何が変わったか
Google は 2026年6月24日、画面操作(Computer Use)を Gemini 3.5 Flash の標準機能にしたと発表しました(出典: https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/introducing-computer-use-gemini-3-5-flash/)。公式ページに書かれていることだけを並べます。3行にすると、こうなります。
- 画面操作は、これまで
gemini-2.5-computer-use-preview-10-2025という専用の別モデルでした。それが 3.5 Flash に内蔵ツールとして統合されました(出典: 同上)。 - ブラウザ・モバイル・デスクトップの3つの環境に対応します(出典: 同上)。Gemini API と Gemini Enterprise Agent Platform から、発表当日にすぐ使えます。
- 料金は専用モデルとしての別建てをやめ、普通の 3.5 Flash と同じトークン単価になりました(出典: https://ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing)。
先に断っておきます。この記事は運営者がこの機能を試した記録ではありません。公式ページとドキュメントに書かれていることを読んで整理したものです。「動きが速かった」「精度が良かった」といった使用感は一切書いていません。
Gemini 3.5 Flash 自体の発表は 2026年5月19日で、画面操作はその時点では載っていませんでした(出典: https://deepmind.google/models/model-cards/gemini-3-5-flash)。発表から36日後に、あとから機能として追加された形です。
さらに、この記事を書いている時点(2026年8月26日更新のドキュメントを確認)で、ai.google.dev の Computer use ページは 3.5 Flash を「Previous stable model」(前の安定版)と表記しています(出典: https://ai.google.dev/gemini-api/docs/computer-use)。「推奨モデル」の座は、2026年8月13日に発表された Gemini 3.7 Flash に移っています(出典: 同上)。標準搭載の発表からわずか50日です。
前のモデルとの違い
専用モデルから内蔵ツールへ
前の画面操作モデル gemini-2.5-computer-use-preview-10-2025 は、「ブラウザ制御エージェントの構築に最適化した、当社の Computer Use モデル」という専用モデルでした(出典: https://ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing)。ドキュメントでは「Legacy preview model optimized for browser-based computer use」(レガシーのプレビューモデル、ブラウザ向け)と説明されています(出典: https://ai.google.dev/gemini-api/docs/computer-use)。対応環境はブラウザだけでした。
いま画面操作に対応しているのは、Gemini 3.7 Flash・Gemini 3.5 Flash-Lite・Gemini 3.5 Flash・Gemini 3 Flash Preview の4モデルです(出典: 同上)。ドキュメントが「推奨」と明記しているのは Gemini 3.7 Flash で、Gemini 3.5 Flash は「Previous stable model」(1つ前の安定版)という表記です(出典: 同上)。この記事の主役である「3.5 Flash への標準搭載」自体、いまでは一段落ちた位置づけになっています。
対応環境が1つから3つに
Gemini 3.x 系の画面操作は、ブラウザ・モバイル・デスクトップの3つの環境に対応します(出典: https://ai.google.dev/gemini-api/docs/computer-use)。環境ごとに使える操作(アクション)の数を、ドキュメントの表から数えました。
ブラウザ環境が一番多機能で20個の操作(クリック系6種・キー操作5種・スクロール・前後移動など)に対応しています。モバイル環境は10個しかなく、open_app(アプリを名前で開く)や list_apps(インストール済みアプリの一覧を取る)といったモバイル特有の操作に入れ替わっています(出典: 同上)。デスクトップ環境は17個で、ブラウザ用の navigate(URLを直接開く)・go_back・go_forward の3つが無い代わりに、それ以外はブラウザ環境と同じです(出典: 同上)。
他社の最上位モデルとの比較
操作の数え方が会社ごとに違う
Anthropic の computer use tool(computer_toolset_20260801)は、「17個のメンバーツールを持つ」とドキュメントに明記されています(出典: https://platform.claude.com/docs/en/agents-and-tools/tool-use/computer-use-tool)。ちょうど Gemini のデスクトップ環境と同じ数です。ただし Anthropic は画面操作(デスクトップ)とは別に、ブラウザ内の作業専用の「browser use tool」を別立てで用意しています(出典: 同上)。1つのツールで3環境をまかなう Gemini とは、道具の分け方が違います。
OpenAI は少し毛色が違います。ガイドの「Possible Computer use actions」の一覧には、click・double_click・scroll・type・wait・keypress・drag・move・screenshot の9個しか並んでいません(出典: https://developers.openai.com/api/docs/guides/tools-computer-use)。右クリックや中央クリックといった専用の操作は無く、click にボタンを指定する形で表現します。操作の種類が少ないからといって、できることが少ないとは言い切れません——1つの操作に引数を持たせて表現の幅を広げる設計だからです。
なお同じガイドの本文は「gpt-5.4 が画面操作向けの新しい訓練を受けている」と書いている一方、コード例はすべて gpt-5.6 を使っています(出典: 同上)。どちらが現行の推奨モデルなのか、本文とコード例で表記がずれています。
専用モデルの終了は、OpenAIも同じ道をたどった
OpenAI も同じ設計変更を経験しています。ガイドの移行セクションには、「非推奨の computer-use-preview ツールから移行するには」という見出しがあり、専用モデル computer-use-preview は非推奨と明記されています(出典: https://developers.openai.com/api/docs/guides/tools-computer-use)。移行後は、flagship モデルである gpt-5.6-sol・gpt-5.6-terra・gpt-5.6-luna のいずれでも computer ツールとして画面操作が使えます(出典: https://developers.openai.com/api/docs/models)。「専用モデル→主力モデルへの内蔵」という流れは、GoogleもOpenAIも同じです。
料金の建て付け
Gemini の画面操作は、いまは別立ての料金がありません。ドキュメントには「Computer use: Charged as regular tokens per model pricing (e.g., standard Gemini 3.5 Flash pricing)」(画面操作は、使うモデルの通常のトークン料金で課金される)とはっきり書かれています(出典: https://ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing)。
| 入力(100万トークン) | 出力(100万トークン) | |
|---|---|---|
| 旧: Gemini 2.5 Computer Use Preview(専用モデル) | $1.25(20万トークンまで)/$2.50(超過分) | $10.00(20万トークンまで)/$15.00(超過分) |
| 新: Gemini 3.5 Flash(内蔵ツール・通常料金) | $1.50 | $9.00 |
出典: いずれも https://ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing
出力側は $10.00〜$15.00 から $9.00 に下がり、長い入力(20万トークン超)向けの割増料金も無くなりました。入力側だけは $1.25 から $1.50 にわずかに上がっていますが、専用モデル時代にあった「長い入力は2倍」という段差が消えたぶん、長いやり取りをするタスクでは差が出ます。
Anthropic は少し違う課金の考え方です。画面操作ツールそのものの追加料金は無く、通常のツール利用料金に従いますが、computer_toolset_20260801 を宣言するだけで、リクエストに約4,500トークン分のオーバーヘッドが乗ります。モデルによって差があり、Claude Fable 5・Mythos 5・Opus 5・Opus 4.8 では約4,520トークン、Claude Sonnet 5 では約4,590トークンとドキュメントに書かれています(出典: https://platform.claude.com/docs/en/agents-and-tools/tool-use/computer-use-tool)。zoom(画面の一部を拡大して読む機能)を無効にすると、そこから約410トークン減ります(出典: 同上)。スクリーンショット自体は画像入力として別途課金されます(出典: 同上)。
画面操作の実力テストでの立ち位置
Google が Gemini 3.5 Flash のモデルカードに載せている比較表から、画面操作の実力を測る OSWorld-Verified の行を抜き出しました。
出典: すべて https://deepmind.google/models/model-cards/gemini-3-5-flash(「Results as of May, 2026」の表・UI Control / OSWorld-Verified の行)
Gemini 3.5 Flash は 78.4% で、自社の旧世代(Gemini 3 Flash の65.1%、Gemini 3.1 Pro の76.2%)より高い点数です。他社の当時の最上位モデルとも近く、GPT-5.5 の78.7%とはほぼ並び、Claude Opus 4.7 の78.0%もわずかに下回るだけです。
ただし、この表を作ったのは Google です。他社が同じ条件・同じ環境で測った値ではありません。さらに比較に使われている Claude Sonnet 4.6・Claude Opus 4.7・GPT-5.5 は、いずれも2026年5月時点の世代です。この記事を書いている8月時点の最新世代(Claude Sonnet 5・Opus 5、GPT-5.6)ではないので、いまの他社モデルと比べたらこの順位のままとは限りません。
また、モデルカードのテスト名は OSWorld-Verified です。Gemini 3.7 Flash のモデルページに載っている「OSWorld-2.0」は別バージョンの表記なので、この記事では両者の数字を並べていません。名前が似ているだけで、同じテストとして比べると誤った結論になります。
どういう人に効くか
いま動かしてみるといい人
- ブラウザだけでなく、モバイルやデスクトップの操作も自動化したい人。3つの環境に1つのツールで対応します。
- 前の
gemini-2.5-computer-use-preview-10-2025を使っていた人。通常のトークン料金になり、長い入力の割増も消えました。 - OpenAI の
computer-use-previewを使っていた人。同じ「専用モデルから主力モデルへの統合」が Gemini でも起きています。
急がなくていい人
- 「最新のGeminiを」という理由だけで選びたい人。ドキュメント上の推奨モデルはすでに Gemini 3.7 Flash です。
- Anthropic のように、ブラウザ操作とデスクトップ操作を別のツールとして厳密に切り分けたい人。Gemini は1つのツールにまとまっています。
- 他社の最新モデルと比べて選びたい人。Googleが載せている比較表は2026年5月時点の他社モデルとの比較で、いまの最新世代ではありません。
この記事で分からないこと
実際に画面操作をさせたときの成功率・失敗のしかた・日本語UIでの挙動。運営者は試していないので書けません。OSWorld-Verified の点数は「テスト環境でのタスク成功率」であり、実際の業務アプリでの成功率とは別物です。
出典一覧
すべて各社の公式ページです。まとめ記事・ニュースサイト・個人ブログは1件も使っていません。
- 画面操作の標準搭載の発表(Google・2026年6月24日): https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/introducing-computer-use-gemini-3-5-flash/ (Google DeepMind 側の https://deepmind.google/blog/introducing-computer-use-in-gemini-3-5-flash/ を開くと、このページへ転送されます)
- Computer use のドキュメント(Google 公式・最終更新 2026-08-26): https://ai.google.dev/gemini-api/docs/computer-use
- Gemini API の料金(Google 公式): https://ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing
- Gemini 3.5 Flash モデルカード(Google DeepMind 公式): https://deepmind.google/models/model-cards/gemini-3-5-flash
- computer use tool のドキュメント(Anthropic 公式): https://platform.claude.com/docs/en/agents-and-tools/tool-use/computer-use-tool
- Computer use のガイド(OpenAI 公式): https://developers.openai.com/api/docs/guides/tools-computer-use
- モデル一覧(OpenAI 公式): https://developers.openai.com/api/docs/models
料金と仕様は変わります。実際に使う前に、必ず上記の公式ページで現在の値を確認してください。