを書きます。
どういう人に効くか
関係がある人
- 物理的なロボット(アーム・移動体・ヒューマノイド等)を自分で動かすソフトを作っている開発者。Gemini API・AI Studioから今日使えます。
- 複数のロボットを連携させたい企業。マルチロボット協調が新機能として入りました。
- Boston Dynamics の Spot のような既存ロボットのAPIを、音声などの自然言語で操作したい開発者。発表ページにデモのコードがGitHubで公開されています。
関係が薄い人(このサイトの読者の大半)
- チャットでの文章作成・要約・コーディングの自動化をしたい人。ER 2はそのための製品ではありません。
- 物理的なロボットを持っていない人。価格や性能を見比べても、使い道がありません。
この記事で分からないこと
- 進捗分類(57.4%)・瞬間検出(91.3%)について、前のモデル(ER 1.6)自身が何点だったか。発表には数値として書かれていません。
- Gemini Enterprise Agent Platform経由の一般提供がいつ始まるか、その場合の価格。発表には書かれていません。
- Gemini Robotics ER 1.6自身のVertex AI料金。現在の料金ページには「Gemini ER 2.0」の行しかなく、確認できませんでした。
出典一覧
すべて各社の公式ページです。まとめ記事・ニュースサイト・個人ブログは1件も使っていません。
- Gemini Robotics ER 2 の発表(Google・2026年7月30日): https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/google-deepmind/gemini-robotics-er-2/ (Google DeepMind 側の https://deepmind.google/blog/gemini-robotics-er-2-powering-robotics-with-video-understanding-task-orchestration-and-multi-robot-collaboration/ を開くと、このページへ転送されます)
- Gemini Robotics ER 2 のモデルカード(Google DeepMind 公式): https://deepmind.google/models/model-cards/gemini-robotics-er-2
- Vertex AI の料金(Google Cloud 公式): https://cloud.google.com/vertex-ai/generative-ai/pricing
- 料金(Anthropic 公式ドキュメント): https://platform.claude.com/docs/en/about-claude/pricing
- モデル一覧と仕様(Anthropic 公式ドキュメント): https://platform.claude.com/docs/en/about-claude/models/overview
- API の料金(OpenAI 公式ドキュメント): https://developers.openai.com/api/docs/pricing
- モデル一覧(OpenAI 公式ドキュメント): https://developers.openai.com/api/docs/models
- GPT-6 Astra のモデルページ(OpenAI 公式ドキュメント): https://developers.openai.com/api/docs/models/gpt-6-astra
料金と仕様は変わります。実際に支払う前に、必ず上記の公式ページで現在の値を確認してください。