何が変わったか
Google は 2026年8月27日に Gemini Omni 1.1 Flash を発表しました(出典: https://blog.google/innovation-and-ai/technology/developers-tools/build-with-gemini-omni-1-1-flash/)。公式ページに書かれている数字だけを並べます。3行にすると、こうなります。
- 動画の「続き」を伸ばせる長さが、10秒刻みで最大40秒までになりました。直前10秒ぶんの内容を踏まえて続きを作れます(従来は直前1秒しか見ていませんでした)(出典: 同上)。
- 開発者向けのAPI利用は、解像度が4段階になりました。360p・720p・1080p・4Kで、1秒あたりの値段はそれぞれ違います(出典: 同上)。
- 前のモデル(Gemini Omni Flash)は2026年5月19日の発表で、まず Gemini アプリ・Google Flow・YouTube Shorts 向けでした。API 経由で開発者が有料で使えるようになったのは、今回の更新からです(出典: https://ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing)。
先に断っておきます。この記事は運営者がこのモデルを試した記録ではありません。公式ページとドキュメントに書かれていることを読んで整理したものです。「きれいに繋がった」「速かった」といった使用感は一切書いていません。
Gemini の動画関連の機能としては、動画を「読む」ほうの Agentic Video を別記事で扱っています。今回の Omni 1.1 Flash は逆に、動画を「作る・編集する」ほうのモデルです。
値段は解像度で10倍違う
発表ページには価格表が載っています(本文のテキストではなく、表の画像として埋め込まれています。この記事を書いた担当が画像を直接開いて目視で確認しました)。1秒あたりの値段は次のとおりです。
| 解像度 | Gemini Omni 1.1 Flash(1秒あたり) |
|---|---|
| 360p(下書き) | $0.03 |
| 720p(標準) | $0.10 |
| 1080p | $0.15 |
| 4K | $0.30 |
出典: https://blog.google/innovation-and-ai/technology/developers-tools/build-with-gemini-omni-1-1-flash/(発表ページに埋め込まれた価格表の画像)
360pから4Kまでで、値段はちょうど10倍になります。40秒のフル尺を作ると仮定すると、360pなら $1.20、4Kなら $12 です(この記事の計算)。下書きを360pで何度も作り直し、決まった案だけ4Kに上げる、という使い方が値段の面では合理的です。
料金ページには、この価格をトークン単位の課金で説明している箇所もあります。入力は100万トークンあたり $1.50(テキスト・画像・動画・音声共通)、出力は動画が100万トークンあたり $17.50で、「720pの動画は1秒あたり5,792トークンとして計算し、これは実効的に1秒あたり約 $0.10 に相当する」と明記されています(出典: https://ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing)。上の表の720pの行と一致します。
なお、これはAPIで開発者が使う場合の値段です。Google AI Plus・Pro・Ultra の契約者は、Google Flow と Gemini アプリの中で追加料金なしに使えます(出典: 発表ページ、同上)。YouTube Shorts・YouTube Create App でも無料で使えると、前のモデルの発表時に案内されています(出典: https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/gemini-omni/)。
前のモデルとの違い
解像度の選択肢が増えた
料金ページを見ると、前の Gemini Omni Flash(無印)は 720pの1段階だけで、360p・1080p・4Kの行は「—」(提供なし)になっています(出典: https://ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing)。今回の 1.1 Flash で、下書き用の安い360pと、本番用の1080p・4Kが新しく加わった形です。
参照する秒数が10倍になった
発表ページには「Omni 1.1 は直前10秒ぶんの内容を踏まえられるようになった。従来のモデルは直前1秒しか参照していなかった」と明記されています(出典: 同上)。動画を伸ばすとき、直前の場面をどれだけ覚えていられるかが10倍になったということです。
伸ばせる長さそのものにも上限があります。延長は10秒刻みで、合計40秒までしか積み増せません(出典: 同上)。それ以上の尺が必要な場合は、この機能だけでは足りないということです。
延長には他にも制約が書かれています。延長は動画の最後にしか継ぎ足せず、途中への挿入や先頭への追加はできません(出典: https://ai.google.dev/gemini-api/docs/omni)。自分の動画をアップロードして延長する場合、EU(欧州経済領域)・スイス・英国では利用できないと明記されています。ただし、モデルが生成した動画をそのまま複数ターンで延長する使い方は、地域を問わず利用できるとも書かれています(出典: 同上)。
新しく増えた操作
発表ページによると、今回の更新で次の操作が使えるようになりました(出典: 同上)。
- 始点・終点フレームの指定: 開始フレームと終了フレームを指定すると、その間を滑らかにつなぐ動画を生成できます。
- 360pの下書きモード: 720p標準に比べて「最大60%速く、3分の1の値段」で生成できます(発表ページの注記)。
- 1080p・4Kへのアップスケール: 本番用の高解像度出力に対応しました。
- 動画リファレンス: 最大3本まで、1本につき3秒ぶんの動画を参照として使えます。ただし動画リファレンスに含まれる音声は無視されると明記されています(出典: 同上)。
他社の最上位モデルとの比較
720pで音声付きの動画を1秒作る値段を、同じ条件で並べます。
| モデル | 720p・1秒あたり |
|---|---|
| Gemini Omni 1.1 Flash | $0.10 |
| Veo 3.1 Lite | $0.05 |
| Veo 3.1 Fast | $0.10 |
| Veo 3.1 Standard | $0.40 |
| Sora 2(OpenAI) | $0.10 |
| Sora 2 Pro(OpenAI) | $0.30 |
出典: Google の3モデルは https://ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing、OpenAI の2モデルは https://developers.openai.com/api/docs/pricing
720pだけで見ると、Gemini Omni 1.1 Flash と OpenAI の Sora 2 は同じ $0.10 です。GoogleはVeo 3.1という別ブランドで、さらに安いLite($0.05)から高品質なStandard($0.40)まで幅を用意しています。
ただし Sora 2 には、値段以前の大きな注意点があります。OpenAI は Sora 2・Sora 2 Pro を含む Videos API 全体を2026年9月24日に終了すると告知しています(2026年3月24日付の告知。出典: https://developers.openai.com/api/docs/deprecations)。この記事を確認した時点(2026年9月4日)で、20日後に迫っています。確認したページの中に、後継モデルの案内はありませんでした。Sora 2 は16秒・20秒の動画に対応していますが(出典: https://developers.openai.com/api/docs/guides/video-generation)、そのAPI自体がまもなく使えなくなります。
Anthropic はどうでしょうか。公式のモデル一覧ページには「現行モデルはすべてテキスト・画像入力、テキスト出力に対応」と書かれており、動画の生成や編集についての記載はありません(出典: https://platform.claude.com/docs/en/about-claude/models/overview)。無理に並べず「提供していない」と書いておきます。
どういう人に効くか
いま動かしてみるといい人
- Google AI Plus・Pro・Ultra を契約していて、Google Flow か Gemini アプリで動画を作りたい人。追加料金なしで、始点・終点フレーム指定や4Kアップスケールが使えます。
- YouTube Shorts・YouTube Create App で動画を作っている人。無料で使えると案内されています(前モデルの発表時点の情報)。
- API 経由で開発者として使う人で、下書きと本番出力を分けたい人。360pの下書きで何度も試し、決まった案だけ4Kに上げれば、値段を10分の1に抑えられます。
急がなくていい人・注意が必要な人
- 自分で撮影した動画をアップロードして延長・編集したい人のうち、EU・スイス・英国から使う人。その用途は今のところ利用できません。
- 40秒を超える尺が必要な人。延長機能の上限は合計40秒です。
- 動画の音声だけを差し替えたい人。音声編集(Voice editing)は非対応と明記されています(出典: https://ai.google.dev/gemini-api/docs/omni)。
- 日本語での品質を重視する人。ドキュメントは「英語は十分にサポートされているが、他の言語は評価されておらず、結果にばらつきがある」と明記しています(出典: 同上)。
この記事で分からないこと
実際に生成した動画の質、日本語プロンプトでの精度、生成にかかる待ち時間。発表ページには利用企業の声(Adobe・Figma・GMI Cloud・Runway)も載っていますが、どういう条件で作った動画の感想なのかは書かれていないため、この記事では比較に使っていません。運営者も試していないので書けません。
出典一覧
すべて各社の公式ページです。まとめ記事・ニュースサイト・個人ブログは1件も使っていません。
- Gemini Omni 1.1 Flash の発表(Google・2026年8月27日): https://blog.google/innovation-and-ai/technology/developers-tools/build-with-gemini-omni-1-1-flash/ (Google DeepMind 側の https://deepmind.google/blog/gemini-omni-1-1-flash-lets-you-build-with-more-control/ を開くと、このページへ転送されます)
- Gemini Omni(無印・前モデル)の発表(Google・2026年5月19日): https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/gemini-omni/
- Gemini Omni Flash のモデルカード(Google DeepMind 公式): https://deepmind.google/models/model-cards/gemini-omni-flash/
- Gemini API の料金(Google 公式): https://ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing
- Gemini Omni Flash の開発者ドキュメント(Google 公式): https://ai.google.dev/gemini-api/docs/omni
- Sora の動画生成ガイド(OpenAI 公式): https://developers.openai.com/api/docs/guides/video-generation
- API の料金(OpenAI 公式): https://developers.openai.com/api/docs/pricing
- 提供終了の一覧(OpenAI 公式): https://developers.openai.com/api/docs/deprecations
- モデル一覧と仕様(Anthropic 公式ドキュメント): https://platform.claude.com/docs/en/about-claude/models/overview
料金と仕様は変わります。実際に支払う前に、必ず上記の公式ページで現在の値を確認してください。